やがて最強になる結界師、規格外の魔印を持って生まれたので無双します

菊池 快晴

文字の大きさ
上 下
20 / 39

第20話 最初のテスト

しおりを挟む
 城の中に入ったあとは、驚いた事に丁寧な客人扱いをされた。
 大人の兵士たちはみんな優しくて、つい委縮してしまう。

 ミリシアは別の棟で、俺とルージュは同じ部屋になった。
 独立したベットが二つ。窓からは王都の街並みが一望できる。

 既に小物や戸棚が置いてあるところからすると、先住の人がいたのだろう。

「なんか拍子抜けだな。めちゃめちゃ厳しいって話だったのに」
「どうだろう。でもこういうときって、鬼教官みたいな人いるよね」
「はは、確かに。あれだろ、仁王立ちのスパルタ女性みたいな」
「そうそう」

 創作物を思い返しながら、どこの世界でも同じなんだなと考えつつ集合場所へ急いで向かう。

 するとそこには、仁王立ちの女性が立っていた。
 既にミリシアがいるが、おそろしいほど姿勢を正している。
 背骨まっすぐすぎないか?

 嫌な予感がする。ルージュと目を合わせた後、並走していたら――。

「お前ら、早く来い」

 静かだが、ドスの利いたような、けれども綺麗な声でその女性が言った。
 近づけばその人が恐ろしく美人だということがわかった。

 王都の制服を着ているが、ありえないほど気崩している。
 胸が大きくてつい見てしまいそうになるが、本能で殺されるぞと信号を発した。

「揃ったな」

 そのとき、突然にそう言った。
 え、まだ3人しか――。

「あ、あの」
「なんだ?」

 するとミリシアが手を挙げた。

「私たち、だけですか?」
「ああ私が担当・・するのはな」

 なるほど、そいうことか。
 さすがにこの人数だけとは思わなかったが、それだと理解できる。

「私の名前はココア・アリツィ。名前でいじったら殺す。呼び捨てしても殺す。わかったか?」

 誰も返事はできなかった。
 空気で、悟ってもらうしかなかった。

「わかったみたいだな。ここは第一、ココア班だ、第10まである」
 
 ということは、単純計算で30人が候補生ということか。
 一体、何人が選ばれるのだろうか。

 しかしまるで軍隊だ。
 まさかこんなことになるとは思わなかった。

「姿勢」

 突然に言われて、俺たち3人はふたたびピシッと姿勢を正す。

「お前たちは宮廷魔法結界師、魔法使い、索敵師――の候補生だ。これから約一年間生活を共にし、試験を重ね、そして合格したものだけが名前を名乗ることができる。だが重要なことを先に伝えておく。――全員が仲良く合格することはできない」

 その言葉に、ルージュがおそるおそる手をあげた。どういうことですか? と。
 俺も、まさかと心の中で声をあげた。

「言葉通りだ。3人のうち合格できるのは1人しかいない」

 つまり俺たちの中の二人が不合格になるということだ。
 そんなの……。

「……ほかの班も同じということですか?」
「その通りだ」

 10人しか合格できないということになる。
 こんなことなら、同じ班じゃないほうがよかった……。

「今10人か、と思っただろう。そんなことはありえない。半数も残ればいいほうだからだ」

 更なる衝撃だった。
 甘く見ていたわけじゃない。
 
 けど、想像以上に過酷だ。

 横を向けばミリシアとルージュの表情を見る事ができる。
 だが見ることが出来なかった。

 どんな表情をしているのか、知りたくなかったからだ。

「今日は説明のみ。――だったが、気が変わった。今から訓練を行う。異論は?」

 明らかに言える雰囲気ではない。
 だが願ったりかなったりだ。

 冷静に考えてみると、優秀さを見せつければいいだけだ。

 俺たちは試験を一位で合格した。
 魔印だって、五本ある。ルージュだって、ミリシアだって凄い。

 そしてココア――先生は、少しだけ俺たちと距離を取った。
 俺たちを見据えて、一言。

「3体1、どんな攻撃を使ってもいい。私をに全力で攻撃しろ。殺しても構わない。手加減してもいいが、どうせ無駄だとすぐわかる」

 その言葉に、心の底からふつふつと何かが湧いてくる。
 理不尽とまではいわないが、聞かされてなかった情報ばかりだからだ。

 そこでようやく、俺はルージュとミリシアの顔を見た。

 ――同じだ。

 絶対、後悔させてやる。

「何してる? おじけづいたのなら、すぐにここから出ていけ――」

「――『魔結界』」

 俺は、人差し指と中指を立てた。
 
 この世界に来てから誓ったのだ。

 誰にも屈しないと。

 俺は――その言葉を、忘れてない。

「ココア先生、後悔しないでくださいよ。――『魔滅』」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

処理中です...