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第7話 あいつ、ムカつく。
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「さっきの子、気に入ったのか?」
「……かわいいこだった」
「そうだな、うん、クライン、お前は女性を見る目があるぞ」
なぜか褒められてしまう。しかし祝福の義が迫ってきているとわかったので、心臓が鼓動してきた。
何をされるのだろうか。あの四肢が引き裂くような痛み、それが祝福の義ではないことを祈ろう。
すると後ろから父上が声を掛けられた。
振り返ると、ミリシアと同じくらいの年齢の男の子とその父上らしき人がいた。
だがその表情は、俺が良く知っている顔だ。
前世での義理の父と弟の、人を嫌っているときの――。
「おやおや、田舎貴族がこんなところまで遠路はるばる来たのか」
「ビアリス伯爵、お久しぶりです」
嫌味ったらしい言い方だ。父上の表情からも見て取れるが、あまり仲良くないらしい。
その子供も、俺を睨みつけている。
「ご子息か? 随分と小さいようだが大丈夫かね」
「ええ、クラインは私をしのぐほど優秀で困っていますからね」
「ほう、たかだか魔結界が使える程度のロイク卿より優秀とは知れているだろうに」
「どうでしょうかね」
嫌な奴はすぐわかる。
なぜこんな言い方をするのだろう。
「ねえパパ、あいつの魔力大したことないよ」
「はは、ルージュよ、お前よりすごい子なんていないよ」
なるほど、父が父なら息子もということか。
「それではお先に失礼するよ。また後でビアリス殿」
「ああそうだな、誰よりも早く終わらせて帰っていたほうがいいんじゃないか、そのほうが王都に泊まらずに済む。お金も助かるだろう」
がははと叫んでいるが、父上は振りむかず前を歩きはじめた。
本当に腹が立つやつだ。一体何様だ?
「父、あいつむかつく」
「はは、あまりそんなことを言うな。――だが、私もだ」
ニッコリと微笑み返してくれると、俺の頭を撫でた。
何でも肯定してくれるし、否定もしない。なんて素晴らしい父上だ。
俺は父上の為にも、祝福の義を頑張りたい。
と、思っていたが、俺はすぐにその気持ちが覆されるぐらい心臓が高鳴りはじめた。
なぜなら、視線の先には視たこともないほど大きな神殿が見えてきた。
巨大は柱がいくつもたっており、上部には天使と悪魔のような銅像が立ち並んでいる。
更に驚いたのは、俺と同じような子供たちが、次々と入っていく。
なんと、小さいが兎のような魔獣らしきを肩に乗せている子供だっている。
俺は――特別じゃないのかもしれない、と。
「心配するなクライン、お前は誰よりも素晴らしい」
「……うん」
「ぐるぅ」
だがつないだ手のぬくもり、ドシッとした低い声、そして肩に乗っているおもちが、心配ないよと教えてくれた気がした。
「……かわいいこだった」
「そうだな、うん、クライン、お前は女性を見る目があるぞ」
なぜか褒められてしまう。しかし祝福の義が迫ってきているとわかったので、心臓が鼓動してきた。
何をされるのだろうか。あの四肢が引き裂くような痛み、それが祝福の義ではないことを祈ろう。
すると後ろから父上が声を掛けられた。
振り返ると、ミリシアと同じくらいの年齢の男の子とその父上らしき人がいた。
だがその表情は、俺が良く知っている顔だ。
前世での義理の父と弟の、人を嫌っているときの――。
「おやおや、田舎貴族がこんなところまで遠路はるばる来たのか」
「ビアリス伯爵、お久しぶりです」
嫌味ったらしい言い方だ。父上の表情からも見て取れるが、あまり仲良くないらしい。
その子供も、俺を睨みつけている。
「ご子息か? 随分と小さいようだが大丈夫かね」
「ええ、クラインは私をしのぐほど優秀で困っていますからね」
「ほう、たかだか魔結界が使える程度のロイク卿より優秀とは知れているだろうに」
「どうでしょうかね」
嫌な奴はすぐわかる。
なぜこんな言い方をするのだろう。
「ねえパパ、あいつの魔力大したことないよ」
「はは、ルージュよ、お前よりすごい子なんていないよ」
なるほど、父が父なら息子もということか。
「それではお先に失礼するよ。また後でビアリス殿」
「ああそうだな、誰よりも早く終わらせて帰っていたほうがいいんじゃないか、そのほうが王都に泊まらずに済む。お金も助かるだろう」
がははと叫んでいるが、父上は振りむかず前を歩きはじめた。
本当に腹が立つやつだ。一体何様だ?
「父、あいつむかつく」
「はは、あまりそんなことを言うな。――だが、私もだ」
ニッコリと微笑み返してくれると、俺の頭を撫でた。
何でも肯定してくれるし、否定もしない。なんて素晴らしい父上だ。
俺は父上の為にも、祝福の義を頑張りたい。
と、思っていたが、俺はすぐにその気持ちが覆されるぐらい心臓が高鳴りはじめた。
なぜなら、視線の先には視たこともないほど大きな神殿が見えてきた。
巨大は柱がいくつもたっており、上部には天使と悪魔のような銅像が立ち並んでいる。
更に驚いたのは、俺と同じような子供たちが、次々と入っていく。
なんと、小さいが兎のような魔獣らしきを肩に乗せている子供だっている。
俺は――特別じゃないのかもしれない、と。
「心配するなクライン、お前は誰よりも素晴らしい」
「……うん」
「ぐるぅ」
だがつないだ手のぬくもり、ドシッとした低い声、そして肩に乗っているおもちが、心配ないよと教えてくれた気がした。
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