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体温で溶ける毒針と潜入者
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ハヤミに追い払われるように車から降りたレナは、しぶしぶな感じでタヴェルナへ向かう。
「はぁ~…。こんなことで、本当にニシジマを社会的抹殺できるのかな?」
ぶちぶちと愚痴りながら店の入口を抜け、店内のレジにいたスタッフに声をかける。
「外の貼り紙を見て、面接に来ました」
レジにいたのは、佐藤建設の娘、佐藤カンナ。
くりくりっとした瞳に、ぷっくりとした愛らしい唇。
サラサラの黒髪をひとつにまとめた清潔感のある人だった。
「ありがとうございます。オーナーを呼んで参りますので少々お待ちください」
と見せた歯は白く、なんとも愛想のよい印象。
どうしてこんな、外見もよくて性格もよさそうな人が苦労しなければならないのだろう。
レナは心の中で軽く溜め息をつき、頭の中にぶわっと現れたニシジマを数回殴って気絶させてやった。
リアルでもこれぐらい簡単に嫌なヤツを倒すことができればラクなのに。
そんなことを考えていると、かなりの力でグイっと肩を掴まれ引き寄せられたかと思った瞬間、目の前をスッと針のようなものがすり抜けていきそうになった。
その針を、しなやかだけど大きな手がキャッチする。
それは本当に一瞬の出来事で…
「…アオイくん…?」
力任せに肩を引き寄せてきた相手がアオイだとわかって、思わず名前を呼んでいた。
いつものやさしくて明るいアオイではなく、鋭く睨むその視線の先には、レナと同い年ぐらいの明らかにモブっぽい黒髪ちょっとだけイケメンが舌打ちをして視線を逸らす。
その黒髪ちょっとイケメンもアオイも、カンナと同じタヴェルナの制服を着用している。
…ということは、2人はタヴェルナのスタッフとして働いている?
いや、そんなわけないか。
これは、間違いなく潜入。
そして、黒髪ちょっとイケメンは、絶対に仲間でないことだけはわかる。
あれ?でも、アオイくんはニシジマ重機建設に潜入中のハズ…。
「毒針かよ…マジでヤベーヤツじゃん」
アオイがふぅ~っと息をついてからレナの肩から手を放し、ゆっくりと指を開く。
するとそこにはもう、針のようなものは見当たらない。
でもさっき、確かにアオイはキャッチした。
…消えた…?
え…?どういうこと…?
戸惑うレナの横で、アオイは冷酷な表情で自分の手のひらを見つめてつぶやく。
「体温で溶ける毒針ねぇ…人からパクったモノ、使うのがお上手で」
アオイは冷たい声でそう言うと手をギュッと握って拳を作り、そのまま力を込めた。
そのまま黒髪ちょっとイケメンに殴りかかるんじゃないかと思ったとき、「え…っと…」と戸惑った声が聞こえてハッとした。
それは、オーナーを呼びに行ったカンナの声。
何だか妙な雰囲気に、状況が飲み込めない様子のようだ。
そりゃあ私だって、状況は飲み込めない。
タヴェルナへ面接に来ただけなのに、針みたいなのは飛んでくるし、アオイくんはすでに潜入済だし?
アオイくんが潜入してるなら、私は必要ないんじゃないかとも思うし。
この状況をどうしたらいいのかアタフタしているうちに、カンナに呼ばれたイケメンオーナーがやってきて、「オーナーの清川漣(キヨカワ レン)です」と名刺を手渡してきた。
「はぁ~…。こんなことで、本当にニシジマを社会的抹殺できるのかな?」
ぶちぶちと愚痴りながら店の入口を抜け、店内のレジにいたスタッフに声をかける。
「外の貼り紙を見て、面接に来ました」
レジにいたのは、佐藤建設の娘、佐藤カンナ。
くりくりっとした瞳に、ぷっくりとした愛らしい唇。
サラサラの黒髪をひとつにまとめた清潔感のある人だった。
「ありがとうございます。オーナーを呼んで参りますので少々お待ちください」
と見せた歯は白く、なんとも愛想のよい印象。
どうしてこんな、外見もよくて性格もよさそうな人が苦労しなければならないのだろう。
レナは心の中で軽く溜め息をつき、頭の中にぶわっと現れたニシジマを数回殴って気絶させてやった。
リアルでもこれぐらい簡単に嫌なヤツを倒すことができればラクなのに。
そんなことを考えていると、かなりの力でグイっと肩を掴まれ引き寄せられたかと思った瞬間、目の前をスッと針のようなものがすり抜けていきそうになった。
その針を、しなやかだけど大きな手がキャッチする。
それは本当に一瞬の出来事で…
「…アオイくん…?」
力任せに肩を引き寄せてきた相手がアオイだとわかって、思わず名前を呼んでいた。
いつものやさしくて明るいアオイではなく、鋭く睨むその視線の先には、レナと同い年ぐらいの明らかにモブっぽい黒髪ちょっとだけイケメンが舌打ちをして視線を逸らす。
その黒髪ちょっとイケメンもアオイも、カンナと同じタヴェルナの制服を着用している。
…ということは、2人はタヴェルナのスタッフとして働いている?
いや、そんなわけないか。
これは、間違いなく潜入。
そして、黒髪ちょっとイケメンは、絶対に仲間でないことだけはわかる。
あれ?でも、アオイくんはニシジマ重機建設に潜入中のハズ…。
「毒針かよ…マジでヤベーヤツじゃん」
アオイがふぅ~っと息をついてからレナの肩から手を放し、ゆっくりと指を開く。
するとそこにはもう、針のようなものは見当たらない。
でもさっき、確かにアオイはキャッチした。
…消えた…?
え…?どういうこと…?
戸惑うレナの横で、アオイは冷酷な表情で自分の手のひらを見つめてつぶやく。
「体温で溶ける毒針ねぇ…人からパクったモノ、使うのがお上手で」
アオイは冷たい声でそう言うと手をギュッと握って拳を作り、そのまま力を込めた。
そのまま黒髪ちょっとイケメンに殴りかかるんじゃないかと思ったとき、「え…っと…」と戸惑った声が聞こえてハッとした。
それは、オーナーを呼びに行ったカンナの声。
何だか妙な雰囲気に、状況が飲み込めない様子のようだ。
そりゃあ私だって、状況は飲み込めない。
タヴェルナへ面接に来ただけなのに、針みたいなのは飛んでくるし、アオイくんはすでに潜入済だし?
アオイくんが潜入してるなら、私は必要ないんじゃないかとも思うし。
この状況をどうしたらいいのかアタフタしているうちに、カンナに呼ばれたイケメンオーナーがやってきて、「オーナーの清川漣(キヨカワ レン)です」と名刺を手渡してきた。
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