24 / 36
第24話 謎のメッセージ
しおりを挟む
『大剣豪宮本&守護伊織、試練ダンジョン30階まで一直線』
『世界初!? 世界最速!? 目覚めし者、二刀流の秘密に迫る』
『配信界で話題の二人、宮本と佐々木』
『今だからこそダンジョンが熱い!』
学校、昼休み。
椿姫と伊織は、食堂で食事をとっていた。
以前と同じ魚定食は椿姫。美しい橋使い、サバの骨を綺麗に取っていく。
伊織はオムライス。ケチャップ少なめだ。
「椿姫さん、本当にお魚好きですね」
「そうだな。食べ慣れているというのもある。叔父が作ってくれていたものを食すのが日常だったからだ」
「叔父さん、お料理上手だったんですね」
「そうだな。熊の煮込み鍋や猪焼きは、特に大好物だった。ワニの丸焼きも案外おいしいぞ」
「へ、へえ!? そ、そうなんですね。良かったら、オムライスも一口食べてみますか?」
そこに伊織がスプーンにオムライスを載せて提案した。
椿姫の頬が、ピクリと動く。
存在は知っていた。だが、あまりにも可愛すぎるのだ。
それを口に含む? 良いのか?
「……でも、私は初めてなんだ」
「誰でも初めてはありますよ。優しく口に入れますから」
「そうか。なら――ありがたく」
椅子から伸びをしてスプーンを前に突き出す。椿姫は、おそるおそる頬張った。
卵の甘味とケチャップが絡み合い、なんともいえぬ濃厚な味わい。
白米の旨味まで感じられる。
「美味しい……」
「ですよね。ここの食堂、おすすめなんですよ」
「次は……おむらいすにしてみるか」
「おお、いいですね!」
するとそのとき、隣で男子学生たちが声をあげていた。
「なんか、百合百合してないか?」
「確かに……あれは百合百合だな」
「くぅ、二人とも可愛すぎるぜ」
それに気づかない二人ではなかったが、百合という知識がなかったので、花の言葉だと思っていた。
椿姫は思わず、山のユリの花を思い出す。
そのとき、女子生徒三人が隣にやってきた。
「あ、あのー!」
「は、配信見ました……その、凄かったです!」
「私ももです! 本当にその、かっこよかったです!」
それだけ言うと、女子たちは恥ずかしそうに去っていく。
「女性も見てくれているんだな」
「見たいですね。男の人からは声を掛けられるようになってきましたけど。まあ、さすがに隠し通すのも限界ですよね」
先日の試練ダンジョンは探索協会のスパチャ少なすぎぷち炎上があり、多くの一般ユーザーが見ることになった。
椿姫の処遇は、協会からの連絡待ちという状態である。
「そうだな。とはいえ、話しかけてもすぐ離れていってしまうが」
「皆さん、椿姫さんが凄すぎて話しかけられないみたいです」
「凄い? 何がだ?」
「強すぎるからですよ。憧れや尊敬を抱いてるんです。私も気持ちは分かります」
「そうなのか。私は、気軽に声を掛けてもらいたいのだがな」
伊織の言う通り、学校で椿姫の認知、人気度は高まっていたが、話しかけづらいという空気も出ていた。
だがそこには強さだけではなく、伊織の凄まじい可愛さと人気があることも当人は知らない。
例えるならば世界的人気なアイドルが二人で食事をしているようなものだ。
それもオムライスを食べあうような百合百合。誰もが入るのを躊躇する。
「まあでも、私は少し椿姫さんを独占できて嬉しいですけどね。こうやって、いっぱい話せますし」
「そうか。そういってもらえると嬉しいな」
二人のやり取りに、後ろの男子学生が頬を赤らめていた。
「協会からの連絡はまだないですが、今後はどうしていきますか? 色んなダンジョンを攻めて行きます?」
「そうだな。私にはまだ知らないダンジョンや魔物、それに目覚めし者としてまだまだ新米だ。今までは叔父の背中を追いかけていたが、これからは自分の興味があることに目を向けていきたい。――それに気づかせてくれたのは、伊織、君のおかげだ」
「え!? そ、そんな私なんて!?」
「これもよろしく頼む」
「とんでもないです。はい。――そういえば、椿姫さんずっとスマホ鳴ってませんか? ……もしかして」
「帆乃佳だろう。日常茶飯事だ。おかげで、随分と打つも速くなった」
椿姫の言う通り、魚定食を終えると、凄まじい動きでボタンを打ち始めた。それもフリック入力。
それを見た伊織は、私も負けたくないと拳を握った。
そして椿姫は、なぜか眉をひそめていた。今まで見たことのない表情を浮かべている。
「…………」
「どうしました? 椿姫さん」
「いや、協会から帆乃佳に通達があったらしい。そして、一緒についてこいと」
「あ、そうなんですね。佐々木さん、協会の方からの信頼ありますもんね。放課後、じゃあ私もついていきますよ」
「ありがたい。それで、その、よくわからない文言が付いているんだ」
「え? ちょっと、いいですか?」
伊織は、失礼しますと顔を覗き込む。
そこには、帆乃佳のメッセージが映し出されていた。
『椿姫、会長から話があるから一緒に行くわよ。後、待ち合わせはどこにする? 別に近くまで行ってもいいけど。それと、水着持ってる?』
『世界初!? 世界最速!? 目覚めし者、二刀流の秘密に迫る』
『配信界で話題の二人、宮本と佐々木』
『今だからこそダンジョンが熱い!』
学校、昼休み。
椿姫と伊織は、食堂で食事をとっていた。
以前と同じ魚定食は椿姫。美しい橋使い、サバの骨を綺麗に取っていく。
伊織はオムライス。ケチャップ少なめだ。
「椿姫さん、本当にお魚好きですね」
「そうだな。食べ慣れているというのもある。叔父が作ってくれていたものを食すのが日常だったからだ」
「叔父さん、お料理上手だったんですね」
「そうだな。熊の煮込み鍋や猪焼きは、特に大好物だった。ワニの丸焼きも案外おいしいぞ」
「へ、へえ!? そ、そうなんですね。良かったら、オムライスも一口食べてみますか?」
そこに伊織がスプーンにオムライスを載せて提案した。
椿姫の頬が、ピクリと動く。
存在は知っていた。だが、あまりにも可愛すぎるのだ。
それを口に含む? 良いのか?
「……でも、私は初めてなんだ」
「誰でも初めてはありますよ。優しく口に入れますから」
「そうか。なら――ありがたく」
椅子から伸びをしてスプーンを前に突き出す。椿姫は、おそるおそる頬張った。
卵の甘味とケチャップが絡み合い、なんともいえぬ濃厚な味わい。
白米の旨味まで感じられる。
「美味しい……」
「ですよね。ここの食堂、おすすめなんですよ」
「次は……おむらいすにしてみるか」
「おお、いいですね!」
するとそのとき、隣で男子学生たちが声をあげていた。
「なんか、百合百合してないか?」
「確かに……あれは百合百合だな」
「くぅ、二人とも可愛すぎるぜ」
それに気づかない二人ではなかったが、百合という知識がなかったので、花の言葉だと思っていた。
椿姫は思わず、山のユリの花を思い出す。
そのとき、女子生徒三人が隣にやってきた。
「あ、あのー!」
「は、配信見ました……その、凄かったです!」
「私ももです! 本当にその、かっこよかったです!」
それだけ言うと、女子たちは恥ずかしそうに去っていく。
「女性も見てくれているんだな」
「見たいですね。男の人からは声を掛けられるようになってきましたけど。まあ、さすがに隠し通すのも限界ですよね」
先日の試練ダンジョンは探索協会のスパチャ少なすぎぷち炎上があり、多くの一般ユーザーが見ることになった。
椿姫の処遇は、協会からの連絡待ちという状態である。
「そうだな。とはいえ、話しかけてもすぐ離れていってしまうが」
「皆さん、椿姫さんが凄すぎて話しかけられないみたいです」
「凄い? 何がだ?」
「強すぎるからですよ。憧れや尊敬を抱いてるんです。私も気持ちは分かります」
「そうなのか。私は、気軽に声を掛けてもらいたいのだがな」
伊織の言う通り、学校で椿姫の認知、人気度は高まっていたが、話しかけづらいという空気も出ていた。
だがそこには強さだけではなく、伊織の凄まじい可愛さと人気があることも当人は知らない。
例えるならば世界的人気なアイドルが二人で食事をしているようなものだ。
それもオムライスを食べあうような百合百合。誰もが入るのを躊躇する。
「まあでも、私は少し椿姫さんを独占できて嬉しいですけどね。こうやって、いっぱい話せますし」
「そうか。そういってもらえると嬉しいな」
二人のやり取りに、後ろの男子学生が頬を赤らめていた。
「協会からの連絡はまだないですが、今後はどうしていきますか? 色んなダンジョンを攻めて行きます?」
「そうだな。私にはまだ知らないダンジョンや魔物、それに目覚めし者としてまだまだ新米だ。今までは叔父の背中を追いかけていたが、これからは自分の興味があることに目を向けていきたい。――それに気づかせてくれたのは、伊織、君のおかげだ」
「え!? そ、そんな私なんて!?」
「これもよろしく頼む」
「とんでもないです。はい。――そういえば、椿姫さんずっとスマホ鳴ってませんか? ……もしかして」
「帆乃佳だろう。日常茶飯事だ。おかげで、随分と打つも速くなった」
椿姫の言う通り、魚定食を終えると、凄まじい動きでボタンを打ち始めた。それもフリック入力。
それを見た伊織は、私も負けたくないと拳を握った。
そして椿姫は、なぜか眉をひそめていた。今まで見たことのない表情を浮かべている。
「…………」
「どうしました? 椿姫さん」
「いや、協会から帆乃佳に通達があったらしい。そして、一緒についてこいと」
「あ、そうなんですね。佐々木さん、協会の方からの信頼ありますもんね。放課後、じゃあ私もついていきますよ」
「ありがたい。それで、その、よくわからない文言が付いているんだ」
「え? ちょっと、いいですか?」
伊織は、失礼しますと顔を覗き込む。
そこには、帆乃佳のメッセージが映し出されていた。
『椿姫、会長から話があるから一緒に行くわよ。後、待ち合わせはどこにする? 別に近くまで行ってもいいけど。それと、水着持ってる?』
56
お気に入りに追加
258
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる