絶対に勝てない僕は、それでも君を思い続ける。

寿司ただかな

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君と僕

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「世界が全部濁って見える……」

君はうつむきながら寂しげに呟いた。

僕はそれを聞いて「助けなきゃ」と思

うのに体は全く動かない……

あぁ、僕はなんて無力なんだろう。

自分自身に苛立ちを覚えて、でも一歩

踏み出すことはやっぱりできない。

しばらくしてゆっくり立ち去る君の背

中を僕はただ見ているだけだった。

それが君と僕の出会い。






数日たってまた君と出会った。

これはきっと運命だ。

そう確信した僕は何もおかしくないと

思う。

そして、君が僕に気づいた。

嬉しくて嬉しくて仕方なかった。

そこから君と僕の長いようで短い一緒

の時間が始まる。





一緒にいることを君は嫌がった。

僕を遠ざけようとしてくる。

とても傷ついたけど大丈夫。

だって、君は優しいから最後には僕を

そばにいてさせくれると知ってる。

そして、出会ったときはいつも暗かっ

た君の表情は徐々に明るくなっていっ

た。

その理由の一部に僕がなれていたなら

幸せだなぁと思う。

絶対に君は僕に教えてくれないけど

ね。





君が中学生になるときには、僕が一緒

にいることが当たり前になっていた。

遊ぶときも学校にいるときも登下校す

ら一緒だった。

まぁ、一日の大半をともに過ごしたっ

てことだ。

とっても幸せだ。

そんな毎日が永遠に続けば良いな。

いや、永遠に続くんだって思ってた。

だけど、それはあり得ない話。

その時の僕はあまりにものほほんとし

すぎていたのだ。




中学三年生、いわゆる受験生になった

とき、君の態度が変わった。

少しずつ少しずつ僕を邪険に扱う。

なんでも、僕がいると疲れるらしい。

悲しいけど、仕方ない。

受験はストレスがたまっていつも通り

にはいられないんだろう。

でも、やっぱり寂しい……。






必死に勉強した君は、望む高校に無事

合格した。

おめでとう!

これからも一緒にいようね!

そう思っていたのは僕だけ。

高校生の君はあっさりと僕の代わりを

見つけて僕は不要になったのだ。

一時的なことだと信じた。

僕と君の絆はこんなに脆くないはず

だ。

そのはずなのに距離は縮まらなかっ

た。





僕がいなくって後悔すれば良い。

ふてくされた僕はあろうことか君の不

幸を願った。

僕が必要だと気づいたら泣いて謝りに

来るさ。

そこから一ヶ月がたち二ヶ月がたちつ

いに半年が過ぎた。

このときになってようやく僕は気づい

た。

本当に君は僕がいなくても平気なのだ

と。

その証拠に最近の君は常に楽しそうで

ウキウキしている。

そっか、もう用済みか……。

今まで認められなかったことが嘘のよ

うに、すんなり納得した自分に少し驚

く。

もう僕にでる幕はないのだ。

悔しいけどノブ君のことは任せたよ。



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