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第20話 勝者は――。
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「なんで! 当たらないん! ですか!」
小倉が何度攻撃を仕掛けても、伊織には触れる事すらできなかった。
ただ伊織は余裕の笑みなんてものは浮かべてはいない。
必死で、ただ必死で避け続けていた。
何度かカウンター気味に攻撃を繰り出すも、小倉はそれを受け止めるか回避する。
回避はできても攻撃は素人だという自分の実力に、伊織は歯がゆくなる。
それを見かねた帆乃佳が、後ろから声を上げた。
「キリがないみたいね。――どうかしら、目覚めし者同士、本気でやり合うって言うのは」
「――お嬢様、それは流石に!?」
「ねえ伊織さん、どう?」
小倉が攻撃を仕掛けながら声を上げる。
そして伊織も気づいていた。小倉が目覚めし者だということに。
それでも、こくこくと頷いた。
「だって、小倉」
「――どうなっても知らないですからね!?」
直後、小倉は飛んだ。
上段からの振り下ろし。
それに対して伊織は眉をひそめた。
小倉の攻撃は縦横無尽で、前後左右から高速攻撃を仕掛けてきていた。
ただこれでは一方向のみに限定される。
しかしその直前、小倉の身体が魔法のエフェクトで光る。
それに対し、伊織も目覚めし者を発動させた。
「――な、これどういうことですかあ!?」
絶対に割れないガラスを叩いたかのような音が、その場に響き渡る。
小倉の攻撃は上段からの振り下ろしではなく、 伊織の後方か攻撃を仕掛けていたのだ。
だが小倉の剣は伊織に届いていなかった。
「――防御です。これが、私の力です」
「ふにゃあ!? お嬢様、こんなのどうやって攻撃したらいいんですかあ!?」
それから何度か攻撃を仕掛けるも、伊織は回避、それでも不可能な攻撃は防御した。
しかしその途中で、小倉が膝をつく。
「も、もう魔力が切れたですう」
「……小倉さんの能力は瞬間移動なんですね。びっくりしました」
「普通、初見で避けれないんですけどね。お嬢様ー! どうしたらいいですかー! 小倉、負けないですが勝てもしないですー!」
それを聞いた帆乃佳は、はあとため息をはく。
「いいえ、魔力切れになるまで仕留めきれなかったあなたの負けね。伊織さんは魔力がまだ残ってるわ」
「……えええええ!? ……はい」
伊織は訳が分からなかった。勝てた? いや、でも――。
しかしそこで椿姫に視線を向ける。
「伊織、勝利は勝利だ。だが、研鑽を怠る事は忘れてはいけない。――いい試合だった」
そこで伊織は初めて微笑む。
それから、膝をついている小倉に手を差し伸べた。
「ありがとうございました。小倉さん」
「……こちらこそっす。――え、身体が!?」
「治癒も使えるんです。でも、私はくたくたです。もう一度は勘弁してくださいね」
天使のように微笑む伊織に、小倉は完全に敗北を認める。
「上には上がいるんすねえ。でも、おもしろかったです。またヤりましょう!」
「はい。こちらこそありがとうございました」
そのまま少しふらつくが、小倉が身体を支える。
二人は後ろに戻ると、椿姫と帆乃佳を眺めた。
「椿姫、目覚めし者を再習得するには、当時の気持ちを思い出すことよ。私が、肌で教えてあげるから」
「――ありがたい」
竹刀を構え、そして次の瞬間、二人は目にもとまらぬ速度で剣をぶつけ合った。
小倉が何度攻撃を仕掛けても、伊織には触れる事すらできなかった。
ただ伊織は余裕の笑みなんてものは浮かべてはいない。
必死で、ただ必死で避け続けていた。
何度かカウンター気味に攻撃を繰り出すも、小倉はそれを受け止めるか回避する。
回避はできても攻撃は素人だという自分の実力に、伊織は歯がゆくなる。
それを見かねた帆乃佳が、後ろから声を上げた。
「キリがないみたいね。――どうかしら、目覚めし者同士、本気でやり合うって言うのは」
「――お嬢様、それは流石に!?」
「ねえ伊織さん、どう?」
小倉が攻撃を仕掛けながら声を上げる。
そして伊織も気づいていた。小倉が目覚めし者だということに。
それでも、こくこくと頷いた。
「だって、小倉」
「――どうなっても知らないですからね!?」
直後、小倉は飛んだ。
上段からの振り下ろし。
それに対して伊織は眉をひそめた。
小倉の攻撃は縦横無尽で、前後左右から高速攻撃を仕掛けてきていた。
ただこれでは一方向のみに限定される。
しかしその直前、小倉の身体が魔法のエフェクトで光る。
それに対し、伊織も目覚めし者を発動させた。
「――な、これどういうことですかあ!?」
絶対に割れないガラスを叩いたかのような音が、その場に響き渡る。
小倉の攻撃は上段からの振り下ろしではなく、 伊織の後方か攻撃を仕掛けていたのだ。
だが小倉の剣は伊織に届いていなかった。
「――防御です。これが、私の力です」
「ふにゃあ!? お嬢様、こんなのどうやって攻撃したらいいんですかあ!?」
それから何度か攻撃を仕掛けるも、伊織は回避、それでも不可能な攻撃は防御した。
しかしその途中で、小倉が膝をつく。
「も、もう魔力が切れたですう」
「……小倉さんの能力は瞬間移動なんですね。びっくりしました」
「普通、初見で避けれないんですけどね。お嬢様ー! どうしたらいいですかー! 小倉、負けないですが勝てもしないですー!」
それを聞いた帆乃佳は、はあとため息をはく。
「いいえ、魔力切れになるまで仕留めきれなかったあなたの負けね。伊織さんは魔力がまだ残ってるわ」
「……えええええ!? ……はい」
伊織は訳が分からなかった。勝てた? いや、でも――。
しかしそこで椿姫に視線を向ける。
「伊織、勝利は勝利だ。だが、研鑽を怠る事は忘れてはいけない。――いい試合だった」
そこで伊織は初めて微笑む。
それから、膝をついている小倉に手を差し伸べた。
「ありがとうございました。小倉さん」
「……こちらこそっす。――え、身体が!?」
「治癒も使えるんです。でも、私はくたくたです。もう一度は勘弁してくださいね」
天使のように微笑む伊織に、小倉は完全に敗北を認める。
「上には上がいるんすねえ。でも、おもしろかったです。またヤりましょう!」
「はい。こちらこそありがとうございました」
そのまま少しふらつくが、小倉が身体を支える。
二人は後ろに戻ると、椿姫と帆乃佳を眺めた。
「椿姫、目覚めし者を再習得するには、当時の気持ちを思い出すことよ。私が、肌で教えてあげるから」
「――ありがたい」
竹刀を構え、そして次の瞬間、二人は目にもとまらぬ速度で剣をぶつけ合った。
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