サキュバスクラブ~最高ランクの精気を持つボクは無数の淫魔に狙われ貪られる~

ウケのショウタ

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2章

2章15話 畜舎穴【バームホール】

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 しばらくシャリアーデさんの後ろをついて歩くと、クラブにはホール以外にも様々な部屋があることが分かった。
 かなり広い。こんな施設が地下にあったなんて思いもしなかった。

「こちらでございます」

 様々な扉を通り過ぎ、やがて一つの扉の前で立ち止まった。

 通路はホールに近いほど内装が豪華で華やかだったが、奥に進むほどに裏方というかバックヤード感が強くなっていった。
 そして僕たちが到着したこの扉に関しては……クラブというよりも病院の診察室に近い印象を持った。

「……」

 ここが『バームホール』という、クラブポイントを得るための設備がある部屋らしい。

「どうぞ、お入りください」

 シャリアーデさんに促され入室すると、中は外観以上に独特な作りになっていた。

 十畳程度の広さの部屋に、壁に沿っておかれたベッドと机。
 本当に病院の診察室みたいな部屋だった。

「あらぁ、いらっしゃ~い」

 トロッと粘性のありそうな甘い声。
 机に向かって座っていた女性が、椅子をくるりと回転させてこちらを向いた。

「……うっ」

 その人の容姿を見た瞬間、僕は思わず声を上げそうになった。
 美しい顔も、柔らかそうな桃色のふわふわな髪の毛も、目に入らないくらいの衝撃。

「……」
 お、大きい……。
 何センチあるんだあの胸……。

 この人はこのクラブの中では比較的厚着……というか、普通に服だと形容できる恰好をしている。
 それでも露出は十分多いんだけど、乳首と局部さえ隠していればいいという他のキャストの人たちとは違って、ちゃんとミニスカートとフリルのついた白いシャツを着ている。

 ……ただ、あまりにも胸が大きすぎるせいで、第三ボタンまで外されたシャツから巨大な谷間が見えている。
 詩織先輩よりも巨乳な人初めて見た……。
 顔より大きな胸に、つい視線がくぎ付けになる。

「ご紹介させていただきます。こちら、バームホールの管理人、アンヌでございます」
「アンヌですぅ。よろしくおねがいしまぁす」
「よ、よろしくお願いします」

 そこでようやくはっきりと顔を確認する余裕ができた。
 二十代前半のお姉さんといった感じだ。
 一目見て優しそうな微笑。たれ目が更に温厚そうに細まっていた。

「わぁ~、かわいらしいボクちゃん。――あ、シャリアーデ、もしかしてこの子が?」
「小作清太様です。シルバーランクのキャストをご購入なさりたいそうなので、バームホールをご利用になりたいと。バームホールの準備はできていますね?」
「まぁ! もちろん大歓迎ですぅ~。わぁ~」

「では清太様、詳しい説明はこちらのアンヌからお聞きくださいませ。アンヌ、あとはお任せします」
「あら、もう帰っちゃうのぉ? せっかくだから見ていけばいいのに」
「他にしなければいけないことができましたので。――今日、サリナは出勤していますね?」
「ええ、もちろん」

 どきっと心臓が跳ねる。
 やっぱり僕がここに来たのがサリナさんの差し金だと、シャリアーデさんはとっくに感づいていたらしい。

「では清太様、存分にお楽しみください。アンヌ、くれぐれも無理強いだけはしないように。に勘繰られて監査に入られるような真似だけは避けてください」
「わかりましたぁ」

「――それと、清太様」

 そこでシャリアーデさんは意図的に一拍おいて、言葉を強調させた。

「先ほどわたくしの方から『本日は清太様がご不安になるような強引な接客は致しません』と誓いましたが……この『バームホール』は接客・サービスではございません。その点だけご了承くださいませ」
「は、はぁ……」

 それはつまりどういう意味なのか……僕が理解する前に、最後に一礼してシャリアーデさんは部屋から退室した。
 アンヌさんと二人きりになった。おどおどしている僕を見て、アンヌさんは「どうぞ座ってぇ」と、ベッドへ促した。

「し、失礼します」 

 ベッドに腰かけると、奇妙な違和感に気づいた。

「これは……ベッド?」

 というよりも……なんかアレに似てる。

 ベッドは壁と一体化していて、壁には穴が開いていた。
 穴は布のようなもので仕切られていて中を見ることはできないが、形的には病院にあるMRIに近い構造をしていた。

「清太くん、バームホールは初めてよね?」
「は、はい」
「うふふ、そんなに緊張しなくてもいいのよぉ? とっても楽しい場所なんだから」

 ニコニコとほほ笑むアンヌさん。
 それだけで、確かに僕の中の不安が中和されていくような安心感を覚えた。

「シャリアーデからクラブポイントのことは聞いたよね? このクラブには有料のサービスがいくつかあって、ポイントで利用できるのぉ」
「ここなら、そのポイントがチャージできるんですよね?」
「そういうことぉ。この穴に下半身を入れるだけでいいのぉ」

 そう言って穴を指さすアンヌさん。
 中がどうなっているのかは全く分からない。
 ごくり、と思わず生唾を飲み込む。

「入れると……何が起こるんですか?」
「そんなに怖がらないでぇ? 中にはキャストの子たちがいて、気持ちいいマッサージをしてくれるの」
「マッサージ……」
「うふふ、わかるよね? こういうお店だもん。をされちゃうけど、でも大丈夫よぉ? 痛いこととか怖いことは絶対しない。そんなの、別に誰もしたくないもん」
「……」

 それに関しては、なんとなく信頼できる気がする。
 このクラブの人たちは確かにエッチで妖しい人たちばかりだけど、相手が嫌がるようなことはしないように心がけてるような様子が見て取れる。
 どこまで行ってもやはりクラブ。『接客業』ということなのだろうか。

「じゃあ、僕はその穴に入って何をすれば……?」
「うふふ、なにもしなくていいのよぉ? ただ横になって、じっとしていればいいの」
「……どういうことですか?」
「そのままの意味よ? 横になっていれば、穴の中にいる女の子たちが、君の下半身をで気持ちよくしてくれるの。それだけでいいの。その間、ポイントは一秒ごとに加算されていくわぁ」
「……」

 分からない……。
 このクラブの基準、常識……このクラブの求めるものは本当に不可解だ。

「どうしてそれでポイントがもらえるんですか?」
「普通の接客との一番大きな違いは、こっちに主導権があるってことかな~。ホールではボクくんのしたいことをしてもらうのが基本だったけど、この穴の中ではキャストの子たちが楽しむの」
「……」

 だからポイントが貰える……という理屈にいまいちピンとこなかった。
 受け身な形であれ、結局僕にとっては性的なサービスをしてもらえるのに違いはないはずなのに。
 対価を支払うどころかむしろポイントを貰える……?

「あ、あの」
「――じゃあ早速横になってくれるぅ? あ、もちろん……服は全部脱いで、ね?♡」

 僕の言葉を遮って、優しく語り掛けるアンヌさん。

「――あ」

 ニコリと優しく微笑むその瞳の奥……そこに妖しい光を感じて、僕は確信した。

 ……同じだ。
 サリナさんやシャリアーデさん、他のキャストの人たち。
 僕を見て舌なめずりをしていた女性たちと、アンヌさんは同じ目をしていた。

 ……この人も、僕のことを狙っている。

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