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交易都市にて?
精神世界のHはスケベすぎる?
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ワタシはいまだ、フィロ君の精神世界の中
うーん、暇じゃ
そもそも精神世界ってなんだろう?
状況から鑑みるに、精神世界は魂と同義だと思う。
で、ワタシの魂は、今フィロ君の中に入り込まれてしまっている。
でも融合したわけじゃない。お互い別の意識体として存在してる。
その根拠は、ワタシがフィロ君の身体にアクセスできないから。
フム
フィロ君と闇ドロの関係もこんな感じだったんでしょうね。
んっ?
気配を感じ取り振り向くと、そこにフィロ君が突っ立ってた。
「あ、お帰り早かったわね」
フィロドロ君が何故か呆れた顔をしてる。
お互い、ローブを一枚羽織ってるだけ、下はスッポンポン。
「君はなにをしてるの?」
フィロ君は、ワタシが座り込んでるベッドを見てる。
「フィロ君の魂の一部を使って、色々作ってみたわ、ベッドにマットにシルク的なシーツ、創造って素晴らしいわね」
「僕の魂削ってベット作るとかおかしいから!」
「だって暇なんだもん」
「大人しくしててよ」
「してるじゃない、で?、そっちはどうなのよ?、あれから現実はどの位経ってる?」
「10日」
「10日!?」
ワタシの感覚だとフィロ君と別れてそんなに経ってたっていない、かれこれ1時間ぐらい?、ここでは感覚が狂う。もっと短いか、もっと長いのかもしれない。
「君が言ったんじゃないか、時間の流れが違うって」
「そりゃ言ったけど…」
時間差は3~4倍程度だと思ってた。
「僕が戻ると、すでに7日経ってたよ」
そうすると、ここでの1時間は現実で3日進む事に。うーん、これはかなり早いわ。
「……戻って3日もなにしてたんだって、話だよね?」
神妙な顔して考え込んでしまったワタシに、フィロ君が不安げな声で話しかけてきた。
「え?、あそうね」
「ごめん、僕は今王都騎士団の屋敷に拘束されて監視されてる……外に出られないんだ」
「王都騎士団?……なぜに騎士団?」
そういえば、マティが騎士団がどうのこうの言ってたわね
「騎士団は、侯爵家を内偵してて、不穏な動きの証拠固めを前々からしてたんだ、そこでいよいよって時に、今回の一連の騒動が起きて、騎士団も混乱してて情報が錯交してる。僕は今、衛士隊含めて毎日取り調べを受けてる」
「ふーん」
「…興味なさそうだね」
「ワタシに出来ることなんてないもん」
「君も重要参考人なんだけど?」
なんでやねん
「だけど意識が戻らないって、付き人が拒否してるって」
「え?、誰が?」
「ルナリア・スガー殿」
ルナは無事なのね。
「だったらルナリアも参考人じゃないの?」
「南方領主の御令嬢だから、身柄については騎士団も配慮してる。だけど王都に勅命召喚状を申請してるから、彼女の拘束も時間の問題かも」
勅命と来ましたか。
「彼女を呼んでも無駄だと思うけどね」
「どうして?」
「君の方がわかってるでしょ?」
ルナリアは闇ドロに操られていただけで、特に何かに加担していたわけじゃない。それに、操られていた間の記憶も曖昧、話を聞いたところで答えられるわけがない。
ワタシ自身も、魔犬の匙共のケツの穴破壊したぐらいで、どちらかといえば被害者。
あ、侯爵邸を半分吹き飛ばしたわね。
ケツの穴事件は覚えてないから知らんけど、侯爵邸の件は大目に見てほしいわ。
……ダメかな?
真に咎められるとすれば、衛士隊寄宿舎を襲撃したスノウの方だと思う。
魔犬の匙連中以外にも、衛士隊員の足の筋切って戦闘不能にしたらしいし、美少年を拘束レイプしたらしいし、……スノウはやり方がエグいのよね。
あんな可愛い顔してんのにさ。
「何か心配してるようだけど、咎人での調べじゃないから、あくまでも事情聴取だよ?」
「ルナのことだから、余計なこと言いそうで怖いのよ」
「友達でしょ?、信用してないの?」
「友達ねぇ……」
ルナリアがどう思おうと、彼女を友達と呼ベるだけの資格がワタシの方にないわ。
マティやケティ、スノウに対しても同じ、確かに彼女達と一緒に居るのは楽しい、
でも、ワタシは1人でいたい。
1人のほうが気楽でいい。
…そうすれば裏切ることも、裏切られることもないから。
ワタシは心のどこかで、線引きしてる。
ワタシは身勝手だ、つくづくそう思う。本当嫌になる。
「……ルナリアは友達じゃなくて、旅仲間よ」
「同じでしょ?」
「定義が違うわ」
「??」
フィロ君が首を傾げてる
「まあ、そんな事はどうでもよろしい」
ワタシは創造したベットに腰掛けるとポンポンとベッドを叩いた。
「ほら、Hしよ。その為にベッド作ったんだから」
「君はこんな状況下で交わりたいの?」
「Hしたくないの?」
フィロ君が目を細め、軽蔑的な視線を浴びせてきた。
「今の君とはしたくない」
フィロ君がそっぽ向いた。その仕草がなんかカワイイ。
ワタシはベッドから立ち上がり、ソロリと、彼の背後に回り、腕を伸ばして抱きついた。
「わっ」
背中に胸を押しつけ耳元に息を吹きかけてやると、彼の耳が赤くなる。
「絶対にしない?」
「し、しないよ」
ワタシは徐に、手を下へと下ろして、彼の股間を弄った。
「あっ!」
フィロ君が腰を引く。
「じゃあなんでココはこんなに張ってるの?」
フィロ君の股間をローブ越しにさすってやる。堅くそそり勃ってますがな。
「あっあっ」
身悶えするフィロ君
彼のローブを捲り、直にチンPを握った、根元から先に向かってしごきつつ、先端の割れ目を指の腹でなぞってあげる。
「ぇ、エム、や、止め……」
「あれー?、したくないとか言っといてギンギンの戦闘態勢じゃん」
「へ、変な言い方しないでよ!、うっ!」
「男のココは正直よね」
「くっ、この!!」
フィロ君はワタシの拘束を振り解くと、クルッと周り、ワタシの腰に手を回しキスしてきた。
「んっ」
ふふ、舌で答えてあげる。
ワタシはよろける振りをしながら、彼をベッドへと誘う。
押し倒される感じで。ベッドイン
そして舌を絡ませ長いディープキス。
脚を絡ませて、彼のチンPを太腿で擦り上げてやる。
そして、ちゅばっと唇を離して、いつもの魔法の言葉でトドメの一撃
「優しくしてぇ」
フィロ君に火が入る。
ワタシのローブを捲りあげると、顕になった乳首に吸い付いた。
「あん」
んもぅ、素直じゃないなー
……
オッペケペイ侯爵邸正門
槍を携えた王都騎士団員が門兵として2人立っている、そこへ一頭立ての紅黒い箱馬車がやってきた。
門兵達は心の中で身構える。
見た目が豪奢な作りの箱馬車ゆえ、身分の高かろう者が乗っていると見ていた。
しかし、異様な雰囲気を醸し出した漆黒の毛並みの大きな馬、そして御者席に座る場違いなメイド服の女性、だがその出立は手足に鎧を装備している。
「何用か」
門兵が大きな声で問う
すると、箱馬車の扉が開き、中から御者席と同じ出立の女性が出てきた。
大きな盾と剣を背中に装備していた。
出てきたのはマティ、御者席はケティ、そして馬車を引く馬はチェレスタ。
「!?」
「私達はエムの名代で来ました。フィロドロ・オッペケペイ様に御目通り願います」
「エム?」
門兵2人は顔を見合わせた。
エムといえば、騎士団の聴取を拒んでいる女冒険者だと、彼らは認識していた。
「フィロドロ侯は取り調べ中だ、会わせることはできない」
「では責任者にお取次を」
「……貴殿らの名を名乗られよ」
マティは深呼吸する
「わたくしはマティ、御者席に座るはケティ、エム様付き従者をしている者です」
門兵がはて?と首を傾げる
「マティとケティ?、何処かで聞いた名だな…」
そう言って考え込む門兵とは反対に、もう1人の門兵は、青ざめてる。
「ま、まさか!、だ、第一軍団の戦乙女殿!?」
「何!?」
「元です」
「お、お待ちを!!」
門兵の1人が慌てて屋敷に内に入って行った。
「初めからこうしておけば良かったねマティ」
ケティはそう言ったものの、マティは険しい顔をしていた。
「……ケティ、この人達は第三軍団の『アウスホウル小隊』だわ」
「あー」
ケティは改めて残った門兵の左腕にある隊章を見た。
「本当だ、じゃあ……」
「やっぱり簡単にはいきそうにないわね」
……
「はあ、あ、んっ、あん」
フィロ君に背後から押さえ込まれたワタシは、深く腰を突かれてる。
ズヌッズヌッと、秘穴を出入りする彼のチンPは少し上向に湾曲してる。
その微妙な反り方が、また絶妙にイイ。
「あひっ、ひっ」
ワタシは彼の責めによがるだけ、ビッチこの上ない。
こうしてる間にも、現実世界はどんどん時間が進んでいく。
もう戻れないかもしれない。
肉体は滅び、魂は消滅する。
そう思ったとき、ワタシの心は晴れやかになった。安堵する自分がいる。
なんで?
『そうすれば会える』
会える?、誰に?
『皆の所に行ける』
なんの事?、皆って誰?
なにコレ、ワタシなの?
自分が自分でなくなる感覚が襲う
嫌だ、ワタシはワタシなのよ!
闇のような感覚が襲って来る。
「やめてーっ!!」
ワタシは声を張り上げ、それを振り解いた。
フィロ君が驚いて腰の動きを止めてしまった。
「エム?」
ワタシは腰を引いて、フィロ君から離れると、振り返り彼の胸を押して倒し、馬乗りになってフィロ君のチンPを自らにインサートする。
「んっ!」
そしてワタシは狂ったように彼の上で跳ねる。
「え、エムどうしたの?」
「ワタシに優しくしないで!、犯してワタシを、お願い、激しく、狂おしいほどに!」
ワタシは泣きじゃくった。
理由はわかんない。
ただただメチャクチャにして欲しかった。
するとフィロ君は無言でワタシの両手首を掴んで引き寄せた。
そのまま腰を突き上げる、
「あっ!、んっ!、アアン!!」
ワタシは彼の首に抱きついた。
「はぁっ、あ、ん、あっ」
ズヌッズヌッっと濡れる秘穴をイヤラシイ音を立てて出入りする彼のチンP。
「僕はそんなことしなよ、君に優しくしたい、でも今は忘れさせてあげる」
フィロ君は体位を変え、ワタシを下にすると脚の下に腕を入れ持ち上げると。
激しく打ち付けてきた。
「ヒアッ!、ひっ、いっ!!」
パンパンパンと打ち付ける音が響く。
「ん、エ、エム」
「んなぁ、うぁああ、い、ひっ、イクうっ!」
「ああ、ぼ、僕もイキそうだ!」
「き、きて、一緒に!、はひっ!!」
「うあっ!」
精神世界なのに、命の液の流れは体現される。フィロ君の熱く沸る体液が、ワタシの中に注がれる。
そしてワタシも果てる
「ひぃあーっ!!!」
………
……
…
ワタシはフィロ君の腕の中に抱かれ、疲れ果てグッタリとしてた。
ものすごく濃厚で激しいHだった
さっきの嫌な感じは吹き飛んでいた。無心で彼とまぐわったせいか、記憶が飛んでる。何だったのか今はまるで思い出せない。
それでいい。
そう思った。
それにしてもフィロ君は、精神世界で最初に見た時とえらい違う。
ヒョロッとしたあどけなさが残る少年ではなく、胸板厚く、鍛えられたバッキバキの腹筋。ご立派なチンP。
精神世界なので本人の願望で魂のリソースが使われた彼の理想の姿
いやん、ヤバイ、ちょっと好み。コレで年を重ねたら完璧だわ。
一回だけのつもりが、三回もしちゃったわよ。
フィロ君が、ワタシに視線を向けると白い歯を見せ、爽やかに笑って見せた。
むっ
「…エム、良かっ…モゴっ!?」
ワタシはフィロ君の口を鷲掴みにして抑え込んだ。
その間僅か0.05秒
「アンタ今、何を言おうとした?『良かったよ』、とか言おうとした?、ワタシキライなのよね、Hした後の男のそのセリフ」
するとフィロ君、突然目を見開き、ワタシの手を振り解くと、ガバッと起き上がってワタシを凝視した。
「な、何よ」
「エム、透けてる」
「はっ?」
ワタシは右手を見た、そして左手も…確かに薄らと透けている。
ワタシはフッと笑った。
「やれやれ、意外と早かったわね」
「それってまさか…」
「魂の限界ね、存在が消えかけてる。フフフ、さっきのは激しかったもんね」
「性交してる場合じゃないじゃないか!!」
今のHが、魂の消費を早めたわ。
「僕は戻るよ!、今すぐに宿で眠る君の所に行く!」
「屋敷から出してもらえるの?、無理じゃない?」
「そんなの関係ないよ!、なんとしても行かなきゃ!」
「期待しないで待ってるわ」
「君はどうして……、いや、そんな事は後だ、とにかくもう大人しくしてて、約束だよ!」
「あー、ハイハイ」
ワタシは間髪入れずに彼へ2度めの魔力デコピンをしてやった。
……
一方で屋敷の前では…
マティが青筋を立てていた
「もう一度言っていただけますか?」
マティの覇気にたじろぐ門兵の騎士団員
「た、たとえ戦乙女殿と言えども、フィロドロ様への面会はまかりならぬと、隊長のお言葉です」
「隊長って、マキュロン?」
「はい、そうですが……」
「あ、そりゃダメだ」
そう言ったのはケティ
「参りましたね、手荒な真似はしたくなかったんだけど…ではチェレスタ、お願いします」
チェレスタがいななき、赤く光る目を騎士団達に向けた。
……
一方、フィロドロ邸内執務室。
現在は王都騎士団の第三軍団所属『アウスホウル』小隊が陣取っていた。
その執務席に鎧を外して座る男、隊長のマキュロン・スペルナーズ
背が低く、スキンヘッド、頭も体型も、兎に角丸い。それでいて小太りというわけではない、体躯は妙に引き締まっている。傍のコート掛けに鎖鎌が下げてあった。
第三軍団は諜報を得意とする騎士団で、マキュロンの小隊は、王都諸外地域の監視と統制を任務としていた。
今回は、貿易都市「トンデルダルトトロリアーナ」を治めるオッペケペイ侯爵家に不穏な動きが見られたため、王都行政院の命により数年に渡り調査をしていた。
調査も最終段階に入り、いよいよ侯爵家に強制査察するため、マキュロンは王都より参じた。
ところが、この騒ぎである。
長年に渡り苦労して事前に準備して来た事が全て一夜にしてパァになり、マキュロンは機嫌が悪かった。
「けっ、マティとケティかよ、どこぞで男に股開いて子でも成して落ちぶれてるかと思いきや、こんな所にいやがるとはな」
「隊長、元とはい戦乙女です。あまりそのような発言は控えたほうがよろしいかと」
「うるせーよオキシド、不祥事起こして騎士団を放逐された輩だぞ、今更何しにきやがったてー話だ」
オキシドと呼ぼれた中年男性は、マキュロンの副官。彼とは正反対にヒョロリと背が高く顎髭と左目に眼帯をした隻眼、そして腰にロングソードを下げ、腕を後ろに回して直立不動の姿勢、全く隙がない。
「ご命令通り、追い払うよう指示しました」
「指示はしたんだな」
「ええ指示はしました」
「じゃあ、ありゃなんだ」
マキュロンは窓の外を見ていた。
「戦乙女殿かと」
邸宅門を破壊し、侵入を果たしたマティとケティが中庭で騎士団とやり合っていた。
しかし、一般の騎士団員では2人を止められない、大楯と槍の一撃に蹴散らされていく。
「面倒な事しやがって、あのクソ女共が!」
マキュロンは、鎖鎌を手に取った。
……
「ん…」
フィロドロがベッドで目を覚ます。
「ああ、しまった」
股間が濡れている、夢精である。精神世界での出来事が現実世界の肉体に反応していたのだ。
汚れた衣類を脱ぎ捨て、着替えていると外が騒がしかった。
「ん?、なんだろう?」
その時、部屋の扉を叩く音が
「誰?」
「フィロドロ様、邸内に賊が侵入しました。部屋を出られませぬように」
部屋の外からそう言ってきたのは騎士団員、フィロドロを軟禁し、監視している者達。
「賊?」
「はい、ぐぁっ!」
「貴様っ!、ガッっ」
ドサッドサッっと人が2人倒れる音。するとガチャガチャと扉の鍵を開けられようとした。
フィロドロは後ずさり、棚の上の燭台を手にする。
「フィロドロ様」
扉を開けて入って来たのは騎士団員ではなく、賊でもなかった。この街の衛士隊上級長ドルガーだった。
「君は確か衛士隊の……」
ドルガーの顔が暗くなる、フィロドロから闇の魔物が消え、今の姿になってからそれまでの記憶をほぼ失っていた。フィロドロの幼少期から長く仕えてきた彼にとって、これほど悲しい思いはない。
「衛士隊上級長のドルガーです、フィロドロ様」
「そうだったね、ごめん」
ドルガーはフィロドロの前に片肘をつき、胸に手を当てた。
「……僕は君が思ってるような人間じゃないよ」
「いいえ、私は小さい頃からあなた様を見てきました。大変な努力家で街の発展を思い、尽力されていました」
「それは……」
「例えそれが偽りの記憶だったとしても、今ここにいらっしゃるあなた様が、この街のオッペケペイ侯爵家当主にして領主、フィロドロ様ご本人であると思っております」
「ドルガーさん、僕はとても許されない事をしたんだ、この街どころか王国を欺くような事を…」
「いいえ、全ては貴方を貶めようとした魔物の仕業、不貞の輩は、我ら衛士隊が滅ぼしました、貴方様が憂いる必要はございません」
「え?」
ドルガーはニヤリと笑った。
「そう言うことになっております」
「それって、ドルガーさん……」
「この街の衛士隊は、貴方の盾であり剣でございますドルガーとお呼びください。衛士隊はオッペケペイ侯爵家と共にあります。なんなりとご命令を」
「……ではドルガー、僕をエムの元へ」
「御意」
……
「待て待て待て待てや!!」
騎士達を蹴散らし屋敷に入ろうとしたマティ達は、突然上から浴びせされた殺気に跳び退いた。
ドスンっ!
2階から飛び降りて来た丸い男。騎士団隊長のマキュロンだった。
「おいおいおいおいおいおい!、なんのつもりだテメーラ!!」
「……出たわねチビロン」
マティが睨みつける
「うわっ、ハゲロンが出た」
「やかましい!、チビだのハゲだの、相変わらずだなテメーらは」
「あなたも相変わらずチッさいわね」
「チッさい言うな!、おいマティよ、またあの時のような事を繰り返すつもりか?」
マティが目を細める。
「それとこれとは関係ないわ、フィロドロ侯に用があるのよ」
「まだ取り調べ中だ、会わせるわけにゃいかねーんだよ」
「こちらも時間がないのよ、危害を加えるとかじゃないわ、協力して欲しいのよ」
「ふざーけんな、人の仕事の邪魔ばかりしやがって、お前は昔からそうだ」
「昔は関係ないでしょ!」
「とにかく、後ろの妙な馬連れてさっさと帰れ、門壊したのは不問にしてやる、せめてもの情けだ」
「アンタに情けを掛けてもらうのは無用よ、時間がないって言ってんのよ、押し通るわ」
マティは大楯を前に剣を構える、マティも穂先を下に、屋根に構える。
「このクソアマ共が」
マキュロンは、舌打ちをして鎖鎌を構え、分銅側を振り回した。
「テメーら2人で俺に敵うわけねーだろが!」
「どうかしらね」
「後悔すんな…よ!」
マキュロンは間髪入れずに、マティ達に飛び込んだ。
ゴアあああっ!!
突然チェレスタが吠えた、馬のいななきではなく、咆哮。
ビリビリと当たりに撒き散らされるは、常人ならば卒倒するほどの覇気
マキュロンが足を止めた。
マティ達の前に前足を蹴りながらヌウッと出るチェレスタ、目を赤く光らせ、黒いオーラを纏っていた。
「おいおいおいおい、ただの馬じゃねーとは思ったが、なんのバケモンだそりゃ」
そう言いつつもマキュロンは不敵に笑っていた。
「おもしれーもん、連れてんじゃねーか!!」
マキュロンは回した分銅をチェレスタへ向かって放った。真っ先に潰しておく相手だと認識したからだ。
魔力を伴い、音速で飛ぶ分銅がチェレスタの眉間を捉えた。当たれば頭蓋骨を砕かれ即死する。
しかし…
「あ?」
獲った、そう思ったマキュロンの分銅は空を切った。伸び切った鎖が反動で戻ってくる。
「んな!?」
ゴスンっ!!
「グエっ!!」
マキュロンの後頭部をいきなり衝撃が襲った、それはチェレスタの前足だった。
そのまま地面に叩きつけられ、踏み潰された
頭を。
地面が陥没し、マキュロンの頭は地面に埋没した。
チェレスタは残像だった、瞬間的に相手の視覚に入り込み、幻を見せていたのだ。
チェレスタがヒヒんと鼻で嘲笑う。
「……ふ、ふざっけんなよ…こ、このクソ馬がー!!!」
マキュロンが土の中で吠えた。全身から発せられた衝撃『ウォークライ』、周囲の土を吹き飛ばす、重戦士系の技だ。
チェレスタは前足を上げて後に下がった。
「俺の頭は足拭きじゃねーんだ、クソが!」
後頭部に付いた蹄の痕、立ち上がり首を振って土を飛ばした。
チェレスタはまるで人が見せるみたいに、口角を上げてニヤリと笑って見せた。
「この野郎、馬刺しにしてやる!、て、おい!、ちょっと待て!」
しれっと屋敷に入ろうとしていたマティとケティに気づいたマキュロンが呼び止めた。
「なに勝手に入ろうとしていやがる!!」
「その子と遊んであげてよ、楽しそうだしね」
「んだとっ!?」
『そうはいきませんぞ』
マティとケティは建物の入り口から再び飛び避けた。
両開きの扉が弾け飛び、それぞれが2人を襲う、しかしそれらを盾と槍で弾きとばしたマティとケティ
建物から出てきた長身の騎士、その手には刃厚のあるロングソードを握っている。
「…オキシドのオジ様」
マティがその名を呼んだ
「お久しぶりですな、お嬢さん方、息災でしたかな?」
マティとケティの額を一筋の汗が流れ落ちた。
うーん、暇じゃ
そもそも精神世界ってなんだろう?
状況から鑑みるに、精神世界は魂と同義だと思う。
で、ワタシの魂は、今フィロ君の中に入り込まれてしまっている。
でも融合したわけじゃない。お互い別の意識体として存在してる。
その根拠は、ワタシがフィロ君の身体にアクセスできないから。
フム
フィロ君と闇ドロの関係もこんな感じだったんでしょうね。
んっ?
気配を感じ取り振り向くと、そこにフィロ君が突っ立ってた。
「あ、お帰り早かったわね」
フィロドロ君が何故か呆れた顔をしてる。
お互い、ローブを一枚羽織ってるだけ、下はスッポンポン。
「君はなにをしてるの?」
フィロ君は、ワタシが座り込んでるベッドを見てる。
「フィロ君の魂の一部を使って、色々作ってみたわ、ベッドにマットにシルク的なシーツ、創造って素晴らしいわね」
「僕の魂削ってベット作るとかおかしいから!」
「だって暇なんだもん」
「大人しくしててよ」
「してるじゃない、で?、そっちはどうなのよ?、あれから現実はどの位経ってる?」
「10日」
「10日!?」
ワタシの感覚だとフィロ君と別れてそんなに経ってたっていない、かれこれ1時間ぐらい?、ここでは感覚が狂う。もっと短いか、もっと長いのかもしれない。
「君が言ったんじゃないか、時間の流れが違うって」
「そりゃ言ったけど…」
時間差は3~4倍程度だと思ってた。
「僕が戻ると、すでに7日経ってたよ」
そうすると、ここでの1時間は現実で3日進む事に。うーん、これはかなり早いわ。
「……戻って3日もなにしてたんだって、話だよね?」
神妙な顔して考え込んでしまったワタシに、フィロ君が不安げな声で話しかけてきた。
「え?、あそうね」
「ごめん、僕は今王都騎士団の屋敷に拘束されて監視されてる……外に出られないんだ」
「王都騎士団?……なぜに騎士団?」
そういえば、マティが騎士団がどうのこうの言ってたわね
「騎士団は、侯爵家を内偵してて、不穏な動きの証拠固めを前々からしてたんだ、そこでいよいよって時に、今回の一連の騒動が起きて、騎士団も混乱してて情報が錯交してる。僕は今、衛士隊含めて毎日取り調べを受けてる」
「ふーん」
「…興味なさそうだね」
「ワタシに出来ることなんてないもん」
「君も重要参考人なんだけど?」
なんでやねん
「だけど意識が戻らないって、付き人が拒否してるって」
「え?、誰が?」
「ルナリア・スガー殿」
ルナは無事なのね。
「だったらルナリアも参考人じゃないの?」
「南方領主の御令嬢だから、身柄については騎士団も配慮してる。だけど王都に勅命召喚状を申請してるから、彼女の拘束も時間の問題かも」
勅命と来ましたか。
「彼女を呼んでも無駄だと思うけどね」
「どうして?」
「君の方がわかってるでしょ?」
ルナリアは闇ドロに操られていただけで、特に何かに加担していたわけじゃない。それに、操られていた間の記憶も曖昧、話を聞いたところで答えられるわけがない。
ワタシ自身も、魔犬の匙共のケツの穴破壊したぐらいで、どちらかといえば被害者。
あ、侯爵邸を半分吹き飛ばしたわね。
ケツの穴事件は覚えてないから知らんけど、侯爵邸の件は大目に見てほしいわ。
……ダメかな?
真に咎められるとすれば、衛士隊寄宿舎を襲撃したスノウの方だと思う。
魔犬の匙連中以外にも、衛士隊員の足の筋切って戦闘不能にしたらしいし、美少年を拘束レイプしたらしいし、……スノウはやり方がエグいのよね。
あんな可愛い顔してんのにさ。
「何か心配してるようだけど、咎人での調べじゃないから、あくまでも事情聴取だよ?」
「ルナのことだから、余計なこと言いそうで怖いのよ」
「友達でしょ?、信用してないの?」
「友達ねぇ……」
ルナリアがどう思おうと、彼女を友達と呼ベるだけの資格がワタシの方にないわ。
マティやケティ、スノウに対しても同じ、確かに彼女達と一緒に居るのは楽しい、
でも、ワタシは1人でいたい。
1人のほうが気楽でいい。
…そうすれば裏切ることも、裏切られることもないから。
ワタシは心のどこかで、線引きしてる。
ワタシは身勝手だ、つくづくそう思う。本当嫌になる。
「……ルナリアは友達じゃなくて、旅仲間よ」
「同じでしょ?」
「定義が違うわ」
「??」
フィロ君が首を傾げてる
「まあ、そんな事はどうでもよろしい」
ワタシは創造したベットに腰掛けるとポンポンとベッドを叩いた。
「ほら、Hしよ。その為にベッド作ったんだから」
「君はこんな状況下で交わりたいの?」
「Hしたくないの?」
フィロ君が目を細め、軽蔑的な視線を浴びせてきた。
「今の君とはしたくない」
フィロ君がそっぽ向いた。その仕草がなんかカワイイ。
ワタシはベッドから立ち上がり、ソロリと、彼の背後に回り、腕を伸ばして抱きついた。
「わっ」
背中に胸を押しつけ耳元に息を吹きかけてやると、彼の耳が赤くなる。
「絶対にしない?」
「し、しないよ」
ワタシは徐に、手を下へと下ろして、彼の股間を弄った。
「あっ!」
フィロ君が腰を引く。
「じゃあなんでココはこんなに張ってるの?」
フィロ君の股間をローブ越しにさすってやる。堅くそそり勃ってますがな。
「あっあっ」
身悶えするフィロ君
彼のローブを捲り、直にチンPを握った、根元から先に向かってしごきつつ、先端の割れ目を指の腹でなぞってあげる。
「ぇ、エム、や、止め……」
「あれー?、したくないとか言っといてギンギンの戦闘態勢じゃん」
「へ、変な言い方しないでよ!、うっ!」
「男のココは正直よね」
「くっ、この!!」
フィロ君はワタシの拘束を振り解くと、クルッと周り、ワタシの腰に手を回しキスしてきた。
「んっ」
ふふ、舌で答えてあげる。
ワタシはよろける振りをしながら、彼をベッドへと誘う。
押し倒される感じで。ベッドイン
そして舌を絡ませ長いディープキス。
脚を絡ませて、彼のチンPを太腿で擦り上げてやる。
そして、ちゅばっと唇を離して、いつもの魔法の言葉でトドメの一撃
「優しくしてぇ」
フィロ君に火が入る。
ワタシのローブを捲りあげると、顕になった乳首に吸い付いた。
「あん」
んもぅ、素直じゃないなー
……
オッペケペイ侯爵邸正門
槍を携えた王都騎士団員が門兵として2人立っている、そこへ一頭立ての紅黒い箱馬車がやってきた。
門兵達は心の中で身構える。
見た目が豪奢な作りの箱馬車ゆえ、身分の高かろう者が乗っていると見ていた。
しかし、異様な雰囲気を醸し出した漆黒の毛並みの大きな馬、そして御者席に座る場違いなメイド服の女性、だがその出立は手足に鎧を装備している。
「何用か」
門兵が大きな声で問う
すると、箱馬車の扉が開き、中から御者席と同じ出立の女性が出てきた。
大きな盾と剣を背中に装備していた。
出てきたのはマティ、御者席はケティ、そして馬車を引く馬はチェレスタ。
「!?」
「私達はエムの名代で来ました。フィロドロ・オッペケペイ様に御目通り願います」
「エム?」
門兵2人は顔を見合わせた。
エムといえば、騎士団の聴取を拒んでいる女冒険者だと、彼らは認識していた。
「フィロドロ侯は取り調べ中だ、会わせることはできない」
「では責任者にお取次を」
「……貴殿らの名を名乗られよ」
マティは深呼吸する
「わたくしはマティ、御者席に座るはケティ、エム様付き従者をしている者です」
門兵がはて?と首を傾げる
「マティとケティ?、何処かで聞いた名だな…」
そう言って考え込む門兵とは反対に、もう1人の門兵は、青ざめてる。
「ま、まさか!、だ、第一軍団の戦乙女殿!?」
「何!?」
「元です」
「お、お待ちを!!」
門兵の1人が慌てて屋敷に内に入って行った。
「初めからこうしておけば良かったねマティ」
ケティはそう言ったものの、マティは険しい顔をしていた。
「……ケティ、この人達は第三軍団の『アウスホウル小隊』だわ」
「あー」
ケティは改めて残った門兵の左腕にある隊章を見た。
「本当だ、じゃあ……」
「やっぱり簡単にはいきそうにないわね」
……
「はあ、あ、んっ、あん」
フィロ君に背後から押さえ込まれたワタシは、深く腰を突かれてる。
ズヌッズヌッと、秘穴を出入りする彼のチンPは少し上向に湾曲してる。
その微妙な反り方が、また絶妙にイイ。
「あひっ、ひっ」
ワタシは彼の責めによがるだけ、ビッチこの上ない。
こうしてる間にも、現実世界はどんどん時間が進んでいく。
もう戻れないかもしれない。
肉体は滅び、魂は消滅する。
そう思ったとき、ワタシの心は晴れやかになった。安堵する自分がいる。
なんで?
『そうすれば会える』
会える?、誰に?
『皆の所に行ける』
なんの事?、皆って誰?
なにコレ、ワタシなの?
自分が自分でなくなる感覚が襲う
嫌だ、ワタシはワタシなのよ!
闇のような感覚が襲って来る。
「やめてーっ!!」
ワタシは声を張り上げ、それを振り解いた。
フィロ君が驚いて腰の動きを止めてしまった。
「エム?」
ワタシは腰を引いて、フィロ君から離れると、振り返り彼の胸を押して倒し、馬乗りになってフィロ君のチンPを自らにインサートする。
「んっ!」
そしてワタシは狂ったように彼の上で跳ねる。
「え、エムどうしたの?」
「ワタシに優しくしないで!、犯してワタシを、お願い、激しく、狂おしいほどに!」
ワタシは泣きじゃくった。
理由はわかんない。
ただただメチャクチャにして欲しかった。
するとフィロ君は無言でワタシの両手首を掴んで引き寄せた。
そのまま腰を突き上げる、
「あっ!、んっ!、アアン!!」
ワタシは彼の首に抱きついた。
「はぁっ、あ、ん、あっ」
ズヌッズヌッっと濡れる秘穴をイヤラシイ音を立てて出入りする彼のチンP。
「僕はそんなことしなよ、君に優しくしたい、でも今は忘れさせてあげる」
フィロ君は体位を変え、ワタシを下にすると脚の下に腕を入れ持ち上げると。
激しく打ち付けてきた。
「ヒアッ!、ひっ、いっ!!」
パンパンパンと打ち付ける音が響く。
「ん、エ、エム」
「んなぁ、うぁああ、い、ひっ、イクうっ!」
「ああ、ぼ、僕もイキそうだ!」
「き、きて、一緒に!、はひっ!!」
「うあっ!」
精神世界なのに、命の液の流れは体現される。フィロ君の熱く沸る体液が、ワタシの中に注がれる。
そしてワタシも果てる
「ひぃあーっ!!!」
………
……
…
ワタシはフィロ君の腕の中に抱かれ、疲れ果てグッタリとしてた。
ものすごく濃厚で激しいHだった
さっきの嫌な感じは吹き飛んでいた。無心で彼とまぐわったせいか、記憶が飛んでる。何だったのか今はまるで思い出せない。
それでいい。
そう思った。
それにしてもフィロ君は、精神世界で最初に見た時とえらい違う。
ヒョロッとしたあどけなさが残る少年ではなく、胸板厚く、鍛えられたバッキバキの腹筋。ご立派なチンP。
精神世界なので本人の願望で魂のリソースが使われた彼の理想の姿
いやん、ヤバイ、ちょっと好み。コレで年を重ねたら完璧だわ。
一回だけのつもりが、三回もしちゃったわよ。
フィロ君が、ワタシに視線を向けると白い歯を見せ、爽やかに笑って見せた。
むっ
「…エム、良かっ…モゴっ!?」
ワタシはフィロ君の口を鷲掴みにして抑え込んだ。
その間僅か0.05秒
「アンタ今、何を言おうとした?『良かったよ』、とか言おうとした?、ワタシキライなのよね、Hした後の男のそのセリフ」
するとフィロ君、突然目を見開き、ワタシの手を振り解くと、ガバッと起き上がってワタシを凝視した。
「な、何よ」
「エム、透けてる」
「はっ?」
ワタシは右手を見た、そして左手も…確かに薄らと透けている。
ワタシはフッと笑った。
「やれやれ、意外と早かったわね」
「それってまさか…」
「魂の限界ね、存在が消えかけてる。フフフ、さっきのは激しかったもんね」
「性交してる場合じゃないじゃないか!!」
今のHが、魂の消費を早めたわ。
「僕は戻るよ!、今すぐに宿で眠る君の所に行く!」
「屋敷から出してもらえるの?、無理じゃない?」
「そんなの関係ないよ!、なんとしても行かなきゃ!」
「期待しないで待ってるわ」
「君はどうして……、いや、そんな事は後だ、とにかくもう大人しくしてて、約束だよ!」
「あー、ハイハイ」
ワタシは間髪入れずに彼へ2度めの魔力デコピンをしてやった。
……
一方で屋敷の前では…
マティが青筋を立てていた
「もう一度言っていただけますか?」
マティの覇気にたじろぐ門兵の騎士団員
「た、たとえ戦乙女殿と言えども、フィロドロ様への面会はまかりならぬと、隊長のお言葉です」
「隊長って、マキュロン?」
「はい、そうですが……」
「あ、そりゃダメだ」
そう言ったのはケティ
「参りましたね、手荒な真似はしたくなかったんだけど…ではチェレスタ、お願いします」
チェレスタがいななき、赤く光る目を騎士団達に向けた。
……
一方、フィロドロ邸内執務室。
現在は王都騎士団の第三軍団所属『アウスホウル』小隊が陣取っていた。
その執務席に鎧を外して座る男、隊長のマキュロン・スペルナーズ
背が低く、スキンヘッド、頭も体型も、兎に角丸い。それでいて小太りというわけではない、体躯は妙に引き締まっている。傍のコート掛けに鎖鎌が下げてあった。
第三軍団は諜報を得意とする騎士団で、マキュロンの小隊は、王都諸外地域の監視と統制を任務としていた。
今回は、貿易都市「トンデルダルトトロリアーナ」を治めるオッペケペイ侯爵家に不穏な動きが見られたため、王都行政院の命により数年に渡り調査をしていた。
調査も最終段階に入り、いよいよ侯爵家に強制査察するため、マキュロンは王都より参じた。
ところが、この騒ぎである。
長年に渡り苦労して事前に準備して来た事が全て一夜にしてパァになり、マキュロンは機嫌が悪かった。
「けっ、マティとケティかよ、どこぞで男に股開いて子でも成して落ちぶれてるかと思いきや、こんな所にいやがるとはな」
「隊長、元とはい戦乙女です。あまりそのような発言は控えたほうがよろしいかと」
「うるせーよオキシド、不祥事起こして騎士団を放逐された輩だぞ、今更何しにきやがったてー話だ」
オキシドと呼ぼれた中年男性は、マキュロンの副官。彼とは正反対にヒョロリと背が高く顎髭と左目に眼帯をした隻眼、そして腰にロングソードを下げ、腕を後ろに回して直立不動の姿勢、全く隙がない。
「ご命令通り、追い払うよう指示しました」
「指示はしたんだな」
「ええ指示はしました」
「じゃあ、ありゃなんだ」
マキュロンは窓の外を見ていた。
「戦乙女殿かと」
邸宅門を破壊し、侵入を果たしたマティとケティが中庭で騎士団とやり合っていた。
しかし、一般の騎士団員では2人を止められない、大楯と槍の一撃に蹴散らされていく。
「面倒な事しやがって、あのクソ女共が!」
マキュロンは、鎖鎌を手に取った。
……
「ん…」
フィロドロがベッドで目を覚ます。
「ああ、しまった」
股間が濡れている、夢精である。精神世界での出来事が現実世界の肉体に反応していたのだ。
汚れた衣類を脱ぎ捨て、着替えていると外が騒がしかった。
「ん?、なんだろう?」
その時、部屋の扉を叩く音が
「誰?」
「フィロドロ様、邸内に賊が侵入しました。部屋を出られませぬように」
部屋の外からそう言ってきたのは騎士団員、フィロドロを軟禁し、監視している者達。
「賊?」
「はい、ぐぁっ!」
「貴様っ!、ガッっ」
ドサッドサッっと人が2人倒れる音。するとガチャガチャと扉の鍵を開けられようとした。
フィロドロは後ずさり、棚の上の燭台を手にする。
「フィロドロ様」
扉を開けて入って来たのは騎士団員ではなく、賊でもなかった。この街の衛士隊上級長ドルガーだった。
「君は確か衛士隊の……」
ドルガーの顔が暗くなる、フィロドロから闇の魔物が消え、今の姿になってからそれまでの記憶をほぼ失っていた。フィロドロの幼少期から長く仕えてきた彼にとって、これほど悲しい思いはない。
「衛士隊上級長のドルガーです、フィロドロ様」
「そうだったね、ごめん」
ドルガーはフィロドロの前に片肘をつき、胸に手を当てた。
「……僕は君が思ってるような人間じゃないよ」
「いいえ、私は小さい頃からあなた様を見てきました。大変な努力家で街の発展を思い、尽力されていました」
「それは……」
「例えそれが偽りの記憶だったとしても、今ここにいらっしゃるあなた様が、この街のオッペケペイ侯爵家当主にして領主、フィロドロ様ご本人であると思っております」
「ドルガーさん、僕はとても許されない事をしたんだ、この街どころか王国を欺くような事を…」
「いいえ、全ては貴方を貶めようとした魔物の仕業、不貞の輩は、我ら衛士隊が滅ぼしました、貴方様が憂いる必要はございません」
「え?」
ドルガーはニヤリと笑った。
「そう言うことになっております」
「それって、ドルガーさん……」
「この街の衛士隊は、貴方の盾であり剣でございますドルガーとお呼びください。衛士隊はオッペケペイ侯爵家と共にあります。なんなりとご命令を」
「……ではドルガー、僕をエムの元へ」
「御意」
……
「待て待て待て待てや!!」
騎士達を蹴散らし屋敷に入ろうとしたマティ達は、突然上から浴びせされた殺気に跳び退いた。
ドスンっ!
2階から飛び降りて来た丸い男。騎士団隊長のマキュロンだった。
「おいおいおいおいおいおい!、なんのつもりだテメーラ!!」
「……出たわねチビロン」
マティが睨みつける
「うわっ、ハゲロンが出た」
「やかましい!、チビだのハゲだの、相変わらずだなテメーらは」
「あなたも相変わらずチッさいわね」
「チッさい言うな!、おいマティよ、またあの時のような事を繰り返すつもりか?」
マティが目を細める。
「それとこれとは関係ないわ、フィロドロ侯に用があるのよ」
「まだ取り調べ中だ、会わせるわけにゃいかねーんだよ」
「こちらも時間がないのよ、危害を加えるとかじゃないわ、協力して欲しいのよ」
「ふざーけんな、人の仕事の邪魔ばかりしやがって、お前は昔からそうだ」
「昔は関係ないでしょ!」
「とにかく、後ろの妙な馬連れてさっさと帰れ、門壊したのは不問にしてやる、せめてもの情けだ」
「アンタに情けを掛けてもらうのは無用よ、時間がないって言ってんのよ、押し通るわ」
マティは大楯を前に剣を構える、マティも穂先を下に、屋根に構える。
「このクソアマ共が」
マキュロンは、舌打ちをして鎖鎌を構え、分銅側を振り回した。
「テメーら2人で俺に敵うわけねーだろが!」
「どうかしらね」
「後悔すんな…よ!」
マキュロンは間髪入れずに、マティ達に飛び込んだ。
ゴアあああっ!!
突然チェレスタが吠えた、馬のいななきではなく、咆哮。
ビリビリと当たりに撒き散らされるは、常人ならば卒倒するほどの覇気
マキュロンが足を止めた。
マティ達の前に前足を蹴りながらヌウッと出るチェレスタ、目を赤く光らせ、黒いオーラを纏っていた。
「おいおいおいおい、ただの馬じゃねーとは思ったが、なんのバケモンだそりゃ」
そう言いつつもマキュロンは不敵に笑っていた。
「おもしれーもん、連れてんじゃねーか!!」
マキュロンは回した分銅をチェレスタへ向かって放った。真っ先に潰しておく相手だと認識したからだ。
魔力を伴い、音速で飛ぶ分銅がチェレスタの眉間を捉えた。当たれば頭蓋骨を砕かれ即死する。
しかし…
「あ?」
獲った、そう思ったマキュロンの分銅は空を切った。伸び切った鎖が反動で戻ってくる。
「んな!?」
ゴスンっ!!
「グエっ!!」
マキュロンの後頭部をいきなり衝撃が襲った、それはチェレスタの前足だった。
そのまま地面に叩きつけられ、踏み潰された
頭を。
地面が陥没し、マキュロンの頭は地面に埋没した。
チェレスタは残像だった、瞬間的に相手の視覚に入り込み、幻を見せていたのだ。
チェレスタがヒヒんと鼻で嘲笑う。
「……ふ、ふざっけんなよ…こ、このクソ馬がー!!!」
マキュロンが土の中で吠えた。全身から発せられた衝撃『ウォークライ』、周囲の土を吹き飛ばす、重戦士系の技だ。
チェレスタは前足を上げて後に下がった。
「俺の頭は足拭きじゃねーんだ、クソが!」
後頭部に付いた蹄の痕、立ち上がり首を振って土を飛ばした。
チェレスタはまるで人が見せるみたいに、口角を上げてニヤリと笑って見せた。
「この野郎、馬刺しにしてやる!、て、おい!、ちょっと待て!」
しれっと屋敷に入ろうとしていたマティとケティに気づいたマキュロンが呼び止めた。
「なに勝手に入ろうとしていやがる!!」
「その子と遊んであげてよ、楽しそうだしね」
「んだとっ!?」
『そうはいきませんぞ』
マティとケティは建物の入り口から再び飛び避けた。
両開きの扉が弾け飛び、それぞれが2人を襲う、しかしそれらを盾と槍で弾きとばしたマティとケティ
建物から出てきた長身の騎士、その手には刃厚のあるロングソードを握っている。
「…オキシドのオジ様」
マティがその名を呼んだ
「お久しぶりですな、お嬢さん方、息災でしたかな?」
マティとケティの額を一筋の汗が流れ落ちた。
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