お伽話 

六笠 嵩也

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第二章

2-12 ★

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鈴虫を犯さんばかりに組み敷いた男を囲んで、他の男達はさっさと褌を外しておのがものを扱きながら順番を待っている。

再び男達はしっかりと頭巾で顔を覆い直していた。顔を覆うと言う事は身元を隠すための他にも、無責任さを増大させて僅かに残った理性や羞恥心や罪悪感をかなぐり捨てる手助けをする。他者から自分の表情を読み取られる心配が無くなった分、より一層嗜虐的で大胆になれるのだ。

最初の男は左手のゴツゴツした太い指で鈴虫の柳腰をがっちりと掴んでいた。そして、反対の右手では自分のイチモツを扱き上げている。長さは並みだがまるで巨大な芋虫のように中程がでっぷりと太くなった男根だ。男は鈴口からダラダラと先走りを垂れ流し、それを亀頭全体に馴染ませてはヌチャヌチャと卑猥な音を立てていた。

四つん這いに押さえつけられた鈴虫の視界は見慣れた古い布団の継接ぎの上にあった。幸いなことに、後ろにいる男がどのような顔をして自分の股の間を見詰めているかを知らない。ただ、いやらしい水音と布団の周りを囲む男達の囃し立てる声が恐怖心を煽っていた。
とうとう鈴虫は体を開いて佐吉以外の男を迎え入れるのだ。確かに、この不思議な芳香が漂い始めてからというもの、体の奥から止めようのない劣情が湧き上がり、自分一人では抑えきれない衝動に駆られている。だからどうせこの不出来な体はあっさりと赤の他人を咥え込んでしまうのだろう。しかし、愛することを知ってしまった鈴虫の心は、本当ならば誰でも良いわけが無い。心が壊れる瀬戸際で踏みとどまる鈴虫の体は、怯えた子兎のように息を吸いこむ度に細かく震えていた。

「さぁ、観世音菩薩様、力を抜いて下され。此方も危ない橋を渡るんだから、その分きっちり働いて…いや、ご利益を貰わないと割が合わねぇ。」

こんな狭い堂の中では逃げ場など無い。たとえ扉を壊して外に逃げても、ろくに歩けもしない弱い足では遠くには行ける筈も無いだろう。大勢の大人の手から逃げ切る事は不可能な事。それは鈴虫自身がよく理解している。それでも怖いものは怖い。
もう逃れる事が出来ないのであれば、そんな不出来な体はこのまま置き去りにしてしまおう。欲しがる体と欲しがる体、卑しい者同士で貪りあえば良い。鈴虫はそう心を決め、固く瞼を閉じて自分の周りの世界すべてを遮断した。

男はしっかりと硬く勃った男根を濡れた菊門に押し当てると、慣らしもせずにそのまま容赦なく腰を突き出した。鈴虫の塞がれた口からくぐもった悲鳴が上がる。

「あぁぁッアッ…うぅん、すんげぇ…アッアッ!す、すんげぇ良い絞まりだ。こりゃ、栓抜きだぞ!」

男は挿入するとすぐさま何かに取り憑かれたように腰を振りだした。狭い入り口の地良い締め付けと、温かくねっとりとした直腸の襞が堪らない。徐々に脳髄が沸き立つような興奮に精神と肉体が支配されて行く。自分の股座だけに神経が行き、他の何もかもが眼中から完全に消えた。もう、あとほんの数回擦り上げるだけで、欲望の塊のような男根はギリギリまで怒張し、呆気なくも限界を迎えてしまいそうだ。男は鈴虫の腰を掴む手に力を込めると、腰をより一層激しく打ち付け始める。そして、叫び声と共に鈴虫の体が前に押し出されるほど強く数回突き上げて最奥に吐精した。

「おっ、おっ、俺は…んんっあぁぁ…いつもはぁぁっ!早漏じゃないんだからなぁぁぁッ!!!!」

何故か他の男達から拍手が沸き起こった。どうやら皆、甘い香りに酔わされているうえ、他人の性交を間近で見物して頭がどうにかなりかけているのかも知れない。

「お妙殿、酒だ、酒!最高に気分が良いぞ~っ!はははははっ!一度達したのに、まだこんなに勃っておるわ!誠に不思議な御仏の業なり。まだまだやるぞ!」

「はい、こちらに…でも…わが村は米の蓄えを許されておりませんでしたので酒を造る事が出来ませんでした。今日の為に周りの村から借り受けた酒が少しばかりありますが…ほれ、これしか集められませんでした。申し訳御座いません。もし…酒を造る為の米を用意出来れば、来年は……」

「ああっ、分かった、分かった。菩薩様の浄土だと言うのに酒池まで枯れてしまっていたのか!酒の為の米の備蓄と書き加えて構わんから来年はたっぷり用意するのだぞ。まぁいい、早くよこせ。」

鈴虫との交わりを終えて余程機嫌が良くなったのか、男は酒造りの為の米の備蓄まで約束をしてくれた。お妙は深々と頭を下げて礼を言う。そして川下の村から借り受けた酒を差し出した。男は一晩かけてゆっくり呑むからと、ちびちびと舐めるよう呑みはじめ、他の三人も酒を所望した。

「さぁて、次はワシの番だぞ。現身様よ、全員の分の子種が入りきるまで溢しちゃなりませぬ。溢しちまったら立派な種壺にはなれねぇんで。まぁ、この調子で最後まで気張って下され。」

「そうだな、来年の良い種籾がたっぷり蓄えられますように、現身様のお尻…じゃねぇ、ホッショウカにもたっぷりブチ込んで差し上げますから。」

「お待ち下さいませっ!」

お妙が声を張り上げて鈴虫に圧し掛かろうとする男を止めた。お妙は文机に戻り筆を持つと、男としっかり目を合わせてニヤリと笑う。

「はぁ~?まだ何か欲しいのか?何でもくれてやるから早く言え!」

「えぇ、皆様…現身様のお召し物と夜具が酷いことになっているとは思われませんか。」

「あぁ、そうだな。この霊験灼れいげんあらたかな現身様は気に入った。近々届けさせるから書き足しておいて良いぞ。」

そう言うと次に待ち構えていた男は鈴虫の後孔に人差し指を差し入れた。そのまま指の付け根まで差し込むと、ゆっくりと腹側をなぞりながら引き抜く。そこには佐吉に散々躾けられた感じやすい場所があった。思わず鈴虫の口から唸り声が漏れる。その様子に満足した男は、先程の男の吐き出した精液と鈴虫が垂らし続ける愛液とを混ぜ込むように、卑猥な音をたてながら指でその場所を責めた。

「ここ、気色良いだろ…ワシは矢鱈めっぽうに就き回したりせんからな。ちゃぁんと菩薩様にも悦んでいただけるようにご奉仕いたしますぞ。このワシの極太松明に灯った無明火で!」

一人相手にしただけで、元より万全では無かった鈴虫は力を失っていた。四つん這いになって自分の体を支えるのも辛い。次の男はその様子を察したところがあったのだろう。鈴虫をうつ伏せに寝かせると、その上から体を重ねた。男の体温が鈴虫の背中全体を覆うように広がる。胴体に両手を絡み付かせて動けないようにすると、腰を小刻みに突き出して律動させた。

「あっ、あっ、だ、駄目だ…とりあえず、一回出そう。…ふぅ、深くまで突っ込まなくても昇天出来るのは年の功ってもんでな。裏筋とこのコリコリした所を擦り合わせると最高なんじゃ!ふぅ…出すぞ、出すぞッ!んんっ!!!」

鈴虫の体内に熱い雄の滾りが注がれる。男は尽き果ててもなお、ねっとりと絡ませた腕を離さず、鈴虫の耳朶を舐めずりながら余韻に浸っていた。

「おいっ!次は俺の番だ!割り込むな!」

「すまん、すまん、だが早くしてくれ!もう我慢出来ん。魔羅が張詰め過ぎて痛くなってきおった。」

「はははははっ!わかってるって。一発目は我慢せずに出しちまうからよ。だが先に言っておくが、俺も普段は早漏じゃないからな。本当だぞ!さぁ、さぁ、早くどいてくれ、後がつかえてるんだ。」

三人目の男はそう言うと、前の男を横へ押しやり、呼吸を整えようと必死に息を吸う鈴虫の腰を引き上げて再度四つん這いにさせた。

「南無観世音菩薩!俺の煩悩を消せるもんなら消して見せろぉぉっ!」

大きな笑いが起こった。

お妙は何も聞かず、何も見ていないかのように晒布に筆を走らせた。「何でもくれてやる」と言う言質を皆の前で取ったのだから好きなように書かせて貰おう。もし、ここに書かれた事が実行されなければ、これを持って都へ行き不正の証拠とすればいい。もちろん、自分も罰を受けるであろうが、村人の暮らしを守る為と鈴虫の為ならば老い先短い老婆の命など惜しくもない。全ての咎をこの身に受けよう…その覚悟で大胆な要求を勝手に書き加えた。

・酒造りの為の米の備蓄を許す
・真綿の夜具、一組
・絹の衣装、並びにあわせ、単衣 各三枚

男達はお妙の事など気に留めず鈴虫と三人目の男に夢中になって見入っている。三人目の男は先程の男よりも若いのだろうか、ほぼ真上を指して勃ち上がった男根を根元まで突っ込んで大振りに責め立てた。

「はぁぁぁ…仏様ァ…すんげぇ!じゅるじゅるだぁぁ…あぁッ!あぁぁんッ、カリに絡み付くっ!す、すげぇっ!」

挿入した途端に鈴虫の体の虜になってしまったようだ。止め処なく喘ぎ声を上げて夢中で腰を振る。

「はぁはぁっ…あぁぁ!馬鹿野郎、こんなに締まりが良くっちゃ出ちまうだろうがぁぁああぁっ!」

男が調子に乗り過ぎて鈴虫の尻を平手でピシャリと叩いた。鈴虫が短く悲鳴を上げる。すると次の瞬間、辺りがシンと静まり返った。

「ん…んんっ…えぇっ!?」

真っ白な鈴虫の肌には薄紅に手形が残っている。若い男は何が起こったのか分からないようだ。鈴虫と体を繋げたままで辺りを見渡すと、皆が白い目でにらみつけている。一瞬にして空気が変わった。

「おい、お前、退け。」

「お前、今、何をした。」

「菩薩様に手を挙げたな…馬鹿野郎って…お前が馬鹿野郎だろう。」

「お詫びしろ。きちんと土下座して観音菩薩様の赦しを請え。」

若い男は申し開きをする間も無く引き剥がされた。達する手前で引き抜かれたまま、冷ややかな視線に晒された哀れな性器がヒクヒクと震えている。

「お妙殿、誠に申し訳ない。現身様に痛い思いをさせてしまった。冷やしたほうが良かろうか?」

「そうですねぇ…冷やさなくても大丈夫でしょう…でも、少し休ませましょうか。そうですね…お水を飲ませましょう。何せ、丈夫な体ではありませんので。」

お妙は鈴虫を横たえると裾を整えて休ませた。
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