【リベンジ】騙したアイツを許さない~裏切り男を社会的に抹殺します~

松原朱里

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アオイからの潜入報告

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モニターの電源を入れてアオイに合図すると、

「頑張ってますよ~!」

いつもの能天気な声が返ってきた。

でも、イヤーカフを通しての映像なので、アオイの姿はまったく見えない。

それでも、

「ちなみに、グットタイミング!もうすぐ夕方だけど、いまからランチタイム。ほかの人が来ないように100tの大型クレーンの中でサンドイッチ食べまぁ~す。だから、おしゃべりOKでーす!」

しゃべり方や声のトーンから、いつものアオイが自然と浮かんできてホッとした。

あぁ、アオイくん、この傷ついた心を慰めに早く帰ってきて…

カナデの出現に痛恨の一撃をくらったレナは、カウンターに突っ伏すと、顔だけを上げて画面に心の声を吐露。

「おい、仕事中だぞ」

ハヤミに注意されても、なんだかどうでもいい気分。

でも、

「おいっ!」

と強く言われて、整った顔立ちで睨みつけられた瞬間、ハッとなって背筋を伸ばしモニターを見つめた。

「ちなみにここは、重機のオペレーターたちが待機する、重機の保管場所兼、駐車場みたいな感じだよ」

アオイが顔をいろんな方向に向け、イヤーカフを通じて周囲の景色をキレイに映し出す。

敷地には、十数台の重機とオペレーターのものと思われる十数台の自家用車、そして、オペレーターたちが待機するプレハブの事務所…

あ~、こんな景色より、アオイくんの元気いっぱいの笑顔が見たいよ~!

「思った以上に、こっちは質素と言うか、お金かけてないのがまるわかりって感じだな」

ハヤミの言葉に、

「そうそう、床もベニア板だし、従業員も使い捨てって感じ。だから、本当にウデのイイ人か、ウデのない40とか50とかの辞めたら転職が難しい人のどっちかしかいないんだよね」

アオイが反応する。

「…なんだかニシジマって、どこまでも嫌なヤツだね。重機なんて、オペレーターさんたちがいなきゃ動かせないのに…」

「レナちゃん、いいこと言う!その通り。運転技術があるスタッフには高額な給料支払ってるみたいだけど、あんなワンマン経営じゃ、長く続かないだろうね」

そう言い終わったアオイのカラダが、急にビクッとなって軽く飛び上がった。

そして次の瞬間、カメラには50歳そこそこの小柄な男性が映り、にこりと微笑みかけた。

いつの間にか男性は、100tの大型クレーンによじ登り、運転席のドアを開けてアオイを見ていたらしい。

いつから…?

不安がつい、アオイの息を飲む音にも影響した。

レナも、まるで自分がその場にいるかのように慌てて息を飲んだが、

「新人さん、お疲れさん」

男性はそう言って、水滴のついたキンキンに冷えていそうな缶ジュースを手渡しただけだった。

「…どうも…ありがとうございます…」

戸惑いながらお礼を言うアオイに、

「キミ、新人だろ?珍しいな。最近の新人は、昼休憩には重機なんかに目もくれないと思っていたが…」

男性が嬉しそうに微笑む。

「重機、好きなんで」

咄嗟に応えたアオイだったが、もう冷静になったのか、女性らしい口調で対応していた。

「ほう、頼もしい。また、会えるのを楽しみにしているよ。ワシはこれから、出動でな」

男性は、隣に止まっている25tのラフタークレーンを親指を立てて示すと、満面の笑みを浮かべた。
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