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命をかけてまで任務を遂行する理由
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「…え?それってどういう…?じゃあ、ハヤミさんたちには、命をかけてまで任務を遂行する理由があるっていうの…?」
レナがそう聞いたとき、コトン…と物音がした。
そこには苦笑いを浮かべたアオイが立っていて、
「あ~あ、やっぱりレナちゃんは、そういうこと聞いちゃうかぁ…」
そう言ったあと、
「さっきも注意したけどさ、人には話したくないこともあるわけさ。聞かないほうがいいことだってある。今回は、後者。レナちゃんといっしょに仕事できなくなるのは残念だけど、俺ももう、これ以上はかかわらないほうがいいと思う」
そう真剣な表情で続ける。
「え…っと、ちょっと待ってよ!だったらどうして、私なんか雇ったの?」
お酒の力も手伝って、感情が剥き出しになってしまうレナ。
「雇ったときは、とにかく報酬分だけ働いてもらえればいいと思ってた。面接のときにも言ったが、お前は騙されやすそうな女だからな。イケメンを見れば尻尾を振るし、金にも弱い。騙す男たちを吊り上げるにはちょうどいいと思った」
ハヤミがそう言ったあと、
「でも、レナちゃんに留守番を頼んでいるうちにさっそく依頼者が来ちゃって、しかもそれがこれまでの依頼とはレベル違いのニシジマっていうヤバイやつだったって流れかな。だから俺たちも、まさか命まで狙われるとは思ってなかったんだ。ごめんね」
アオイが続く。
そうは言われても何と答えていいのか、まるで言葉が出なかった。
「多少は危ないことに巻き込むかもしれないっていうのはわかってたし、そのときはいつでも助けられるよう準備はしてた。でもさすがに、命まで狙ってくるとかはヤバすぎるからね。怖かったでしょ。ホントごめん」
申し訳なさそうに謝罪するアオイに、
「そんな…、いまさらそんなこと言われても…」
と、もやもやした感情がそのまま漏れ出しただけで、そのあとの言葉はみつからなかった。
ここしばらく、いろんなことがありすぎて頭の中でうまく処理できない。
「お前、何を迷ってるのか知らないけど、俺たちとこのまま仕事してたら、ホントに殺されるかもしれないんだぞ?最初、面接に来たときの希望だった高額報酬は受け取ったんだ。何を迷うことがある?」
ハヤミに聞かれ、ホントにその通りだとはレナも思っている。
そうしたいとも思っている。
それなのに、行動に移せないのだ。
「ゲームやドラマの中の話じゃない。ホントに死ぬんだ」
無反応のレナに、ハヤミが語気を強める。
「あのねレナちゃん…。俺のアニキが騙されたことで、俺たちの周りの人間が結構亡くなってんだよね。ハッキリはしてないけど、消されたんだと思う。そして、アニキが作った道具が、いまもそいつらの性欲を満足させたり、金を稼ぐため、そしてそれを暴こうとする人間を消すために使われたりしてる…」
「…え…?」
「俺たちがいまの仕事を立ち上げたのは、そういうヤツらに近づくため。そして、アニキを騙して利用した諸悪の根源を突き止めるため。そして、アニキが作った道具がこれ以上、世に広がらないよう阻止するためなんだ」
いつものおどけた口調とは違う、静かなトーンでアオイ。
「だから、俺もハヤミさんも命張れるんだよね。責任ってやつ…かな?俺はアニキを救いたいし、ハヤミさんは幼馴染への弔いと俺のアニキを救うためっていうのも根源にあるね。レナちゃんにはそういうのないんだから、肩肘はらない。ねっ!」
そう言い終わる頃には、いつものアオイに戻っていた。
そして、
「さっきハヤミからレナちゃんを解雇しようと思うって連絡もらってさ、ハヤミが分譲マンションを持っている都道府県の中から、いちばんイケメン率が多い県をチョイスしといたから、新しい恋とかも頑張っちゃって!」
と言い、
「さ、明日から県外暮らしがはじまるよっっ!もう一回寝ようっっ!!」
アオイが明るく締め括ろうとする。
どうやらハヤミは、リビングから出たときに寝室で眠っていたアオイに連絡を取っていたようだった。
「熟睡してたのに、悪いな。ここしばらく、夜はニシジマ建設の突貫工事、昼間はタヴェルナに潜入してもらってたから、睡眠不足だってことはわかってたんだけど」
そう気遣うハヤミに、
「相談してもらえて嬉しかった!」
満面の笑みで返すアオイ。
「ささっ、早くベッドに戻るよ」
手を握って強引に引っ張ろうとしたアオイの手を、レナは無意識に振り払っていた。
レナがそう聞いたとき、コトン…と物音がした。
そこには苦笑いを浮かべたアオイが立っていて、
「あ~あ、やっぱりレナちゃんは、そういうこと聞いちゃうかぁ…」
そう言ったあと、
「さっきも注意したけどさ、人には話したくないこともあるわけさ。聞かないほうがいいことだってある。今回は、後者。レナちゃんといっしょに仕事できなくなるのは残念だけど、俺ももう、これ以上はかかわらないほうがいいと思う」
そう真剣な表情で続ける。
「え…っと、ちょっと待ってよ!だったらどうして、私なんか雇ったの?」
お酒の力も手伝って、感情が剥き出しになってしまうレナ。
「雇ったときは、とにかく報酬分だけ働いてもらえればいいと思ってた。面接のときにも言ったが、お前は騙されやすそうな女だからな。イケメンを見れば尻尾を振るし、金にも弱い。騙す男たちを吊り上げるにはちょうどいいと思った」
ハヤミがそう言ったあと、
「でも、レナちゃんに留守番を頼んでいるうちにさっそく依頼者が来ちゃって、しかもそれがこれまでの依頼とはレベル違いのニシジマっていうヤバイやつだったって流れかな。だから俺たちも、まさか命まで狙われるとは思ってなかったんだ。ごめんね」
アオイが続く。
そうは言われても何と答えていいのか、まるで言葉が出なかった。
「多少は危ないことに巻き込むかもしれないっていうのはわかってたし、そのときはいつでも助けられるよう準備はしてた。でもさすがに、命まで狙ってくるとかはヤバすぎるからね。怖かったでしょ。ホントごめん」
申し訳なさそうに謝罪するアオイに、
「そんな…、いまさらそんなこと言われても…」
と、もやもやした感情がそのまま漏れ出しただけで、そのあとの言葉はみつからなかった。
ここしばらく、いろんなことがありすぎて頭の中でうまく処理できない。
「お前、何を迷ってるのか知らないけど、俺たちとこのまま仕事してたら、ホントに殺されるかもしれないんだぞ?最初、面接に来たときの希望だった高額報酬は受け取ったんだ。何を迷うことがある?」
ハヤミに聞かれ、ホントにその通りだとはレナも思っている。
そうしたいとも思っている。
それなのに、行動に移せないのだ。
「ゲームやドラマの中の話じゃない。ホントに死ぬんだ」
無反応のレナに、ハヤミが語気を強める。
「あのねレナちゃん…。俺のアニキが騙されたことで、俺たちの周りの人間が結構亡くなってんだよね。ハッキリはしてないけど、消されたんだと思う。そして、アニキが作った道具が、いまもそいつらの性欲を満足させたり、金を稼ぐため、そしてそれを暴こうとする人間を消すために使われたりしてる…」
「…え…?」
「俺たちがいまの仕事を立ち上げたのは、そういうヤツらに近づくため。そして、アニキを騙して利用した諸悪の根源を突き止めるため。そして、アニキが作った道具がこれ以上、世に広がらないよう阻止するためなんだ」
いつものおどけた口調とは違う、静かなトーンでアオイ。
「だから、俺もハヤミさんも命張れるんだよね。責任ってやつ…かな?俺はアニキを救いたいし、ハヤミさんは幼馴染への弔いと俺のアニキを救うためっていうのも根源にあるね。レナちゃんにはそういうのないんだから、肩肘はらない。ねっ!」
そう言い終わる頃には、いつものアオイに戻っていた。
そして、
「さっきハヤミからレナちゃんを解雇しようと思うって連絡もらってさ、ハヤミが分譲マンションを持っている都道府県の中から、いちばんイケメン率が多い県をチョイスしといたから、新しい恋とかも頑張っちゃって!」
と言い、
「さ、明日から県外暮らしがはじまるよっっ!もう一回寝ようっっ!!」
アオイが明るく締め括ろうとする。
どうやらハヤミは、リビングから出たときに寝室で眠っていたアオイに連絡を取っていたようだった。
「熟睡してたのに、悪いな。ここしばらく、夜はニシジマ建設の突貫工事、昼間はタヴェルナに潜入してもらってたから、睡眠不足だってことはわかってたんだけど」
そう気遣うハヤミに、
「相談してもらえて嬉しかった!」
満面の笑みで返すアオイ。
「ささっ、早くベッドに戻るよ」
手を握って強引に引っ張ろうとしたアオイの手を、レナは無意識に振り払っていた。
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