ぬくもり

氷上ましゅ。

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嗚呼あはれなり。

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あったけぇなぁ。
今日は特段あったけぇなぁ。
人ってこんなにあったけぇのかなぁ。
こいつはまた俺を騙そうとしてんじゃねぇのかなぁ。
けど、あったけぇのは変わりねぇなぁ。

あったけぇなぁ。
今日もなかなかあったけぇなぁ。
お日様ってこんなにあったかかったかなぁ。
こいつもまたくゆるんじゃねーだろうなぁ。
けど、あったけぇのには変わりねぇなぁ。

あったけぇなぁ。
今日もまあまああったけぇなぁ。
水ってこんなにあったかいっけなぁ。
19度ってあったかかったっけなぁ。
けど、あったけぇのには変わりねぇんだよなぁ。

あったけぇなぁ。
今日は若干寒いっけなぁ。
俺ってこんな冷たい人間だったかなぁ。
最近思考がまとまんねぇんだよなぁ。
けど、俺はやっぱ変わりねぇよなぁ?

あったけぇなぁ。
今日は特段あったけぇなぁ。
病院ってこんなにあったけぇとこだっけなぁ。
そば枕ってあったけぇんだなぁ。
けど、なんで俺はこんなとこ居るんだろうなぁ?

あったけぇなぁ。
今日はなかなかあったけぇなぁ。
病院食ってこんなにあったけぇもんだったかなぁ。
お粥がうめぇよ、白い粥が。
けど、なんも覚えてねぇんだよなぁ。

あったけぇなぁ。
今日はまあまああったけぇなぁ。
人ってこんなにあったけぇもんだったかなぁ。
こいつはまた俺を閉じ込めようとしてんじゃねーだろうなぁ。
けど、あったけぇのには変わりねぇんだよなぁ。

あったけぇなぁ。
今日は特段あったけぇなぁ。
石の壁ってこんなにもあったけぇもんだったかなぁ。
ここには前にも来たことがある気がすんなぁ。
覚えてねーや、わかんねぇな。
けど、あったけぇのは変わりねぇなぁ。

あったけぇなぁ。
今日は若干寒いっけなぁ。
ひでぇよみんな。俺の事見下しやがって。
俺が何したって言うんだよなぁ。
バレねぇからって殴りやがって...ぜってー許さねぇかんなぁ。
でも、血ってこんなにあったかかったっけなぁ。










あったけぇのには、変わり、ねぇのよなぁ。







┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「せんぱ~い、今日はヤケに暖かいですねぇ。
もう冬だってのに、めっちゃ日照ってて!
ヒートテックの極暖とタートルネック着てきた俺がバカみたいじゃないすか!」
「笹山、今日もえらい元気な事で。
彼女できたって言ってからえらい浮かれてんなぁ」

看守の二人が話を弾ませながら見回りをしている。

「そらそーでしょ!マジで可愛いんすよ俺の彼女!
ちっちゃくて~、髪の毛綺麗で~、オマケに優しくて!」
「はいはいそーですか。……全く、リア充様はお気楽だな。
俺も彼女のひとりやふたりくらい居ればなぁ……」

ある独房に先輩と呼ばれた方の目が止まった。

「ん?先輩、どうしたんですか、いきなり固まって……」

笹山と呼ばれた方もつられて視線を飛ばす。

「……え、嘘でしょ………………」
「いや、別に刑務所内こんな所じゃそんな変わった話でもねーけど……」

血の散乱した独房内を見て二人は絶句していた。











「流石に………………これは…………………………」

笹山が口元を抑えてえづき始めた。
笹山の苦しそうな声と涙、血生臭い空気が入り交じった空間には、嘘ではないかと思う程の暖かい日が差していた。
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