23 / 36
第23話 最強の矛、最強の盾。
しおりを挟む
「なるほど、ようやく使い勝手が分かってきたな」
笑みを浮かべる椿姫。
試練ダンジョン23階層。内部は既にとてつもない広さになっていた。
大型魔物が生息しているからか、それに伴って天井が高い。
椿姫の周りにはケンダウルスと呼ばれる牛の魔物が三体も立っていた。
デカい斧、魔力を帯びた武器を構えている。
”大剣豪、よくこんな所で笑えるな……”
”見てるこっちがヒヤヒヤしてしまう”
”でもマジで強すぎて安心感はある。どこまで行くんだろう”
”そろそろ魔力切れするんじゃないか?”
”目覚めし者の特別な能力とかはないのかな”
”確かに、まだ発動はしてないな”
”いや、普通の剣技でここまで来れるのがやべえよw”
”そうだなww”
”絶対に壊れない刀、だけじゃここまでこれるやつはいないぞw”
”どれほどの研鑽を積んだんだろうな”
コメントの通り、椿姫は今まではいつもの剣技で戦っていた。
だが、ようやく気付く。
「伊織、試したいことがある。悪いが防御を頼んでいいか」
「はい! 無理はしないでくださいね」
”まだ余裕あるのか”
”伊織ちゃんの魔力量、どうなってんだ?”
”ダンジョン崩壊時もそうだったけど、とてつもないよね”
”治癒はめちゃくちゃ魔量消費凄いって聞いたけど、それに合わせて防御もでしょ?”
”二人だけで探索者百人分ぐらいの力がありそう”
椿姫はその場で足を折りたたむと、次の瞬間、反動で高く飛んだ。
突然、敵が近づいてきたことに驚いたケンダウルスたちは、椿姫を真っ二つにさせんとばかりに勢いよく斧を振る。
「グオオオオオオ!」
”当たったら即死じゃね!?”
”防御があるから大丈夫じゃないか?”
”このレベルの魔物は防御貫通を持ってるよ”
”流石にお守りみたいなもんじゃないか? いや、伊織ちゃんを舐めてるわけじゃないが”
”どうだろう。防げる気もするけどこえええ”
それに対し、椿姫は顔色一つ変えずに斧を回避した。
続く二激目、斧が頬をかすめるも、足をかけて反対方向に飛ぶ。
そこには、もう一体のケンダウルス。
「――さて、どうなるか」
すると椿姫は右手の闇の剣に力を込めた。より一層闇が深くなる。
そのまま首に剣を這わせる。防御エフェクトが光るも一直線に進む。魔物に激突と同時に切り裂くと、首を落とした。
”攻撃力ヤバすぎwww”
”すげえ、ケンダウルスってめちゃくちゃ防御が高いで有名じゃなかった?”
”1㌧の打撃でもビクともしないって聞いたことあるぞ”
”それを一撃って、宮本ヤバすぎる”
”大剣豪、ちょっとやりすぎではw”
しかしそこでコメントが加速する。
それは、視聴者が椿姫の剣に気づいたからだ。同時に伊織も。
「つ、椿姫さんそれは!?」
「ああ、ようやくわかった。この武器は――進化するみたいだ」
闇の剣が禍々しい形に変化していた。より魔力が漲っている。
”進化!?”
”どういう原理だ!?”
”相手の魂を吸い取る? いや、魔力か?”
”進化する剣なんて初めて聞いたぞ”
”すげえええええええええ”
”大剣豪、これ以上強くなったダメですよおおお!?”
「――そしてもう一つ」
そのとき、一体のケンダウルスが怒り狂って突撃してきた。
椿姫はまっすぐ進み、光の剣を大きく振りかぶった。
するとなんと、斧を真っ二つにする。
これにはケンダウルスも叫んだ。しかし椿姫は容赦なく闇の剣で切断した。
「光の剣は防御を貫通させるみたいだ。おそらくだが、魔法を斬っているともいうべきか」
”ヤバすぎですよwww”
”は、なにそれ!?”
”つまり防御無効化!?”
”進化する剣と無効化の剣……え?”
”元々凄まじい剣技なのにwww”
”ヤバすぎるだろww”
”ここからどうなるんだ!?”
”ちょっと伊織の開いた口が広がってないぞwww”
”これは流石の伊織でもなww”
「凄すぎですよ椿姫さん」
「いや、まだまだだ。今は能力に振り回されているにすぎない。これから、もっと研鑽を積む。私は気づいたよ伊織。――まだまだ、強くなれる」
武者震いをする椿姫に伊織は真剣な面持ちで声を掛けた。
「なら椿姫さん、私のも見ていてください」
”伊織ちゃん!?”
”前に出た!?”
”あ、危ないよおおおおおおおおお”
”一体何をするんだ!?”
残ったケンダウルスはさらに怒り狂っていた。
そして伊織に斧を振りかぶる。
椿姫はただそれを見ていた。伊織の言葉を信じている。
”やべええええええ”
”大剣豪、助けてあげてくれ!?”
”し、死んじゃう!?”
”伊織ちゃん!?”
斧が伊織に迫りくるも、寸前でガラスが響いたような音がこだました。
なんと、寸前で斧が止まっているのだ。
そして魔法のエフェクトが発動していた。
”は?”
”え、受け止めた!?”
”誰だよ防御貫通っていっていったやつ!?”
”おいまて、また攻撃ふってきたぞ!”
「グガガガガァアッ!」
だが何度攻撃を当てても伊織の防御は防げなかった。
椿姫は微笑み、そして前に出るとケンダウルスを一撃で堕とす。
「腕をあげたな」
「こそ練してますからね。――私は今まで誰かを助けてばかりでした。でも、少しは自分の気持ちも大事にしたいです。椿姫さんに、追いつきたいですから」
「――楽しみにしているよ」
そして二人は、更なる階層に駆けていった。
”ヤバすぎコンビwwwwwwwww”
”もう誰も手がつけられねえよw”
”これが最強の矛と盾の実写版だ。マジで実際どっちが強いんだ?”
”その試合みてえw”
”さすがに大剣豪じゃないか? でも、これからどうなるかは気になるな”
”いつか戦ってくれるのか?”
”おまいらそれよりまだ上に上がるみたいだぞww”
”た、たしかにww”
”もう魔物のライフはゼロよ!”
その日、矛と盾がトレンド入りしていたのは言うまでもない。
笑みを浮かべる椿姫。
試練ダンジョン23階層。内部は既にとてつもない広さになっていた。
大型魔物が生息しているからか、それに伴って天井が高い。
椿姫の周りにはケンダウルスと呼ばれる牛の魔物が三体も立っていた。
デカい斧、魔力を帯びた武器を構えている。
”大剣豪、よくこんな所で笑えるな……”
”見てるこっちがヒヤヒヤしてしまう”
”でもマジで強すぎて安心感はある。どこまで行くんだろう”
”そろそろ魔力切れするんじゃないか?”
”目覚めし者の特別な能力とかはないのかな”
”確かに、まだ発動はしてないな”
”いや、普通の剣技でここまで来れるのがやべえよw”
”そうだなww”
”絶対に壊れない刀、だけじゃここまでこれるやつはいないぞw”
”どれほどの研鑽を積んだんだろうな”
コメントの通り、椿姫は今まではいつもの剣技で戦っていた。
だが、ようやく気付く。
「伊織、試したいことがある。悪いが防御を頼んでいいか」
「はい! 無理はしないでくださいね」
”まだ余裕あるのか”
”伊織ちゃんの魔力量、どうなってんだ?”
”ダンジョン崩壊時もそうだったけど、とてつもないよね”
”治癒はめちゃくちゃ魔量消費凄いって聞いたけど、それに合わせて防御もでしょ?”
”二人だけで探索者百人分ぐらいの力がありそう”
椿姫はその場で足を折りたたむと、次の瞬間、反動で高く飛んだ。
突然、敵が近づいてきたことに驚いたケンダウルスたちは、椿姫を真っ二つにさせんとばかりに勢いよく斧を振る。
「グオオオオオオ!」
”当たったら即死じゃね!?”
”防御があるから大丈夫じゃないか?”
”このレベルの魔物は防御貫通を持ってるよ”
”流石にお守りみたいなもんじゃないか? いや、伊織ちゃんを舐めてるわけじゃないが”
”どうだろう。防げる気もするけどこえええ”
それに対し、椿姫は顔色一つ変えずに斧を回避した。
続く二激目、斧が頬をかすめるも、足をかけて反対方向に飛ぶ。
そこには、もう一体のケンダウルス。
「――さて、どうなるか」
すると椿姫は右手の闇の剣に力を込めた。より一層闇が深くなる。
そのまま首に剣を這わせる。防御エフェクトが光るも一直線に進む。魔物に激突と同時に切り裂くと、首を落とした。
”攻撃力ヤバすぎwww”
”すげえ、ケンダウルスってめちゃくちゃ防御が高いで有名じゃなかった?”
”1㌧の打撃でもビクともしないって聞いたことあるぞ”
”それを一撃って、宮本ヤバすぎる”
”大剣豪、ちょっとやりすぎではw”
しかしそこでコメントが加速する。
それは、視聴者が椿姫の剣に気づいたからだ。同時に伊織も。
「つ、椿姫さんそれは!?」
「ああ、ようやくわかった。この武器は――進化するみたいだ」
闇の剣が禍々しい形に変化していた。より魔力が漲っている。
”進化!?”
”どういう原理だ!?”
”相手の魂を吸い取る? いや、魔力か?”
”進化する剣なんて初めて聞いたぞ”
”すげえええええええええ”
”大剣豪、これ以上強くなったダメですよおおお!?”
「――そしてもう一つ」
そのとき、一体のケンダウルスが怒り狂って突撃してきた。
椿姫はまっすぐ進み、光の剣を大きく振りかぶった。
するとなんと、斧を真っ二つにする。
これにはケンダウルスも叫んだ。しかし椿姫は容赦なく闇の剣で切断した。
「光の剣は防御を貫通させるみたいだ。おそらくだが、魔法を斬っているともいうべきか」
”ヤバすぎですよwww”
”は、なにそれ!?”
”つまり防御無効化!?”
”進化する剣と無効化の剣……え?”
”元々凄まじい剣技なのにwww”
”ヤバすぎるだろww”
”ここからどうなるんだ!?”
”ちょっと伊織の開いた口が広がってないぞwww”
”これは流石の伊織でもなww”
「凄すぎですよ椿姫さん」
「いや、まだまだだ。今は能力に振り回されているにすぎない。これから、もっと研鑽を積む。私は気づいたよ伊織。――まだまだ、強くなれる」
武者震いをする椿姫に伊織は真剣な面持ちで声を掛けた。
「なら椿姫さん、私のも見ていてください」
”伊織ちゃん!?”
”前に出た!?”
”あ、危ないよおおおおおおおおお”
”一体何をするんだ!?”
残ったケンダウルスはさらに怒り狂っていた。
そして伊織に斧を振りかぶる。
椿姫はただそれを見ていた。伊織の言葉を信じている。
”やべええええええ”
”大剣豪、助けてあげてくれ!?”
”し、死んじゃう!?”
”伊織ちゃん!?”
斧が伊織に迫りくるも、寸前でガラスが響いたような音がこだました。
なんと、寸前で斧が止まっているのだ。
そして魔法のエフェクトが発動していた。
”は?”
”え、受け止めた!?”
”誰だよ防御貫通っていっていったやつ!?”
”おいまて、また攻撃ふってきたぞ!”
「グガガガガァアッ!」
だが何度攻撃を当てても伊織の防御は防げなかった。
椿姫は微笑み、そして前に出るとケンダウルスを一撃で堕とす。
「腕をあげたな」
「こそ練してますからね。――私は今まで誰かを助けてばかりでした。でも、少しは自分の気持ちも大事にしたいです。椿姫さんに、追いつきたいですから」
「――楽しみにしているよ」
そして二人は、更なる階層に駆けていった。
”ヤバすぎコンビwwwwwwwww”
”もう誰も手がつけられねえよw”
”これが最強の矛と盾の実写版だ。マジで実際どっちが強いんだ?”
”その試合みてえw”
”さすがに大剣豪じゃないか? でも、これからどうなるかは気になるな”
”いつか戦ってくれるのか?”
”おまいらそれよりまだ上に上がるみたいだぞww”
”た、たしかにww”
”もう魔物のライフはゼロよ!”
その日、矛と盾がトレンド入りしていたのは言うまでもない。
54
お気に入りに追加
258
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【ダン信王】#Aランク第1位の探索者が、ダンジョン配信を始める話
三角形MGS
ファンタジー
ダンジョンが地球上に出現してから五十年。
探索者という職業はようやく世の中へ浸透していった。
そんな中、ダンジョンを攻略するところをライブ配信する、所謂ダンジョン配信なるものがネット上で流行り始める。
ダンジョン配信の人気に火を付けたのは、Sランク探索者あるアンタレス。
世界最強と名高い探索者がダンジョン配信をした甲斐あってか、ネット上ではダンジョン配信ブームが来ていた。
それを知った世界最強が気に食わないAランク探索者のクロ。
彼は世界最強を越えるべく、ダンジョン配信を始めることにするのだった。
※全然フィクション

底辺ダンチューバーさん、お嬢様系アイドル配信者を助けたら大バズりしてしまう ~人類未踏の最難関ダンジョンも楽々攻略しちゃいます〜
サイダーボウイ
ファンタジー
日常にダンジョンが溶け込んで15年。
冥層を目指すガチ勢は消え去り、浅層階を周回しながらスパチャで小銭を稼ぐダンチューバーがトレンドとなった現在。
ひとりの新人配信者が注目されつつあった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる