愛だの恋だの馬鹿馬鹿しい!

蘇鉄

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「アイツら!!マジでふざけんなよ!!」

怒気が充満していた。息苦しいほどの圧の中で瞳孔をかっ開いた戯藍は吐き捨てる。

「まさかあんな行動に出てくるなんて思わなかったよね」

「罠だってのは理解してたけどな。ああいう方向性とは。予想外だ」

「むざむざ罠にハマりに行ったただの馬鹿だったのが一番腹立つ!!」

戯藍が怒っているのは罠にはまった自分だ。彼はいつでも余裕を持って行動している。ありとあらゆる状況を想定し、予想外のことであっても予想内のことにするのだ。だからこそ今回のように捕まって固有魔法まで食らったことが許せない。

『回答。当システムとしても非常に遺憾の一言につきます。(;ω;)』

「結局、アイツらなんなのさ」

『回答。〝阿修羅〟のリーダー夜叉、表参道家の力を総動員しての今回の騒ぎを起こしたようです。つまるところ、家の力を使った巨大な罠、ということですね』

「あの男は?」

『回答。表参道悟、次期当主直属の従者です。名前は吹雪寒月(ふぶき かんげつ)。護衛としても非常に優秀な人間として登録されてあります。わかりやすく言い換えますと無駄に強いです。(>_<)』

チッ、と舌打ちを零した戯藍はようやっと怒りを収めてソファに座った。錆びた瞳がぎらぎらと煌めいているので怒り自体はまだあるらしい。

「これからどうするのさ、ぎーくん」

「観念して話し合いに応じるさ。こっちに関わらないようにさせる」

「出来ない場合は?」

「向こうの要求による。話し合いが無理なら潰す」

にぃと笑った姿は笑ってるくせにすごいキレてた。

「(ねぇ、これさぁ、とってもとっても怒ってる?)」

「(すごい怒ってる。それで確実に戯藍さんの怒りに巻き込まれる予感がするんだが)」

「(やめてよ、マジで巻き込まれるじゃんか!やだよ、僕は肉体的にはか弱いんだから!)」

ひそひそ、ひそひそ。顔を寄せ合って会話しているのを横目に戯藍は予備の端末を取り出していた。

『回答。今すぐバッテリーを爆発させて物理的に端末を消去できますが実行なさいますか?』

「しなくていい、しなくていい。そんな遠距離から爆弾なんて送りつけたら大惨事だよ」

『了解。タスクを変更します。座標と時間を送信致しますが宜しいですか?』

「うん。それで。場所の確認はもう済ませてるんだろ、綴」

明日の話し合いの場所の下見は既に済ませておいた。戯藍が捕まっている間にシュレディンガーが指示を出していたからだ。

「当然!すんごい待ち伏せしにくい場所だし、僕とよっしーで見張ってるから今度は囚われのお姫様にならないと思うよ」

苦い顔を晒した戯藍は指先で端末を弄りつつ、

「あの電撃のやつは誰かわかったのか」

『回答。不明です。恐らくはどちらかのチームの幹部だと思われるのですが、表には出ていない相手です。情報が見つかりません』

「それは、ちょっと警戒しないといけねーっスね」

『同意。くれぐれも注意を怠ることのないようにお願いします。当システムも厳戒態勢で臨みますので』

「了解。2度目はないさ。そんな間抜けはしないとも」

そう言って、彼は送信ボタンを押した。
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