超人気美少女ダンジョン配信者を救ってバズった呪詛師、うっかり呪術を披露しすぎたところ、どうやら最凶すぎると話題に

菊池 快晴

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第43話 ブラック(過去)

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 九歳の誕生日を迎えた後、は海外へ行くことになった。
 その理由は、外交官の父の仕事の都合。

 と、表向きにはなっていた。

「黒斗、今日からこの施設がお前の家だ。私もいるが、基本的には関与しない」
「わかりました。お父さん」

 連れてこられた施設は、何というか閉鎖された空間だった。
 地下で光が通らない部屋もいくつかあり、それでいて広い。

 きっかけは、僕の能力開花だった。

『黒斗……お前の能力は素晴らしいぞ』

 田舎でキャンプをしていたときだ。
 その時の父は優しかった。しかしそこで、熊に襲われた。

 父は僕を守る為に前に出たが、思い切り殴られ、とても危険な状態になった。

 だが僕はその熊を――ずたずたに引き裂いた。それは、意図したものではなかった。

 父も初めは怯えていたものの、僕の力が特別なものだとすぐにわかったらしい。
 その日から能力について詳しく質問してくるようになった。

 理由はわかっている。

 幼い頃、僕が物心がつく前に母は病気で亡くなっていた。
 
 夜、父は母の写真を見ながらよく泣いていたのだ。
 それを知っていたからこそ、何も言わなかった。

 生き返ってほしいと、涙を流していた。

 だけど今まで死者蘇生の能力は確認されていない。

 それでも、父は諦めなかったのだろう。
 実の息子――僕を利用してでも。

「お前は全ての試験で一位を目指せ。それが、できるはずだ」

 初めは良かった。可哀想な父を何とかしてあげたかったからだ。
 もちろん僕も母に会いたいとも思っていた。

 だが――。

「黒羽黒斗、もっと本気を出せるだろう」
  
 この施設は、全国から集められた異能力の子供たちを様々な試験で虐ぬき、過度なストレスを与え続けて昇華させるのが目的だった。

 実技試験、筆記試験、わざと仲間を組ませた上で、次の試験はそれを破滅させるようなテストだってある。
 
 外に出る事は許されず、睡眠時間はあるものの、突然にブザーがなって起こされることもある。

 僕は、ただの実験台だったのだ。

 僕の能力は死者蘇生と関係がない。
 
 それにプログラム自体の目的は、能力の昇華だ。

 父に伝えたが、まるで取り合ってくれなかった。
 もはや僕はただの一部なのだ。

 誰かがその力を得れば、それでよかったのだろう。

 僕は何もしたくなくなった。
 最下位が続いて、そのまま朽ちてしまえばいいとも思えた。
 
 だけど多くの子供たちが苦しそうにしているのを見ていくうちに心が変わった。

 ――が、この施設をぶっ壊してやりたい。

 子供の破壊衝動なんてめずらしくもないだろう。

 おもちゃを壊したくなるなんて、誰もが思うことだ。

 けれども俺の場合、その対象が巨大だった。

「黒羽黒斗の能力は斬撃じゃなかったのか? 先日のテストは満点だったぞ」
「頭脳系か? いや、おかしいな……」

 幸い俺の能力はバレなかった。

 それを逆手に取ってやる。

 その日から俺は変わった。

 テストに力を入れて、信用させていった。

 愛想よく振りまくようにした。

 ある日、休憩時間にアニメを見ていた。

 ヒーロー戦隊のアニメだ。

 その中でも、ブラックが好きだった。
 影を使って倒し、表の姿、弱みは一切見せない。

 ああ、今の俺と同じだ。

 ――そうだ、俺はブラックだ。

 この施設を破壊する為に暗躍する。

 だけど気づいた。1人では時間がかかる。

 だから仲間を作ればいい。

 同じ気持ちを持っている。それでいて強い仲間を。

 初めての仲間はローザだった。

 彼女は弱かった。テストでも最下位に近い。
 
 だけど俺にはわかっていた。絶対強くなると。

「わかった。私も、黒斗君のように強くなりたい。この施設を――壊したい」
「ああ、一緒に頑張ろう」

 強要するつもりはなかった。だが俺がブラックなら、私はピンクだと言い始めた。
 そして次にクロエと仲良くなった。

 施設には沢山の扉がある。

 彼女はそのすべての暗唱番号を覚えることができる能力を持っていた。

「じゃあ、私はイエローがいいな」

 表と裏。
 
 それが、俺たちの全ての始まりだった。
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