お伽話 

六笠 嵩也

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第二章

2-29 ★

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「あの男…もしや……」

「あの男がどうされましたか?」

「いいえ、何でもありません。気にしないで。あの二人…二十歳を越えていそうなので他での経験があるではないかと思っただけよ。」

お妙は列の後へと姿を隠した男と、いま鈴虫を犯している男にどことなく違和感を覚えた。どうやら何も知らずにここへ来たわけではなさそうだ。

「さぁて、随分と待たされちまった。現身様の宝物がすっかり萎えちゃったけどよ、どうしてくれようか?ご自分で扱いて貰おうか?ほうれ、手を添えて…なぁ…現身様が昇天する時、この温かい襞がどんな風になるのか楽しませてもらいたいのぉ。」

「ぃやっ!…しない…そんなの…おらの役目じゃない…」

散々らさせた男は、焦らせれついでに面白い事をしてやろうと欲をかいているようだ。鈴虫の体を下から貫いたままで、ニヤニヤと含みのある嗤いを漏らしている。

「そうですか?俺は親切で言ってやったんですぜ?気持ちいいところを弄られまくって、本当はこの男の部分を使いたくなってきたんじゃないですかね?ふふっ、こうやってシコシコとマス掻きたいのを我慢しているんだろう。」

「ちがう…もうおらのことは見るな。はやく終わらせて…」

「現身様ともあろう御方が人間みたいに酷い事を言うなんて…。分りました、見ません。どっちにしろ、こっちからでは見えないんでね。では、現身様の感じやすいところを丁寧に扱いて差し上げよう。」

そう言うと男は鈴虫の撓垂しなだれた花芯を右手で包み込んだ。思わず鈴虫は首を横に振って拒絶を露わにする。しかし男は器用に包皮の上から裏筋とカリの辺りを柔らかく摘まんでゆるゆると刺激し始めた。

「…ぃやぁ…ぃやぁ…」

「嫌っていう割にはアソコがぐちゃぐちゃに濡れてますが?中も吸い付くみたいにうねって…あぁぁ…こうしているだけでも達してしまいそうだ…ふぅっ…もう…食べちゃいたい!…なんてね。」

結合部分から溢れ出した体液が行燈の火にヌラヌラと照らされていた。それは鈴虫が放つ甘い香りと相まって、滑らかな曲線を成す飴細工のようでもある。そんな光景を幾つもの目が見詰めていた。これから天から舞い降りた美しい観世音菩薩様が一般衆生の面前で絶頂を迎えて吐精してみせようというのだ。

「ほうれ、お手々がお留守だ。ちゃんと自分で持ってしごかなくちゃ。…ほぅれ、自分の気持ちいいところを…俺にも教えて下さいませ。」

「ぃやぁぁ…で、出ちゃう…いやなの!…うぅん…ぃやぁ…そこ、やめて…出ちゃう…」

口では必死に拒絶しているが、鈴虫の体はもう刺激に抗うのが難しくなってきていた。体を後ろから貫いている太い楔は最奥の敏感な部分に当たったままで、それに加えてまだあまり強い刺激に慣れていない花芯に対してこの責めである。無意識の内に溢れ出る蜜は、ほんの少し動くだけでもヌチャヌチャ…っと卑猥な水音を立ててしまう程に増えてきている。その流れはすでに男の腰を滴り落ちて布団の上にポツリと染みをつける程に広がっていた。

「ぃやぁ…あぁぁ…ゆるして…ぃやぁ…出したくなぁい…見ないで…ぃやぁ…」

「現身様…なぁんて…きれいなんだ…着ている物なんか全部脱がせて、その肌にしゃぶりつきてぇよ…気持ちいいか?良いだろう?俺のを咥え込んだまま…あぁぁ…アッ!俺まで達してしまいそうだ…アッ!すげぇ絞まるッ!」

不意にお妙が大きな声を上げた。

「あのぅ、少々お待ちくださいませ!
 現身様はあまり体が丈夫では御座いません。故に、一度達してしまうと眠ってしまうかもしれません。そうするとこの後にお待ちいただいている方々は何もしないままお帰り頂くことになりますが宜しいでしょうか?」

「…はぁ?」

観衆が騒ぎ出した。散々待たされているのに、見るだけで終わりでは納得がいくわけもない。

「おい!余計な事はするんじゃねぇ!さっさとしろ!」
「冗談じゃねぇぞ!」
「ここまで来て何も出来ないなんて赦さんからな!」

「はぁ?…そ、そんな?…あ、あぁ、悪かったなぁ。じゃぁ、余計な見世物は省いて、現身様を堪能させていただきます!」

鈴虫が短い悲鳴を上げた。急に男の腕が回り込んできたと思ったら、一瞬体が宙に浮いたのだ。男は鈴虫の軽い体をひょいと抱え上げると、結合したまま上手いこと四つん這いにした。ほんの一瞬の事で鈴虫は訳が分からない。先程まで可愛がられていた花芯は昇り詰める手前で放置されてしまった。

「恨まねぇでくだせぇよ。現身様の体がもたないんじゃしょうがねぇ。代わりに中から気持ち良くしてさしあげますから。ここ、気持ちいいらしいですねぇ…この、小振りな胡桃のようなところ。感じちゃうんでしょう?知ってるんですぜ。」

「アッ!ぃやっ!…ダメ…うぅん…あぁぁ…そこ…アッ!…アッ!ぃやっ!」

「ほぅれ、気持ちいいだろ?…俺もイイ…いいよ…あぁぁ…その白い肌…食っちまいたい…ハァハァ…」

男は鈴虫の腰を鷲掴みにして律動を始めた。大概の男が感じてしまう場所をこの男も良く心得ている。やはり他での経験があってのことか。的確に鈴虫の前立腺を責めてきているのだ。

「ダメ、ダメって…そればっかだな。わかってますよ。寝ちゃうんでしょ?だから…ハァハァ…俺だけ…俺だけ…ぁああぁあぁっ!ハァハァ…アッ!で、出る…うッ!…ハァハァ…奥に…奥に種付けして…たっぷり…種付けしてやるぜ…アッ!」

男は浅い位置から一気に最奥を突きさしてきた。ピリピリと細かく弾くような刺激が背骨を駆け上がってくる。体の全てを満たすように密着して、男は最奥の壁に頭を突っ込んで射精した。

「…ぃ…ぃ…ぃや…だよ…あぁ、いっぱい…とめて…熱いの…入ってくる…とめてよ…」

ぽろり…ぽろり…と、もう何度目かわからない。誰も拭いてくれない涙を鈴虫は下を向いたまま零していた。

お妙が風野の袖を引き、そっと耳打ちする。

「さっき、あの男が肌にしゃぶり付きたいって言ったでしょう。いえね、他の村で忌子が無理強いされて首に大怪我しまして、それ以来気が触れてしまったって事があったんですよ。誰がやったのかが未だ分からないのですが、案外とこういう若い者が勢いに任せて無理をさせたんじゃないかと思いましたの。こういう場合は止めないと大事になりかねません。」

「…うぅむ…そうでしたか。私もあの者に目を光らせておいた方が良いですね。」

「まぁ、分かりませんが…その方が良いでしょう。どうも…噛みつきたがる性癖の者が存在すのは確かなようでございます。」

「…じ、慈照様…も?慈照様も同類だとおっしゃいますか?」

「そうですねぇ…何を考えてやったのかは分かりませんが、行動は同じでしょ。ですから鈴虫がまたしても狙われないとも限りません。よく見張って下さいませ。襲い掛かってきましたら、殴り倒しても構いません。…まぁ、死なない程度にお願いしますよ。」




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