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第二章
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しおりを挟む全員の話が聞き終わり、僕と倫太郎はソファから立ち上がると食堂へと戻る。
「皆協力してくれてありがとう、また何か思い出した事があればいつでもいいから俺達に話してほしい。俺の昨日の行動も話しておくが、部屋に戻ってからは夕食までは一度も部屋からは出ていない。もちろんアリバイを証明してくれる人もいない」
僕も倫太郎の後に続ける。
「僕も部屋に入ったらすぐ寝てしまって、夕食の時間になって真琴先生が起こしてくれるまでは、一度も部屋から出ていません」
やはり全員バラバラの行動をしていた為、完璧なアリバイがある人などいないだろう。
「話は終わったの、なら部屋に戻ってもいいかしら」
杏奈の言葉を受け、僕達は一先ず解散する事になった。
僕は倫太郎の部屋に行くと思っていたのだが、
「海斗も疲れただろう、少し休んだほうがいい」と言って彼は一人で部屋に戻ってしまった。
一人で自屋に戻って僕はメモをとっていたノートを今一度開く。
睡眠薬が入れられたと思われる十五時~十六時の間。
慎二、杏奈は部屋からは出ているが、厨房には近づいていない。
黒澤、美波は厨房に立ち寄りはしたが、すぐに戻ったという。
荒井は部屋から一度も出ていない。
単純に考えれば厨房に行った黒澤と美波が怪しいところだが、僕が犯人だったら自分が疑われてしまう事を話すだろうか。
それと慎二と荒井の話が食い違っているのも気になる。
慎二は荒井は部屋にいなかったと話していたが、荒井は誰も訪ねてきてはないと言う。
本当にイヤフォンでノック音がかき消され、聞こえなかっただけなのだろうか。
僕自身あの時間は寝てしまっていたから、実際どんな事が起きていたのかは分からない。
まだ見えていない点がある筈だ。でも今の段階ではそれを見つけるのは僕には難しい。
倫太郎なら、何か見つけられたのだろうか。
僕はこれ以上考え過ぎると、真相を見誤りそうだと感じ一度ノートを閉じる。
そんな時、耳をつんざく様な金切り声が響く。
慌てて部屋の扉を開け周囲を確認すると、美波が自室の扉を開けたまま腰を抜かして、地面に座り込んでいた。
「美波どうしたの、何かあったの」
「黒澤さんが、黒澤さんが・・・」
美波は声を震わせ、部屋の方を指差す。
部屋の中に目を向けると、黒澤がずっしりとした身体を丸めながら、美波の鞄を漁っていたのだ。
僕はその光景に一瞬驚いたが、直ぐに部屋の中へと入ると、しゃがんでいた黒澤の脇の下から両腕を回し、強引に彼の身体を引き上げる。
「黒澤さん、何やってるんですか」
黒澤はジタバタと暴れ回り、その度に彼の肘が僕の身体に当たり鈍い痛みが走る。
「触るなよ、離せ、小川さんは僕が守るんだ。お前なんかには絶対に渡さない」
そう言った黒澤は巨体を左右に揺らし、僕を引き剥がそうとする。
僕は離されまいと懸命に腕に力を込めるが、体格の違う黒澤の力には敵わず、地面に吹っ飛ばされた。
「お前はいつも僕の邪魔をする。折角一人邪魔者がいなくなったのに」
ブツブツとそう呟いた黒澤は、両手で頭を掻きむしる。
そんな時、倫太郎が騒ぎを聞きつけ美波の部屋へとやってきた。
その後ろには、慎二、荒井、杏奈の姿もあった。
「黒澤、何をやっているんだ。一先ず落ち着くんだ」
倫太郎が、黒澤を宥める様に落ち着いた声色で話しかける。
黒澤は他のサークルメンバーの顔を見て少し落ち着きを取り戻し、その場にしゃがみ込んだ。
そんな黒澤の姿を見て、荒井が恐る恐る声をかける。
「黒澤一体どうしたんだよ、美波さんの部屋に勝手に入ったのか」
「違う、僕はただ小川さんを守りたいだけなんだ。小川さんが鍵を閉めずに部屋の外に出たから、代わりに僕が見張ってようと思って」
「ちょっと待てよ、黒澤は何で美波さんが部屋から出て行った事が分かったんだ」
黒澤は荒井の問いに答えようとせず、口を固く結んだ。
「もしかしてお前、自室のドアの隙間から美波さんの部屋の様子をずっと伺ってたのか。だから美波さんが部屋を出た際に鍵を掛けていない事に気づき、勝手に部屋に侵入したのか」
「違う、僕は、僕は・・・」
そう呟いた黒澤はしゃがみ込んだまま、頭を抱える。
腰を抜かしている美波に倫太郎は手を貸し、立ち上がらせると彼女に向かって言った。
「部屋に鍵を掛けなかったと言う事は本当かい」
「本当です。お手洗いに行くだけだったので直ぐに戻ってくるからと、鍵を掛けずに部屋から出ました。でもこんな事になるのなら、きちんと鍵を掛けるべきでした」
美波はそう言うと僕の隣まで移動して「身体は大丈夫?」と声をかけてきた。
口を開こうとしたその時、黒澤が僕に向かい烈火の如く声を荒げる。
「前にも話しただろう、小川さんと話をするな。仲良くするな。小川さんは僕のものだ」
黒澤は声を大にして叫ぶ。
そんな中、扉の外にいた杏奈が身を乗り出し、黒澤に負けない程の声を張り上げる。
「いい加減にしなさいよ、あんた気味が悪いのよ。女性の部屋に勝手に入って、僕が守るですって。あんたみたいな人に誰も守られなくなんてないわよ。さっさと部屋から出ていつも通りに自分の部屋に籠って本でも読んでなさいよ。そっちの方が断然美波の為になるわ」
そう言われた黒澤は、顔を上げ杏奈の顔を凝視する。
その顔は不気味な程に無表情であった。
その後荒井と慎二に強制的に部屋から連れ出された黒澤は、名残惜しげに美波の部屋を一瞥すると、そのまま自室に入っていった。
隣にいる美波は先程の出来事が衝撃的で、まだ困惑している様だ。
「今後は念の為に、部屋の外に出る時は必ず鍵を掛けた方がいいよ。何があるか分からないし、またこんな事があったら心配だよ」
「海斗助けてくれてありがとうね。本当に迂闊だった。真琴先生を殺害した犯人が誰かも分からないし、自分の身は自分で守らなくちゃね」
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