超人気美少女ダンジョン配信者を救ってバズった呪詛師、うっかり呪術を披露しすぎたところ、どうやら最凶すぎると話題に

菊池 快晴

文字の大きさ
上 下
51 / 52

第50話 ニンニンとブンブン

しおりを挟む
 ”これが、ニンニンの本当の実力”
 ”凄すぎる”
 ”けど、ブンブンもすげえ!”
 ”ニンブン!”

 ペア対抗戦は、以前と同じ学園内でのランダム対戦だ。
 それぞれバトルがスタートしたら、お互いの胸にある名前プレートを取り合う。

 忍術使いである俺は、この葉隠れの術、つまり瞬歩(合っているかどうかは知らない)で姿を消しながら距離を詰める。

 右にいたと思えば左、上と思えば下に移動しながら的確に敵を堕とす。
 コメントは大盛り上がりだ。

 むしろ、ブラックの時より派手かもしれない。
 忍者はメジャーだし。
 
 ……配信向けはこっちだったかも。

「黒羽、こっちだ!」

 1人から名前を奪った後、視線を横に向けると、ごんぞうくんが大きな盾を持っていた。
 ブンブンと振り回しながら戦うこともできるし、魔法や攻撃を受け流すこともできる。

 今まで多くの能力を見てきたが、他人を守る為の盾は初めてだ。

 それだけで、ごんぞうくんの意思の強さが垣間見える。

 そしてなぜか俺たちは、ニンニンとブンブンと呼ばれていた。
 なんだかハエみたいだなあと思ったが、ごんぞうくんには言わないでおこう。

 ”マジで強いこのコンビ”
 ”今回も1位じゃないか?”
 ”いや、躍進しているコンビがいるよ”

 すると目の前に現れたのは、美琴と風華さんだ。

 攻撃特化でありながらもオールラウンダーの二人。

 ホログラムに表示されている序列では、俺たちに続いて2位。

 思えばまともに戦うのは初めてのかもしれない。

 俺は人を傷つけるのが苦手だ。
 特に知り合いは――。

「黒斗、悪いけど勝たせてもらうわ」
「黒ブ――黒斗くん、絶対勝つからね」

 いや、早く倒そう。
 特に風華さんを早く倒そう。

 ”黒ブー?”
 ”高木ブーみたいなあだ名かな?”
 ”でも細いよね”
 ”どっちが勝つんだろう”

 美琴が、まず駆けてくる。
 渡り廊下で左右の壁が狭い。

 それをわかっているのだろう。まるで野球のスライディングのように近づいてくる。
 俺は、ニンニンと唱えながらバッバッバッと印を踏んだ。

 ちなみにこれの意味はない。

 ”すげえ、何か出す気だ”
 ”この印、本気っぽい”
 ”何が起きる!?”

「もらった――」

 美琴の渾身のストレートが、俺の腹部に直撃。みぞおちに突き刺さる。

 ”うおおおおお”
 ”これはヤバイ”
 ”いや、でも待て様子が――”

「!?」
「残像だ」

 俺は、お腹をさすりながら美琴の背後に回っていた。
 残像だと言いながらもしっかりとストレートはあえて食らった。

 隠れ蓑術、ニンニンバージョンだ。
 あえて攻撃を受けてから何でもないフリをする。

 相手は驚くだろう。

 だがダメージはしっかり受けているので、実質無意味だ。

「――さよなら」

 俺は、美琴の首に手刀を与えようとした。
 だが後ろから攻撃、風華さんの聖剣ホーリソードに気づく。

 しかし、よけなかった。

 隠れ蓑術ではない、相棒を信頼しているからだ。

「悪いが、やらせえねよ」
「――ごんぞうくん……!」

 盾が剣を防ぐ。
 そして俺は、美琴を一撃で落した。

 だが驚いた事に、彼女は振り返りながら攻撃をしようとしていた。
 その速度は、今までの比じゃない。

 なるほど、知らない間に努力しているのだ。

 ”ニンニン強すぎるだろ”
 ”仮にもブラッシュシュヴァルツの前衛だぞ、ヤバすぎない?”
 ”マジでブラック様と対決してほしい”

 その対戦は叶わないのだ。すまない。

「ニンニン!!」

 いつのまにか、ごんぞうくんにもそう呼ばれていた。
 彼は盾を前にして風華さんを壁に挟み込む。

 聖剣で横顔をぺちぺち叩かれているので盾の意味はほとんどないが、それでもいいタックルだ。

「ブンブン、ありがとう」

 一言お礼を言いながら、新技『手裏剣』を投げた。
 これは、折り紙で作った優しい攻撃だ。

 だがチャクラ、つまり呪力のようなものを編み込んでいる。

 風華さんの額にヒットすると、一撃で気絶。
 ダメージではない、気を乱す力を持つのだ。
 優しい攻撃。

 ”つ、つえええ”
 ”情け容赦ない”
 ”これが、ニンニンの強さ”

 だが優しさは伝わっていないらしい。悲しいニン!

 それからも俺たちは学園内を奔走した。

 ローザとジョーヌとも戦ってみたかったが、あいにく接敵することなく時間が終わる。

 俺とごんぞうくんはぶっちぎりのトップだった。

 ”お疲れ様! 楽しかったです!”
 ”またニン&ブン見たいです”
 ”楽しかったー”

 配信でいつのまにかニコイチみたいになっていた。
 俺もごんぞうくんとハイタッチ。

「ありがとな黒羽! いや、ニンニン、またやろうぜ」
「ああ、楽しかった」
「それと、なんかブラック様を思い出したぜ。もしかして知り合いとかか?」
「気のせいだニン」

 語尾を変えることでバレないようにする。これぞ、忍術テクニック。

「さすがだったわ黒斗、今度は絶対に負けない」
「まさか一撃だなんて……黒ブラくん、次は負けないよ」
「そうだね。でも、まずは名前を変えてほしいかな」

「我も戦ってみたかったのう」
「黒斗様のニンニン、素敵……」

 ジョーヌとクロエは2位だった美琴、風華さんは俺たちにやられたことで三位。
 次のテストで強敵なのは間違いないだろう。

 だけどやっぱり思ったのは、後腐れのない戦いは楽しいことだ。
 みんなで力を出し合ってほめたたえ合うことができる。

 これが、一番幸せなことかもしれない。

  ◇

「……なにこれニン×ブン」

 それから数日後、ネットサーフィンをしていると、気弱そうに見える忍者が突然オラオラ系になり、体躯のデカい男が責められる、そんなごにょごにょ同人を見つけた。
 今流行っているらしく、コンプラ的に何とは言わないが、凄く人気らしい。

「こっちを向けよニン」
「や、やめてくれブン」

 ……なんか思い出すな。

 でもちゃんと、イイネと応援コメントをしておいた。

 創作物には、敬意を払うのがブラック流だ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

キモオタ レベル0★世界最弱のオタク高校生の僕だけレベルアップ!美女に囲まれハーレム青春物語

さかいおさむ
ファンタジー
街中にダンジョンが現れた現代日本。 人々には戦士としてのレベルが与えられる。 主人公は世界最弱のレベル0。 レベルの低さに絶望していたある日、戦士のレベルの10倍の強さになるというボスが現れる。 世界で倒せるのレベル0の主人公だけ。 ダンジョンで戦うことは諦めていた主人公だが、その日から自分だけがレベルアップできることに。 最強戦士になって、美女の仲間たちとダンジョンの秘密を解き明かす。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

記憶喪失の逃亡貴族、ゴールド級パーティを追放されたんだが、ジョブの魔獣使いが進化したので新たな仲間と成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
7歳の時に行われた洗礼の儀で魔物使いと言う不遇のジョブを授かった主人公は、実家の辺境伯家を追い出され頼る当ても無くさまよい歩いた。そして、辺境の村に辿り着いた主人公は、その村で15歳まで生活し村で一緒に育った4人の幼馴染と共に冒険者になる。だが、何時まで経っても従魔を得ることが出来ない主人公は、荷物持ち兼雑用係として幼馴染とパーティーを組んでいたが、ある日、パーティーのリーダーから、「俺達ゴールド級パーティーにお前はもう必要ない」と言われて、パーティーから追放されてしまう。自暴自棄に成った主人公は、やけを起こし、非常に危険なアダマンタイト級ダンジョンへと足を踏み入れる。そこで、主人公は、自分の人生を大きく変える出会いをする。そして、新たな仲間たちと成り上がっていく。 *カクヨムでも連載しています。*2022年8月25日ホットランキング2位になりました。お読みいただきありがとうございます。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...