16 / 39
第16話 信頼できる仲間
しおりを挟む
「凄いな……クラインという子は一体どんな訓練を積んできたんだ?」
「ありえない。魔結界と魔滅の速度が尋常じゃないぞ」
「それもそうだが、魔獣、おもちと言ったか? 意思疎通レベルが……既に上門レベルだ」
門の外では、大勢の貴族たちがおそれに似た困惑した表情を浮かべていた。
その視線は、最後にメアリーとリルドに向けられる。
メアリーは試練のモンスターに怯えていた。
だが一方で、リルドは笑っていた。
嬉しそうに、それでいて楽し気に。
無邪気な子供のようだった。
「はっ、クライン。――さすがは、俺の息子だな」
◇
「ぐるぅ!」
おもちが炎を吐いて、魔物の動きを止める。
それだけで倒せることもあるが、そうでなかったモンスターは、俺が魔結界で囲み、魔滅で止めを刺す。
まともに戦ったことはなかったが、どうやら俺は強いらしい。
流れ作業とまではいわないが、面白いように倒すことができる。
――これが、俺の力。
無力だった自分、歯がゆい身体、ただ捻じ伏せられることに慣れていた自分。
そのすべてを覆しているような、何とも言えない高揚感。
いや、違う。
嬉しいんだ。
自分が、強くなっていることに。
「よし、先へ進もう! ……あれ? ミリシア? ルージュ」
後ろを振り返ると、なんだかすごく引いている二人がいた。
「強すぎるよクライン」
「ああ、ヤバすぎるぜお前。周りも見てみろよ」
ん? と思い、周囲を見てみると、貴族たちがマジでドン引きしていた。
え、なんかヤバいことした?
……そんなにやりすぎたのか?
「で、でも! 本気でやれって!」
「ぐるぅ」
おもちは俺に頬をすりすり。
うーん、戦うのって難しい。
「ちょっと驚いたけど、でも、凄いよ本当に。私と訓練してた時も思ったけど、更に強くなってない?」
「そうかな? フェアの特訓のおかげかも」
「にしてもやべえぜ。俺は魔結界使えないが、あれがどれほどの魔力を使ってるかはわかる」
そのとき、後ろから魔物の声がした。空を飛んでいる鳥のようだ。
ルージュが、人差し指を立てる。
「任せてくれ」
その後、水平線に向けた。まるで、銃を撃つような――。
「――魔滅」
次の瞬間、魔力の弾丸みたいなものが飛んでいく。
それは魔物にぶち当たると、空の鳥が落ちていく。
「ふう」
「ルージュの魔滅って変わってるね」
「あぁ、まあちょっと違うらしいな」
魔滅は基本的に魔結界の中に囲んだ相手を倒す。
けれどもルージュは飛ばす。
外すこともあるらしいが、その分数が打てるらしい。
魔結界を使えない分、手数を増やすことを考えたとか。
ミリシアは正確無比な魔結界を使えるし、いくら戦うことに俺が特化してるとはいえ、特別秀でているわけじゃない。
ちゃんと自分の立ち位置をわかった上で、驕らないようにしよう。
「……何してるんだろ? あの子たち」
「クラインが進むのを待ってるのよ。――ちょっとズルいね」
「俺が言ってこようか?」
後ろでは、子供たちが待っていた。
正確には、俺が進むのを待っている。
分かれ道で離れた人たちもいるが、同じ道を選んだ子供たちは、俺を先頭にしたがっている。
とはいえ、おもちが強いので当たり前だろう。
「いや、いいよ。でも、父さんは言ってたよ。結局どこかではぐれるって」
「私も聞いた。気を付けないとね」
「何かあったら俺を一番に見捨ててくれ。お前らは、仲いいだろ」
その言葉を聞いて、俺は気づけばルージュの頭をなでていた。
よく考えたら子供だ。
こんな小さな子供が、俺に気を使ってくれている。
――可愛い。
「な、なにすんだよぉクライン!?」
「はは、ルージュって意外にいい奴じゃん」
「な!? 俺はインバート家の――」
「だね。クライン、次は私が前に行くよ。――守られてばっかりは嫌だから」
「ああ」
「お、俺も前にいくって! 待てよ!」
ああ、なんか、いいな。
――誰かと信頼し合えるって、凄くいい。
「ありえない。魔結界と魔滅の速度が尋常じゃないぞ」
「それもそうだが、魔獣、おもちと言ったか? 意思疎通レベルが……既に上門レベルだ」
門の外では、大勢の貴族たちがおそれに似た困惑した表情を浮かべていた。
その視線は、最後にメアリーとリルドに向けられる。
メアリーは試練のモンスターに怯えていた。
だが一方で、リルドは笑っていた。
嬉しそうに、それでいて楽し気に。
無邪気な子供のようだった。
「はっ、クライン。――さすがは、俺の息子だな」
◇
「ぐるぅ!」
おもちが炎を吐いて、魔物の動きを止める。
それだけで倒せることもあるが、そうでなかったモンスターは、俺が魔結界で囲み、魔滅で止めを刺す。
まともに戦ったことはなかったが、どうやら俺は強いらしい。
流れ作業とまではいわないが、面白いように倒すことができる。
――これが、俺の力。
無力だった自分、歯がゆい身体、ただ捻じ伏せられることに慣れていた自分。
そのすべてを覆しているような、何とも言えない高揚感。
いや、違う。
嬉しいんだ。
自分が、強くなっていることに。
「よし、先へ進もう! ……あれ? ミリシア? ルージュ」
後ろを振り返ると、なんだかすごく引いている二人がいた。
「強すぎるよクライン」
「ああ、ヤバすぎるぜお前。周りも見てみろよ」
ん? と思い、周囲を見てみると、貴族たちがマジでドン引きしていた。
え、なんかヤバいことした?
……そんなにやりすぎたのか?
「で、でも! 本気でやれって!」
「ぐるぅ」
おもちは俺に頬をすりすり。
うーん、戦うのって難しい。
「ちょっと驚いたけど、でも、凄いよ本当に。私と訓練してた時も思ったけど、更に強くなってない?」
「そうかな? フェアの特訓のおかげかも」
「にしてもやべえぜ。俺は魔結界使えないが、あれがどれほどの魔力を使ってるかはわかる」
そのとき、後ろから魔物の声がした。空を飛んでいる鳥のようだ。
ルージュが、人差し指を立てる。
「任せてくれ」
その後、水平線に向けた。まるで、銃を撃つような――。
「――魔滅」
次の瞬間、魔力の弾丸みたいなものが飛んでいく。
それは魔物にぶち当たると、空の鳥が落ちていく。
「ふう」
「ルージュの魔滅って変わってるね」
「あぁ、まあちょっと違うらしいな」
魔滅は基本的に魔結界の中に囲んだ相手を倒す。
けれどもルージュは飛ばす。
外すこともあるらしいが、その分数が打てるらしい。
魔結界を使えない分、手数を増やすことを考えたとか。
ミリシアは正確無比な魔結界を使えるし、いくら戦うことに俺が特化してるとはいえ、特別秀でているわけじゃない。
ちゃんと自分の立ち位置をわかった上で、驕らないようにしよう。
「……何してるんだろ? あの子たち」
「クラインが進むのを待ってるのよ。――ちょっとズルいね」
「俺が言ってこようか?」
後ろでは、子供たちが待っていた。
正確には、俺が進むのを待っている。
分かれ道で離れた人たちもいるが、同じ道を選んだ子供たちは、俺を先頭にしたがっている。
とはいえ、おもちが強いので当たり前だろう。
「いや、いいよ。でも、父さんは言ってたよ。結局どこかではぐれるって」
「私も聞いた。気を付けないとね」
「何かあったら俺を一番に見捨ててくれ。お前らは、仲いいだろ」
その言葉を聞いて、俺は気づけばルージュの頭をなでていた。
よく考えたら子供だ。
こんな小さな子供が、俺に気を使ってくれている。
――可愛い。
「な、なにすんだよぉクライン!?」
「はは、ルージュって意外にいい奴じゃん」
「な!? 俺はインバート家の――」
「だね。クライン、次は私が前に行くよ。――守られてばっかりは嫌だから」
「ああ」
「お、俺も前にいくって! 待てよ!」
ああ、なんか、いいな。
――誰かと信頼し合えるって、凄くいい。
5
お気に入りに追加
1,023
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。
ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。
高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。
そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。
そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。
弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。
※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。
※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。
Hotランキング 1位
ファンタジーランキング 1位
人気ランキング 2位
100000Pt達成!!
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる