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帰り道
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「なんだか、愚痴を聞かせちゃったみたいでごめんなさいね…」
山田の母親に見送られて邸宅をあとにしたのは、10時半頃だった。
「ありがとうございます。また、あらためてお礼に伺います」
ハヤミが丁寧にお辞儀すると、
「何もしてないわよ、そんなことより、無理だけはしないで。仕事なんて、探せばいくらでもあるわよ。でも、その彼女さんやお子さんにとったら、パパはあなたしかいないんだから」
母親はそう言ってハヤミを見ると、レナのほうに目を向け、
「この人のこと、よく見てあげてね。つらそうだったりしんどうそうだったりしたら、無理をしないように労わってあげてね」
心配そうな表情を浮かべてそう言ったが早いか、すぐに口を手でふさぎ、
「あら、いやだ、余計なこと。こんなオバさんにそんなこと言われなくても、ちゃんとわかってるわよね。ごめんなさいね。近くに来たら、いつでも寄ってちょうだい」
申し訳なさそうにそう続けた。
たった1時間半だったが、母親からは、盛りだくさんの情報を得た。
山田太郎がニシジマの不正や理不尽な行動に気づき、告発しようとしたところ、さまざまな嫌がらせを受けたということ。
そんな嫌がらせにも負けず情報収集などを熱心におこなっていた山田の心を砕いたのは、「苦しい」「つらい」と助けを求めてきた同僚や後輩たちの裏切りだったということ。
ニシジマが、お金と昇格をエサに、同僚や後輩たちを次々に黙らせたのだ。
そして山田は会社で孤立し、仕事もスムーズにこなせなくなり、退社…
いまは、自宅近くにある小さな印刷所で1日数時間アルバイトとして働いているらしいが、無気力な状態が続き、仕事のないときはほぼほぼ自室にこもりっきりなのだとか。
「母親は、だいぶん後悔している様子だったな」
レクサスに乗るなり、ハヤミ。
「うん…、ニシジマ重機建設って聞いたとき、かたまってたし、表情変わってたもんね…仕事も辞めるように必死で訴えてきたし…」
門のところで微笑みを浮かべながら見送る山田の母親の姿を見て、キューっと音がするぐらい心の奥底がしめつけられる感じがした。
許せない…
レナの心に、怒りの炎が次々と点る。
「ニシジマ、絶対に許せない」
作った拳をプルプルと震わせるレナに、
「だから、そう熱くなるな。とにかく、冷静でいることを心がけろ」
ハヤミはいつも以上に不機嫌。
「だって…!」
言い返そうとして、
「そう言えば、山田本人には会ってないけど平気なの?」
ふと、疑問に思ったことを尋ねて気分を落ちつけた。
「いや、本人とは、会う」
「え?じゃあ、今日会えばよかったのに」
「お前はバカか。ニシジマのことが原因で、無気力になってひきこもり状態なんだぞ?見知らぬヤツとそう簡単に会うと思うか?」
「…あぁ…そうかぁ…。でも、山田のお母さんの証言なんて、証拠にならないよね?」
「なんねーな。だから、山田に会いに行くっつってんの」
「会いに行くって言っても、もう会いに行けるタイミングなんて…」
「まあいいから、お前はとりあえず黙って見てろ。ま、その前に証拠を固めないと、だけどな。山田に会いに行くのは、それからだ」
そう言いながら、ハヤミが高速道路に入った。
「…あれ?来たときみたいに飛ばさないんだね?」
ふと疑問に思って聞いた私がバカだった。
「お前は、本当にバカなのか?あれはなぁ、お前がそこそこ車酔いするように、とにかく荒っぽい運転をしてたんだよ」
思いっきりバカにしたように睨まれ、
「そうでもしないと、調子の悪そうな演技とか、無理だろ?お前」
薄い目で見る。
「くーっ!バカにしてるんですか?私だって、演技ぐらいできますよーだ!それにハヤミさん、演技ヘタだったじゃん!山田のお母さんが話しかけてくれてなきゃ、話なんか弾んでなかったし?」
言い返したのもマズかった。
「まさかと思うけど、今日、山田の母親から話を聞けたことも、偶然だとか思ってないだろうなぁ?!」
睨まれながらそう言われ、このあとカフェ「リベンジ」に帰るまでの3時間近く説教されるハメに…
あ~、ウザすぎる~!!
でも~、怒っている横顔も、イッケメンなんだよね~デッヘヘ~
「おいコラ、聞いてんのか?たるんだ顔しやがって!そんなだからなぁ…」
山田の母親に見送られて邸宅をあとにしたのは、10時半頃だった。
「ありがとうございます。また、あらためてお礼に伺います」
ハヤミが丁寧にお辞儀すると、
「何もしてないわよ、そんなことより、無理だけはしないで。仕事なんて、探せばいくらでもあるわよ。でも、その彼女さんやお子さんにとったら、パパはあなたしかいないんだから」
母親はそう言ってハヤミを見ると、レナのほうに目を向け、
「この人のこと、よく見てあげてね。つらそうだったりしんどうそうだったりしたら、無理をしないように労わってあげてね」
心配そうな表情を浮かべてそう言ったが早いか、すぐに口を手でふさぎ、
「あら、いやだ、余計なこと。こんなオバさんにそんなこと言われなくても、ちゃんとわかってるわよね。ごめんなさいね。近くに来たら、いつでも寄ってちょうだい」
申し訳なさそうにそう続けた。
たった1時間半だったが、母親からは、盛りだくさんの情報を得た。
山田太郎がニシジマの不正や理不尽な行動に気づき、告発しようとしたところ、さまざまな嫌がらせを受けたということ。
そんな嫌がらせにも負けず情報収集などを熱心におこなっていた山田の心を砕いたのは、「苦しい」「つらい」と助けを求めてきた同僚や後輩たちの裏切りだったということ。
ニシジマが、お金と昇格をエサに、同僚や後輩たちを次々に黙らせたのだ。
そして山田は会社で孤立し、仕事もスムーズにこなせなくなり、退社…
いまは、自宅近くにある小さな印刷所で1日数時間アルバイトとして働いているらしいが、無気力な状態が続き、仕事のないときはほぼほぼ自室にこもりっきりなのだとか。
「母親は、だいぶん後悔している様子だったな」
レクサスに乗るなり、ハヤミ。
「うん…、ニシジマ重機建設って聞いたとき、かたまってたし、表情変わってたもんね…仕事も辞めるように必死で訴えてきたし…」
門のところで微笑みを浮かべながら見送る山田の母親の姿を見て、キューっと音がするぐらい心の奥底がしめつけられる感じがした。
許せない…
レナの心に、怒りの炎が次々と点る。
「ニシジマ、絶対に許せない」
作った拳をプルプルと震わせるレナに、
「だから、そう熱くなるな。とにかく、冷静でいることを心がけろ」
ハヤミはいつも以上に不機嫌。
「だって…!」
言い返そうとして、
「そう言えば、山田本人には会ってないけど平気なの?」
ふと、疑問に思ったことを尋ねて気分を落ちつけた。
「いや、本人とは、会う」
「え?じゃあ、今日会えばよかったのに」
「お前はバカか。ニシジマのことが原因で、無気力になってひきこもり状態なんだぞ?見知らぬヤツとそう簡単に会うと思うか?」
「…あぁ…そうかぁ…。でも、山田のお母さんの証言なんて、証拠にならないよね?」
「なんねーな。だから、山田に会いに行くっつってんの」
「会いに行くって言っても、もう会いに行けるタイミングなんて…」
「まあいいから、お前はとりあえず黙って見てろ。ま、その前に証拠を固めないと、だけどな。山田に会いに行くのは、それからだ」
そう言いながら、ハヤミが高速道路に入った。
「…あれ?来たときみたいに飛ばさないんだね?」
ふと疑問に思って聞いた私がバカだった。
「お前は、本当にバカなのか?あれはなぁ、お前がそこそこ車酔いするように、とにかく荒っぽい運転をしてたんだよ」
思いっきりバカにしたように睨まれ、
「そうでもしないと、調子の悪そうな演技とか、無理だろ?お前」
薄い目で見る。
「くーっ!バカにしてるんですか?私だって、演技ぐらいできますよーだ!それにハヤミさん、演技ヘタだったじゃん!山田のお母さんが話しかけてくれてなきゃ、話なんか弾んでなかったし?」
言い返したのもマズかった。
「まさかと思うけど、今日、山田の母親から話を聞けたことも、偶然だとか思ってないだろうなぁ?!」
睨まれながらそう言われ、このあとカフェ「リベンジ」に帰るまでの3時間近く説教されるハメに…
あ~、ウザすぎる~!!
でも~、怒っている横顔も、イッケメンなんだよね~デッヘヘ~
「おいコラ、聞いてんのか?たるんだ顔しやがって!そんなだからなぁ…」
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