55 / 56
イケメンにシッポ振るだけの人生よりも…
しおりを挟む
「…もうすでに命を狙われてるわけだし、私、やっぱりこの仕事続けたいよ…!」
レナは、口から滑り出てくる言葉に任せる。
「私にはどうせ、心配する親やきょうだいも、親戚も彼氏もいないし。たとえ生活を立て直したとしても、いまの私じゃイケメンに尻尾ふって騙されて、またいままでと同じ繰り返しになるだけだと思う。だったら…!」
そのあとに続く「人の役に立ちたい!」という言葉は、あまりにも気恥ずかしくて咄嗟に飲み込んだ。
けれど、思いは全部吐き出したみたいだと自分でも感じる。
「レナちゃん…」
少し心が揺れ動きそうなアオイに対し、
「雇い主の俺が解雇って言ってるんだ。お前はクビ。撤回はない」
冷たく言い残し、ハヤミはイスから立ち上がった。
そのまま、リビングを去ろうとするハヤミ。
レナは、そんなハヤミの腕をがっしりと掴む。
「は?何を勝手なこと言ってるの?私を命の危険にまでさらしておいて、いまさら解雇とか普通の生活に戻れとか言われても、わけわかんない!責任取ってよ!責任取って、今後も雇い続けなさいよ!」
感情がうまく整理できず、気がついたら泣いていた。
「…コイツ…、相当酔っぱらってるな…」
呆れたようにレナを見つめるハヤミ。
「レナちゃん、とりあえず、寝よ!アルコール抜けたら、きっと冷静になれると思うからさ!」
アオイはなんとかレナを引き剥がし、お姫様抱っこで寝室まで運んでくれた。
ベッドの上にやさしくカラダを降ろされたとき、視界に入ったのはガラス張りの天井から煌めく満点の星。
ついさっき見た星空と同じはずなのに、いまはさっきみたいにワクワクする感情は湧き上がってこない。
むしろ、その輝きが虚しく感じる。
煌びやかな星を見つめれば見つめるほど、よくわからないその気持ちは広がっていく。
「俺たちが巻き込んだクセに、いきなり解雇とか…。ホントごめんね。でも普通の生活に戻れば、すぐに忘れられると思うから…」
そう言ってそばを離れようとしたアオイの袖を、レナは軽くつかむ。
「…ハヤミさんやアオイくんと知り合ってからの時間が濃すぎたよ…」
なぜだか、ツーっと涙もこぼれた。
「何の役にも立っていなかったかもだけど、毎日が充実しまくってた。…いつも誰かを救えるかもしれないっていう気持ちが、心のどこかにあったと思う。命をかける理由って…、それだけじゃダメなのかな…?」
いままで、何をしてもそれほど真剣になれずにいた。
勉強、スポーツ、バイト…
何かを本気で頑張るのはバカらしいという気持ちも、いつもどこかにあったように思う。
でもいまは、少しずつ違ってきてる。
間近で、ハヤミやアオイが任務に向き合う姿を見てきて、自分でも気づかないうちに気持ちが変化してきたようだった。
それは自分でも理解し難い、誰にもきちんと説明できない、とても不思議な気持ち。
でも…。
ひとつだけハッキリしていること。
それは…。
「お願いアオイくん!私…、このまま解雇されるわけにはいかない」
そう懇願していた。
「…レナちゃん…」
「どうせ私は、クソみたいな人生しか送ってきてない。こんな私が誰かの役に立てるとしたら、人生を切り替えられるとしたら、ハヤミさんやアオイくんに出会えた、このチャンスしかないと思う。そういう理由じゃダメかな…?!」
「…でも…」
「お願い!どうにか説得に協力して!そりゃあハヤミさんに言われたとおり、私には持続力がないし、知識や力もない。そのうえ、お金だって時間だってないけど、こんな私だからできることもあるかもしれない!」
…とかなんとか、アオイに熱い想いを伝えているうちに、心地いいアルコールの酔いがゆっくりと眠りに誘ってくる。
レナの意識は、だんだんと遠くなっていった…。
レナは、口から滑り出てくる言葉に任せる。
「私にはどうせ、心配する親やきょうだいも、親戚も彼氏もいないし。たとえ生活を立て直したとしても、いまの私じゃイケメンに尻尾ふって騙されて、またいままでと同じ繰り返しになるだけだと思う。だったら…!」
そのあとに続く「人の役に立ちたい!」という言葉は、あまりにも気恥ずかしくて咄嗟に飲み込んだ。
けれど、思いは全部吐き出したみたいだと自分でも感じる。
「レナちゃん…」
少し心が揺れ動きそうなアオイに対し、
「雇い主の俺が解雇って言ってるんだ。お前はクビ。撤回はない」
冷たく言い残し、ハヤミはイスから立ち上がった。
そのまま、リビングを去ろうとするハヤミ。
レナは、そんなハヤミの腕をがっしりと掴む。
「は?何を勝手なこと言ってるの?私を命の危険にまでさらしておいて、いまさら解雇とか普通の生活に戻れとか言われても、わけわかんない!責任取ってよ!責任取って、今後も雇い続けなさいよ!」
感情がうまく整理できず、気がついたら泣いていた。
「…コイツ…、相当酔っぱらってるな…」
呆れたようにレナを見つめるハヤミ。
「レナちゃん、とりあえず、寝よ!アルコール抜けたら、きっと冷静になれると思うからさ!」
アオイはなんとかレナを引き剥がし、お姫様抱っこで寝室まで運んでくれた。
ベッドの上にやさしくカラダを降ろされたとき、視界に入ったのはガラス張りの天井から煌めく満点の星。
ついさっき見た星空と同じはずなのに、いまはさっきみたいにワクワクする感情は湧き上がってこない。
むしろ、その輝きが虚しく感じる。
煌びやかな星を見つめれば見つめるほど、よくわからないその気持ちは広がっていく。
「俺たちが巻き込んだクセに、いきなり解雇とか…。ホントごめんね。でも普通の生活に戻れば、すぐに忘れられると思うから…」
そう言ってそばを離れようとしたアオイの袖を、レナは軽くつかむ。
「…ハヤミさんやアオイくんと知り合ってからの時間が濃すぎたよ…」
なぜだか、ツーっと涙もこぼれた。
「何の役にも立っていなかったかもだけど、毎日が充実しまくってた。…いつも誰かを救えるかもしれないっていう気持ちが、心のどこかにあったと思う。命をかける理由って…、それだけじゃダメなのかな…?」
いままで、何をしてもそれほど真剣になれずにいた。
勉強、スポーツ、バイト…
何かを本気で頑張るのはバカらしいという気持ちも、いつもどこかにあったように思う。
でもいまは、少しずつ違ってきてる。
間近で、ハヤミやアオイが任務に向き合う姿を見てきて、自分でも気づかないうちに気持ちが変化してきたようだった。
それは自分でも理解し難い、誰にもきちんと説明できない、とても不思議な気持ち。
でも…。
ひとつだけハッキリしていること。
それは…。
「お願いアオイくん!私…、このまま解雇されるわけにはいかない」
そう懇願していた。
「…レナちゃん…」
「どうせ私は、クソみたいな人生しか送ってきてない。こんな私が誰かの役に立てるとしたら、人生を切り替えられるとしたら、ハヤミさんやアオイくんに出会えた、このチャンスしかないと思う。そういう理由じゃダメかな…?!」
「…でも…」
「お願い!どうにか説得に協力して!そりゃあハヤミさんに言われたとおり、私には持続力がないし、知識や力もない。そのうえ、お金だって時間だってないけど、こんな私だからできることもあるかもしれない!」
…とかなんとか、アオイに熱い想いを伝えているうちに、心地いいアルコールの酔いがゆっくりと眠りに誘ってくる。
レナの意識は、だんだんと遠くなっていった…。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

罪なき令嬢 (11話作成済み)
京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。
5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。
5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、
見る者の心を奪う美女だった。
※完結済みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる