お伽話 

六笠 嵩也

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第一章

1-33 ★

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「慣れて気絶しなくなるくらいまで遣っておいた方が良いだろうな。慣れればここを犯されるのも気持ち良いって思えてくるらしいぞ。要は天賦の才と慣れだ。この子は雪虫の子だからな…本当に雪にそっくりだ…きっと良い現身になれる筈だよ。」

「…。」

「だぁ~かぁ~らぁ~!なんだいその顔は!しっかりしろっ!お前はいっつも、眉根を寄せて情けない顔をする。そんなんで、こいつを守っていけるとでも思ってるのか?情けない!」

「そ…そうですね、もっと気を張らないといけませんね。でも…せめて…せめて、少しだけで良いから休ませてやって下さい。」

嘉平は首を横に振ると、油で塗れた手を襤褸布で拭って鈴虫の頬を平手で何度か叩いた。

「おい!いつまで寝てるんだ。起きろ!まだお仕置きは終わってないぞ。」

目隠しをされているので鈴虫の状態は良く分からない。意識が有っても無くても抵抗することは出来ないだろう。嘉平は張り形に油を再度塗りつけると鈴虫の息遣いなど無視して躊躇無く後孔に押し込めた。鈴虫は正気に戻ったのか身を捩りながら悲鳴を上げたが、その切ない叫びも猿轡に塞がれて閉じ込められてしまっている。

「動かれると危ないんだ。さっさと腕を押さえ込め。」

佐吉は慌てて鈴虫の手を握り締めた。鈴虫に何か言葉を掛けたかったが、気持ちが動揺していて言葉が探せない。とにかく急いで両手を捕まえて床に押し付けた。

「違う違う!手はお前の足で押さえ込むんだって!お前は籠を編むのは上手いのに、こう言う事になると本当に不器用だなぁ!膝下を上手く使え。それで、空いた手を使って乳頭を責めるんだよ。乳頭を摘むだけじゃなくて捏ねてやれ。いいか、緩急つけて弄り倒してやるんだ。」

「…えっ、え…えっと…!?」

「はぁ…少し落ち着け。もっと胸元を肌蹴させれば楽に出来るだろう?何でそんなに中途半端に隠そうとするんだ。お乳を揉まれて気持ち良くなっちまう恥ずかしい体は何所も彼処も隠す必要なんて無いんだよ。なぁ、鈴虫よ、我慢しないで女の子みたいにお乳揉まれてアンアン善がりなさい!」

空いた手はまた乳首を責めるように言いつけられた。しかし佐吉には弄ると言われてもよく分らない。ただもう抓り上げなくて良いというのが少しばかり救いに思えた。赤く腫れた小さな乳首を痛みが和らぐようにと指先で優しく慰める。
その間もくちゅくちゅと卑猥な水音を立てながら嘉平による執拗な責めは続き、太い張り形が鈴虫の体内を掻き回していた。

「どれ、ここはまだ熟していないんだっけか?ついでだから今から責め抜いて開花させてやろうじゃないか!佐吉、お前はここの責め方が下手クソだったな。いいか、この段差を上手く使って擦り上げるようにして刺激してやるんだ。ほれ、たっぷり涎を滴らせて…出したいのかい?生意気なおちんちんだねぇ。」

そう言うと嘉平は張り形を短く持ち直し、浅い位置にある瘤を張り出したエラの部分で擦りあげた。嘉平は簡単そうに言うが、浅い位置で的を外さずに正確な抽挿を繰り返すのは慣れない者には難しいことであろう。嘉平の手の動きに合わせて鈴虫の息遣いが駆け昇るがごとく荒くなっていく。次の瞬間、佐吉は嘉平がにやりと笑うのを見た。

「…ぅっ!…ぐぅっ…んんっ!!!」

「ふっ、いま、気を遣っただろう。どうだ、佐吉よりも棒っきれの方が気持ち良いか?脳天まで痺れちまうだろ?ほらほら、ぱっくり咥え込んでいやらしい穴だなぁ!遠慮しなくて良いんだよ。もっと御代わりが欲しいんだろう?ほらほ~ら、くちゅくちゅ吸い付いて淫乱なおまんこだねぇ!」

「すず、大丈夫か!?あっ!達しても…出ねぇ…って?」

「そうだ。佐吉、手が止まってるぞ。」

「あの…こないだも…」

「ん?なんだ、こないだも中だけで達したのか?儂が手を下すより先に?もう男に突かれて達しちまう体になっていたのか!まったく、ご立派な雌穴だな!さすがだ!良くやったぞ、佐吉!」

嘉平はクスクスと笑い声を上げた。その間も全く手を止めずに同じ場所を責め続けている。鈴虫は一度気を遣ったのにも関わらず、恍惚のまどろみの中で休むことすら許されなかった。嘉平の手技によって逝けども逝けども波状に急き立てられる快楽の地獄に落とされていたのだ。それは全く無機質で無慈悲な人工物のなせる業であり、止め処なく押し寄せては鈴虫の脳内と末端までの神経までも支配していくのである。
鈴虫は何度か雷に撃たれたかのように全身を硬直させたかと思うとガクッと脱力することを繰り返し、そしてまた嘉平の手に握られた凶器の律動に急き立てられていた。

「どうだい、鈴虫?気持ちが良過ぎて馬鹿になりそうだろう?終わらない快楽は最高なんだろう?もっと擦って快楽無しでは生きられない淫乱な体に仕上げてあげようねぇ!ほれほれ、ま~だまだよ!さぁて、今度は奥を責めてあげようか。」

「まだ…ですか…もう…」

「ああ、そうだ。しっかり押さえとけ。」

嘉平は持ち手の位置をずらすと、より一層深く進入させて掘削を繰り返す。塞がれた喉の置くから搾り出す嬌声なのか悲鳴なのか区別の付かないような声が、だんだんと掠れてゼェゼェと苦しげな息遣いが混じりだす。嘉平は佐吉に剥き出しになった鈴虫の白い腹を視線で指し示す。力の入らなくなった薄い腹筋が抽挿に合わせて波打つように揺れている。時折、ぽこっと張り形の先端の位置が見て取れるかのような動きが混じる。

「…ッ!!!…うぅッ!!…ッ!!!」

鈴虫は背を反らせて硬直したかと思うと、苦しげに何度か息を吸い込んで脱力していった。

「本当に体力が無いと言うか…根性が無い!もう駄目か?まぁ、さっきよりは上出来だ。」

猿轡と目隠しを解いてやると、晒で押さえつけられていた所が赤くなっている。鈴虫は目を閉じたまま口元に微笑を浮かべているかのような表情であった。それは笑っているのではなく、長い時間口を括られていたせいで顔が引き攣っているだけかもしれない。

「ん…まぁ、菩薩様の現身としての体は殆んど仕上がっただろう。後は慣れだ、慣れ!回数をこなすのはお前の仕事だ。上手く遣れよ佐吉、任せたぞ。」

「慣れ…ですか。で、でも……はい。」

佐吉は肯定の返事をしたものの、とてもじゃないが慣れられるようなものではないように思えた。鈴虫が感じていたのは、痛みか、はたまた快楽なのか、例え佐吉でも実体感を持って知ることは出来ない。ただ傍から見れば全くの拷問にしか見えなかった。
嘉平は張り形を引き抜くと血液が付いていないか丹念に調べた。そして足に巻かれた麻縄を解いてゆく。縄目の痕は紫色の痣になり、所々に皮膚が擦り切れて赤い血が滲んでいた。佐吉も手首の麻縄を解いてゆく。強張って動かなくなった手首に出来た縄目の痕を掌で擦ってやった。
全ての麻縄を解き終えると、二人掛りで汗に塗れた体を濡れた手拭いで清めてやった。鈴虫の体の下で皺だらけになった白い単衣は、まるで死闘の後の様に所々の糸が切れて解れていた。

「あ~あぁ、ぱっくり開いちまったなぁ。」

「…壊れてないでしょうね。」

「ん?あぁ、大丈夫だ。そんな下手扱くはず無ぇだろ。ほれ、大事な所は触られるの厭なんだろ?お前が後始末して下帯着けておやりなさい。もう儂は疲れたわいっ。」

「お鈴ちゃん!お鈴ちゃん!しっかりしろ!もう終わりだよ。もう終わったんだ!」

佐吉は鈴虫の耳元に顔を近づけて必死に呼びかけた。しかし鈴虫の体は勝手な痙攣を繰り返すばかりで、まともな反応は無かった。

「気付になるから…飲ませてやりなさい。」

嘉平は竹筒から茶碗に一杯の水を取り、佐吉の前に差し出した。佐吉はそっと唇を合わせて、口移しに水を飲ませてやった。

「…うぅっ…ん…」

「お鈴ちゃん!」

「あ…さき…さ?月見草は…綺麗だ…月見草は……あぁ…おら、月見草になって待っていよう…。」

鈴虫はやはり笑っているようだった。しかしその目は開くことは無い。苦しい責めの間ずっと、心は遠く月見草の揺れるあの道を、愛しい人に背負われてどこまでも遠く逃避していたのだろうか。それとも気を失っていた束の間に夢の続きを見ていたのだろうか。佐吉には鈴虫の言いたいことがわかる気がした。佐吉は奥歯を食い縛って何度も何度も頷いた。しかしその姿は鈴虫には見えはしない。ただ握り締めた手の温もりが壊れかけた鈴虫を繋ぎとめていた。

「お父様…お願いだ…おらが死んだら…お山に埋めずに…」

「鈴虫、何を言っているんだ?死ぬって?気が触れたのか?うぅん…まずいな。」

「…さきっさんの家の近くに埋めてくれ。何十年かしてさきっさんが死んだとき…一緒になりたい。おら、それまで待ってるから…二人で白いお骨になって…土に溶けるんだ…。」


鈴虫は佐吉の声のする方に顔を傾けて一筋の涙を零した。



ーーーーーーーーーーーー★
第一章 終了

お付き合いくださいまして、ありがとうございました。
当初25話で第1章が終わる予定だったのが、いつの間にか33話まで来てしまいました。
発情抑制剤や避妊薬などの便利な物が一切無かった時代のオメガの一生を想像して書いてみました。年代的には陰間と距離を置きたかったので元禄以前をイメージしてます。
着地点は遥か彼方なのでまだまだ続きます。今後も悲惨な運命を割りと淡々と乗り越えて行きますので、どうぞよろしくお願いいたします。

あっ、今のところ鈴虫(梔子と五月雨)以外は佐吉さんも含めて全員普通の人(β)です。

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