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第4話 初めてのどりょく
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俺がここにきてから一年――そう、俺は一歳になった。
ハイハイすらできなかったが、今では気合を入れると2足歩行で歩けるようになっている。
成長と共にメアリーミルクが飲めなくなったのは残念だが、フルーツのような少し噛み応えのある食事はとても美味しい。
魔印は、俺の目からはハッキリと視えるようになっていた。
ぐるぐると渦巻いているが、タトゥーみたいでちょっとおそろしい。
「ぐるぐるぅ」
「おもちっもちっ」
目がハッキリしてきたことで、おもちの姿もより濃く見える。
両翼にほどよく硬い鱗、肉球は健在だが、これはもう間違いないだろう。
おもちは猫ではなく、ドラゴンだ。
おそらくおもちも生まれ変わった。俺と同じタイミングなのはびっくりだが、これも運命と言わざるを得ない。
そして俺の流れている、指先をも圧迫するナニカが、魔力だということもわかった。
最初は耳を疑ったが、何度も両親たちの口から魔力や魔法という言葉が飛び交うので聞き間違いではない。
そしてこの痛み、魔印のことだが、どうやら実際に死ぬ可能性があるみたいだった。
聞けば隣街の子供が亡くなったらしい。
それを聞いて、俺は怖くて泣き叫んでしまった。
死にたくない、あの炎に包まれたときを思い出したのだ。
だからこそ今は、必死に戦っている。
そして俺が頑張りたい理由の一つに、父親リルドも関係していた。
「魔物はどうなの? 侵入経路はわかった?」
「ああ、一つ一つ潰してはいるが、おそらく数十年前の魔結界が弱まっているらしい。全てを張り替えるのに時間がかかる。そもそも従者が足りない」
「そう……無理しないでね。あなたにもしものことがあったら――!」
「大丈夫だ。領主様に連絡もしている。援軍を寄越してくれるだろう。――それにクライン、お前の活躍を楽しみにしているぞ」
リルドはおそらく辺境貴族で、魔結界? という何かの力で危険な魔物を閉じ込めているらしい。
正直、創作物の言葉が飛び交っているのは恐ろしくもあったが、それよりもリルドの力になりたいと思った。
二人は困っている。俺の魔印とやらが少しでも力になるのなら手助けがしたい。
そんなことを考えるようになっていた。
◇
それからまた時が立った。
「おもち、とってこいっ」
「ぐるぅ!」
木の棒を投げると、おもちは両翼をはためかせて取りに行く。
見事空中でキャッチ、旋回しながら俺の元に戻ってくる。
「おっきくなったねおもち」
「ぐる?」
おもちも俺と同じく成長している。
以前の姿とは大きく違う。だが関係性は何も変わらない。
リルド曰く、この世界は美しくも危険で溢れている。
俺たちはもう誰にも屈しない。
自分も、周りも守れる男になるんだ。
「ね、おもち」
「ぐる!」
おもちは、前世の時と同じように頭を擦りつけてきた。
安心する。心がポカポカする。
「あら、また遊んでるのね」
「うん!」
メアリーは相変わらず優しい。リルドはやはり忙しいのであまり帰ってこないが、帰宅するといつも真っ先に俺の元へやって来てくれる。
四肢を引き裂くような痛みは相変わらずだ。だがもう痛みを口に出す必要はないくらいに慣れていた。
毎日拷問を受けていたようなものだ。
そして魔印の意味がようやくわかった。
それは、能力《スキル》だ。
魔印、いわゆる指の箇所によって一つ使えるらしい。
人差し指の場合、魔結界が扱えるらしく、リルドの指にも刻まれている。
魔物はこの世界各地に存在し、父はその能力を使って領民を守っているそうだ。
おもちは魔獣とのことだが、これは俺の手の甲の印が関係しているらしい。
よくわからないが、いつも紋章が浮かび上がっている。
どうやれこがおもちとの契約の証? というもの。
他の指に魔印が出現していることはまだ話していない。
一つだけでも凄く騒がれている。まだあるといったら、なんだか大変なことになりそうだからだ。
それにメアリーは一本でもいいと言っていた。急いで伝える必要はない。
「それじゃあクライン、ちょっとお庭に出てくるから、おもちと仲良くしててね」
「うん!」
メアリーはよくお庭に出る。窓からのぞくと綺麗な色とりどりの花があり、いつも愛でている。
俺が少し大きくなったことで余裕もできているみたいで、ちょっと嬉しかった。
そして俺とおもちは、窓からメアリーが外に出たことを確認して、二人で顔を見合わせた。
「やるぞ、おもち」
「ぐるぅ!」
秘密の特訓開始だ。
「魔結界!」
人差し指を立てながら頭に描いたイメージでおもちを捕まえようとする。
空中にジジジジと小さな音が響き、四角い透明な箱のようなものが現れた。
これは一度だけだが、父から見せてもらったものだ。
見様見真似でやってみたところ、なんと一発で出来てしまった。
おそらくだが、これを使って魔物を閉じ込めたり、壁を作ってるのではなかろうか。
「ぐるぅ!」
「おしい……」
俺たちは遊びながら練習をしている。
おもちは俺の魔結界を必死でよける。俺はおもちを捕まえようとする。
魔力が尽きて囲えなければ俺の負け、逆にそれまでに捕まえれば俺の勝ちだ。
それと――。
「やった、捕まえた!」
「ぐるぅ……――ぐぅ!」
おもちを捕まえたはずが、力業で抜けられることもある。
ズルい……。
けどこれはかなり重要なことなんじゃないかなと思う。
たとえ成功しても抜け出されたら意味がない。
――強度、それも両立させるべきだ。
父はいつも仕事が大変だと言っていた。
ならば今から努力しておけば、力になれるかもしれない。
それに二人を驚かせたいという気持ちもあった。
更に毎日の訓練のおかげで、強くなっていっているのもわかった。
そしてなにより楽しい。
俺は、俺たちは、もっともっと強くなれるはずだ。
ハイハイすらできなかったが、今では気合を入れると2足歩行で歩けるようになっている。
成長と共にメアリーミルクが飲めなくなったのは残念だが、フルーツのような少し噛み応えのある食事はとても美味しい。
魔印は、俺の目からはハッキリと視えるようになっていた。
ぐるぐると渦巻いているが、タトゥーみたいでちょっとおそろしい。
「ぐるぐるぅ」
「おもちっもちっ」
目がハッキリしてきたことで、おもちの姿もより濃く見える。
両翼にほどよく硬い鱗、肉球は健在だが、これはもう間違いないだろう。
おもちは猫ではなく、ドラゴンだ。
おそらくおもちも生まれ変わった。俺と同じタイミングなのはびっくりだが、これも運命と言わざるを得ない。
そして俺の流れている、指先をも圧迫するナニカが、魔力だということもわかった。
最初は耳を疑ったが、何度も両親たちの口から魔力や魔法という言葉が飛び交うので聞き間違いではない。
そしてこの痛み、魔印のことだが、どうやら実際に死ぬ可能性があるみたいだった。
聞けば隣街の子供が亡くなったらしい。
それを聞いて、俺は怖くて泣き叫んでしまった。
死にたくない、あの炎に包まれたときを思い出したのだ。
だからこそ今は、必死に戦っている。
そして俺が頑張りたい理由の一つに、父親リルドも関係していた。
「魔物はどうなの? 侵入経路はわかった?」
「ああ、一つ一つ潰してはいるが、おそらく数十年前の魔結界が弱まっているらしい。全てを張り替えるのに時間がかかる。そもそも従者が足りない」
「そう……無理しないでね。あなたにもしものことがあったら――!」
「大丈夫だ。領主様に連絡もしている。援軍を寄越してくれるだろう。――それにクライン、お前の活躍を楽しみにしているぞ」
リルドはおそらく辺境貴族で、魔結界? という何かの力で危険な魔物を閉じ込めているらしい。
正直、創作物の言葉が飛び交っているのは恐ろしくもあったが、それよりもリルドの力になりたいと思った。
二人は困っている。俺の魔印とやらが少しでも力になるのなら手助けがしたい。
そんなことを考えるようになっていた。
◇
それからまた時が立った。
「おもち、とってこいっ」
「ぐるぅ!」
木の棒を投げると、おもちは両翼をはためかせて取りに行く。
見事空中でキャッチ、旋回しながら俺の元に戻ってくる。
「おっきくなったねおもち」
「ぐる?」
おもちも俺と同じく成長している。
以前の姿とは大きく違う。だが関係性は何も変わらない。
リルド曰く、この世界は美しくも危険で溢れている。
俺たちはもう誰にも屈しない。
自分も、周りも守れる男になるんだ。
「ね、おもち」
「ぐる!」
おもちは、前世の時と同じように頭を擦りつけてきた。
安心する。心がポカポカする。
「あら、また遊んでるのね」
「うん!」
メアリーは相変わらず優しい。リルドはやはり忙しいのであまり帰ってこないが、帰宅するといつも真っ先に俺の元へやって来てくれる。
四肢を引き裂くような痛みは相変わらずだ。だがもう痛みを口に出す必要はないくらいに慣れていた。
毎日拷問を受けていたようなものだ。
そして魔印の意味がようやくわかった。
それは、能力《スキル》だ。
魔印、いわゆる指の箇所によって一つ使えるらしい。
人差し指の場合、魔結界が扱えるらしく、リルドの指にも刻まれている。
魔物はこの世界各地に存在し、父はその能力を使って領民を守っているそうだ。
おもちは魔獣とのことだが、これは俺の手の甲の印が関係しているらしい。
よくわからないが、いつも紋章が浮かび上がっている。
どうやれこがおもちとの契約の証? というもの。
他の指に魔印が出現していることはまだ話していない。
一つだけでも凄く騒がれている。まだあるといったら、なんだか大変なことになりそうだからだ。
それにメアリーは一本でもいいと言っていた。急いで伝える必要はない。
「それじゃあクライン、ちょっとお庭に出てくるから、おもちと仲良くしててね」
「うん!」
メアリーはよくお庭に出る。窓からのぞくと綺麗な色とりどりの花があり、いつも愛でている。
俺が少し大きくなったことで余裕もできているみたいで、ちょっと嬉しかった。
そして俺とおもちは、窓からメアリーが外に出たことを確認して、二人で顔を見合わせた。
「やるぞ、おもち」
「ぐるぅ!」
秘密の特訓開始だ。
「魔結界!」
人差し指を立てながら頭に描いたイメージでおもちを捕まえようとする。
空中にジジジジと小さな音が響き、四角い透明な箱のようなものが現れた。
これは一度だけだが、父から見せてもらったものだ。
見様見真似でやってみたところ、なんと一発で出来てしまった。
おそらくだが、これを使って魔物を閉じ込めたり、壁を作ってるのではなかろうか。
「ぐるぅ!」
「おしい……」
俺たちは遊びながら練習をしている。
おもちは俺の魔結界を必死でよける。俺はおもちを捕まえようとする。
魔力が尽きて囲えなければ俺の負け、逆にそれまでに捕まえれば俺の勝ちだ。
それと――。
「やった、捕まえた!」
「ぐるぅ……――ぐぅ!」
おもちを捕まえたはずが、力業で抜けられることもある。
ズルい……。
けどこれはかなり重要なことなんじゃないかなと思う。
たとえ成功しても抜け出されたら意味がない。
――強度、それも両立させるべきだ。
父はいつも仕事が大変だと言っていた。
ならば今から努力しておけば、力になれるかもしれない。
それに二人を驚かせたいという気持ちもあった。
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