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しおりを挟む「よう、退屈そうだな。マッドティーパーティはよ」
「何もしなくて良いのは気分が良いさ。拘束されている、という感覚がなければな」
気軽な感じで教室に入ってきた会長様は全身真っ赤であった。豪華な衣装に身を包んだ彼は服に着られることもなく、むしろ服を着こなしている。
「女王様が何の用だよ、自分の仕事どうした」
ティーパーティ用に用意された机の上にべったり上半身を伏せていた戯藍が気怠そうに顔を上げた。クッションを置いた上に肘をついた彼は丁寧だが乱雑に置かれた茶菓子を退屈そうに指で突く。
「女王言うな。せめて王といえ」
「【ハートの女王様】なんだから良いじゃねぇか。間違ってないだろ」
『肯定。不思議の国のアリスにおいて、ハートの女王はハートの王より我儘かつ傲慢な部分を強調されております。自由気ままに振る舞える、という点においては間違っていないでしょう。首を刎ねよ、などと仰ってみては?( ^∀^)』
作品を忠実に再現している為、一番上の権力者たる表参道はハートの女王役を担っている。凶悪な顔と相まって悪の女王というより魔王みたいな雰囲気になってしまっているのが特徴だ。
「なんかその顔文字腹立つ」
『ガーン。( ゚д゚)当システムはショックを受けております』
端末を眺めていた戯藍が呟くと効果音までつけてショックを表現してくる。色々と変な方向に学習を始めていないかとちょっぴり心配になってきた。
解体しようかと考えている彼を他所に清水が首を傾げて会長に問いかける。
「何か問題でもあったのか?」
「一応の見回りだよ。後で風紀の奴らも来る予定だ。お前らは此処でずっと待機だしな」
特殊な【固有魔法】をかけられた教室は権限を持っていないと入れないようになっていた。逆にいうと中にいる戯藍達は仕事が終わるまで出ることが出来ない。期限付きとはいえ、退屈は退屈だろうと生徒会や風紀委員のメンバー達が入れ替わり立ち替わり見に来てくれるらしい。
彼らの息抜きも兼ねているのだろう。
「盛況そうで何よりだ。生徒だけの催しだってのにどいつもこいつも浮かれてやがる」
年に一度のお祭りだ。テンション爆上げになるのもしょうがない。しかもいつもは高嶺の花である生徒会と風紀委員、ダブルでの催し付きである。はっちゃけるな、というのが無理な話なのかもしれない。
「不良なのになぁ……」
顔が良いと何でも許されるのだろうか。許されそうだなぁ。
ちょっぴり悪なのもそれも魅力、みたいな感じで。
「そういや、戯藍」
「んー?なんだよぉ」
仮にも先輩、年上なのだが普通にタメ口な戯藍であった。これは向こうから要求してきたことだ。伽藍である彼に距離を置かれると嫌だ、と駄々を捏ねられたので身内の中だけならばと了承している。勿論、親衛隊とかがいると即座に敬語に戻していた。猫被りはお手の物だ。面倒を避ける為にもそこら辺は徹底していた。
「お前のところは出しモノ何をするんだ?」
「ライブだとよ。来季がガッツリ前に出て歌を披露するんだとさ」
「お前は?」
「俺が出ると思う?裏方に決まってんだろ、こっちの仕事あるんだから」
前に出るのは華やかな奴らだけだ。見た目が良い奴らは問答無用でライブを飾る花として駆り出されていた。戯藍は裏方、それもほとんど仕事がない奴だ。クラスメイトからは生徒会の方に集中しなさい、とお言葉を貰っている。
ので、ありがたーく裏方という名のやる事なし、という役目に甘えていた。
「なるほど。(つまり、邪魔は入らないと。手に入れるチャンスだな)」
「なんか言ったか?」
「いいや、何も」
うん?と片眉を器用にあげた戯藍だったが表参道は表情一つ変えなかった。視界の端で清水が何かメモしている。
「(うーん、やっぱり学生だと強いな。どう足掻いても白龍さん達も来れない訳だし)」
「なんか嫌な予感するからしっかりシュミレーションしておこうかな、シュレディンガー」
『了解しました。この文化祭で考えうる効率的なパターンでのシミュレーションを開始しておきます。当システムはユーザー様の健康と心のケアを第一に考えたパターンを提供致します、キリッ( *`ω´)』
「阿呆ほど胡散臭いよ、シュレディンガー」
信用できない広告みたいな事を言い出すシュミレーターにツッコミを入れて戯藍はクッションに突っ伏した。
「あー…なんか面白いこと起きないかなぁ」
それは盛大なるフラグである。
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