最凶の魔王に転生した俺、シナリオをぶっ壊してスローライフがしたいのに、直属の六封凶が血気盛ん過ぎて困っています。

菊池 快晴

文字の大きさ
上 下
12 / 33

012 職人探し

しおりを挟む
「我が主、乗り心地はどうでしょうか」
「ああ、悪くないよ」

 俺はゴンの背中に乗っていた。今は森の中を低空で突っ切っている。
 魔力を抑えているので、今はライオンの二倍くらいの大きさになっていた。

 ちなみに俺の後ろにはシュリがいる。
 包み込まれるたゆん。

「疲れたらいつでも胸を枕に眠ってくださいね」
「ああ、そうさせてもらうよ」

 その横では、シュリが使役した魔狼に乗っているアリエルが、悔しそうに涙を流していた。

「ああ、魔王様っ! どうして私のところへ乗ってくださらなかったのですかっ! ああっ! 魔王様っ!」

 最初はアリエルのところに乗っていたのだが、「ああ、魔王様、魔王様、ああ揺れる魔王様」とちょっとうるさかったので移動したのだ。
 まあ、なんかごめん。

 ビブリア、ペール、ライフはお仕事中。
 俺が向かっているのは、とある孤島だった。

「そういえば魔王様のお知り合いなのですか?」
「まあ知ってるような知ってないような」
「ああっ! さすが魔王様!」

 きっかけは家だった。
 ハーピー一族が谷を捨て、まさかの大移動してくるとのことになったのだ。
 その理由は、こっちのが居心地がいいから。
 竜に奪われそうになってて焦ってたのでは? と思ったが、安全なほうがいいと言われてしまった。
 その清々しさはとても気持ちがいい。

 だが家造りの知識があまりにも足りなさ過ぎた。

 アンデットモンスターに任せてみたが、単純作業ではないからか、ボロボロの家が出来上がったのだ。
 俺も原作チート無双系じゃないので詳しくはわからない。

 そして、プロの技術者を何とか呼ぼうとなった。

『ではこのアリエルめが、王都から2-3人ほど技術者をかっさらってきます』
『あら、だったら私、シュリにお任せください。人間を洗脳して働かせますわ』
『そんな野蛮な事はダメよ。私が平和的に解決させるわ。死ぬか構築か、簡単な選択肢を与えるだけでしょ』
『野蛮すぎます。魔王様、このビブリアが各国から家関連の書類を奪い取ってきましょうか?』
『だ、だったら、に、人間を連れてきて回復しながら寝ずに働かせる?』

 最後のライフが一番恐ろしいことを言っていたのはちょっと笑えたが、どれも却下だ。

『俺がなんとかするよ』

 そして俺たちは、魔王城から一番近いルギルアという国へやって来た。
 ちなみに魔王城を狙っているかもしれない四つの大国の一つでもある。

 新情報はないが、水面下で何か動いている可能性もあるので油断はしていない。
 だが俺は冒険者だ。ランクもあげたこともあって、魔王城を襲撃する、なんてあれば気づくだろう。
 
 ちなみに近くまでアリエルの転移で飛ばしてもらったのでここまで一日足らず。
 まったく、血の気が多いところ以外は優秀な奴らばかりだ。

「私、ルギルア初めてですわ! ふふふ、人間どもめ、優秀な技術者を奪い去ってくれる!」
「何いってるんだ。アリエル」
「え?」
「そこにはいかない。いくのは、この先だ」

 俺は、何もない海に指を差した。
 いや、遥か奥、小さな島が見える。

「なんでしょうかあれ?」
「あそこにいるんだよ。俺がほしい技術者は。――シュリ、水の魔物を使役してくれ」
「畏まりました。しばしお待ちを」

 すると、水に手を向ける。
 シュリは魔物を怒らせることもできるし、従わせることもできる。

 そして現れたのは、デカい水蛇だった。

「何だ俺を呼ぶのは? ああっ? 人間にしちゃあ魔力が強いようだなあ?」

 うん、イキがよくていいね。

    ◇

「スーパー主様、乗り心地はどうでしょうか?」
「悪くないよ。ありがとう。よかったらうちの領地に来ない? 君と同じような友達もいるよ」
「なんと! 是非おともしやす!」

 蛇はなんかこういう舎弟っぽい口調が多いのかな?
 ウィンディーネの前にいた兄弟もそうだった。
 
 しかしさすがシュリだ。戦うこともなく魔力で従わせた。
 魔物は力関係が全てだ。

 誰もそれに嫌がることもないし、むしろ安定を望んでいる。

 魔物の世界はわかりやすくていい。

「……あの島にいくんですか?」
「ああ、知ってるのか?」
「……と、とんでもない人が住んでますぜ……」
「知ってるよ。でも、必要なんだ」

 そして俺たちは上陸した。

「悪いがアリエル、シュリ、ここで待っていてくれ。必ず連れて帰る」
「危険ではないのでしょうか?」
「そうです。魔王様に何かあれば……」
「大丈夫」

 島はそれほど大きくない。
 森を抜け、木々を抜けると、小さな小屋があった。

 ――原作通りだ。

 するととんでもない魔力を感じる。

「人間が何の用だッ!!!」

 突然後ろから攻撃を感じる。
 振り返ると大剣だったが、防御シールドで受け止めた。

「人間じゃない。俺は、魔王だ。それも良い魔王だ」
「……良い魔王?」

 そこにいたのは、しっかりとした身体つき、むちむちぼん、でも体躯は小さい可愛いドワーフ・・・だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

処理中です...