やがて最強になる結界師、規格外の魔印を持って生まれたので無双します

菊池 快晴

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第32話 プラタの秘密

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「どうしたクライン、ボーっとして」
「ん? あ、そ、そうだね。ごめん」
「せっかくの休日だし、楽しまないと損よ。それにんーっ、美味しいこのスイーツ」

 翌日、俺たちは休日を満喫する為、王都へ来ていた。
 お給料も毎月頂いていたが、使うタイミングがなかった。
 衣食住が無料なので困ることがないからだ。
 残りは家に送金している。

 まずはミリシアが行きたかったお店で苺スイーツを食べていた。
 その間、俺は『生き残りの魔女』『プラタ』のことを考えていた。

 昨晩、彼女は秘密の棟に入ろうとしていた。
 だが偶然現れた兵士に気づき、そのまま闇夜に消えていった。

 普通ならすぐに伝えるべきだとわかっている。
 けれども俺はそうしなかった。

 理由は二つ。

 一つ目は、闇夜だったので確信がないからだ。確かにプラタだと思うが、随分と暗かった。
 二つは、彼女がそんなことをする理由が知りたかったから。
 噂だけ知っていたらわからないが、実際の彼女はいい子だからだ。

 食べ終わった後はルージュが行きたかった場所に移動した。

「ほらクライン見てみろよ。この武器、すげえだろ!? トリニア国の槍なんだぜ」
「ルージュってこういうの好きだったんだ」
「くぅ! いいよなぁ戦士になりてえよお」

 興奮するルージュの横で、ミリシアは静かに魔法の杖を見ていた。
 俺は、気になっていたことを尋ねる。

「そういえば魔法使いは杖を持っている人が多いのに、結界師では見ないよね」
「魔結界は魔力が少なくてもいいからじゃないかな。杖があったら、その分、取り回しに苦労するし」
 
 思えばまともに武器も使用したことがない。
 今後そういった訓練も増えるらしいが。

 そのとき、見慣れた小さな茶色髪が店員さんとおしゃべりしていることに気づいた。
 エウリだ。

 見たところひとりだったので、声をかける。

「エウリ、何してるの?」
「……こんにちは。杖の調節です」
「へえ、そういうのも必要なんだね」
「はい、自分でも手入れしていますが、専門家のほうが確かなので」

 そんな話をしていると、ミリシアが入ってくる。

「エウリさん、こんにちは。まともに会話するのは初めてかもしれないですね」
「……はい、こんにちは。ミリシアさんのことは、よく知っています。――リリのことも」
「え、そうなの!? だって。リリ、良かったね」
「ピルルル!?」
「……羨ましいです」

 エウリは魔法使いだが、支援に特化した後衛だ。
 魔法をガンガン撃つタイプじゃないので、ミリシアと話が合うらしく盛り上がっていた。

 ルージュは店主から剣について話し始めていたので、退屈になった俺は隣の魔導書店に移動した。
 この世界の魔法は、俺が知っている創作物とは少し違う。

 一つの魔法を覚えるのが時間がかかるらしいし、色んな魔法を覚えるのは効率が悪いらしい。
 エウリが支援に特化しているのもその関係だろう。

 俺も必死に頑張れば習得できるらしいが、魔結界を極めたほうが無駄がなく良いという。
 それでも、ルージュの魔滅みたいな攻撃は憧れでもある。

 店内は思っていたよりも広かった。まるで本屋さんみたいだ。
 生活魔法、攻撃魔法、防御魔法と並んでいる。
 適当に一つ手に取って中を開けてみたが、よくわからない文字の羅列と魔法陣が描かれている。

 習得方法はとにかく記憶、イメージらしい。

 発動は人それぞれで、魔法陣を実際に描いたり、言霊に変換して発動したりと応用が利く。
 ただどれも構造をキチンと理解しないといけないらしく、生活魔法ですら才能が重視されるとか。

 そのとき、立ち読みしている女の子を見つけた。
 白髪で、横顔だけでも凄く綺麗だ。

 って――。

「プラタ?」
「ん? え、あ、ク、クライン君!?」

 そのとき、魔法本がパァアッと光る。
 プラタはバンっと強く閉じたが、このエフェクトは習得したときに発動すると聞いたことがある。
 一つの魔法の習得するには凄く時間かかるはずだが、それを立ち読みで!?

「……見た?」
「見た」
「えへ、えへへ――」

 ニコニコと笑いながらハァとため息をはいてレジへ向かう。
 どうやらタダ読みならぬタダ習得はしないらしい。


「ありがとうございましたー」

 プラタが魔法本を購入して店を出る。
 その後、お小遣いは入っているであろう財布の中を数えていた。
 結構高かったらしい。

「うう……」
「凄いね。見ただけ習得できるなんて」
「え? ああ、でもたまたまだよ!? 何かイメージが強くわかるときがあって、その時に覚えちゃう。別にお金を払わずに習得しようと思ってたわけじゃないよ!?」
「わかってるよ。それが出来たら商売も成り立ってないだろうしね」

 昨日のことを聞こうとしたが、屈託のない笑みを浮かべるプラタを見ていると、やはり見間違いに思えた。
 事実、彼女は皆にも優しく接している。

 こんなプラタが、そんな悪いことをするだろうか。

「クラインは、どうしてそんなに強くなりたいの?」
「え? と、突然だね」
「私、あなたに会うまでほとんど負けたことなかったのよ。だから、気になって」

 プラタは全体で二位だった。実際、彼女はかなり強い。
 俺はある意味でズルみたいなものだ。幼い頃から意識があったのだから。

「……幸せになりたい、からかな?」
「幸せに? ……今は幸せじゃないの?」
「うーん、そういわれると幸せだよ。でも、安定してるとは思わない。確かな安心がほしいからかも」
「ふうん。その結果、そこまで強くなれるんだ。うふふ、いいね」
「プラタは? どうして王宮魔法使いの候補生に?」
「うーん、クライン君と同じかな。でも私は今が幸せじゃないよ。そこは違うかも」
「え?」

 そのとき、プラタが仲間に呼ばれる。
 はーいと返事して去ろうとする前、本を投げてきた。

「わわっ」
「あげーるー! 私はもう覚えたし。それじゃあね」

 プラタは小走りで去っていく。
 何気なく本を眺めると、そのタイトルに驚いた。

 そのタイミングで、ルージュとミリシアと合流する。

「ん、クラインなんか買ったのか? ん? 生活魔法の魔導書? しかもなんだこりゃ? 『鍵開けの魔法』?」
「……ああ、ちょっと実家で建付けの悪いドアがあってね」

 ……まさか、いや、でも。

「次のお店に行きましょ。ほらクラインっ」

 そういって、ミリシアが俺の腕を掴んだ。
 どうやらご機嫌らしい。

「お、おいお前ら待てよ!」

 別棟には鍵が何重にも掛けられているはず。
 ただの偶然とは思えない。

 ……少し、調べてみるか。
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