【リベンジ】騙したアイツを許さない~裏切り男を社会的に抹殺します~

松原朱里

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イケメンにシッポ振るだけの人生よりも…

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「…もうすでに命を狙われてるわけだし、私、やっぱりこの仕事続けたいよ…!」

レナは、口から滑り出てくる言葉に任せる。

「私にはどうせ、心配する親やきょうだいも、親戚も彼氏もいないし。たとえ生活を立て直したとしても、いまの私じゃイケメンに尻尾ふって騙されて、またいままでと同じ繰り返しになるだけだと思う。だったら…!」

そのあとに続く「人の役に立ちたい!」という言葉は、あまりにも気恥ずかしくて咄嗟に飲み込んだ。

けれど、思いは全部吐き出したみたいだと自分でも感じる。

「レナちゃん…」

少し心が揺れ動きそうなアオイに対し、

「雇い主の俺が解雇って言ってるんだ。お前はクビ。撤回はない」

冷たく言い残し、ハヤミはイスから立ち上がった。

そのまま、リビングを去ろうとするハヤミ。

レナは、そんなハヤミの腕をがっしりと掴む。

「は?何を勝手なこと言ってるの?私を命の危険にまでさらしておいて、いまさら解雇とか普通の生活に戻れとか言われても、わけわかんない!責任取ってよ!責任取って、今後も雇い続けなさいよ!」

感情がうまく整理できず、気がついたら泣いていた。

「…コイツ…、相当酔っぱらってるな…」

呆れたようにレナを見つめるハヤミ。

「レナちゃん、とりあえず、寝よ!アルコール抜けたら、きっと冷静になれると思うからさ!」

アオイはなんとかレナを引き剥がし、お姫様抱っこで寝室まで運んでくれた。

ベッドの上にやさしくカラダを降ろされたとき、視界に入ったのはガラス張りの天井から煌めく満点の星。

ついさっき見た星空と同じはずなのに、いまはさっきみたいにワクワクする感情は湧き上がってこない。

むしろ、その輝きが虚しく感じる。

煌びやかな星を見つめれば見つめるほど、よくわからないその気持ちは広がっていく。

「俺たちが巻き込んだクセに、いきなり解雇とか…。ホントごめんね。でも普通の生活に戻れば、すぐに忘れられると思うから…」

そう言ってそばを離れようとしたアオイの袖を、レナは軽くつかむ。

「…ハヤミさんやアオイくんと知り合ってからの時間が濃すぎたよ…」

なぜだか、ツーっと涙もこぼれた。

「何の役にも立っていなかったかもだけど、毎日が充実しまくってた。…いつも誰かを救えるかもしれないっていう気持ちが、心のどこかにあったと思う。命をかける理由って…、それだけじゃダメなのかな…?」

いままで、何をしてもそれほど真剣になれずにいた。

勉強、スポーツ、バイト…

何かを本気で頑張るのはバカらしいという気持ちも、いつもどこかにあったように思う。

でもいまは、少しずつ違ってきてる。

間近で、ハヤミやアオイが任務に向き合う姿を見てきて、自分でも気づかないうちに気持ちが変化してきたようだった。

それは自分でも理解し難い、誰にもきちんと説明できない、とても不思議な気持ち。

でも…。

ひとつだけハッキリしていること。

それは…。

「お願いアオイくん!私…、このまま解雇されるわけにはいかない」

そう懇願していた。

「…レナちゃん…」

「どうせ私は、クソみたいな人生しか送ってきてない。こんな私が誰かの役に立てるとしたら、人生を切り替えられるとしたら、ハヤミさんやアオイくんに出会えた、このチャンスしかないと思う。そういう理由じゃダメかな…?!」

「…でも…」

「お願い!どうにか説得に協力して!そりゃあハヤミさんに言われたとおり、私には持続力がないし、知識や力もない。そのうえ、お金だって時間だってないけど、こんな私だからできることもあるかもしれない!」

…とかなんとか、アオイに熱い想いを伝えているうちに、心地いいアルコールの酔いがゆっくりと眠りに誘ってくる。

レナの意識は、だんだんと遠くなっていった…。
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