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3章

3章29話 隷属の代償1 ♡オナニー

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 結局授業に出たのは一限目が終わりかけになってからだった。
 静かな教室でぼんやりと授業を受けながら、機械的に板書をするだけの時間を過ごす。

 二限目、三限目と終わるころになっても、僕の心はここにあらずだった。
 昨夜から続いた非日常の連続。
 つい数時間前まで繰り広げられていた、サリナさんとのセックス。

「……はあ」

 その直後にこんな普通の日常に放り込まれても、そのギャップに僕はついていけなかった。
 少しでも意識が黒板から逸れると、サリナさんのあられもない姿が脳裏に蘇る。

「うっ……」

 そしていつものように勃起する僕のおちんちん。
 最近は毎日これだけど、今日は特にひどい。

 その原因も、昨日ようやく判明した。
 サキュバスの母乳に含まれる催淫と精液増量効果。
 しかもサキュバスでもトップクラスに強力な母乳を持つらしいアンヌさんの母乳をたらふく飲んで、昨夜はサリナさんの母乳もたくさん飲んでしまった。

「ほんとに凄い……こんなの、絶対普通じゃない」

 バームホールも含めると、昨日だけで何十回射精したかわからない。
 これがサキュバスの搾精なんだ……。

 人間が家畜に餌を与えて太らせるように、サキュバスは人間に母乳を与えて精液を作らせて、それを絞る。
 もう僕は彼女たちにとってそういう獲物なんだ。

「……これじゃどっちがご主人様かわかったもんじゃないな」

 ずっとふつふつ煮える性欲を我慢しながら時間を過ごし、昼休みになった。
 平和な日常のはずなのに、むしろこっちの方が非現実な気さえする、ぽわぽわした感覚。
 お腹も全然空いてない。
 昨夜はずっとサリナさんとエッチしてたせいで、出されたお茶菓子くらいしか食べてないのに。

「母乳を飲んだからかな。母乳って栄養豊富だって聞くし……」

 いやでもそれは人間の場合で、サキュバスの母乳に栄養ってあるのかな。
 よく考えてみれば僕は人体に異常な影響をもたらす液体を、何も考えず摂取してるわけだけど……これって大丈夫なのかな。

「まあ母乳なんて体に悪いものじゃないよね。味も美味しかったし」
「母乳がどうかしたの?」

 廊下を歩いているとふと声をかけられる。
 振り向くと詩織先輩がきょとんとした顔で首をかしげていた。

「う、うわっ! うわわっ! 詩織先輩!?」
「どうしたのそんなに驚いて」
「い、いえ別に……!」

 ま、まずい……廊下で独り言なんて呟くんじゃなかった。

「今、母乳がどうこうって言ってなかった?」
「い、いやそれは……」
「ん? ……くんくん」

 詩織先輩はおもむろに僕の胸元に顔を近づけて、すんすんと鼻を鳴らした。

「何か甘い匂いがするね。ミルクっぽい感じ?」
「うっ!?」

 そ、それはもしかしたら本当にサリナさんの母乳かもしれないし、もっと別の液体の匂いかもしれない。
 シャワーは借りたけど、登校前にサリナさんとしっぽりしちゃったし、そのときの匂いがついてるのかも……。

「清太君、ミルク好きなの?」
「そ、そうなんですよ、あはは……」
「私もミルク好きー♪ 濃厚で甘いのが特に好きかな」
「濃厚で甘い……」

 まさに昨日のアンヌさんの母乳なんかはその究極系だった。

「うぅ……」

 そんなこと思い出したらまたおちんちんが……。
 詩織先輩の顔が近くにあるのも心臓に悪い。
 甘い香りって言ったけど、詩織先輩の方からこそなんか女性特有のいい匂いが香ってきて……余計に劣情を煽られる。

「どうしたの? 顔色が悪い……というか赤いけど」
「な、なんでもないですっ! 大丈夫です!」

 逃げるように後ずさる。
 でもちょっとだけ前かがみになって勃起はバレないように気を付ける。

 ……なにやってんだろう僕。

「ほんとに大丈夫? 何か私にできることあったらなんでも言ってね?」
「……なんでも」

“――したいことがあったらなんでも言ってちょうだいね♡”

 そう言って、本当になんでもしてくれたサリナさんの唇や舌使いが脳裏をよぎる。
 なんでも……それこそサリナさんは僕のお尻の穴に舌をねじ込んだりまでしてくれた。
 アナルを熱く長い舌でほじくり回される快感に、僕は白目をむきながら悶え何度も連続で精液を吹き散らして……。

「――うぅ!?」

 ぴゅるっ、とちょっとだけ先走り汁がパンツの中で滲む。
 サリナさんのことを思い出すだけでお尻の穴がきゅっと締まる。

「す、すみませんちょっとトイレ……!」
「え、あ、うん」

 困惑する詩織先輩を置き去りにして近くの男子トイレに駆け込む。
 他に誰もいないことを確認して、僕は勃起したおちんちんをパンツから取り出した。

「うぅ……こんなの、やばいよ……日常生活に支障出ちゃってるよ」

 もう頭の中がえっちなことでいっぱいになってる。
 寝ても覚めてもサリナさんやサキュバスの人たちのことばかり考えちゃって、おちんちんはずっと勃ったまま。
 数えきれないほど射精したのに体はむしろずっと欲求不満なくらいムラムラしてる。

「ふっ……! ふぅっ……!」

 おちんちんを激しくシゴく。
 サキュバスクラブに通ったのはまだ二回目。
 そのたった二回で、僕の身体は既におかしくなりはじめてる。

 このままサリナさんと同棲を続けたら、僕の身体どうなっちゃうんだろう……。

「…………あれ?」

 そこで違和感。
 おちんちんをシゴいても全然気持ちよくない。
 いつもと同じようにしてるはずなのに、まったく射精感がこみ上げてこない。
 身体はこんなに欲求不満で早く精液を出したがってるのに……。

「……そうか、サキュバスの人たちの搾精を知っちゃったから……」

 バームホールでの狂うほどの快楽を叩き込まれ、サリナさんと一晩中交わった。
 その快感に比べれば、僕の右手の愛撫なんて話にならない。

「僕、もう……」

 たった二回のクラブ来訪……それだけで、もう僕の身体はサキュバスに魅入られてしまってる。
 怖い……そう直感的に思う気持ちとは裏腹に、僕の心の奥底では快楽を与えてくれないこんな役立たずな右手を見限って、今すぐにでもサリナさんに会いたくなってる。

「サリナさん……」

 知らず、携帯に手が伸びる。
 昨日交換したサリナさんの連絡先。

「…………会いたい」

 そうメッセージを送りたくなる。
 会いたいっていうのは、つまりヤリたいってことだ。

 一日で何百万、何千万円というお金を動かす大企業の社長に、「ムラムラしたから抜いてください」って……あり得ない、そんなお願い。

「……でも遠慮するなって言ってたし……」

 それに……オナニーで性欲が発散できない以上、もう夜までなんてとても耐えられない。

「……ごめんなさいっ」

清太 > すみません、今から会えませんか?

「……」

 送ってしまった。
 こんなの、いくらなんでも仕事中にふざけるなって怒られるんじゃ……。

「あっ」

 送信から数秒で既読がついた。
 ドキドキしながら待つこと更に十秒ほど。

サリナ > いい子ね
サリナ > 今から駅に迎えに行くから待ってて

「サリナさん……」

 ずくん、とおちんちんが疼く。
 怒られなくてほっとした、より。
 サリナさんの優しさに感動した、より。

「……また、えっちできる」

 僕の頭の中はそれだけに支配されていた。


 ……思えばもう、僕はこのときから既に、手遅れなほどサキュバスの虜にされてしまっていたんだ。

 そしてやがて思い知ることになる。
 なぜサキュバスが存在を秘匿され、厳重に管理されなくてはならなかったのか。

 男を惑わせ狂わせる、その魔性の凄まじさを。

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