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王都とおっと、王都っと?
オナっちH?
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ヤバイ
サンとスノウの交わりを発端に、結局の所、皆昂ってしまった感情が抑えきれず、就寝で乱交が始まってしまった。
マティとケティは姉妹でお互いを慰め合い、我慢できなかったルナリアは、ワタシを誘って来たけど毅然と断ったので、1人泣きながら自慰にふけってた。
途中から、サンが「おいしくない」とかいいながら、ルナを襲ってたけどね。
なんだろなー、結局そうなっちゃうのよね。
ワタシ?、何度も言うけど同性とHする趣味はないの。1人で見張り……
……でも、悶々としてきた。
周りには誰もいない。あんあんと声だけ漏れ聞こえてくる。
ワタシは野営用の折り畳み椅子の背もたれに体を預け、キュロットスカートをショーツごと膝まで下ろす。
露わになった秘穴スポットを指でなぞる。既に濡れてた。
スノウに股間を啜られた感じを思い出した。凄いクンニだった。
ああ、もうワタシってば欲求不満だわ、オ型ゴーレム貰っておけば良かった?
いやいや、あんなので満足できるか。
唇陰を指で挟みながら、クリPさんをいじる。クチュクチュとイヤラシイ音が耳に入る。いい感じに昂って来たところで秘穴に指を入れた。
「あ、んっ……」
思わず声が漏れてしまった。
だったらルナリアとHしろって?、そうじゃないのよねー
彼女の事は別に嫌いじゃない、Hも嫌じゃない、でもHする事は極力避けたい。
お互い男性神の『選別者』としての呪いがかかってる。どの様に作用しているのか、未だにわからないけど、この呪い…
…女にも作用する。
正直言って、彼女とのHはキモチイイ、凄くキモチイイ、この上なく甘美なまでにキモチイイがいい。法具でも呪具でなんでもいい、秘穴に突っ込んで、ガン突きしたくなる。
男のキモチが良くわかる。
始めると止まらなくなる。
それはルナリアも同じ、お互い絡み合い、狂気じみたHになる。
それが怖いし、逆に耐えなければならなくて辛い。
男性神の思惑がひしひしと感じる。
スノウやマティに指摘されて、初めて自覚した。
ルナリアには言ってない。
関係が壊れるのが嫌。
1人がいいなどと言っときながら、皆と別れるのが嫌。
ワタシはそんな自分がつくづく嫌。
「ん、あっ」
ルナリアを思いながらオナニーする。彼女の顔、引き締まった褐色の肢体……ワタシの腕の中で喘ぎ悶える姿。カワイイ
「ルナぁ……あ、んあっ!、いきそ…」
「なら、ルナ、たべろ」
「うわっ!!」
ワタシは耳元で囁かれ、ビックリして野営用の折り畳み椅子から転げ落ち、腰を打った
「アイタタタ、サン!?、る、ルナとHしてたんじゃないの!?」
サンはエルフだからなのか、ワタシの探知にかからない。本人に聞いてみたけど、特に気配を殺したり、阻害したりはしていないらしい。相性なのかしら……
「ルナ、ひーひー、いって、ねた」
「ヒーヒーって……、そうなのね……」
絶倫スノウでさえ、サンの超絶責めには耐えられない、ルナリアがもつはずもないか……
ワタシは起き上がり、居住まいを直す。椅子を起こし、座り直した。
「Hしたいのか?」
「まぁ、チンPが恋しいのは確かね……」
「ビッチ?」
「サンに言われたくないわ」
「エルフ、ビッチ、わかってる」
サンまで『ビッチ』を覚えてしまった。
「ふふ、サンも随分と人族的になって来たわね」
「エム、サンとHするか?」
うう、どんなHか興味はある。でもしたら抜け出せなくなりそう。
「いやダメよ、サンとHしたらワタシもスノウに殺される、それに約束なんでしょ?」
サンはコクリと頷いた。
それにしてもスノウは、サンがルナリアとHするのは何故か止めない。なんでなのかしら?
「そういえば、サンはルナとHしてもなんともないの?」
「???」
サンは、ワタシの言ってる意味がわかってない様子。
「んー、もっとしたくなるとか、メチャクチャにしてやりたいとか?」
「??、サン、そんなこと、ない」
サンはエルフ、男性神の眷属のはずだけど、……やっぱりメスは違うのかしら?、いやでも、同じメスのスーは、ワタシをレイプしようとしたわよね?。
「……ならいいんだけど」
「ルナ、おいしくない、でも、Hイヤじゃない」
「おいしい、おいしくないの違いはなに?」
「におい」
「におい?、ルナって臭いの?」
「くさくない」
「…どんな匂いなのよ」
「おいしいにおいと、おいしくないにおい」
ますますわからん
「マティとケティは?、おいしそう?」
サンは、んーと考え込む。
「……マティ、おいしくない、……ケティ、おいしい」
「え?、そうなの?、双子なのに違うんだ……じゃあニクは?」
「わからない、においしない」
ああそうか、そうだったわね。でも共通点がわからないわ。
「ワタシは?」
「わからない」
「え?」
「スノウとおなじ、たべないとわからないにおい」
「どういうこと?」
「エム、へんなにおい、する」
「くさいんかーい!」
ワタシは思わず、ビシッとサンに裏手突っ込みしてしまった。
「くさくない、イヤなにおい、ちがう……」
サンは言葉を選んでる。
「……すこしふしぎ?」
SFかよ。ワタシしゃ青ダヌキか。
青ダヌキ?
「ふしぎなにおいって何???」
「わからない」
サンは困った様に首を傾げた。これ以上聞いてもエルフの感覚は、ワタシには理解できなさそうね。
「まあ、いいわ」
「エム、ルナ、たべないのか?」
「たべないわよ」
……
新緑豊かな森の中、馬車は街道をゆるりと進む。
整地されてない街道。近くに村も街もない事から、荒れ放題ってとこね。
それでも、特殊な足回りの馬車は、ほとんど揺れもなく道を進む。
ここまで盗賊だの魔物だのが現れることなくのんびりと進んできた。
今日は珍しくマティが御者を勤めてる。ワタシは穏やかな空気を満喫したい気分だったので、彼女の隣、御者席に座ってる。
御者を誰にも譲らなかったケティはどうしたのかというと、馬車の中でノックダウン中。
昨晩サンは、ワタシとの会話の後でマティとケティの所に乱入し、挙句、ケティを食べた。
予想通りというか、マティには手を出さなかったらしいわ。
「一体どんなHだったのよ」
「表現しにくいです」
「表現しにくいって……」
「私の口からは説明できません、当事者本人に聞いてください。エルフ、怖い」
なんなのよそれ…まぁ、いいわ
「でも珍しいわね、初めてなんじゃない?、ケティと2人でHしたのって、実の姉妹だからそんな事しないと思ってはいたけど」
「……いえ、割と……してます」
「えー?、そうなの?」
「どうやるとエム姉が気持ち良くなるか、2人で研究してて……」
何の研究をしとんねん、戦乙女はどこ行った?
「マティの場合、マッキー対応じゃないの?」
マティはそっぽ向いた。耳が赤い。
「ヤレヤレ、ケティはともかく、2人とも、もうすっかりビッチね」
「そうですね、エム姉のせいです」
ワタシかよ!
ふと光を感じ前方を見た。馬車の進む先が妙に明るい。
「んっ?、森が切れてる?」
馬車は森を抜け、突然開けた場所に出た。
「わぉ」
眼前に広がる草原。マティがそこで馬車の速度を落とした。
そよぐ風、草の匂い、サワサワと草が風に撫でられ流れて行く。
……でもなんだろう、ちょっとエリア的に異質なものを感じる、そこは森の中にぽっかりと空いたような空間。
「何ここ?、ちょっと妙じゃない?」
「ここは古戦場です」
とマティが説明してくれた。
「古戦場?」
「王都と北の大帝国が激戦を繰り広げた場所で、『オケハッザーマ』と呼ばれてます。その昔は森だったようですが、200年経った今も、あまり植物が育たない低草地です」
育たないって、それってヤバイ土地じゃんって、え?、オケハッザーマ??、どっかで聞いた様な……
そんなワタシの視界に飛び込んできた物体、それに目を奪われた。草地に埋もれるように、長い筒を天に伸ばした赤錆色の物体。
「ストップ!!」
「え?、ストっ?、なんですかエム姉?」
マティが聞き返して来た。
「馬車を止めて!!」
馬車が止まり、ワタシは飛び出した。
「エム姉!、一体どうしたのですか!?」
マティの呼びかけを無視して、ワタシは走った。
「どうしたの?」
ルナリアが何ごとかと、馬車の窓から顔を出す。
……
腰高の草むらを掻き分け、視界に入った物体へと向かう、ルナリア達も追って来てる。
そして、目の前に現れたモノを見て、ワタシはゾクっとした
「ウソ、マジで?」
ルナリアとマティも追いついた。
「エム、何よ突然…」
ワタシの目の前に現れたのは、大きな鉄の塊、赤錆びてはいるものの、それは人工的な意匠を持っている。
ワタシの記憶にある、ワタシはコレを知っている。
物体に備わったソレは、『回転砲塔』に『単砲身』、そしてその足回りは『無限軌道輪』。
戦闘装甲車、『戦車』
まごうことなき、戦車がそこで朽ち果て鎮座している。周りをよく見ればそこかしこにいくつもある。
「なによコレ……」
「北の大帝国の『魔道兵器』です」
マティがそう説明した。
「魔道兵器?」
「私も聞いたことあるわ、北の大帝国は魔道兵器技術が発達していて、飛行する兵器も持っていたとか…」
と、ルナリア
いやいやいやいや、この世界において完全に異質なテクノロジーじゃない。
「これがどうしたの?、エム」
ワタシは戦車の上に飛び乗った。うーん錆び臭い。明らかに鋼鉄製だわ、ワタシは開かれたハッチから内部を覗いた。
戦車に造脂があるわけでもなし、知見もない、そんなに詳しくはないけど……
コレが魔道兵器?
200年も経つのに、錆び臭の中にほんのり匂う機械油臭。
砲身の根元には砲弾を装填する装置もある。
人が乗るようにも出来ている。
砲弾は残っていないので、どんな代物かわからないから、ひょっとしたら砲弾が魔力弾とかなのかも知れない。
続いてワタシは、戦車の胴体部を覗き見た、装甲が朽ちて、発動機が剥き出しになってる。
見ても良くわからないけど、たぶんディーゼルとか、ガスタービンだと思う。
おそらく化石燃料か、液体ガス燃料を用いた内燃機関システム。
コレがなんで魔道兵器?
こんなものが200年前から存在しているのに、なんで技術発展してないのかしら?、その辺りはニクが詳しそう。
「……ねぇニク、王都には大帝国の兵器を研究している人とかいないの?」
「してるよ?、それは錬金技術院だね。鹵獲した魔道兵器が保管されていて、戦史記念日には一般向けに公開展示されたりしてる。僕も見たことあるよ」
「ほんとに?」
ますます解せぬ。
「エム、なんでこんなものに食いつくの?、興味あるの?」
と、ルナリアが訝しんでる。
興味あるだろ!、とツッコミたい。でもここは抑える。
ところが、ニクが続けて説明してくれた内容にワタシは驚いた。
「北の大帝国の魔道兵器は、長年研究されてるけど、動作原理が解明されてなくて、錬金技術院でも未だに動かしたことがないって聞いてるよ」
「はぁ?」
200年も研究して成果なしとか、マジかー。
技術体系が違いすぎて、トンチンカンな研究してるのかしら?
ワタシは皆に許可を貰い、更に周囲を散策した。
地面を土魔法で掘りかえし、遺留物を物色する。でもたいしたものは出てこない、殆ど回収されてるみたい。戦車みたいな重量物は人力で動かすのが面倒だから放置したんでしょう。
皆は馬車付近で、昼食の用意を始めながら、ワタシが1人戦車の周囲を探索しているのを遠巻きに見てる。
…
「あんなことして何が楽しいのかしら?」
ルナリアは半分呆れたように言う。
「でも、ボクはエムさんのやってる事がなんとなくわかるよ?」
「それは錬金術士として?」
「うん」
ニクが頷く。
「ここは、普通の人にはなんの価値もない物ばかりだけど、エムさんにとっては『魔石』級なみのお宝なんじゃないかな?」
「あの鉄屑から魔石が取れるの?」
「例えだよ、あれらから魔石は出ないよ」
「ふーん」
ルナリアはわかってないなと、マティやケティ達は思った。
「エムさんは、研究者肌なんだと思うよ」
スノウがポンと手を叩いた。
「解ります、エムさんは魔法に関しても、独自の解釈で発現させてますよね?」
「そういえば、神聖術が使えないはずなのに、魔法で同じ事しようとしてたものね」
皆がうんうんと頷き合う
……
そんな会話がなされているとはつゆ知らず、ワタシは黙々と地面を掘り返していた。
「なんだか変な地質だわ……」
一見粘土質、でも叩くと砂のように砕けてしまう、砂岩かと思ったけどそうでもない。水気がまるでない。元々森だったと言うけど、とてもじゃないけど、これじゃ木は育たない……
「変質した?」
ザッザッ、ガチっ
「お?」
短剣の先に金属的な当たり。手で掘り返すと、一抱えほどある大きさの金属物体が出てきた。
見つけたのは『空薬莢』、それも大きさから恐らくは戦車砲弾。200年と言う年月で多少錆びてはいるけれど、乾燥した砂岩ぽい地面に埋没してたおかげで、内部の金属地に焦げ跡が確認できるし、底面には雷管らしきものもある。
「……間違いないわ、コレは火薬式の砲弾。何が魔道兵器よ、北の大帝国は科学技術国家なんだわ」
それから暫く捜索したものの、流石に未使用の実砲弾は見つからなかった。有ったら有ったで不発弾だから危ないけどね
その代わり、朽ちた自動小銃と、腐った弾丸数発を見つけた。
皆の元へと戻ると、抱えた物品を見たルナリアが眉根を寄せた。
「エムなんなの?、その小汚いのは?」
「コレ?、北の大帝国兵が使ってた武器ね」
「え?、武器?」
「弩みたいなものよ」
「どこがイシユミ???」
「こうやって構えて……ここを引くのよ、するとこの先から弾が……いえ爆裂魔法が出るのよ、ばばばばって連続でね」
とりあえず敢えて『魔法』と言っておいた。
「魔法が連続???」
「この筒はなんですか?」
スノウが手に持ちシゲシゲと眺めているのは砲弾の空薬莢。
「んー、攻撃魔法を詰めとく容器ね」
「魔法を詰める???……エムさんはなんで、これらの使い方を知っているのですか?」
「見たことあるからよ」
『え?』
「そんなことよりも、あまりここには長いしない方がいいわね、スノウには快適な場所なんでしょうけど…」
スノウが手にしていた空薬莢を台の上にゴトリと置いた。
「……そうですね。ここは身体が軽いです。外界でもこのような場所があるのですね」
スノウもこのエリアがどう言う状態なのか、理解してる
「ああ、そう言うこと」
それを聞いて、マティも納得した。
「なにが?」
でもルナリアは首を傾げた。貴方には一々説明せにゃならんのですか?
「ここの草原の植生が周囲の森とは明らかに異なるのはわかるわよね?」
ルナリアは周囲を見た
「古戦場だからよね?」
ちゃうわ
「古戦場はそうだけど、ここは元々森だったのよ?、200年たった今も森に戻らないって変だと思わない?」
「言われてみれば……そうね」
湿地帯でもなし、湖や沼があったわけでもない、火山や地盤沈下の形跡もない。空間的に不自然すぎる。極め付けは地質、森の土とは全く異なる。栄養の無い渇いた地面。
大戦時に何をしたのかわからないけど、違和感の理由は、地面を掘っていて確信した。その正体は……
『魔素』
「ルナ、この草原は魔素溜まりなのよ」
魔素は、魔族以外の種族には『毒』、人族などは過剰に魔素を浴び続けると、たちまち身体に異常をきたしてしまい、全身から血を噴き、最悪死に至る。
それは植物環境にも影響する。
地質が変質し、森が形成されないのは、恐らく魔素のせい。
それでも耐性のある植物だけはかろうじて生えている。雑草パワーね。
幸いにも、ここは魔族領よりもだいぶ魔素が薄いので、数日滞在する分には問題はなさそうだけどね。
それを聞いたルナリアが慌て出した。
「大変じゃないの!、なんで早く言わないのよ!、直ぐに出発しましょう!!」
「落ち着いてよルナ、そんな直ぐに影響は出ないわ」
「だって魔素溜まりなんでしょ!?」
「そこまで高い濃度じゃな……」
ワタシは、バッと振り向いた。広域探知に動く気配を感知した。
「人?」
ルナリアも気づいた。
「あそこに……いるわね」
「盗賊かしら」
遠目に数名、森の中から現れた。
「3人…4人…盗賊って感じじゃないわね」
向こうはワタシ達に気づいている様子だけど、森の入り口で固まって、何やら話し込んでる。
「ニク、サン、念のため馬車の中へ入って」
ニクとサンはワタシの指示に従い、素早く馬車に入り、窓のカーテンを閉めた。
「スノウ、お願いできる?」
「ヨロコンデ」
スノウは、すっとワタシ達の前から姿と気配を消した。
あの子、絶対に魔法士じゃないわよね?
しばらくすると、森の入り口にいた集団の中から1人だけ、こちらに歩いて来る。
「冒険者?」
騎士と思わせるなんとも豪奢な模様の入った鎧を着込んでる。鎧特有のガシャガシャとした音を立てるでもなくなく、足取りは軽い。見た目ほど装備に重さを感じさせない動き。
その騎士が両手を上げてワタシ達の馬車から離れた位置で立ち止まった。
「やあ、こんにちは」
金髪、日焼けした肌、キラリと光る白い歯、眩しい程に堀の深いちょっとイケメン。
「どうも」
イケメン騎士は、挨拶したワタシではなく隣のルナリアを観察する様に視線を向けてる。
「君たちは、商人か?、冒険者か?」
「盗賊なら、今ここで真っ先にあなたを襲ってるわ」
「……然りだね、僕は冒険者だ」
フランクに爽やかに微笑んでくるイケメン騎士。
ワタシは知っている。この手の輩は、胡散臭くて面倒臭い。
だけど、装備している鎧は血糊に汚れ、傷だらけ、何処かで戦闘してきたことを物語ってる。
「こんな所で何を?」
それはコッチの台詞だわ、だけど敢えて答えてあげましょう。
「旅の途中で休憩してるだけよ」
「ならばココでの休憩はやめた方がいい、何故ならココは『魔素溜り』だ」
ああ、この男も気づいているのか。
「そうですか、それはそれはご忠告どうも、じゃ、ワタシ達はもう行くので、サヨナラ…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
イケメン騎士が、慌てて引き止めようとしてきた。
「何か?」
「君達が向かう先は?」
「アッチ」
ワタシは指だけ差した。
イケメン騎士が苦笑する。何がおかしいんだか……
「……そんなに警戒しないでくれ」
「小汚くて、どこの馬の骨かわからない輩は、盗賊と同じと思ってるわ」
一瞬目を丸くしたイケメン騎士
「そうだね、コレは失礼した」
イケメン騎士は、騎士ぽいお辞儀をしてから顔をあげると、再び爽やかに笑う、いやだから何がおかしい。
「僕は、王都冒険者組合『クッサイア』に所属している『ノーマン・ゲッスウノ』と言う、冒険者等級はAA、向こうに待機しているのは、僕の徒党だ」
来た、意味不明ネーミング。それにしても等級AA冒険者か、実力はあるというね。
感じ的には……そうね、トランを思い出す。
クソ嫌な思い出だわ。
「クッサイア?、王都冒険者クラン三大派閥の?」
マティがそう言った。
「知ってるの?」
「王都では、有名な冒険者クランの1つです、私は名前しか知りませんが」
発酵させた魚の干物みたいな名前だけどね
「そう、僕はクッサイアの徒党…と、言ってもクランの中で数ある徒党の末席だけどね」
ノーマンは自分で言って、フフっと苦笑した。
「それで君達は?」
「ワタシは冒険者等級C、コッチはA、以上」
ワタシは、ルナリアを差してから、自らの認識票をチラッとだけ見せた。
「……名前は?」
「名乗る必要ある?」
「僕だけに名乗らせておいて?」
「誰も名乗れなんて言ってないわよ」
「え?、いやさっき…」
「どこの馬の骨かわからん輩って言っただけで、名乗れなんて一言も言ってないわ」
「しかしだな…」
「ワタシ達はココですれ違っただけ。名乗る必要、あ・る?」
ノーマンはフフッと再び笑う。
なぜ笑う。
「……そうだな、確かにそうだ。だけど、そちらにいる御人のことは、僕は知っているよ、貴方はルナリア・スガー嬢、ですよね?」
「!?」
コイツ、だからルナばかりに見てたのか。
「冒険者等級A、南方冒険者組合所属『エメルーダ』、通称『魔の三姉妹』、その長殿であらせられる」
ルナリアは目を細めた
「……何処かで会ったかしら?」
「南方領で、一度お見かけしました」
突然ノーマンはルナリアの前で片膝をついた。
ルナリアがギョッとする。
「!?」
「先ほどは、知らぬフリをしてご無礼を」
「なんのつもり?」
「冒険者にして、南方領主ブンター・スガー様御息女、ルナリア様にご挨拶を」
そこまで知ってんのかコイツ、ワタシは舌打ちした。
「私は出奔した身です。スガー家とはもはや縁はありません。その様な行為は不要です」
「いえ、これは美しきルナリア嬢に捧げる、私からの誠意です」
臭っさ!、臭すぎる。なんじゃコヤツ。
「な…」
そしてルナリアはチョロすぎる、モジモジすんな。
「ルナリア嬢、貴方はこれこら王都に向かわれるのだと推察します。是非私共を同行させて頂きたい」
「同行?」
「無論、タダでとは言いません。不肖このノーマン、ルナリア様方の護衛を務めます。見れば女性だけの旅路とお見受けました」
ルナリアが困り顔でしきりにワタシの方に視線を送ってくる。
ワタシは無言で追い払えと、ルナリアに圧をかける。
「わ、私は、徒党の長ではなくて…」
って、余計なことを言おうとするし…
「ちょっとルナ、こっちきて」
「……」
……
ワタシ達はノーマンから離れて、彼に聞かれないようサイレンスを掛けた。
「ルナ、余計なこといわない」
「なんで私を前に出そうとするのよ!、徒党の長はアナタでしょ!」
「徒党を組んだつもりはないわよ、それにアイツはワタシ達を『エメルーダ』だと思ってんのよ」
「え?」
「暫くそのフリをしておきましょう。それに下位等級が長はおかしいでしょ?、相手からすれば、等級Aのルナを長とした方が、世間一般的に自然なのよ」
「そんなの面倒臭いから私に押し付けてるだけでしょ!?」
「当たり前じゃない」
「あーもう!、このっ!!……」
ルナリアが地団駄を踏む。ふふ、かわいい。
「でも、どうしますエム姉?」
と、マティ。
「んー、追い払うにしても、あの手の類はしつこそうだしねぇ……そういえば、アイツら移動手段はどうしてるんだと思う?」
「馬車とか無さそうですね」
「どこからきたのか知らないけど、こんなとこまで徒歩はないわよね?」
王都に行くにも来るにも、近くの村や町に行くにも来るにも、ココは中間的で日数がかかる。彼等は5人、物資の運搬を考えると、徒歩はない。
「ルナ、彼に聞いてみそ」
「なんで私なのよ、エムが聞きなさいよ」
「上司命令」
「くっ、こんな時ばっかり……」
……
ルナリアは渋々受けるも、素直に従う。
「ノーマンさん」
「ノーマンで結構です」
「ノーマン、単刀直入に聞きます。あなたはここまでどうやって来たのですか?、移動手段は?」
ノーマンの顔が急に暗くなった。
「実は道中でコボルトの群れに襲われて……」
「コボルト?」
「本来なら北方に生息している魔物です。南方面には生息しないと聞きます。ご存じですか?」
ルナリアはチラッとワタシに視線を送った。
「犬みたいな奴よね?」
ワタシがそう言ってやった。するとルナリアも答える
「私も、北方にはそう言った魔物が存在するとは聞いてます」
よしよし、ワタシ達がサンを助けるためにコボルトと戦闘になった事を、ノーマンには伏せれた。
「そうです。本来ならこんな場所にはいないはず、僕も初めて遭遇した。数も多くて捌ききれなかった、それよりも特殊個体がいたんです」
「特殊個体?」
「恐らく、群れを統べる長だったのではないかと…」
コボルトキングだわ、ワタシ達が遭遇したコボルトの群れにも居たわね。ワタシの腕ぐらいあるデカチンP持ちが。
「ソイツは他の個体よりも凶悪で強靭、等級AAの僕でも、太刀打ちできる相手ではなかった……」
ノーマンがとうとうと説明している最中、マティがワタシのそばに来て耳打ちしてきた。
スノウが戻って来たとの連絡、その内容を聞いて、ワタシは森の入り口にいるノーマンの徒党達を目を細めて見つめ、マティに返事した。
「……わかったわ」
「…我々は逃げるしか手がなく、徒党も2人がそこで命を落として…」
「それはお気の毒に……」
ワタシはルナリアの前に手を出して話を遮った。
「ルナ、コイツの長ったらしい話は後でいいわ」
「な、長ったらしい?」
「馬車を移動させる。ノーマン、アンタのお仲間のところ行くわよ」
「???」
……
サンとスノウの交わりを発端に、結局の所、皆昂ってしまった感情が抑えきれず、就寝で乱交が始まってしまった。
マティとケティは姉妹でお互いを慰め合い、我慢できなかったルナリアは、ワタシを誘って来たけど毅然と断ったので、1人泣きながら自慰にふけってた。
途中から、サンが「おいしくない」とかいいながら、ルナを襲ってたけどね。
なんだろなー、結局そうなっちゃうのよね。
ワタシ?、何度も言うけど同性とHする趣味はないの。1人で見張り……
……でも、悶々としてきた。
周りには誰もいない。あんあんと声だけ漏れ聞こえてくる。
ワタシは野営用の折り畳み椅子の背もたれに体を預け、キュロットスカートをショーツごと膝まで下ろす。
露わになった秘穴スポットを指でなぞる。既に濡れてた。
スノウに股間を啜られた感じを思い出した。凄いクンニだった。
ああ、もうワタシってば欲求不満だわ、オ型ゴーレム貰っておけば良かった?
いやいや、あんなので満足できるか。
唇陰を指で挟みながら、クリPさんをいじる。クチュクチュとイヤラシイ音が耳に入る。いい感じに昂って来たところで秘穴に指を入れた。
「あ、んっ……」
思わず声が漏れてしまった。
だったらルナリアとHしろって?、そうじゃないのよねー
彼女の事は別に嫌いじゃない、Hも嫌じゃない、でもHする事は極力避けたい。
お互い男性神の『選別者』としての呪いがかかってる。どの様に作用しているのか、未だにわからないけど、この呪い…
…女にも作用する。
正直言って、彼女とのHはキモチイイ、凄くキモチイイ、この上なく甘美なまでにキモチイイがいい。法具でも呪具でなんでもいい、秘穴に突っ込んで、ガン突きしたくなる。
男のキモチが良くわかる。
始めると止まらなくなる。
それはルナリアも同じ、お互い絡み合い、狂気じみたHになる。
それが怖いし、逆に耐えなければならなくて辛い。
男性神の思惑がひしひしと感じる。
スノウやマティに指摘されて、初めて自覚した。
ルナリアには言ってない。
関係が壊れるのが嫌。
1人がいいなどと言っときながら、皆と別れるのが嫌。
ワタシはそんな自分がつくづく嫌。
「ん、あっ」
ルナリアを思いながらオナニーする。彼女の顔、引き締まった褐色の肢体……ワタシの腕の中で喘ぎ悶える姿。カワイイ
「ルナぁ……あ、んあっ!、いきそ…」
「なら、ルナ、たべろ」
「うわっ!!」
ワタシは耳元で囁かれ、ビックリして野営用の折り畳み椅子から転げ落ち、腰を打った
「アイタタタ、サン!?、る、ルナとHしてたんじゃないの!?」
サンはエルフだからなのか、ワタシの探知にかからない。本人に聞いてみたけど、特に気配を殺したり、阻害したりはしていないらしい。相性なのかしら……
「ルナ、ひーひー、いって、ねた」
「ヒーヒーって……、そうなのね……」
絶倫スノウでさえ、サンの超絶責めには耐えられない、ルナリアがもつはずもないか……
ワタシは起き上がり、居住まいを直す。椅子を起こし、座り直した。
「Hしたいのか?」
「まぁ、チンPが恋しいのは確かね……」
「ビッチ?」
「サンに言われたくないわ」
「エルフ、ビッチ、わかってる」
サンまで『ビッチ』を覚えてしまった。
「ふふ、サンも随分と人族的になって来たわね」
「エム、サンとHするか?」
うう、どんなHか興味はある。でもしたら抜け出せなくなりそう。
「いやダメよ、サンとHしたらワタシもスノウに殺される、それに約束なんでしょ?」
サンはコクリと頷いた。
それにしてもスノウは、サンがルナリアとHするのは何故か止めない。なんでなのかしら?
「そういえば、サンはルナとHしてもなんともないの?」
「???」
サンは、ワタシの言ってる意味がわかってない様子。
「んー、もっとしたくなるとか、メチャクチャにしてやりたいとか?」
「??、サン、そんなこと、ない」
サンはエルフ、男性神の眷属のはずだけど、……やっぱりメスは違うのかしら?、いやでも、同じメスのスーは、ワタシをレイプしようとしたわよね?。
「……ならいいんだけど」
「ルナ、おいしくない、でも、Hイヤじゃない」
「おいしい、おいしくないの違いはなに?」
「におい」
「におい?、ルナって臭いの?」
「くさくない」
「…どんな匂いなのよ」
「おいしいにおいと、おいしくないにおい」
ますますわからん
「マティとケティは?、おいしそう?」
サンは、んーと考え込む。
「……マティ、おいしくない、……ケティ、おいしい」
「え?、そうなの?、双子なのに違うんだ……じゃあニクは?」
「わからない、においしない」
ああそうか、そうだったわね。でも共通点がわからないわ。
「ワタシは?」
「わからない」
「え?」
「スノウとおなじ、たべないとわからないにおい」
「どういうこと?」
「エム、へんなにおい、する」
「くさいんかーい!」
ワタシは思わず、ビシッとサンに裏手突っ込みしてしまった。
「くさくない、イヤなにおい、ちがう……」
サンは言葉を選んでる。
「……すこしふしぎ?」
SFかよ。ワタシしゃ青ダヌキか。
青ダヌキ?
「ふしぎなにおいって何???」
「わからない」
サンは困った様に首を傾げた。これ以上聞いてもエルフの感覚は、ワタシには理解できなさそうね。
「まあ、いいわ」
「エム、ルナ、たべないのか?」
「たべないわよ」
……
新緑豊かな森の中、馬車は街道をゆるりと進む。
整地されてない街道。近くに村も街もない事から、荒れ放題ってとこね。
それでも、特殊な足回りの馬車は、ほとんど揺れもなく道を進む。
ここまで盗賊だの魔物だのが現れることなくのんびりと進んできた。
今日は珍しくマティが御者を勤めてる。ワタシは穏やかな空気を満喫したい気分だったので、彼女の隣、御者席に座ってる。
御者を誰にも譲らなかったケティはどうしたのかというと、馬車の中でノックダウン中。
昨晩サンは、ワタシとの会話の後でマティとケティの所に乱入し、挙句、ケティを食べた。
予想通りというか、マティには手を出さなかったらしいわ。
「一体どんなHだったのよ」
「表現しにくいです」
「表現しにくいって……」
「私の口からは説明できません、当事者本人に聞いてください。エルフ、怖い」
なんなのよそれ…まぁ、いいわ
「でも珍しいわね、初めてなんじゃない?、ケティと2人でHしたのって、実の姉妹だからそんな事しないと思ってはいたけど」
「……いえ、割と……してます」
「えー?、そうなの?」
「どうやるとエム姉が気持ち良くなるか、2人で研究してて……」
何の研究をしとんねん、戦乙女はどこ行った?
「マティの場合、マッキー対応じゃないの?」
マティはそっぽ向いた。耳が赤い。
「ヤレヤレ、ケティはともかく、2人とも、もうすっかりビッチね」
「そうですね、エム姉のせいです」
ワタシかよ!
ふと光を感じ前方を見た。馬車の進む先が妙に明るい。
「んっ?、森が切れてる?」
馬車は森を抜け、突然開けた場所に出た。
「わぉ」
眼前に広がる草原。マティがそこで馬車の速度を落とした。
そよぐ風、草の匂い、サワサワと草が風に撫でられ流れて行く。
……でもなんだろう、ちょっとエリア的に異質なものを感じる、そこは森の中にぽっかりと空いたような空間。
「何ここ?、ちょっと妙じゃない?」
「ここは古戦場です」
とマティが説明してくれた。
「古戦場?」
「王都と北の大帝国が激戦を繰り広げた場所で、『オケハッザーマ』と呼ばれてます。その昔は森だったようですが、200年経った今も、あまり植物が育たない低草地です」
育たないって、それってヤバイ土地じゃんって、え?、オケハッザーマ??、どっかで聞いた様な……
そんなワタシの視界に飛び込んできた物体、それに目を奪われた。草地に埋もれるように、長い筒を天に伸ばした赤錆色の物体。
「ストップ!!」
「え?、ストっ?、なんですかエム姉?」
マティが聞き返して来た。
「馬車を止めて!!」
馬車が止まり、ワタシは飛び出した。
「エム姉!、一体どうしたのですか!?」
マティの呼びかけを無視して、ワタシは走った。
「どうしたの?」
ルナリアが何ごとかと、馬車の窓から顔を出す。
……
腰高の草むらを掻き分け、視界に入った物体へと向かう、ルナリア達も追って来てる。
そして、目の前に現れたモノを見て、ワタシはゾクっとした
「ウソ、マジで?」
ルナリアとマティも追いついた。
「エム、何よ突然…」
ワタシの目の前に現れたのは、大きな鉄の塊、赤錆びてはいるものの、それは人工的な意匠を持っている。
ワタシの記憶にある、ワタシはコレを知っている。
物体に備わったソレは、『回転砲塔』に『単砲身』、そしてその足回りは『無限軌道輪』。
戦闘装甲車、『戦車』
まごうことなき、戦車がそこで朽ち果て鎮座している。周りをよく見ればそこかしこにいくつもある。
「なによコレ……」
「北の大帝国の『魔道兵器』です」
マティがそう説明した。
「魔道兵器?」
「私も聞いたことあるわ、北の大帝国は魔道兵器技術が発達していて、飛行する兵器も持っていたとか…」
と、ルナリア
いやいやいやいや、この世界において完全に異質なテクノロジーじゃない。
「これがどうしたの?、エム」
ワタシは戦車の上に飛び乗った。うーん錆び臭い。明らかに鋼鉄製だわ、ワタシは開かれたハッチから内部を覗いた。
戦車に造脂があるわけでもなし、知見もない、そんなに詳しくはないけど……
コレが魔道兵器?
200年も経つのに、錆び臭の中にほんのり匂う機械油臭。
砲身の根元には砲弾を装填する装置もある。
人が乗るようにも出来ている。
砲弾は残っていないので、どんな代物かわからないから、ひょっとしたら砲弾が魔力弾とかなのかも知れない。
続いてワタシは、戦車の胴体部を覗き見た、装甲が朽ちて、発動機が剥き出しになってる。
見ても良くわからないけど、たぶんディーゼルとか、ガスタービンだと思う。
おそらく化石燃料か、液体ガス燃料を用いた内燃機関システム。
コレがなんで魔道兵器?
こんなものが200年前から存在しているのに、なんで技術発展してないのかしら?、その辺りはニクが詳しそう。
「……ねぇニク、王都には大帝国の兵器を研究している人とかいないの?」
「してるよ?、それは錬金技術院だね。鹵獲した魔道兵器が保管されていて、戦史記念日には一般向けに公開展示されたりしてる。僕も見たことあるよ」
「ほんとに?」
ますます解せぬ。
「エム、なんでこんなものに食いつくの?、興味あるの?」
と、ルナリアが訝しんでる。
興味あるだろ!、とツッコミたい。でもここは抑える。
ところが、ニクが続けて説明してくれた内容にワタシは驚いた。
「北の大帝国の魔道兵器は、長年研究されてるけど、動作原理が解明されてなくて、錬金技術院でも未だに動かしたことがないって聞いてるよ」
「はぁ?」
200年も研究して成果なしとか、マジかー。
技術体系が違いすぎて、トンチンカンな研究してるのかしら?
ワタシは皆に許可を貰い、更に周囲を散策した。
地面を土魔法で掘りかえし、遺留物を物色する。でもたいしたものは出てこない、殆ど回収されてるみたい。戦車みたいな重量物は人力で動かすのが面倒だから放置したんでしょう。
皆は馬車付近で、昼食の用意を始めながら、ワタシが1人戦車の周囲を探索しているのを遠巻きに見てる。
…
「あんなことして何が楽しいのかしら?」
ルナリアは半分呆れたように言う。
「でも、ボクはエムさんのやってる事がなんとなくわかるよ?」
「それは錬金術士として?」
「うん」
ニクが頷く。
「ここは、普通の人にはなんの価値もない物ばかりだけど、エムさんにとっては『魔石』級なみのお宝なんじゃないかな?」
「あの鉄屑から魔石が取れるの?」
「例えだよ、あれらから魔石は出ないよ」
「ふーん」
ルナリアはわかってないなと、マティやケティ達は思った。
「エムさんは、研究者肌なんだと思うよ」
スノウがポンと手を叩いた。
「解ります、エムさんは魔法に関しても、独自の解釈で発現させてますよね?」
「そういえば、神聖術が使えないはずなのに、魔法で同じ事しようとしてたものね」
皆がうんうんと頷き合う
……
そんな会話がなされているとはつゆ知らず、ワタシは黙々と地面を掘り返していた。
「なんだか変な地質だわ……」
一見粘土質、でも叩くと砂のように砕けてしまう、砂岩かと思ったけどそうでもない。水気がまるでない。元々森だったと言うけど、とてもじゃないけど、これじゃ木は育たない……
「変質した?」
ザッザッ、ガチっ
「お?」
短剣の先に金属的な当たり。手で掘り返すと、一抱えほどある大きさの金属物体が出てきた。
見つけたのは『空薬莢』、それも大きさから恐らくは戦車砲弾。200年と言う年月で多少錆びてはいるけれど、乾燥した砂岩ぽい地面に埋没してたおかげで、内部の金属地に焦げ跡が確認できるし、底面には雷管らしきものもある。
「……間違いないわ、コレは火薬式の砲弾。何が魔道兵器よ、北の大帝国は科学技術国家なんだわ」
それから暫く捜索したものの、流石に未使用の実砲弾は見つからなかった。有ったら有ったで不発弾だから危ないけどね
その代わり、朽ちた自動小銃と、腐った弾丸数発を見つけた。
皆の元へと戻ると、抱えた物品を見たルナリアが眉根を寄せた。
「エムなんなの?、その小汚いのは?」
「コレ?、北の大帝国兵が使ってた武器ね」
「え?、武器?」
「弩みたいなものよ」
「どこがイシユミ???」
「こうやって構えて……ここを引くのよ、するとこの先から弾が……いえ爆裂魔法が出るのよ、ばばばばって連続でね」
とりあえず敢えて『魔法』と言っておいた。
「魔法が連続???」
「この筒はなんですか?」
スノウが手に持ちシゲシゲと眺めているのは砲弾の空薬莢。
「んー、攻撃魔法を詰めとく容器ね」
「魔法を詰める???……エムさんはなんで、これらの使い方を知っているのですか?」
「見たことあるからよ」
『え?』
「そんなことよりも、あまりここには長いしない方がいいわね、スノウには快適な場所なんでしょうけど…」
スノウが手にしていた空薬莢を台の上にゴトリと置いた。
「……そうですね。ここは身体が軽いです。外界でもこのような場所があるのですね」
スノウもこのエリアがどう言う状態なのか、理解してる
「ああ、そう言うこと」
それを聞いて、マティも納得した。
「なにが?」
でもルナリアは首を傾げた。貴方には一々説明せにゃならんのですか?
「ここの草原の植生が周囲の森とは明らかに異なるのはわかるわよね?」
ルナリアは周囲を見た
「古戦場だからよね?」
ちゃうわ
「古戦場はそうだけど、ここは元々森だったのよ?、200年たった今も森に戻らないって変だと思わない?」
「言われてみれば……そうね」
湿地帯でもなし、湖や沼があったわけでもない、火山や地盤沈下の形跡もない。空間的に不自然すぎる。極め付けは地質、森の土とは全く異なる。栄養の無い渇いた地面。
大戦時に何をしたのかわからないけど、違和感の理由は、地面を掘っていて確信した。その正体は……
『魔素』
「ルナ、この草原は魔素溜まりなのよ」
魔素は、魔族以外の種族には『毒』、人族などは過剰に魔素を浴び続けると、たちまち身体に異常をきたしてしまい、全身から血を噴き、最悪死に至る。
それは植物環境にも影響する。
地質が変質し、森が形成されないのは、恐らく魔素のせい。
それでも耐性のある植物だけはかろうじて生えている。雑草パワーね。
幸いにも、ここは魔族領よりもだいぶ魔素が薄いので、数日滞在する分には問題はなさそうだけどね。
それを聞いたルナリアが慌て出した。
「大変じゃないの!、なんで早く言わないのよ!、直ぐに出発しましょう!!」
「落ち着いてよルナ、そんな直ぐに影響は出ないわ」
「だって魔素溜まりなんでしょ!?」
「そこまで高い濃度じゃな……」
ワタシは、バッと振り向いた。広域探知に動く気配を感知した。
「人?」
ルナリアも気づいた。
「あそこに……いるわね」
「盗賊かしら」
遠目に数名、森の中から現れた。
「3人…4人…盗賊って感じじゃないわね」
向こうはワタシ達に気づいている様子だけど、森の入り口で固まって、何やら話し込んでる。
「ニク、サン、念のため馬車の中へ入って」
ニクとサンはワタシの指示に従い、素早く馬車に入り、窓のカーテンを閉めた。
「スノウ、お願いできる?」
「ヨロコンデ」
スノウは、すっとワタシ達の前から姿と気配を消した。
あの子、絶対に魔法士じゃないわよね?
しばらくすると、森の入り口にいた集団の中から1人だけ、こちらに歩いて来る。
「冒険者?」
騎士と思わせるなんとも豪奢な模様の入った鎧を着込んでる。鎧特有のガシャガシャとした音を立てるでもなくなく、足取りは軽い。見た目ほど装備に重さを感じさせない動き。
その騎士が両手を上げてワタシ達の馬車から離れた位置で立ち止まった。
「やあ、こんにちは」
金髪、日焼けした肌、キラリと光る白い歯、眩しい程に堀の深いちょっとイケメン。
「どうも」
イケメン騎士は、挨拶したワタシではなく隣のルナリアを観察する様に視線を向けてる。
「君たちは、商人か?、冒険者か?」
「盗賊なら、今ここで真っ先にあなたを襲ってるわ」
「……然りだね、僕は冒険者だ」
フランクに爽やかに微笑んでくるイケメン騎士。
ワタシは知っている。この手の輩は、胡散臭くて面倒臭い。
だけど、装備している鎧は血糊に汚れ、傷だらけ、何処かで戦闘してきたことを物語ってる。
「こんな所で何を?」
それはコッチの台詞だわ、だけど敢えて答えてあげましょう。
「旅の途中で休憩してるだけよ」
「ならばココでの休憩はやめた方がいい、何故ならココは『魔素溜り』だ」
ああ、この男も気づいているのか。
「そうですか、それはそれはご忠告どうも、じゃ、ワタシ達はもう行くので、サヨナラ…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
イケメン騎士が、慌てて引き止めようとしてきた。
「何か?」
「君達が向かう先は?」
「アッチ」
ワタシは指だけ差した。
イケメン騎士が苦笑する。何がおかしいんだか……
「……そんなに警戒しないでくれ」
「小汚くて、どこの馬の骨かわからない輩は、盗賊と同じと思ってるわ」
一瞬目を丸くしたイケメン騎士
「そうだね、コレは失礼した」
イケメン騎士は、騎士ぽいお辞儀をしてから顔をあげると、再び爽やかに笑う、いやだから何がおかしい。
「僕は、王都冒険者組合『クッサイア』に所属している『ノーマン・ゲッスウノ』と言う、冒険者等級はAA、向こうに待機しているのは、僕の徒党だ」
来た、意味不明ネーミング。それにしても等級AA冒険者か、実力はあるというね。
感じ的には……そうね、トランを思い出す。
クソ嫌な思い出だわ。
「クッサイア?、王都冒険者クラン三大派閥の?」
マティがそう言った。
「知ってるの?」
「王都では、有名な冒険者クランの1つです、私は名前しか知りませんが」
発酵させた魚の干物みたいな名前だけどね
「そう、僕はクッサイアの徒党…と、言ってもクランの中で数ある徒党の末席だけどね」
ノーマンは自分で言って、フフっと苦笑した。
「それで君達は?」
「ワタシは冒険者等級C、コッチはA、以上」
ワタシは、ルナリアを差してから、自らの認識票をチラッとだけ見せた。
「……名前は?」
「名乗る必要ある?」
「僕だけに名乗らせておいて?」
「誰も名乗れなんて言ってないわよ」
「え?、いやさっき…」
「どこの馬の骨かわからん輩って言っただけで、名乗れなんて一言も言ってないわ」
「しかしだな…」
「ワタシ達はココですれ違っただけ。名乗る必要、あ・る?」
ノーマンはフフッと再び笑う。
なぜ笑う。
「……そうだな、確かにそうだ。だけど、そちらにいる御人のことは、僕は知っているよ、貴方はルナリア・スガー嬢、ですよね?」
「!?」
コイツ、だからルナばかりに見てたのか。
「冒険者等級A、南方冒険者組合所属『エメルーダ』、通称『魔の三姉妹』、その長殿であらせられる」
ルナリアは目を細めた
「……何処かで会ったかしら?」
「南方領で、一度お見かけしました」
突然ノーマンはルナリアの前で片膝をついた。
ルナリアがギョッとする。
「!?」
「先ほどは、知らぬフリをしてご無礼を」
「なんのつもり?」
「冒険者にして、南方領主ブンター・スガー様御息女、ルナリア様にご挨拶を」
そこまで知ってんのかコイツ、ワタシは舌打ちした。
「私は出奔した身です。スガー家とはもはや縁はありません。その様な行為は不要です」
「いえ、これは美しきルナリア嬢に捧げる、私からの誠意です」
臭っさ!、臭すぎる。なんじゃコヤツ。
「な…」
そしてルナリアはチョロすぎる、モジモジすんな。
「ルナリア嬢、貴方はこれこら王都に向かわれるのだと推察します。是非私共を同行させて頂きたい」
「同行?」
「無論、タダでとは言いません。不肖このノーマン、ルナリア様方の護衛を務めます。見れば女性だけの旅路とお見受けました」
ルナリアが困り顔でしきりにワタシの方に視線を送ってくる。
ワタシは無言で追い払えと、ルナリアに圧をかける。
「わ、私は、徒党の長ではなくて…」
って、余計なことを言おうとするし…
「ちょっとルナ、こっちきて」
「……」
……
ワタシ達はノーマンから離れて、彼に聞かれないようサイレンスを掛けた。
「ルナ、余計なこといわない」
「なんで私を前に出そうとするのよ!、徒党の長はアナタでしょ!」
「徒党を組んだつもりはないわよ、それにアイツはワタシ達を『エメルーダ』だと思ってんのよ」
「え?」
「暫くそのフリをしておきましょう。それに下位等級が長はおかしいでしょ?、相手からすれば、等級Aのルナを長とした方が、世間一般的に自然なのよ」
「そんなの面倒臭いから私に押し付けてるだけでしょ!?」
「当たり前じゃない」
「あーもう!、このっ!!……」
ルナリアが地団駄を踏む。ふふ、かわいい。
「でも、どうしますエム姉?」
と、マティ。
「んー、追い払うにしても、あの手の類はしつこそうだしねぇ……そういえば、アイツら移動手段はどうしてるんだと思う?」
「馬車とか無さそうですね」
「どこからきたのか知らないけど、こんなとこまで徒歩はないわよね?」
王都に行くにも来るにも、近くの村や町に行くにも来るにも、ココは中間的で日数がかかる。彼等は5人、物資の運搬を考えると、徒歩はない。
「ルナ、彼に聞いてみそ」
「なんで私なのよ、エムが聞きなさいよ」
「上司命令」
「くっ、こんな時ばっかり……」
……
ルナリアは渋々受けるも、素直に従う。
「ノーマンさん」
「ノーマンで結構です」
「ノーマン、単刀直入に聞きます。あなたはここまでどうやって来たのですか?、移動手段は?」
ノーマンの顔が急に暗くなった。
「実は道中でコボルトの群れに襲われて……」
「コボルト?」
「本来なら北方に生息している魔物です。南方面には生息しないと聞きます。ご存じですか?」
ルナリアはチラッとワタシに視線を送った。
「犬みたいな奴よね?」
ワタシがそう言ってやった。するとルナリアも答える
「私も、北方にはそう言った魔物が存在するとは聞いてます」
よしよし、ワタシ達がサンを助けるためにコボルトと戦闘になった事を、ノーマンには伏せれた。
「そうです。本来ならこんな場所にはいないはず、僕も初めて遭遇した。数も多くて捌ききれなかった、それよりも特殊個体がいたんです」
「特殊個体?」
「恐らく、群れを統べる長だったのではないかと…」
コボルトキングだわ、ワタシ達が遭遇したコボルトの群れにも居たわね。ワタシの腕ぐらいあるデカチンP持ちが。
「ソイツは他の個体よりも凶悪で強靭、等級AAの僕でも、太刀打ちできる相手ではなかった……」
ノーマンがとうとうと説明している最中、マティがワタシのそばに来て耳打ちしてきた。
スノウが戻って来たとの連絡、その内容を聞いて、ワタシは森の入り口にいるノーマンの徒党達を目を細めて見つめ、マティに返事した。
「……わかったわ」
「…我々は逃げるしか手がなく、徒党も2人がそこで命を落として…」
「それはお気の毒に……」
ワタシはルナリアの前に手を出して話を遮った。
「ルナ、コイツの長ったらしい話は後でいいわ」
「な、長ったらしい?」
「馬車を移動させる。ノーマン、アンタのお仲間のところ行くわよ」
「???」
……
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