超人気美少女ダンジョン配信者を救ってバズった呪詛師、うっかり呪術を披露しすぎたところ、どうやら最凶すぎると話題に

菊池 快晴

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第7話 最凶(ブラック)と最怖(風華)の配信

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 視られている。

 最近、そんな感じがする。

 授業中、学校帰り、たまにお風呂に入っている時も視線を感じる。
 
 だが気のせいだろう。

 文献によると、呪術には対価が必要だと書いてあった。

 今まで身体に不調はなかったが、もしかしたらそれかもしれない。

 いつか死神が、俺の前に現れるかもしれない。

 恐怖を覚えたと同時に……ワクワクもした。

 なぜなら凄く、ブラックっぽいからだ。

 だがせっかく【ブラック】として認知が増えてきた。
 棚から牡丹餅だとしても、いま俺の配信が途絶えると悲しむ人がいるだろう。

 よし、もし死神が来たら、ワンパンブラックしよう。

 それはそうとして、今日は休日なので、じっくりと配信ができる。

 いつもは気にしていなかったが、少し登録者数が増えたので夢を壊さないように着替えをすることに決めた。
 今は【ブラックコート】は鞄に押し込んでいる。

 目的地は【ベルマートダンジョン】。
 そこそこ魔物が多いが、それもあって人が少ないので割とオキニだ。
 あ、オキニとはお気に入りの略。
 
 しかし家から出て電車、バスと乗り継いだが、やはりまだ視線を感じる。

 ま、気にせずいくか。

 駅を降りて、人混みを縫うように進む。

 すると、段々と視線が消えていくような気がした。
 なぜだろう、速度を上げれば消える?

 不思議におもいつつも、速度をあげていく。

 ダンジョン前に到着したころには、既に視線はなかった。
 やれ幸いと路地に隠れた後、ブラックコートを空に投げ捨て、そのまま装着。

「――ブラック参上」

 ぼそりと呟いた瞬間、目の前になぜか――君内風華さんが現れた。

「――なぜ君が」
「……ここに人が来ませんでしたか?」
「ふむ。そういえば、少年がいたな。俺にサインをねだって消えていったが」

 ……なんか疑われている?
 いや、気のせいだろう。

 てか、今日も君内さん綺麗だな。
 でもなんでこんなところに?

「どうした?」
「……何でもないです。ブラックさん、今日も配信ですか??」
「ああ、視聴者を楽しませたいからな」
「――私とコラボしてもらえませんか」

   ◇

 ”お、待ってました”
 ”ん? あれなんか隣に――え!?”
 ”タイトルにゲストって書いてたけど”
 ”え、え、え、え、えええええ!?”
 ”ななな、なんで風華が!?”

 配信を付けた瞬間、コメントが鬼のように流れていく。

 そう、今俺の隣には、君内風華がいる。

「こんばんブラック! みなさん、よろしくお願いしまーす! 君内風華でーす!」
「ブラック参上!」

 しかし流石プロだ。
 始まる前は、「私から自己紹介しますか? どうしましょうか? わかりました。そうしますね」と真面目だったが、始まると飛び切りの笑顔。

 うーん、見習いたいブラック!

 ”どういうことなの”
 ”コメント速すぎてやばいんだがw”
 ”挨拶ブラック”
 ”ちゃんと挨拶履修してる風華ちゃん萌え”

 そのとき、風華さんが俺の後ろに立つ。

 だが――。

「俺の後ろに立つな」

 ブラックは後ろに立つのを嫌がる(というキャラ付け)。
 なんか、鼻がひくひくしていたような? 気のせいか。

 俺はブラックを大事にしている。ごめん、偉そうなこといって。

「ご、ごめんなさい!?」

 ”ブラック厳しすぎワロタ”
 ”風華ちゃんをいじめるな”
 ”こういう忖度しないところがブラックのいいところ”
 ”謝る風華ちゃんもめずらしくてすき”
 ”これは風華が悪い”
 ”ごめんなブラック!”
 
「気にするな。さてリスナー諸君、今日はコラボ配信だ。初めてが君内風華であることを、このブラックは誇りに思う」

 ”飴と鞭キター”
 ”こんなん惚れるわ”
 ”これで実力も確かだもんな”

「私も嬉しいです。以前助けてもらったお礼というわけではないんですが、是非ご一緒したくてお願いしました! 今日はめいいっぱい頑張りますので、よろしくブラック!」

 か、かわいい……。
 まさか俺が中学生の頃に考えた言葉を連呼してくれることになるとは。
 くぅ、あの時の黒羽に教えたいぜ。

 だが表情を悟られるな。
 
 あくまでもブラックは格好よくだ。

 しかし視線が消えたな。
 なんだったんだろう。まあいいか。

 そういえば今日やることを伝えていなかったな。

 とはいえ、君内風華なら大丈夫だろう。

 俺は黒いコートをばさりと動かす。

「今日はベルマートダンジョン、最下層まで突っ走る。楽しみにしててくれ」

 決まった――。と思っていたら、隣で君内風華が、目を見開いていた。

「しょ、正気……ですか?」
「何がだ?」
「え、いや何でもないですけど……確か、最下層ってめちゃめちゃ強い魔物ばかりではないですか?」
「……そうか?」

 俺は何度か行っているし、むしろ魔物が多くて寂しくないんだよな。
 風華さんなら問題ないだろうけど、そんなやばいのかな?


 ”とんでもないこといって草”
 ”【おかし】を知らないブラック”
 ”風華がびっくりしてる顔初めて見た”
 ” 盛 り 上 が っ て き ま し た ”
 ”やばそうだけどブラックなら余裕なのか?”
 ”これきっと伝説になるぞ”
 ”録画しとけ”
 ”ちょっ、もうニュースになってるww 二人のコラボww”
 ”おいトレンドもう入ってる”

 同時接続が、どんどん増えていく。
 風華さんも驚いている――いや、そうか。

 こうやって片方が驚けば、俺が相対的に凄く見えるからだろう。
 コラボは相手を立たせると書いていた。
 なるほど、勉強になるな……。

 ここで俺が「やめておく?」 といったら、逆に怒られてしまうはず。

 なら、強気で――。

「行くぞ風華。任せろ、俺が守ってやる」
「――はい」

 やっぱりそうだ。演技うまいなあ

 ”風華の目ハートすぎんんよ”
 ”従順www 風華ファン涙目 ……はあ”
 ”頬赤すぎwww”
 ”わかりやすすぎだろ”

 ”しかし楽しみだな。いいものみれそう”


 ――しかし視聴者は、更に凄い物を見ることになるのだが――まだ、知らない――。


「ブラックテレポート」

 そして、俺と風華の姿は、暗黒の姿に消えた。

 ちなみにテレポートではなく、階段を上っただけ。
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