私は、Ωの事を知らな過ぎた。

野菜箱

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散策と温泉

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恐らく彼は私を気遣って一人で街に出ると言ってくれたのだろう、確かに長距離で疲れているはずなのに、なぜついていこうなどと思ってしまったのか自分でも分からないが、

「地熱でプリンが作れるんですね」

「はい、ここのプリンは硬めでおいしいと評判なのですよ」

目を輝かせてプリンを作る職人達の手捌きを見るモーリスに、子供っぽさを感じつつも何処か心温まる感じがして彼の楽しそうな姿を見ていると来てよかったと心の底から思えた。
しばらくして出来上がったプリンを2つ受け取り、近くのベンチに座り早速頂く。
プリンは口に入れた瞬間口の中で濃厚かつ硬めながらも滑らかな舌触りと甘味が広がる、それに硬めのプリンは食べ応えもあり満足感がある。

「これすごいおいしいですね!」

「えぇ、とても美味しいです」

本当に美味しくてつい頬を緩めると、モーリスはニコニコと嬉しそうに笑いプリンを頬張っている姿を私は自然と頬を緩めながら見つめていると、モーリスの口元にプリンが付いているのが見え、私はついコランにするようにハンカチで口元を拭ってあげると、彼は顔を赤くしながら慌てだし

「こ!これは失礼しました!!」

と恥ずかしそうにしているモーリスを見て思わず私も頬が熱くなりつつ、そっぽを向いて彼から距離を取る。

(な、なんで私までこんなにドキドキするの?)

2人で顔を赤くしていると

「あの2人ともどうしたんですか?」

とコランに声を掛けられ、驚いて振り向くと彼が首を傾げながら近づいてきていた。
モーリスはプリンを急いで食べ切り

「そ、そろそろ宿に帰りましょうかカルミア」

「そうですわね。」

モーリスに促されるまま、少し足早に宿に戻ることになった。

---

部屋に戻り落ち着いた後

「一緒に温泉に入ります?」

私がそう言うとモーリスはがばっと勢いよく立ち上がり

「え?一緒に入るのですか?!」

思いもよらない反応で思わず私は一瞬固まる。

「?えぇ、せっかくですし一人で入るのは寂しいでしょう?」

「確かに、そうかもしれませんが……良いのですか?貴女と一緒に入っても」

頬を赤く染めながら聞くモーリスに少し疑問に思いつつも

「別に私は気にしませんが」

と言うと、モーリスは眉を寄せ何か考え込むように押し黙った後

「分かりました……では早速入りましょう!背中を流すのはこの僕にお任せ下さい!」

「え?あ、はい?」

と何故かやる気満々な様子で私の背中を押すので、とりあえず言われるがまま一緒に露天風呂に向かうことにした。

------

脱衣所前で別れ、先に私が服を脱ぎ風呂用のタオルを巻いて風呂場へ行くと、

「良かった、タオルは着ているのですね」

「ま、まさか全裸で来るとでも思いました?」

「い、いえ!………いや、そうですね、ちょっと期待はしていました」

「しないで下さい!」

と思わず突っ込んでしまったが、モーリス照れくさそうにはにかみながら

「すみません、でも好きな人の裸は見たいものです」

その発言に、私は思わずびっくりして顔が赤くなってしまう。

「も……もう良いです!ほら早く行きますよ!」

改めて言われると恥ずかしいので誤魔化すようにモーリスの手を引いて露天風呂に向かう。
もう訳が分からなくなりながら、とりあえず温泉に浸かり心を落ち着かせる、露天風呂から見えるのは天然の要塞とも呼ばれる山脈で、サンベール王国自慢の自然が良く見える。
ここの温泉は魔力を多く含んでおり、効能は治癒促進や魔力回復の効果がある。
私は、岩を背にし腰を下ろして足を延ばし、モーリスも続けて私の隣に腰を下ろした。

「日々の疲れが吹き飛びますね」

「そうですね、とても気持ちがいいです」

と2人で温泉と雄大な自然を堪能する、今日一日モーリスと過ごしてみて分かった事だが、彼はとても誠実でごまかす事や取り繕う事が苦手で、裏表が無くまっすぐな性格をしている。
彼はものすごく気配りが細かい、さりげなく私の荷物を持ってくれたり、滑って転ばないように支えてくれたり、今日という一日だけで彼はものすごく気配りが細かい、さりげなく私の荷物を持ってくれたり、滑って転ばないように支えてくれたり、今日という一日だけでも私の事をすごい気にかけて行動してくれていた……仮に下心でも正直とても嬉しかった。
だが私もそこまで単純な女ではない、この結婚は政略結婚、モクレン帝国流の処世術の可能性だってあると言い訳を行うけれども……

(モーリスは、本当に血のつながった家族くらい私の事を思ってくれている……)

それはこの一日で充分過ぎるほどに分かった、そして私もこの人に惹かれているのも自覚しているが、この満たされる気持ちは……

「どうかなさいました?」

呼ばれハッとして顔をあげると、モーリスが心配そうな表情でこちらを見つめている。
どうやら考え込んでしまっていたらしい、私は慌てて笑顔を浮かべる。

「いえ、少し考え事をしていただけです」

と言って誤魔化すと彼はまた何か言いたげな表情を浮かべた後俯いてしまった。
彼から見れば、好きな相手と同じ空間にいるのに、相手がつまらなさそうにしていると、勘違いしたのだろう……
私は、彼の手に私の手を重ね視線を合わせる。

「モーリス……貴方の事、好きかもしれません」

「え、あ、僕の事…ほ、本当ですか?!」

と彼は言いよどみながらも、嬉しさが隠しきれていない表情を浮かべている。

「貴方の私に対する想いがとても伝わってきました、私は貴方の事が好き……かもしれません、経験が無いので分かりませんが」

と私が言うと彼は感極まったのか目に涙をためて私を抱きしめた。

「ぼ、僕もです!貴女の事が好きです!」

お湯ではない、彼の体温を全身で感じながら、私も彼を抱きしめ返す、まるで幼い弟をあやすように、私は彼の背中をぽんぽんと叩く、そして先に不安なことがあった、

「ですがモーリス……私は、こういった事は疎いので……夫婦の営みは、もう少し互いを知ってからでも良いですか?」

私が恐る恐るそう尋ねると、ゆっくりと離れ彼は大きく頷いた。

「はい、もちろんです!良いと言うまで、僕いつまででも待ちます!」

と彼は笑顔で答える。

「ありがとう」

コランに拒絶されて開いた心の穴が埋まっていく、私は彼に微笑む。

---

それから旅行期間はずっと和やかな空気だった、はたから見ればまさに新婚ほやほやなカップルだろう。

「貴女と来れて本当によかったです」

そう幸せそうな彼に、私も思わず笑みが零れる。

(新しい弟ができたみたいだ、)

そう思いながらも、この旅行は私と彼にとってとてもきっと有意義なものだったのは間違いなかった。
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