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3章

3章24話 サキュバスの住む家

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「……こ、ここがサリナさんのお家、ですか……?」

 頭上を見上げながら僕は呆気に取られていた。
 いわゆるタワマンってやつだ。試しに階層を数えてみると、ざっと三十階はありそうだった。

 中に入ると、高級ホテルさながらの内装に思わずテンションが上がる。
 改めて、サリナさんが大企業の社長だと実感させられた。

「さ、早く行きましょ。一番上よ」

 サリナさんに先導されてエレベーターに乗り込む。
 なんとサリナさんはタワマンの最上階を三部屋も並べて所有しているらしい。

「う、うわぁ……!」

 部屋に入ると、僕は思わず目を輝かせて熱い吐息を漏らしてしまった。

 白を基調とした、恐ろしく広い部屋。
 高級ホテルのスイートルームそのもの。
 ソファ、テーブル、壁にかけてある絵画。
 小物一つとっても高そうなものばかりがずらりと並んでいる。

「す、すごい!」
「夜景でも見てみる?」

 サリナさんがなにやらリモコンを操作するとカーテンが自動で開かれて、都心の夜景が視界一面に広がった。

「うわぁ……綺麗」
「あなたの方が綺麗よ、清太君」
「……それ普通逆じゃないですか?」
「あははっ」

 楽しそうに笑いながら、サリナさんはキッチンからお菓子やフルーツを出してくれた。

「ごめんなさい、飲み物はお酒しかなくて。炭酸水ならあるからそれでいいかしら?」
「大丈夫です。いただきます」

 テーブルに並べられたお菓子を一口食べると、あまりの美味しさに目を見開く。
 ……わざわざ聞かないけど、たぶんこのお菓子一つとっても驚くような高価なものなんだろうなあ。

「なんか……デート、みたいですね」
「あら可愛いこと言うじゃない。お姉さんキュンとしちゃう」

 高級車に乗って、タワマンの最上階に招待されて。
 夜景を見て、美味しいものをご馳走されて。
 世の女性たちがこういう接待をされてときめいちゃうのも、今なら凄く理解できる気がする。

「デートなら、最後にはもちろん……ね?♡」

 すっ、とサリナさんが僕の近くに身を寄せてくる。

「うっ……」

 さっき車内で散々体中をまさぐられてたから、余計に反応してしまう。
 やっぱり今日……サリナさんと、エッチ……しちゃうんだよね。
 多分、最後まで。

 そう思うと凄い緊張する……。
 さっきあんなことがあったのに今更な気もするけど、数時間前まで童貞だったんだし、バームホールはなんというか、まともなエッチじゃなかったし……。

「そ、その前に……教えてくれませんか? あのクラブのこと」

 そう、それは絶対に先に聞いておかないといけなかった。

「あの場所はなんなんですか? それに……サリナさんのことも。どうして僕に買ってほしいなんて……サリナさんほどの人が」
「ほどの、ってことはないわよ。どんな家でどんな暮らしをしてようが、私たちにとっては無価値だもの」
「……?」
「もうなんとなく察してると思うけど、私たちは人間じゃないの。――サキュバスっていう、人間の精気を吸って生きる魔物なの」
「…………」

 なにをバカなこと言ってるんですか。
 ……とは言わなかった。
 あのクラブでの異常なサービスを体験した身としては、サリナさんの言葉もすんなりと受け入れることができた。

「あのクラブの人たち、全員ですか?」
「そうよ、全員サキュバス。客以外はね」
「皆そのことを知った上でお店を利用してるんですか?」
「いいえ、ほとんど知らないはずよ。この話はクラブ側からしてはいけない決まりになってるから。もう私はクラブのキャストじゃないから話せるだけ」
「キャストを購入した人だけが知ることができるんですね」
「そうね。でも普通はキャストを購入できるほどバームホールを利用する人なんてほとんどいないからね」

 確かに……僕はプラチナランクらしいから数時間でポイントが溜まったけど、普通なら何倍もの時間が必要だったんだと思う。
 バームホールに何十時間も居続けるなんて……よほどソッチの趣味の人じゃないと耐えられないだろう。

「でも、サリナさんは有名人じゃないですか。もしそんな人がクラブで働いてるって知られたら、購入したいと考える人なんていくらでも……」
「ああ、それは心配ないわ。私たち、クラブの中では認識阻害の魔法をかけてるから」
「認識、阻害……? 魔法……?」

 魔法とか出てきたら、いよいよファンタジーの世界の話になってきたな。

「あなただって、クラブの中と外で私がスメラギ・サリナだって気づけなかったでしょ?」
「……あれは、そういうことだったんですね」

 確かに、僕は一度サリナさんから接客を受けた。
 そのときにしっかりとサリナさんの顔を見ていたはずなのに、電車で再会したときはそれがサリナさんだと気づけなかった。

 いざ二人の顔を思い浮かべて比べてみても、同一人物だとは思えなかった。
 今思えば全く同じ顔だったはずなのに、別人にしか見えなかった。
 あの不思議な感覚は……まさに魔法の仕業だったってことか。

「サキュバスは、皆そんな魔法が使えるんですか?」
「いいえ、ブロンズランクの子たちはできない子が多いわ。そういう子は顔を客に見せられないから、バームホールを使うしかないの」
「あ……」

 なるほど。確かにバームホールならお互いに顔を見せなくても接客できる。
 そうか……あれは認識阻害の魔法が使えないサキュバスが精液を獲得するための設備だったのか。

「でも……それならわざわざクラブで働かなくたっていいじゃないですか。普通にクラブの外で恋人を作ってエッチすれば……」
「それができないから、皆バームホールの中であなたのおちんぽを夢中でしゃぶってたのよ」

 そう言いながら、サリナさんはするりと着ている服を脱いで下着姿になった。
 続いて僕の服にも手をかけ、丁寧に脱がせていく。

「教えてあげるわ。サキュバスの歴史と、私たちを取り巻く事情を。――でも話してるあいだ暇だから、エッチしながらでいい?」

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