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復讐は計画的に
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車に乗り込むと、
「お前が予想どおりの反応してくれて助かったよ。さすがは単細胞」
機嫌よさそうにエンジンをかけながら、ハヤミが言う。
そしてゆっくりとアクセルを踏みながら、頭を下げながら手を振る太郎の母に軽く会釈する。
まさか車内で、こんな会話をしているとは思ってもいないことだろう。
軽い罪悪感を抱きながら、「どーゆう意味ですか?」と聞いてみる。
「太郎が意を決してデータを渡してくれれば、それがいちばん。でもそれが難しいなら、人にはこだわらない」
「は?言ってる意味がちょっとわかんない」
「いまの太郎の様子だと、説得するには時間がかかるってこと。だったら、母親からデータをもらえばいい」
「えーっと…、だから、それとさっきの名刺と、どう関係が…?」
「憎いと思っていた会社のロゴや名前を目にしたら、どう思う?」
「それは…」
「多分、太郎の母親は、ニシジマ重機建設の情報をシャットアウトしてきたはずだ。それは、太郎をこれ以上追い込まないため、そして、自分自身が気丈に日常生活を振る舞っていくため」
「…それなら、なおさら…」
「そう。怒りや憎しみが込み上げ、太郎が辞職に追い込まれて苦しい思いをした当時と同じぐらいの気持ちになっただろうな」
淡々と言うハヤミに、
「ハヤミさん、やっぱり鬼だよね…。うん、悪魔」
目を細くして、呆れた様子で返すレナ。
「その昔、忍者が人を操るのに利用したと言われるのが、五情・五欲。そのうちの五情っていうのが、人の感情『喜・怒・哀・楽・恐』を指す」
「はぁ…」
「人を動かすには、この五つのうちどれかの感情を強く刺激してやることが大切ってことだ」
「…それで…?私が何か言わなくても、あのまま名刺を渡すこともできたんじゃ…?」
「あのまま名刺を渡してたら、不自然だった。お前が名刺について指摘したことで、俺が名刺を咄嗟に差し出したということにリアリティが増した」
ハヤミはそう言うと、
「それともうひとつ、俺がいったん名刺を引っ込めるような動きをしたから母親は、お前に咎められる俺に同情して名刺を受け取らざるを得なくなった」
と、続けた。
「何それ?じゃあ、すべては計画どおりだったってこと?」
「当たり前だ。計画どおり遂行するために、何パターン準備してると思ってんだ?お前も報酬もらうんだから、自主的に何やればいいか考えて提案ぐらいしろ」
名刺の件で役立ったにもかかわらず、結局は冷たくそう言い放たれ、そのあとはそのまま無言。
はあああ…
役に立たなければ怒られる、役に立っても結局は嫌味を言われて無言とか、何のための長距離ドライブ?
ホント、全然楽しくないっっ!
レナが不機嫌そうに車外の景色へ目を向けたとき、ハヤミのLINE音が鳴った。
次の瞬間、聞こえてきたのは、
「やっほ~!レナちゃん!元気してたぁ~?」
ノー天気なアオイの声。
思わず、ハヤミのスマホに映し出されるアオイに「何やってたの?ハヤミさんと2人だと、ホント会話なくてヤバイよぉ~!」と泣きついていた。
そして、そのままハヤミの愚痴を言おうとするレナを、
「アオイ、お前、俺に電話してきたんじゃねーの?」
ハヤミが遮る。
「ハハハ、ごめん、ごめん。それよりハヤミさん、そっち、どう?」
「下準備は完了。あとはアオイのほうと、佐藤建設ってとこかな」
「こっちもイイ感じで進んでる。でも、まだちょっと手が離せないかな。佐藤建設のほうも、2人にお願いしていい?」
「了解」
ハヤミはそう言うと早々に通話を終了させ、アクセルをグッと踏み込んだ。
「お前が予想どおりの反応してくれて助かったよ。さすがは単細胞」
機嫌よさそうにエンジンをかけながら、ハヤミが言う。
そしてゆっくりとアクセルを踏みながら、頭を下げながら手を振る太郎の母に軽く会釈する。
まさか車内で、こんな会話をしているとは思ってもいないことだろう。
軽い罪悪感を抱きながら、「どーゆう意味ですか?」と聞いてみる。
「太郎が意を決してデータを渡してくれれば、それがいちばん。でもそれが難しいなら、人にはこだわらない」
「は?言ってる意味がちょっとわかんない」
「いまの太郎の様子だと、説得するには時間がかかるってこと。だったら、母親からデータをもらえばいい」
「えーっと…、だから、それとさっきの名刺と、どう関係が…?」
「憎いと思っていた会社のロゴや名前を目にしたら、どう思う?」
「それは…」
「多分、太郎の母親は、ニシジマ重機建設の情報をシャットアウトしてきたはずだ。それは、太郎をこれ以上追い込まないため、そして、自分自身が気丈に日常生活を振る舞っていくため」
「…それなら、なおさら…」
「そう。怒りや憎しみが込み上げ、太郎が辞職に追い込まれて苦しい思いをした当時と同じぐらいの気持ちになっただろうな」
淡々と言うハヤミに、
「ハヤミさん、やっぱり鬼だよね…。うん、悪魔」
目を細くして、呆れた様子で返すレナ。
「その昔、忍者が人を操るのに利用したと言われるのが、五情・五欲。そのうちの五情っていうのが、人の感情『喜・怒・哀・楽・恐』を指す」
「はぁ…」
「人を動かすには、この五つのうちどれかの感情を強く刺激してやることが大切ってことだ」
「…それで…?私が何か言わなくても、あのまま名刺を渡すこともできたんじゃ…?」
「あのまま名刺を渡してたら、不自然だった。お前が名刺について指摘したことで、俺が名刺を咄嗟に差し出したということにリアリティが増した」
ハヤミはそう言うと、
「それともうひとつ、俺がいったん名刺を引っ込めるような動きをしたから母親は、お前に咎められる俺に同情して名刺を受け取らざるを得なくなった」
と、続けた。
「何それ?じゃあ、すべては計画どおりだったってこと?」
「当たり前だ。計画どおり遂行するために、何パターン準備してると思ってんだ?お前も報酬もらうんだから、自主的に何やればいいか考えて提案ぐらいしろ」
名刺の件で役立ったにもかかわらず、結局は冷たくそう言い放たれ、そのあとはそのまま無言。
はあああ…
役に立たなければ怒られる、役に立っても結局は嫌味を言われて無言とか、何のための長距離ドライブ?
ホント、全然楽しくないっっ!
レナが不機嫌そうに車外の景色へ目を向けたとき、ハヤミのLINE音が鳴った。
次の瞬間、聞こえてきたのは、
「やっほ~!レナちゃん!元気してたぁ~?」
ノー天気なアオイの声。
思わず、ハヤミのスマホに映し出されるアオイに「何やってたの?ハヤミさんと2人だと、ホント会話なくてヤバイよぉ~!」と泣きついていた。
そして、そのままハヤミの愚痴を言おうとするレナを、
「アオイ、お前、俺に電話してきたんじゃねーの?」
ハヤミが遮る。
「ハハハ、ごめん、ごめん。それよりハヤミさん、そっち、どう?」
「下準備は完了。あとはアオイのほうと、佐藤建設ってとこかな」
「こっちもイイ感じで進んでる。でも、まだちょっと手が離せないかな。佐藤建設のほうも、2人にお願いしていい?」
「了解」
ハヤミはそう言うと早々に通話を終了させ、アクセルをグッと踏み込んだ。
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