囚われのお姫様に転生しましたが、大人しく閉じこもっているとでも思いました？

5

誰？

この人。





目の前には腕を組みながら

こちらをしげしげと見てくる

イケメンが一人。



サラッとした黒髪と

キリッとした目が

異様にマッチしていて

イケメンだ。


語彙が貧弱な私には

うまく言葉にできないが

イケメンだ。





「おい、お前」




ん？


私に話しかけてる？






「私はグアムだ。

人間からは魔王と呼ばれている」




へぇ。


……………………。


って、エーーーーーーー！


魔王が急にきたーーーーー。





「お前が姫だな？」



魔王とエンカウントして

慌ててしまいうまい

返答ができない。




「そっ、そうでしな」



…………かんだ。



盛大にかんだ。





「ん？　しなとはなんだ」



魔王は真面目なのか

しなについて質問してくる。




うっさいよ！


かんだことぐらい察してよ！


恥ずかしいから目も見れないの

気付いてないの？


魔王の無神経さに

怒りがわいてくる(少し理不尽)





「知りませんよ、しななんて。

そんなことより

なんでここに来たんですか？

魔王さんは」




秘技。

冷たい言い方で話題をそらす。



これをすれば空気をあえて

読まない嫌なやつ以外は

話を変えてくれる。

成功率は驚異の80％だ。




「おう、そうだな。


俺はお前に勇者の素質があるか

確かめに来た」





例に漏れず魔王もこの秘技に

かかった。


そして、嫌なやつではなかった

魔王さんは爆弾発言をしていた。




…………勇者？


お姫様ってだけでも

びっくりしたのに



勇者？



なんかよく分からなく

なってきた。



情報量が多すぎて

脳みそが思考を拒否する。




それでも、理解するためには

考えないといけない。




えーっと。


私はまず、

人質のお姫様に転生したでしょ。



そして、

この世界は魔物が普通にいる

バリバリの異世界だったでしょ。



その上、


私は勇者の素質がある

かもしれない？



…………全部よくわからない。


冷静になったら全部が

不可解すぎて脳がパンクしそうだ。





「じゃあ、確かめるぞ」



思考の渦に呑まれていた私は

魔王の言葉で意識を戻した。



確かめるってどうやるんだろ？


痛いのは嫌だけど…………。



拒否権がないのはなんとなく

分かったので魔王に全て任せる。




「いくぞ」



小さい声で呟いた魔王は

手のひらに黒い炎を蓄えていく。




ふぇ？


なにそれ。


ヤバいヤバいヤバい。


見ただけで生存本能が刺激される。


そんな危ないものを魔王は

突然生み出したのだ。





「覚悟しろ」



そう言った魔王は

あろうことか


私に向かって黒炎を

放ってきた。



バスケットボールくらいの

大きさの炎。


それが野球ボールくらい

早いスピードで飛んできたのだ。



私は思わず目を閉じてしまった。