お伽話 

六笠 嵩也

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第二章

2-15 ★

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「お約束下さり、誠にありがとう存じます。観世音菩薩様の御力でソコに溜まった煩悩を根こそぎ取り除いて頂くと良いでしょう。さぁ、あちらへどうぞ。極上の蜜壺をご堪能下さいませ。」

弦次郎が振り返るとそこには絶望した風野の顔があった。頭巾で顔を隠してはいるが、そこから覗く目の表情だけで全てを語り尽している。地位も名誉も、恥も外聞も、善悪などの大切なものすら忘れて「無」になる、と言えば多少は聞こえが良い。しかし、これはそんな上等なモノではない。これはただの乱交だ。そう訴える風野の目から一筋の涙が伝った。

「何をされたか…お分かりなのか…こんな事したら…もう、引き返せないと言うのに。」

「かざ…分かっているが、抗えないのだ。俺は頭がおかしくなったのかも知れない。どうしても止められないのだ。本当にこれはあやかしのなせるわざなのかも知れない。しかし…御免!」

古びた継接ぎだらけの布団の上は菩薩様が支配する浄土。

「さぁ、さぁ、これで俺達は一蓮托生だ。お前さんは俺の次の次だからな。ちゃんと順番だけは守ってくれよ。」

頭巾の男達が手招きをする。弦次郎は本当に取り返しのつかない事をしてしまったのかも知れない。風野を振り払い、慈照の脇をすり抜けて鈴虫の元へと歩み寄る。そして二人に背を向けて男達の輪に加わってしまった。男達の目の前では三人目を咥え込んだ鈴虫がギュッと目を閉じたまま弄ばれている。

慈照と風野は壁に向かって正座した。慈照は合掌し、風野にだけ聞こえるような声で般若心経を唱え続けた。この状況を受け入れる事を拒絶するとはっきり示すためだ。

「あぁぁ~っイイッ、イイッ!菩薩様ぁぁッ菩薩様あぁッ!で、出る!ふぇぇぇっ、出るッ!!!アッ…き、気持ちいい…はぁぁ…!」

我を忘れたように感じたままを口に出して男は天上世界迄達した。まさに忘我の極致、至福の時が訪れたのだ。鈴虫が自分の体温よりも熱い、もったりとした異物を受け入れて背筋をビクッビクッと震わせる。行火と火鉢を引き換えに、男は鈴虫の中にドロッと粘度のある精液を長々と吐き出していた。

「おい、どうだった。良かっただろう。さ、さ、次は俺の番だ、早くどけ!」

「あっ、はい…あ…あ…アッ」

男は射精したての敏感な性器を、もうしばらく鈴虫の体内の柔らかな粘膜に癒して貰いたいと願ったが、半ば強引に周囲の男達に引き剥がされた。体を離すと同時に鈴虫の後孔から泡立った精子が垂れ落ちる。次に待ち構えていた男はその泡立つ精子を指で掬って穴に戻すと、待ちかねたと言わんがばかりに鈴虫を犯し始めた。

「あと一人待つのか!?もう我慢出来ねぇって!菩薩様、猿轡を外してお口でお願いできませんかねぇ?」

五人目の男は散々他の者達が楽しむ姿を見せつけられて、もう我慢の限界に近かった。赤黒く怒張した男根は少し触れただけでも達してしまいそうな程だ。
せっかくここまで順番を待ったのに、自慰を我慢出来なくなりそうで舌での行為を願い出たのだ。もう切羽詰まった所迄来ているに違いない。しかしそれを最初に鈴虫を犯した男が酒を舐めながら嗜めた。

「口だぁ?そりゃぁ、勿体ねぇよ。そんなのは女でも稚児でも出来るだろう。この水蜜桃があると言うのにそれを使わないなんて戯けだぞ。我慢だ、我慢。なぁ、どうだ?我慢した甲斐はあっただろう?」

「あぁ…そうだな。見事な蜜壺だぞ、こりゃ!ハァッ…ア…わかってる、わかってる、言われなくてもすぐ済んじまうよ!ふぅ…ふぅ、アッ、アッ…もうちょっと愉しませてくれ…!もう…!あぁぁっ…」

「ほぅれ、口でやったら損だろう?」

「あ、あぁ、そ、そうだな。わしも是非是非その蜜壺を味わいたいものだ…早くしてくれ…。」

「ハァッ…ハァッ…わかった、わかったから…集中させてくれ!あぁ、気色イイッ!アッ…で、出ちまう…ァッ…」

この男、鈴虫が眠っている間中ずっと甘露の染みついた着物の裾をしゃぶる程に鈴虫を気に入っている。やっとの思いで思いを遂げると大変に満足している様子で、脱力して布団の上に突っ伏してしまった鈴虫を抱き起して頬擦りして労った。

「なぁ…この現身様…何を貢いだら俺だけのモノに出来るのかね、お妙殿?あぁ、なんて愛らしいのだ…」

「おい、そう言うのは後にしてくれ!こっちはずっと待っているんだ。」

散々待たされて、ようやく順番が回ってきた男にお妙が声を掛けた。

「お急ぎの所…」

「はぁぁ!?何だ、何だ!何でも好きな物を書き加えよ。わしは其れどころでは無いのだ!」

「まぁ!好きな物を書き加えて良いのですね。畏まりました。現身様は体が丈夫でないので屋敷の中で働けるように機織り機が欲しいと思っておりました。宜しいですね。」

「ん…それは随分と大掛かりな物を?まぁ良い。此処に居る者で工面しよう。だから、しばらく黙っていてくれ!あぁ…やっと…はぁ…はぁ…やっとだぁ…」

散々待たされた男はぎちぎちに張詰めた男根をやっと鈴虫の中に埋める事が出来た。あまりの喜びに蕩けた笑顔で腰を振り始める。しかし、その口角が引き攣ってきた。

「あぁ、アッ…駄目だ、駄目だぁ…えぇっ…否だ!…くそッ!」

所謂、三擦り半だ。

可哀相な事に、待たされ続けた男は昂ぶり過ぎた脳が我慢しきれなかったようだ。あまりの早さに周りから同情の声が上がる。男はじんわりと襲ってくる悲しみに暮れながら鈴虫をそっと横たえた。

五人…顔もわからない男の精を腹の中に注ぎ込まれて、まともな状態では精神的にも肉体的にも耐えられなかっただろう。しかし鈴虫の本来の心は此処には無い。此処に居るのは煩悩の火を消し止めるだけの観世音菩薩なのだ。好きでもない男であっても交わり合えば、その度に少しずつ体は楽になる感じもする。

あと一人…あと一人、お相手したらお水が飲みたい…それに…眠たい…でも、この匂いなんだろう…なんか、変。

ぼんやりする頭の中で鈴虫はそんな事を考えていた。

「そう言えば、現身様はまだ一度も出して無いな。」

「アハハ!俺たちが早漏過ぎなんだわ!」

「おい、お主ら、私にも権利があるはず…」

「あぁ、分かっておる。もちろんだ。」

そう言いながら最初に犯した男が鈴虫の顔の前に先程迄酒を注いでいた盃を置いた。

「ん?ん?うぅん?」

猿轡で塞がれた口の奥から疑問を呈した。一体これは何だろう。

「現身様の体から出るものは全部縁起物だ。その可愛らしいおちんちんをシコシコ扱いて美味しいお汁を我らに恵んで貰おうではないか。なぁ、皆の衆!」

「そうだな。お前さんのマラはかなり御立派と見た。その御立派なマラで突き上げながら現身様のおちんちんを扱いてやったらどうだ。現身様が気持ち良くなったらもっともっと濡れて、極上の法性華を堪能出来るはずだぞ。」

それを聞いただけで弦次郎の股座はドクドクと脈打つようにより一層熱く滾りだす。吐息と共に針葉樹の芳香が吹き上がった。

これか…この人…

先程からの自分以外の不思議な芳香はこの男からの物であったのか。布団に倒れ込んだままの鈴虫が横目で弦次郎を見上げる。

二人の目が合ってしまった。
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