【リベンジ】騙したアイツを許さない～裏切り男を社会的に抹殺します～

「ニシジマシンヤ」への疑問

「お待たせ」

パーティーの主役のはずのニシジマは、飲み物と食べ物をいくつか乗せた銀のトレーをテーブルに置くと、

「ケガとか、大丈夫かな？」

やさしい声で尋ねてくれた。

レナが頷くと、

「佐藤建設のお嬢様だったんだね。佐藤レナさんだっけ？」

ニシジマは、そう聞きながら、レナの対面に置かれているソファに座り、微笑みかける。

佐藤建設…

しかも、レナって…

そう言えば、ハヤミさんに手渡された招待状には確か、そう印刷されていたっけ。

きっと、飲み物とか取りに行く間に、会場にいた人とか受付にいた人に確認しまくったんだろうな…

取引き先のお嬢さんとかだったら、名前覚えてないと今後の仕事とかにも影響とかあるかも？だし。

「お父様にも、ぜひ、ご挨拶したかったな。体調が悪くて帰られたとか？」

「ええ、…はい…」

とりあえず返事は返してみたものの、これは一体、どういう状況になっているんだか。

きっと、会場にいる、ハヤミさんかアオイくんがうまくフォローしてくれたんだろうけど、全然状況がつかめない。

そして何より、自分が情けない。

見慣れない顔の出席者が会場で転倒して、しかもその父親は体調悪くてパーティーがはじまって早々帰ってたとか、まあまあ、あり得ないわ…

ああ…ホントに、ここに恥をかきにきたようなもんだ。早く帰りたい。

…それにしても、佐藤建設って…よくもまあ、私と同じ苗字の建設会社があったものだわ。

まあ、佐藤って名前は、あるあるだけど。

レナってｗ

もう、どんなふうに話を合せていいのかわからず、

「あ、あのぉ…、ご自分の誕生日パーティーなのに、戻らなくていいんですか？」

思わず、そう尋ねてみたけれど、

「うん？もうすぐ戻るよ。でもまあ、名目は俺のパーティーだけど、まあ、ずっといなくてもね」

ニシジマは、ソファにゆったりともたれたまま微笑むと、

「レナさんも少し休んだら、会場に戻っておいで。きっと1人じゃ戻りにくいだろうから、少ししたらまた、迎えに来るよ」

そう言って席を立った。

ふぅ…、ヒヤヒヤしたぁ…

ニセの招待状で来てるってバレるんじゃないかって、ホントにヤバかったぁ…

いまになってバクバクしはじめた心臓を落ちつけようと、とにかく深呼吸してみる。

目を閉じて大きく息を吸い込むと、まぶたの裏に浮かんだのは、ニシジマの爽やかな笑顔だった。

やっぱり…あの人は、悪くないんじゃ…

そんなふうに考え始めたとき、個室のドアが勢いよく開いて、

「ひとまず退散！帰るよっ！」

アオイくんが飛び込んできた。

アオイに引っ張られるようにしてエレベーターに乗り、フロントフロアで乗り換えて地下の駐車場へ戻る。

少し前に飛び降りたはずの黒塗りレクサスに乗り込むと、

「流れはともかく、ニシジマに接触できたことはヨシとしよう」

ハヤミがレナをチラリと横目で見てエンジンをかけた。