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出会い
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撫子」
背後からしゃがれた声で苗字を呼ばれる。振り向けば、悪い意味で有名な先生が立っていた。彼は余計な小言を言うという事で悪評が立ち、私達生徒に裏でよく陰口を叩かれてる。彼は乾燥した梅みたいな顔と豚のような体型で梅豚(うめぶた)と呼ばれてる。本当はあまり関わりたくない先生だが、呼び止められてしまったので私は仕方なく小さくも大きくもない声で返事をする。先生の額には汗が滴り落ちており、顔には明らかな疲労と焦りが窺えた
「なんでしょうか?」
「清川について何か知らないか?お前、家近いだろ」
「駅は同じですけど家は知らないですし、そもそも麗奈ちゃんとは友達同士ではないですよ」
「そうか。呼び止めて悪かったな」
そう言って早歩きで職員室に向かって行った。清川麗奈(きよかわれな)ちゃん。私が通ってる虹夜高校学校で誰もが知ってるマドンナである。この世の可愛いを集めたかの様な可憐な容姿は男女問わず惹かれる。それにプラスして性格は優しく穏やかでクラスのまとめ役を務めたり生徒会長でもある。彼女の魅力を語るなら何時間も時間を要するほど欠点が見当たらない程に善人を体現してる様な人間である。そんな彼女が一昨日から行方不明になっている。学校側でも警察と一緒に捜査をしたり、彼女のファンクラブの人達もネットを使って捜索をしたりしているが、いまだに見つかっていない。この学校全体の空気は、彼女が消えてから最悪である。何処となく寂しさとピリ付きを帯びており、私は長い時間学校にいる事自体が少し嫌になってきた。足早に玄関に向かいローファーに履き替えて外に出る
「あっつ」
今日は猛暑であった。太陽がまるで嘲笑うかの様に輝いていた。目を細めなて太陽を睨む。たまに冷たくも無い吹く風が頬に伝わって、それが太陽からの慰めにも憐みでも嗤いにも思えてイヤホンをして家に向かう。学校から家に帰るには電車とバスを両方使わなければならない。しかも、今日は人混みが多くタッパに詰まったぎゅうぎゅう詰めのお惣菜の気分を味わった。家に帰る道中にあるコンビニで冷たいバニラアイスクリームを買って食べながら歩く。口の中に冷たさとアイス特有の甘さが広がっていく。早く家に帰りたくてローファーの地面が蹴る音が早くなる。家に残り歩いて10分程度で着く頃にイヤホンの充電が無くなった。充電は事前にして置いてたので故障か寿命かもしれない。イヤホンを外して煩い蝉の音を聴きながら田んぼから飛び出して出てくる蛙を踏まない様に気を付けて歩く。家に帰ったら、2回目のアイスでも食べようか、それとも久々にゲームでもしようかと考える。気分転換には自分の好きな事をしてそれから勉強をすればいい。それが、私が考えるストレス発散である
「わっ」
不意に草むらから猫が飛び出してきた。野良の三毛猫は此方を見る事なく走って何処か遠くへ行った。野良猫は見るがあそこまで急いで走る猫は見た事がない。此処の周辺の野良猫は妙に人間慣れしておりゆったりと動く。車が来ても人が近付いて怯えもあまり逃げる事もしない。此方が邪魔そうにしてたらゆっくりと歩いて移動する猫達なのだ。しかも、あの猫は近所の大山さんが大層可愛がってた猫でだいぶ御老体であった。そんな猫があんなにも俊敏に動くものだろうか。それこそ、命の危険性を感じないと動かないだろう。好奇心が胸に浮かび上がり少しだけ猫が出てきた方に向かう。幼い頃から何度も行っていた場所で久しぶりに足を運んだ。草むらだが道らしきものがありある程度整備はされており、昔とは全く変わっておらず此処だけ時が止まってる様に感じた。此処の道は木々が多くその先を行くと綺麗な泉がある。その泉から見える満月は幻想的で美しい。私の数少ないお気に入りの場所で真夜中にたまに出歩く時に毎回寄る場所でもある。湿気と熱とせいで流れる汗を拭きながら歩く。到着と言わんばかりに見えた泉には2つ人影があった。2つ、いいや2人はどちらも一際立派な大木の木陰にいた。1人は自分と同じ女子学生の制服を着ており地面に伏していた。その隣で1人は肩が出てる青のワンピースを着てる女性は大木を見上げていた
「あの」
私はその後の言葉が言えなかった。何故なら見上げてる女性は思わず目を奪われるほどの美しい美貌であった
もはや一方的な暴虐で、乱暴で、蹂躙のようであった
この世のありとあらゆる美しさを掻き集めたような美貌であった。人によっては精緻な彫像にも美術作品にも例えられるような美しさであった。けれども、その様な比喩もどんなに言葉を尽くしても彼女の美しさに当て嵌まるような表現できる言葉は無い。これほど人間から思考と言葉を取り上げてしまう美しさがあるのか。そもそも本当に人間なのか。心の底から畏怖という感情を初めて私は感じた。だが、同時に身体が震えていた。沸騰するほど血が全身を忙しなく駆け巡っており思考も呼吸もままならない。例えば、素晴らしき美しい童話の一文で、一目惚れする場面の時それは互いに目と目を合わしてるだろう。しかし、女性は私を見ていない。大木を見つめているのだ。私ではなく大木を見つめる女性に一方的にこのような激情とも言える感情を持ったのだ。一目惚れと言うには余りにも歪で可笑しい、そう思った。小説やドラマで見る一目惚れというのはもっと甘酸っぱくて綺麗なものだとそう思った。だからこそ、この感情の名前が全く分からない。確かなことは、この感情は情報量が多くて到底私1人では抱えきれないものだということだ
女性は此方に振り向いた。一本一本が長く切り揃えられた睫毛が私を貫き、ゆっくりと頬を少し上げて誰もが見惚れる様な微笑みをした。薔薇色の艶やかで綺麗な形の唇が緩やかに開いた。その姿は、全てが完成し尽くされていて侵しがたい神聖な美貌であった。
「こんにちは」
背後からしゃがれた声で苗字を呼ばれる。振り向けば、悪い意味で有名な先生が立っていた。彼は余計な小言を言うという事で悪評が立ち、私達生徒に裏でよく陰口を叩かれてる。彼は乾燥した梅みたいな顔と豚のような体型で梅豚(うめぶた)と呼ばれてる。本当はあまり関わりたくない先生だが、呼び止められてしまったので私は仕方なく小さくも大きくもない声で返事をする。先生の額には汗が滴り落ちており、顔には明らかな疲労と焦りが窺えた
「なんでしょうか?」
「清川について何か知らないか?お前、家近いだろ」
「駅は同じですけど家は知らないですし、そもそも麗奈ちゃんとは友達同士ではないですよ」
「そうか。呼び止めて悪かったな」
そう言って早歩きで職員室に向かって行った。清川麗奈(きよかわれな)ちゃん。私が通ってる虹夜高校学校で誰もが知ってるマドンナである。この世の可愛いを集めたかの様な可憐な容姿は男女問わず惹かれる。それにプラスして性格は優しく穏やかでクラスのまとめ役を務めたり生徒会長でもある。彼女の魅力を語るなら何時間も時間を要するほど欠点が見当たらない程に善人を体現してる様な人間である。そんな彼女が一昨日から行方不明になっている。学校側でも警察と一緒に捜査をしたり、彼女のファンクラブの人達もネットを使って捜索をしたりしているが、いまだに見つかっていない。この学校全体の空気は、彼女が消えてから最悪である。何処となく寂しさとピリ付きを帯びており、私は長い時間学校にいる事自体が少し嫌になってきた。足早に玄関に向かいローファーに履き替えて外に出る
「あっつ」
今日は猛暑であった。太陽がまるで嘲笑うかの様に輝いていた。目を細めなて太陽を睨む。たまに冷たくも無い吹く風が頬に伝わって、それが太陽からの慰めにも憐みでも嗤いにも思えてイヤホンをして家に向かう。学校から家に帰るには電車とバスを両方使わなければならない。しかも、今日は人混みが多くタッパに詰まったぎゅうぎゅう詰めのお惣菜の気分を味わった。家に帰る道中にあるコンビニで冷たいバニラアイスクリームを買って食べながら歩く。口の中に冷たさとアイス特有の甘さが広がっていく。早く家に帰りたくてローファーの地面が蹴る音が早くなる。家に残り歩いて10分程度で着く頃にイヤホンの充電が無くなった。充電は事前にして置いてたので故障か寿命かもしれない。イヤホンを外して煩い蝉の音を聴きながら田んぼから飛び出して出てくる蛙を踏まない様に気を付けて歩く。家に帰ったら、2回目のアイスでも食べようか、それとも久々にゲームでもしようかと考える。気分転換には自分の好きな事をしてそれから勉強をすればいい。それが、私が考えるストレス発散である
「わっ」
不意に草むらから猫が飛び出してきた。野良の三毛猫は此方を見る事なく走って何処か遠くへ行った。野良猫は見るがあそこまで急いで走る猫は見た事がない。此処の周辺の野良猫は妙に人間慣れしておりゆったりと動く。車が来ても人が近付いて怯えもあまり逃げる事もしない。此方が邪魔そうにしてたらゆっくりと歩いて移動する猫達なのだ。しかも、あの猫は近所の大山さんが大層可愛がってた猫でだいぶ御老体であった。そんな猫があんなにも俊敏に動くものだろうか。それこそ、命の危険性を感じないと動かないだろう。好奇心が胸に浮かび上がり少しだけ猫が出てきた方に向かう。幼い頃から何度も行っていた場所で久しぶりに足を運んだ。草むらだが道らしきものがありある程度整備はされており、昔とは全く変わっておらず此処だけ時が止まってる様に感じた。此処の道は木々が多くその先を行くと綺麗な泉がある。その泉から見える満月は幻想的で美しい。私の数少ないお気に入りの場所で真夜中にたまに出歩く時に毎回寄る場所でもある。湿気と熱とせいで流れる汗を拭きながら歩く。到着と言わんばかりに見えた泉には2つ人影があった。2つ、いいや2人はどちらも一際立派な大木の木陰にいた。1人は自分と同じ女子学生の制服を着ており地面に伏していた。その隣で1人は肩が出てる青のワンピースを着てる女性は大木を見上げていた
「あの」
私はその後の言葉が言えなかった。何故なら見上げてる女性は思わず目を奪われるほどの美しい美貌であった
もはや一方的な暴虐で、乱暴で、蹂躙のようであった
この世のありとあらゆる美しさを掻き集めたような美貌であった。人によっては精緻な彫像にも美術作品にも例えられるような美しさであった。けれども、その様な比喩もどんなに言葉を尽くしても彼女の美しさに当て嵌まるような表現できる言葉は無い。これほど人間から思考と言葉を取り上げてしまう美しさがあるのか。そもそも本当に人間なのか。心の底から畏怖という感情を初めて私は感じた。だが、同時に身体が震えていた。沸騰するほど血が全身を忙しなく駆け巡っており思考も呼吸もままならない。例えば、素晴らしき美しい童話の一文で、一目惚れする場面の時それは互いに目と目を合わしてるだろう。しかし、女性は私を見ていない。大木を見つめているのだ。私ではなく大木を見つめる女性に一方的にこのような激情とも言える感情を持ったのだ。一目惚れと言うには余りにも歪で可笑しい、そう思った。小説やドラマで見る一目惚れというのはもっと甘酸っぱくて綺麗なものだとそう思った。だからこそ、この感情の名前が全く分からない。確かなことは、この感情は情報量が多くて到底私1人では抱えきれないものだということだ
女性は此方に振り向いた。一本一本が長く切り揃えられた睫毛が私を貫き、ゆっくりと頬を少し上げて誰もが見惚れる様な微笑みをした。薔薇色の艶やかで綺麗な形の唇が緩やかに開いた。その姿は、全てが完成し尽くされていて侵しがたい神聖な美貌であった。
「こんにちは」
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