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クルムロフ城
第94話:壮大な計画
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「どういうことだよ!?」
アイレが胸ぐらを掴んでいた手を放して振り向く。フェアは静かに黙っていて、クリアがもう一度同じことを言い放つ。
アズライト、インザームはすぐに気が付いたようで、曇った表情をしていた。フェローは少しよろめきながら、ようやく立ち上がると、クリアから鞭を受け取ってすぐに動く準備をはじめた。
しかし、そこでレッグ、アイ、アームが、
「どこへ行くんだ?」
「ねぇ、シンドラのところ?」
「ふん」
と、フェローに声をかける。何か思い出したのか、そうではないのか、表情からは感じ取れないがさっきの魔族と人間のハーフという言葉で、明らかに表情が変化している。
「お前ら、知ってるのか?」
フェローが問いかける、それに対してレッグが、
「いや、わからない……。そもそも僕たちはシンドラのために動いていたというよりは、カルムの命令で突き動いていた。それにあいつが死んだことで、何か糸が切れたように感じる。――アームはないのか?」
レッグがアームに顔を向ける。
「俺? うーん……。そういえば、なんだろうな? 戦ってる最中に少し思ったぐらいか」
わからないと、とぼけ顔を見せる。アイが、
「こいつはバカだから、そもそも忠誠心が薄いのよ」
「違いないな、そういえばフェローもいつもアームのことを馬鹿にしてい……」
何かを思い出したかのように、レッグが、
「僕……今何か……言った?」
「お前……思い出したのか?」
驚くフェローに、アイが、
「私も……少しずつ思い出してきたかも……。フェロー……。あなた……」
ここでアイの言葉を遮るように、ここでアイレが口を開いた。
「すまねえ、驚いで声が出なかった。話はあとにしたい、どこにいるのかわかるのか?」
ふたたび、フェアとクリアに顔を向ける、ようやくフェアが、
「もちろんよ、ごめんなさい。私も驚きすぎて……でも、絶対に手段はあるはずだわ、急ぎましょう」
頭をぶんぶんと振って、気合を入れる。
「場所は……地下? ええと、わからないけど、この下の下からずーっと下。何を言ってるか私もわからないけど……そこから魔力が溢れ出ています」
するとそのクリアの発言に、訝《いぶか》しげにインザームが口を挟む。
「ワシらは地下からきたんじゃぞ、そんな魔力も感じなかったんじゃが……。それに道もなかったはずだ」
それに対し、ヴェルネルが、
「いや……。何かの能力なら道を隠すことができるかもしれない」
インザームに答える。そして、
「ヴェルネル……すまなかったな」
アイレが謝る。疑って申し訳ないといった表情で、下を向く。
「僕の今までしてきた行いを考えれば当然だ。でも、レムリを助けたいという気持ちはだれにも負けない」
そして全員で、急いで地下へ向かった。螺旋階段への道はすでに封鎖されていたため、どこかほかに地下はないかと尋ねたが、誰にもわからなかった。
全員で一緒に行動しつつ、手あたり次第地下への扉を探した。すると、何でもない壁に、フェアとクリアが反応した。
地下へ続く階段ではなく、細道の横のにある、ただの白い壁の前で、
「ここから、何か魔力の痕跡を感じます」
クリアがハッキリと断言する。続けて、
「おそらく、ここです!」
「私もここだと思う」
フェアも補足するかのように、何かを感じた。
「では……私が」
アズライトが前に立つ、続いて、アイレとヴェルネルも。
「俺も手伝う」
「僕もだ」
皆下がっていてくれ、と言い放ってから、剣を構える。レッグ、アイ、アームは静かに見守っている。
そして三人が同時に剣で切り付けると、壁がまるで魔力の壁だったかのようにはじけ飛ぶ。
「これは……」
インザームが驚いて声を漏らす。
「おそらく、魔法で作られた壁ですね。 こんな使い方があるのは初めて知りましたが、シンドラの仕業で間違いないでしょう」
アズライトが全員に答える。そして、
「皆さん、ここからは何が起きるかわかりません、レムリさんがシンドラさんに乗っ取られていた場合、覚悟しないといけないことがあるかもしれません、それは……
大丈夫でしょうか?」
最後まで言い切らずに、アズライトが全員に問いかける。――そして、アイレとヴェルネルに確かめるように視線を向けた。
「ああ……そのときは――」
「そのときは、僕がやる」
アイレの言葉を遮るように、ヴェルネルがハッキリとした鋭い口調で言い放つ。残り少ない魔力を感じさせないほど、オーラが感じられる気がした。
全員が唾を飲み込みながら、ゆっくりと、そして地下へ続く階段を下って行く。
これから先に何があるのか、どんな出来事が待ち構えているのか、それは誰にもわからない。そして、レッグ、アイ、アームは少しずつ記憶を取り戻していた。
過去の思い出、過去の記憶、段々と鮮明になっていった。声に出すことはなかったが、フェローの後ろ姿を見ながら、徐々にすべてを取り戻そうとしていた。
「フェロー……」
アイだけは何かを完全に思い出して囁いた。
それから全員は、地下へ続く階段を一時間ほど降っていた。まさかここまでかかるとは、誰にも思わなかった。いつ頃から作られた階段なのか、今の技術でここまで地下へもぐることができるのか、そういった思いをアイレは抱いていた。
そしてようやく、
「こんにちは、お久しぶりです。皆さん」
地下の階段が終わり、巨大な石の空洞広場の先に立っていたのは……。レムリだった。生前と変わらない様子で、魔法の杖は持っていないが、純白のドレスに身を包んでいる。まるでウェディングドレスを思わせるような、綺麗な装飾がされていて、そういえばこんな風なローブを着ていたこともあったなと、ヴェルネルが記憶を思い返す。
「レムリ……」
シンドラの姿は見えず、もしかして、とアイレが声を漏らす。シンドラではなく、本当のレムリがそこに立っている。つまり何もかも嘘で、実は……レムリは……。
しかし、
「騙されるな、あいつはシンドラだ」
ヴェルネルが、そんなアイレの気持ちを打ち砕くように剣を構えながら言った。ずっとシンドラと一緒に過ごしてきたからこそわかる言葉だった。
するとレムリは、シンドラは、どちらかわからないまま、大きな高笑いをはじめた。
「あらやだ、どうしてそんなすぐにバレたのかしら? さすが魔王様ですね、私の魂胆もすべて見抜いていたのかしら? でも、遅かったです」
嬉しそうに、レムリの姿で不敵な笑みを浮かべた。やはりシンドラはすでに体を乗っ取っており、それは揺るがない事実だということを証明した。
となれば、もう殺すしか……。レムリを殺すしかない。そうなれば、もう蘇らせることは出来ない。だけど……これは、間違いなくやらねばならない。
でなければ、この世界は間違いなく破滅してしまう。
「てめぇ、悪趣味がすぎるぜ」
フェローが肩を少し抑えながら、シンドラに向かって少し前に出る。
レッグ、アイ、アームが心配そうにそれを見守って、
「無茶すんなよ」
とアームが言った。完全に記憶を取り戻していた。レムリ、いやシンドラがそれに対して、
「あら、残念。あなたたちの愉快な戦いを見てみたかったのだけど、どうやら記憶を取り戻しているようね。旧友の対決というのも、楽しそうだったのに」
ふたたび不敵な笑みを浮かべて、高笑いをする。レムリの姿でそんなことをするシンドラに、誰もが憎悪を隠せなかった。
「何をしてるのかわかってるのか?」
ここでグレースが、ようやく口を開いた。先ほどからずっと沈黙を貫いていたが、レムリの姿。シンドラの姿を見て我慢が出来なくなった。
「何を……とは?」
そしてグレースは手をぎゅっと握りしめてから、
「ここにいる奴らは……ヴェルネルやアイレは……レムリが戻ってきてほしいとずっと願ってたんだ。それをお前は……最低なことをしている」
「何をそんな当たり前なことを?」
グレースの言葉に対して間もあげず、鋭く言い放つ。またもや大きな声で笑いながら、
「私はね、復讐がしたいのよ。この世界のゴミみたいな人間どもに、そのために、何十年、いや何百年の計画を立てたと思ってるの?」
そして、シンドラは今までの壮大な計画。すべての事を嬉しそうに語りはじめた、誰もがそれについて聞きながら、静かに、そして動くことが出来なかった。
アイレが胸ぐらを掴んでいた手を放して振り向く。フェアは静かに黙っていて、クリアがもう一度同じことを言い放つ。
アズライト、インザームはすぐに気が付いたようで、曇った表情をしていた。フェローは少しよろめきながら、ようやく立ち上がると、クリアから鞭を受け取ってすぐに動く準備をはじめた。
しかし、そこでレッグ、アイ、アームが、
「どこへ行くんだ?」
「ねぇ、シンドラのところ?」
「ふん」
と、フェローに声をかける。何か思い出したのか、そうではないのか、表情からは感じ取れないがさっきの魔族と人間のハーフという言葉で、明らかに表情が変化している。
「お前ら、知ってるのか?」
フェローが問いかける、それに対してレッグが、
「いや、わからない……。そもそも僕たちはシンドラのために動いていたというよりは、カルムの命令で突き動いていた。それにあいつが死んだことで、何か糸が切れたように感じる。――アームはないのか?」
レッグがアームに顔を向ける。
「俺? うーん……。そういえば、なんだろうな? 戦ってる最中に少し思ったぐらいか」
わからないと、とぼけ顔を見せる。アイが、
「こいつはバカだから、そもそも忠誠心が薄いのよ」
「違いないな、そういえばフェローもいつもアームのことを馬鹿にしてい……」
何かを思い出したかのように、レッグが、
「僕……今何か……言った?」
「お前……思い出したのか?」
驚くフェローに、アイが、
「私も……少しずつ思い出してきたかも……。フェロー……。あなた……」
ここでアイの言葉を遮るように、ここでアイレが口を開いた。
「すまねえ、驚いで声が出なかった。話はあとにしたい、どこにいるのかわかるのか?」
ふたたび、フェアとクリアに顔を向ける、ようやくフェアが、
「もちろんよ、ごめんなさい。私も驚きすぎて……でも、絶対に手段はあるはずだわ、急ぎましょう」
頭をぶんぶんと振って、気合を入れる。
「場所は……地下? ええと、わからないけど、この下の下からずーっと下。何を言ってるか私もわからないけど……そこから魔力が溢れ出ています」
するとそのクリアの発言に、訝《いぶか》しげにインザームが口を挟む。
「ワシらは地下からきたんじゃぞ、そんな魔力も感じなかったんじゃが……。それに道もなかったはずだ」
それに対し、ヴェルネルが、
「いや……。何かの能力なら道を隠すことができるかもしれない」
インザームに答える。そして、
「ヴェルネル……すまなかったな」
アイレが謝る。疑って申し訳ないといった表情で、下を向く。
「僕の今までしてきた行いを考えれば当然だ。でも、レムリを助けたいという気持ちはだれにも負けない」
そして全員で、急いで地下へ向かった。螺旋階段への道はすでに封鎖されていたため、どこかほかに地下はないかと尋ねたが、誰にもわからなかった。
全員で一緒に行動しつつ、手あたり次第地下への扉を探した。すると、何でもない壁に、フェアとクリアが反応した。
地下へ続く階段ではなく、細道の横のにある、ただの白い壁の前で、
「ここから、何か魔力の痕跡を感じます」
クリアがハッキリと断言する。続けて、
「おそらく、ここです!」
「私もここだと思う」
フェアも補足するかのように、何かを感じた。
「では……私が」
アズライトが前に立つ、続いて、アイレとヴェルネルも。
「俺も手伝う」
「僕もだ」
皆下がっていてくれ、と言い放ってから、剣を構える。レッグ、アイ、アームは静かに見守っている。
そして三人が同時に剣で切り付けると、壁がまるで魔力の壁だったかのようにはじけ飛ぶ。
「これは……」
インザームが驚いて声を漏らす。
「おそらく、魔法で作られた壁ですね。 こんな使い方があるのは初めて知りましたが、シンドラの仕業で間違いないでしょう」
アズライトが全員に答える。そして、
「皆さん、ここからは何が起きるかわかりません、レムリさんがシンドラさんに乗っ取られていた場合、覚悟しないといけないことがあるかもしれません、それは……
大丈夫でしょうか?」
最後まで言い切らずに、アズライトが全員に問いかける。――そして、アイレとヴェルネルに確かめるように視線を向けた。
「ああ……そのときは――」
「そのときは、僕がやる」
アイレの言葉を遮るように、ヴェルネルがハッキリとした鋭い口調で言い放つ。残り少ない魔力を感じさせないほど、オーラが感じられる気がした。
全員が唾を飲み込みながら、ゆっくりと、そして地下へ続く階段を下って行く。
これから先に何があるのか、どんな出来事が待ち構えているのか、それは誰にもわからない。そして、レッグ、アイ、アームは少しずつ記憶を取り戻していた。
過去の思い出、過去の記憶、段々と鮮明になっていった。声に出すことはなかったが、フェローの後ろ姿を見ながら、徐々にすべてを取り戻そうとしていた。
「フェロー……」
アイだけは何かを完全に思い出して囁いた。
それから全員は、地下へ続く階段を一時間ほど降っていた。まさかここまでかかるとは、誰にも思わなかった。いつ頃から作られた階段なのか、今の技術でここまで地下へもぐることができるのか、そういった思いをアイレは抱いていた。
そしてようやく、
「こんにちは、お久しぶりです。皆さん」
地下の階段が終わり、巨大な石の空洞広場の先に立っていたのは……。レムリだった。生前と変わらない様子で、魔法の杖は持っていないが、純白のドレスに身を包んでいる。まるでウェディングドレスを思わせるような、綺麗な装飾がされていて、そういえばこんな風なローブを着ていたこともあったなと、ヴェルネルが記憶を思い返す。
「レムリ……」
シンドラの姿は見えず、もしかして、とアイレが声を漏らす。シンドラではなく、本当のレムリがそこに立っている。つまり何もかも嘘で、実は……レムリは……。
しかし、
「騙されるな、あいつはシンドラだ」
ヴェルネルが、そんなアイレの気持ちを打ち砕くように剣を構えながら言った。ずっとシンドラと一緒に過ごしてきたからこそわかる言葉だった。
するとレムリは、シンドラは、どちらかわからないまま、大きな高笑いをはじめた。
「あらやだ、どうしてそんなすぐにバレたのかしら? さすが魔王様ですね、私の魂胆もすべて見抜いていたのかしら? でも、遅かったです」
嬉しそうに、レムリの姿で不敵な笑みを浮かべた。やはりシンドラはすでに体を乗っ取っており、それは揺るがない事実だということを証明した。
となれば、もう殺すしか……。レムリを殺すしかない。そうなれば、もう蘇らせることは出来ない。だけど……これは、間違いなくやらねばならない。
でなければ、この世界は間違いなく破滅してしまう。
「てめぇ、悪趣味がすぎるぜ」
フェローが肩を少し抑えながら、シンドラに向かって少し前に出る。
レッグ、アイ、アームが心配そうにそれを見守って、
「無茶すんなよ」
とアームが言った。完全に記憶を取り戻していた。レムリ、いやシンドラがそれに対して、
「あら、残念。あなたたちの愉快な戦いを見てみたかったのだけど、どうやら記憶を取り戻しているようね。旧友の対決というのも、楽しそうだったのに」
ふたたび不敵な笑みを浮かべて、高笑いをする。レムリの姿でそんなことをするシンドラに、誰もが憎悪を隠せなかった。
「何をしてるのかわかってるのか?」
ここでグレースが、ようやく口を開いた。先ほどからずっと沈黙を貫いていたが、レムリの姿。シンドラの姿を見て我慢が出来なくなった。
「何を……とは?」
そしてグレースは手をぎゅっと握りしめてから、
「ここにいる奴らは……ヴェルネルやアイレは……レムリが戻ってきてほしいとずっと願ってたんだ。それをお前は……最低なことをしている」
「何をそんな当たり前なことを?」
グレースの言葉に対して間もあげず、鋭く言い放つ。またもや大きな声で笑いながら、
「私はね、復讐がしたいのよ。この世界のゴミみたいな人間どもに、そのために、何十年、いや何百年の計画を立てたと思ってるの?」
そして、シンドラは今までの壮大な計画。すべての事を嬉しそうに語りはじめた、誰もがそれについて聞きながら、静かに、そして動くことが出来なかった。
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