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目が覚めると、何故かベッドの上にいることに気づいた。

でも、自分の家じゃない…

ここは…

頭痛のようにガンガンする頭を少しだけ起こして周囲に目をやると、ホテルのような装いの、少し広い部屋にいることがわかった。

ベッドから少し離れたところにあるソファに座り、上半身裸でタバコを吸いながら、まるで凶悪犯のような表情で微笑んでいるのは…

ニシジマだった。

え…?

ちょっとこれって…どういう展開…?

ふと、あまりにもカラダがスースーすることに気づいて布団のなかを確かめると…

ひぃいいいいっっ…!!!

下着…

しかも、ここ、どこっ?!

まったくもって、状況がのみこめない。

しかも、声すら出ない。

口を開いても、パクパクと息だけが喉の奥につかえては漏れていく。

静かな部屋のなかに、

「どっちにしようかな?って考えてたんだけど、それほどクオリティも高くないし、1回ヤレればいいかなって」

そんなニシジマの言葉が広がった。

1回聞いただけでは、ニシジマが言った言葉の意味が理解できなかった。

ニシジマは、まるで人が変わったかのように目つきの悪い表情でこちらを見つめている。

「…あの…」

「お前のオヤジ、要領悪すぎるから、うまくコキ使われて、いまじゃほとんど利益ない仕事ばっかやらされてるでしょ?そこそこフツーの外見のお前と1回ヤルだけでどうにかしてやろうっていうんだから、俺って、やさしいだろ?」

え…誰…?この人…

本当に、まるで別人のようだった。

昨日のパーティー会場での、あの紳士のような対応は何だったの?

「どうせお前も、金目当てか玉の輿に乗りたくて、わざわざプレゼントなんて会社に持ってきたわけだろ?したたかだよねぇ」

ニシジマは口の端が引きつったような笑みを浮かべると、レナのいるベッドにゆっくりと近づいた。

…いや…やだ…!!!

そして、ニヤニヤとしながら、ゆっくりと布団を引き剥がそうとしたときだった。

ニシジマのスマホが着信音を奏で、激しくドアをノックする音が聞こえた。

「シンヤさんっ、シンヤさん!!」

ドアの向こう側から、男性の声がする。

「…ちっ…、うるさいなぁ…」

不機嫌そうにベッドから離れ、スマホの画面を確認するニシジマ。

そのまま神妙な顔で首を傾げながらレナのほうを睨むと、激しく叩かれるドアを開けた。

その瞬間、まるで倒れ込むように入ってきたのは、昨日パーティ会場で受け付けをしてくれた愛想のいい男性だった。

ゼコゼコと息を切らし、

「シンヤさん、その女性…、佐藤建設のお嬢さんじゃありません…!」

吐き捨てるようにそう言うと、苦しそうに両膝に両手をついて息を整える。

眉にシワを寄せてレナのほうを見たニシジマは、

「…じゃあ、お前は誰だ…?」

そう言いながら、ものすごい勢いでレナのほうへ突進してきて胸の上をどついた。

無抵抗だったカラダは、そのまま、ベッドの背もたれに激しく打ちつけられる。

「うくっ…」

思わず、息が止まりそうになって声が漏れた。

突然のことに、思考もカラダも上手く動かない。

どうしよう…、私…どうなっちゃうの…?

レナは、ベッドのシーツをギュッと握ったまま、強く目を閉じて唇を噛んだ。
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