お伽話 

六笠 嵩也

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第一章

1-32 ★

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「いっぱい我慢したのに…ご褒美は…ちょっぴりだったなぁ…もっと月見草、見たかったな…」

堂の扉は開いたままであった。鈴虫は布団の上に足を放り出して座り込み、そこから見える青い空を虚ろな瞳で見上げていた。全部諦めればきっと楽になれたのだろう。しかし屋敷を囲む塀の上に広がる青い空には押さえ切れない程の希望があって、それを捨ててしまうのは死んでしまうのと同じ意味になるように思えた。だから塀の外へと飛び出した事に決して後悔している訳ではない。ただ自分の存在や願望が否定され続ける事に対しては寂しい気持ちを隠せなかった。

「おてても、あんよも冷たかろう…か…あんよ、さよなら。」

鈴虫は独り寂しく自分自身に別れを告げた。もう広い外の世界を夢見る事も無いだろう。佐吉の父親が巻き付けてくれた手拭いの切れ端を解くと、そこには赤い血が滲んでいた。

程なくして嘉平と佐吉が姿を現した。佐吉は見慣れない箱と縄を纏めて携えている。鈴虫には緊迫した空気が離れた場所からでも伝わってくるようだった。

嘉平は堂に入るなり鈴虫を怒鳴りつけた。

「おい鈴虫、覚悟は良いか。足を出せ!」

鈴虫は無表情のまま嘉平の方に足を向けて仰向けに寝転んだ。

「で、どっちを切るんだ。」

「…どっちでも。」

「じゃぁ、両方とも止血出来るように縛ってやるから縛ってる間に考えな。」

そう言いつつ、その先の台詞を真剣に考えているのは嘉平のほうであった。
さて、この状態からどう言いくるめてゆくか…

麻縄を二本に分けて、それぞれ足首にきつく結び付けてゆく。鈴虫はされるがままに手荒な行為を受け入れていた。

「さぁ、どっちだ。」

「どっちでも良い。どうせもう何所にも行けないんだから、このまま両方とも切り落としたら良い。」

「そうか両方か。鈴虫や、どうせなら手足の無い達磨になったらどんなものか試しに気分を味あわせてやろう。」

飛んで火に入る夏の虫とは鈴虫のことだったのだろうか。自暴自棄に陥った鈴虫の短略的な言動が嘉平の思う壺に見事に嵌った。嘉平は内心で笑い転げていた。しかし、ここからは更に威圧的に、そして挑発的に、鈴虫を焚き付けて、二度と間違いの無いようにお灸を据えなければいけないだろう。
嘉平は鈴虫の膝を立てさせ足首に結びつけた麻縄の残りの部分で太腿と一緒に括り付けてしまった。きっちりと曲げたまま縛られた脚は、力を掛けても伸ばすことは出来ない。次いでまた別の麻縄で両手首を頭の上で一纏めに締め上げる。

「はははははっ!!!こりゃいい!お股おっぴろげてカエルさんみたいだねぇ~!」

鈴虫は二人とは視線を合わせないようにして唇を噛み締めている。

「佐吉、猿轡噛ませて目隠しだ。」

拘束された足の向こうでは嘉平が何やら箱から取り出しているようだが、体の自由を奪われた鈴虫の視点からはよく分らなかった。佐吉が白い布を持って視界に入ってくる。鈴虫はこの布には見覚えがあった。行水をする自分の隣で佐吉が洗濯してくれたあの晒布の切れ端だ。自分の幸せな記憶が、大切な思い出が、こんなことで上書きされてしまうは赦せない。鈴虫は自分の心を守るために目隠しされる前に目を閉じる。もういっそのこと、このまま体を置き去りにして魂だけでも何所か遠くへ消えてしまいたいと願った。

「佐吉、鈴虫の手をしっかり押さえつけておけ。達磨さんは手も足も無いんだから逃げも隠れも出来やしないんだよ。止めてくれって言う合図も出せないだろう?」

視覚に加えて体の自由も奪われた。どこから手を下されるかすら分らず、抵抗することも叶わないだろう。嘉平が鈴虫の下帯を解き、脚の間の大事な場所を露わにした。これで怯えて逃げるかのように小さくなった無防備な部分を脚を閉じて隠すことも出来ない。鈴虫にもこの後、また何か厭な事をされるのは理解できる。どうせ何かしらの形で体を開かされるのであろう。それが分っていても、視界が無い今の鈴虫はただ不安になるだけであった。

嘉平が手にしたその張り形は、男根そのものを模した生々しい形をしており、禍々しい大きさの物であった。
油に塗れた無機質な冷たさが敏感な部分に宛がわれる。鈴虫が体を強張らせているのが佐吉にも分る。指で慣らしてもいないこの状態での挿入は痛みを伴うはずだ。それでも嘉平は冷徹な表情を崩さず、鈴虫の体内にヌラリと光る張り形を埋めて行った。鈴虫が痛みを耐えきれず体を捩りながらくぐもった悲鳴を上げる。それを押さえ付けなければならない佐吉の心もまた悲鳴を上げた。

「おぉ、こんなに太いマラ咥え込んで気色良いのか!ほれっ!棒っきれ突っ込まれても善がっちまう無様な姿を佐吉様にご覧に入れろ。」

「うっ…ぐぅっ…うっ…んッ!!!」

嘉平は羞恥心を煽る言葉を連ねて鈴虫の精神をも責める。その間も抽挿を繰り返す手は止めない。しかも嘉平は闇雲に中を掻き回しているのではなかった。その一回ごとの抽挿で的確に鈴虫の弱い所を突いてくる。今は深く挿し込んで最奥の壁の辺りを容赦無く何度も何度も責め続けているのだ。
嘉平は相当手馴れている。それは経験の少ない佐吉にも見て取れた。遣ろうと思えば今まで幾らでもこういったやり方で鈴虫を躾ける機会はあったであろう。それを敢えて今まで遣ってこなかったのは、もしかすると鈴虫への愛情だったのではないだろうか。
そう思うと安易な気持ちで嘉平を裏切ってしまったという罪悪感が佐吉にはふと湧いてきた。

「鈴虫や、ここがお前の良いところなんだろう?佐吉は達したら終わりだか、張り形相手じゃ終わりは来ない。お前が音を上げてもこの責め苦には終わりが来ないのだ!最高だろう、なぁ鈴虫よ!お前をいつでも極楽浄土に連れて行ってくれるこの極太珍宝様に三つ指ついたらどうだ?」

額にジワリと汗が滲む。挑発的な言葉とは裏腹に、嘉平の表情は真剣そのものであった。擽るように指先を内股に滑らせて会陰の辺りの敏感な部分を柔らかく刺激する。嘉平の手技には絶妙な緩急があり、その歯牙に掛かる者は脆く砕ける崖の端を掴むかのように、抵抗空しくも陥落してゆくのであった。
鈴虫の腹筋や内股には力が入り、性衝動に突き動かされて腰が艶かしく揺れ始めた。慎ましやかであった花芯はいつしか芽生えかけの雄の顔を覗かせる。溢れんがばかりの蜜を湛え、絶頂を迎える為にあと少しばかりの刺激を探し求めているようだ。

「鈴虫や、お股からよだれが出てるよ。はしたない子だねぇ!あぁ、みっともない!お前、どんないやらしい事を考えているんだい。まったく!佐吉が見ているのに恥ずかしくないのかい。それともそんな風にいやらしく誘って、またお口で啜ってもらいたいのかい?ペロペロして欲しいのかい?」

自由の利かない鈴虫は首を必死に横に振って否定しようとしている。しかし、いくら否定しても正直に反応してしまった体は隠し様が無かった。鈴虫を囲む二人の男の視線が、恥ずかしく勃ちあがってしまった性器に集中しているのではなかかと、いくら気持ちが焦っても悶えるしか術が無いのだ。

「そうだ!そんなに嫁に行きたかったなら、女みたいにお乳も感じるように躾けてやろう。佐吉、そのちっこい乳頭ちちがしら両方とも思いっきり抓り上げろ。良いって言うまで放すなよ。」

「えっ…いやぁ…でも……は、はい。」

「うぅっ…ッ!」塞がれた口元から苦しい声が漏れ出でる。

「佐吉、手加減すんな!」

佐吉は指先が白くなるほど力を入れて乳首を抓り上げた。鈴虫が更に一層苦しげに喉の奥を鳴らす。

「鈴虫や、痛いだろう?そっちに気を向けてなさい。」

そう言うと嘉平は張り形の持ち手の部分を佐吉に指し示した。これでどれくらいの深さまで挿入されているのか見当が付く。今の位置がおそらく最奥の壁のある場所だろう。嘉平が数回その位置で突き上げてから更に奥に張り形を押し込んだ。

一声、悲鳴のように大きな唸り声が上がった。そして鈴虫の体は人形のようにカクッと脱力して動かなくなってしまった。ずるりと油に塗れた張り形が鈴虫の体から引き抜かれる。佐吉は大きく息を吐き出して少しばかり安堵した。嘉平は冷静な観察眼で張り形と鈴虫の後孔に血の痕が無いか確認してゆく。

「最初は…捻じ切るような痛みだと…雪虫が言っていた…っけなぁ。佐吉、もう手を放してもいいぞ。」

「最初はって…まだやる気ですか!?冗談でしょう!」

嘉平は大きく息を吐き出して首を縦に振った。

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