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デート
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俺たちは、また歩き始めた。
雪が降るのだろうか。山から吹き下ろす風が冷たい風が街路樹の枝を揺らしている。
俺はコートの襟を立て、夏芽の身体を引き寄せる。
「何だか、お兄ちゃんとデートしてるみたいね」
「……しよ……デート? 夏芽……今晩だけ恋人になって……」
大通りから路地に入る。
あん、と言う女の子のため息のような声が自販機の向こうから聞こえてきた。少しドキリとした。だけど、地面に置いてあった『○○高等学校』と書かれたスクールバッグを見てまたドキリと胸が鳴った。
「ちっ……近頃の学生はよ……」と、ぽろりとボヤいてしまった。
「お兄ちゃん、それオジさん……」
夏芽が自分の口を手のひらで抑えて笑った。吹き出すのを堪えるように……。
夏芽の冷たい手が俺の手をギュッと握る。ふわっと柔らかい女の子の手……。妹と手をつなぐなんて何年ぶりだ、と頭の中で指を折る。
今度は俺も妹の小さな手を包み込むむように握り返して、コートのポケットの中でお互いの指を絡め合う。恋人握りというやつだ。
夏芽の身体に少し力が入るのを感じた。
「お兄ちゃんの手、暖かい……」
と言って、夏芽がギュッと俺の手を握る。
駅からどんどん離れると、コロッケか何かを揚げたような油の匂い……。そのビルの間を何ブロックか歩いた所に飲食店街が並び、更に歩くと、色とりどりの怪しげな看板が並ぶ大人の街になる。バブルの頃は呼び込みと客が溢れかえっていたらしいが、今は空き店舗も多く。客の通りもまばらだ。
「お兄ちゃん……」
俺の手を握る夏芽の手に力が入る。
飲食店街を抜けた所にホテルがある。ステーションホテルよりもきらびやかなその入り口に『空室』と書かれた看板と、建物の横の路地には暖簾のような長い幕が掛かっている駐車場の入り口がある。俺たちの後ろから来たカップルらしい若い男女が顔を伏せるようにして足速にそこ消えて行った。無意識に目でその行き先を追う。
「こんな所にホテルなんて……ね?」
と言って、夏芽の手が俺を引っ張った。
雪が降るのだろうか。山から吹き下ろす風が冷たい風が街路樹の枝を揺らしている。
俺はコートの襟を立て、夏芽の身体を引き寄せる。
「何だか、お兄ちゃんとデートしてるみたいね」
「……しよ……デート? 夏芽……今晩だけ恋人になって……」
大通りから路地に入る。
あん、と言う女の子のため息のような声が自販機の向こうから聞こえてきた。少しドキリとした。だけど、地面に置いてあった『○○高等学校』と書かれたスクールバッグを見てまたドキリと胸が鳴った。
「ちっ……近頃の学生はよ……」と、ぽろりとボヤいてしまった。
「お兄ちゃん、それオジさん……」
夏芽が自分の口を手のひらで抑えて笑った。吹き出すのを堪えるように……。
夏芽の冷たい手が俺の手をギュッと握る。ふわっと柔らかい女の子の手……。妹と手をつなぐなんて何年ぶりだ、と頭の中で指を折る。
今度は俺も妹の小さな手を包み込むむように握り返して、コートのポケットの中でお互いの指を絡め合う。恋人握りというやつだ。
夏芽の身体に少し力が入るのを感じた。
「お兄ちゃんの手、暖かい……」
と言って、夏芽がギュッと俺の手を握る。
駅からどんどん離れると、コロッケか何かを揚げたような油の匂い……。そのビルの間を何ブロックか歩いた所に飲食店街が並び、更に歩くと、色とりどりの怪しげな看板が並ぶ大人の街になる。バブルの頃は呼び込みと客が溢れかえっていたらしいが、今は空き店舗も多く。客の通りもまばらだ。
「お兄ちゃん……」
俺の手を握る夏芽の手に力が入る。
飲食店街を抜けた所にホテルがある。ステーションホテルよりもきらびやかなその入り口に『空室』と書かれた看板と、建物の横の路地には暖簾のような長い幕が掛かっている駐車場の入り口がある。俺たちの後ろから来たカップルらしい若い男女が顔を伏せるようにして足速にそこ消えて行った。無意識に目でその行き先を追う。
「こんな所にホテルなんて……ね?」
と言って、夏芽の手が俺を引っ張った。
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