超人気美少女ダンジョン配信者を救ってバズった呪詛師、うっかり呪術を披露しすぎたところ、どうやら最凶すぎると話題に

菊池 快晴

文字の大きさ
上 下
52 / 52

第51話:ブラック配信きり忘れバズバズブラックアイス

しおりを挟む
 ”お、ブラック様だ”
 ”ブラーック!!!”
 ”もしかして気づいてない? 配信始まってるよー”

 ダンジョンの内部、カメラの調子がどうにも悪いみたいだ。
 配信を付けようとしたが、赤ランプが付かない。

 せっかく盛り上げようと最下層まだ来たのに、これでは無駄になってしまう。

 はあ、どうしよう。

 ”ため息ブラックかわいい”
 ”聞こえてないみたいだね”
 ”もしかして、素ブラックが見えちゃうんじゃないか?”
 ”俺たちの知らないブラックが!?”
 ”実はめちゃくちゃ可愛かったりして”
 ”いつも可愛いけどなw 強すぎるだけだがw”

「せっかく、【超第下層・・・・】まで来たのになあ。無意味かあ」

 ”……は?”
 ”今、ブラック超大下層っていった?”
 ”え、それってネームド級しかいないから、封鎖されるって政府が発表してなかった?”
 ”よく見ると後ろ、めちゃくちゃ魔物いない?”
 ”ほんとだwwww これ後ろ、ただの黒い壁かと思ったら、魔物じゃね!?”
 ”は? マジ?”
 ”ブラック様、どういうこと!?”

 超第下層とは、政府指定のダンジョンの一番下にある場所の名称だ。

 最近発見されたところで、大型ネームド級のモンスターがうようよしている。
 それに伴って、ダンジョンの内部は規格外の広さだ。

 頑張れば野球ができそうなくらいで、モンスターを全部片づけたら、ダンジョン野球場が出るのではなかろうか?

 ふふふ、いつかブラック球場を作ってみたいなあ。

 一度も野球したことないけど。

 ”ブラック様、後ろおおおおおおおお”
 ”やべえ、気づいてないんじゃないか?”
 ”ブラック様あああああああ”

 そんなことを考えていると、後ろが騒がしかった。
 カメラを壊されないように置いて振り返ると、ビルみたいな大きさの魔物が数体、俺を睨んでいた。

 勝手に縄張りに入ってきたのだから当然だろう。

 蜥蜴を巨大化したみたいなやつと、蜘蛛みたいなデカい奴、あとは鳥みたいなデカいやつ。

 うーん、デカい。

「ギャッギガガガッ!?」
「グイーガ!」
「ドゥグラドッギラ!」

 会話が出来るタイプではなさそうだ。
 調伏してもいいが、配信外だしな。

 ”流石のブラック様でも仲間がいないと厳しくないか?”
 ”知らずに迷いこんだのかな?”
 ”いや、でもポケットに手を突っ込んだままだぞ”

 そうだ。どうせなら攻撃を回避する練習でもしてみるか。

 死の宣告とブラックパンチで倒してもいいが、練習にはならないしな。

「さて、いつでもかかってこいブラック」

 ”素ブラックでもこんな感じなのかw”
 ”素敵すぎる”
 ”マジ!? 逃げないの!?”

 魔物は直感が鋭い。
 俺にバカにされたことがわかったのだろう。

 次の瞬間、鋭い鎌のような手で蜥蜴がぶんっと腕を振ってきた。
 魔力が刃に行き届いており、当たれば俺でもただでは済まない速度と威力。

 まあ、当たらないけど。

 ”すげえ、ポケットに手を入れたまま避けてる”
 ”やばすぎブラック”
 ”これマジで配信気づいてないの? 何してるの?”
 ”遊んでるんだ……凄い”

 さすがに三体ともなると攻撃を避けるのは大変――と思っていたが、まったくそうではなかった。
 むしろデカい分遅い。

 うーん、練習にすらならないブラック。

 適当に新技をためそうかと思っていたら、突然、蜘蛛が斬りつけられた。
 颯爽と現れた美少女――君内風華さんだった。

「ブラック様――はせ参じました」

 光の剣を構えながら、地面に降り立つと、ターミネーターみたいなポーズをした。
 もしくはくのいち。

 え、呼んでないよ!?

「ブラックさん、お待たせしました」

 するともう一人、俺の幼馴染、御船美琴だ。
 同じく拳に武器をつけている。
 
 うん、呼んでないよ!?

 ”まさかの演出だった!?”
 ”風華ちゃんと美琴きたあああああああ”
 ”久しぶりの三人だね”
 ”ていうか、ここまでブラックなしできたってこと?”
 ”それはそれでやばいなw めちゃくちゃ魔物いるはずだろ”

「なぜここに来た?」
「配信がついております。ブラック様」
「え? 配信?」

 慌てて尋ね帰すと、美琴が答えてくれた。

「配信、動ていますよ」

 え、いつのまに!?

 は、恥ずかしい……。
 変なことしてなかったかな?

 てか、配信してまだ30分ぐらいしかたってないよね? 来るの早くない?

「来るの早くない?」
「当たり前です。私はブラック様の風華ですから」
「私も、ブラックさんの美琴ですから」

 全然答えになってないが、多分同じことを繰り返されるのでやめておこう。
 コメントを見るのが怖いな。炎上したらどうしよう。

 ”配信みてここまで来れるのがやべえw”
 ”マジで忠誠心高いな”
 ”ブラック様のピンチに駆け付ける美女”
 ”ローザちゃんは家で寝てそう”
 ”ジョーヌは四度寝ぐらいしてそう”

 しかし配信がついているのならやるべきことはただ一つ、かっこつけなければ。

 俺は、ポケットから手を取り出すと、決めポーズをした。

 名付けてブラックポーズ。

 右手をいっぱいに広げて、顔を隠すのだ。

 よくわからないが、アニメでみた。
 格好よかった。

「ブラック様、かっこいいですううううううううう」
「我、ブラックなり」
「いつものブラックさんより、格好よく見える……」

 ”二人とも悩殺されててクソワロタ”
 ”いやかっこ……いいか?w”
 ”流石ブラックポーズ、もう少しで世界が破滅するところだった”
 ”俺は好きだぞww”
 ”ブラックテレポートとの合わせ技で頼む”
 ”これだからブラックはやめらんねえ”
 ”新技公開とは、なんてサプライズだ!”

 
 しかし配信の設定がめちゃくちゃだろう。
 画角も調節していない。

 適当に、早く終わらすか。

「美琴、風華、死の宣告を付与する。俺に続け」
「「了解」」

 そして俺は、三体の魔物に近づいてカウントを付与した。
 そのどれもがHPを表す99999だったものの、倒すまでの所要時間は5分程度だった。

 配信が盛り上がっているわけもないだろう。
 なぜなら俺は、挨拶もしていないのだ。

 本当に申し訳ないブラック。

 ”ヤバすぎw ギネス級だろこれw”
 ”こーれ、ネームドボスだよね? ゴブリン相手にしてるかと思った”
 ”倒すってレベルじゃねえぞww”
 ”マジで化け物すぎる三人”
 ”ブラックが特にヤバイ”
 ”ブラック様、あなた強すぎますよ!”

 ふうとため息を吐いていると、風華と美琴が近づいてきた。

 なぜか腕をぎゅっと掴む。

「ブラック様、怪我はありませんか?」
「ブラックさん、疲れていませんか?」

 だが小声で、「黒ブラくん、お疲れ様」「黒斗、配信気を付けてね」と言われた。
 コンプライアンスを厳守してる素晴らしい二人だ。

 俺は丁寧にお礼を言って、配信を切った。

 こんなダメダメ配信は二度としない。
 そう心に誓った。


 «先日のブラック配信、ついに世界で一番の初速でギネスに!!!»

 翌日、お風呂上がりのブラックアイスを食べながらパソコンをつけると、とんでもないバナーが飛び込んできた。
 要約すると、俺の切り忘れ配信が凄すぎると海外でバズったらしい。

 そして、美女二人からも腕を掴まれ、このブラックは一体なんだ? となっているとのことだ。
 もちろん日本でも同じく。

 炎上じゃないのはありがたいが、意図していないときにバズると困惑してしまう。

 うーん、でもよい事か。

 それよりこのブラックアイス、チョコレートかと思ったらコーヒーだった。

 ……苦い。
しおりを挟む
感想 7

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(7件)

SendWolf
2024.12.15 SendWolf

おすすめから読み始めてます。
すごく面白い、楽しみながら読ませていただきます。

解除
IQ3
2024.11.06 IQ3

昨日おすすめに出てきて面白そうだったので試し読みしてみたらいつの間にか一気読みしてしまいました(笑)投稿日が1月22日と止まっておりますが続きはないのでしょうか?

菊池 快晴
2024.11.06 菊池 快晴

そういっていただけて嬉しいです!
書きだめが一話分ありましたので掲載させていただきましたが、今のところまだ更新は未定です……泣
また時間がある際には更新しますね(*'ω'*)

解除
こまくま
2023.12.09 こまくま

カオスブラック

解除

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

キモオタ レベル0★世界最弱のオタク高校生の僕だけレベルアップ!美女に囲まれハーレム青春物語

さかいおさむ
ファンタジー
街中にダンジョンが現れた現代日本。 人々には戦士としてのレベルが与えられる。 主人公は世界最弱のレベル0。 レベルの低さに絶望していたある日、戦士のレベルの10倍の強さになるというボスが現れる。 世界で倒せるのレベル0の主人公だけ。 ダンジョンで戦うことは諦めていた主人公だが、その日から自分だけがレベルアップできることに。 最強戦士になって、美女の仲間たちとダンジョンの秘密を解き明かす。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

記憶喪失の逃亡貴族、ゴールド級パーティを追放されたんだが、ジョブの魔獣使いが進化したので新たな仲間と成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
7歳の時に行われた洗礼の儀で魔物使いと言う不遇のジョブを授かった主人公は、実家の辺境伯家を追い出され頼る当ても無くさまよい歩いた。そして、辺境の村に辿り着いた主人公は、その村で15歳まで生活し村で一緒に育った4人の幼馴染と共に冒険者になる。だが、何時まで経っても従魔を得ることが出来ない主人公は、荷物持ち兼雑用係として幼馴染とパーティーを組んでいたが、ある日、パーティーのリーダーから、「俺達ゴールド級パーティーにお前はもう必要ない」と言われて、パーティーから追放されてしまう。自暴自棄に成った主人公は、やけを起こし、非常に危険なアダマンタイト級ダンジョンへと足を踏み入れる。そこで、主人公は、自分の人生を大きく変える出会いをする。そして、新たな仲間たちと成り上がっていく。 *カクヨムでも連載しています。*2022年8月25日ホットランキング2位になりました。お読みいただきありがとうございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。