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夏のキャンプ

第一章

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「あと一週間で夏休みだね」

教室の窓際に座る杏奈は、隣の席の友人・美咲に話しかけた。美咲は杏奈と同じくらいの身長で、茶色のロングヘアに青い瞳が特徴的な女の子だった。杏奈は美咲とは小学校からの親友で、いつも一緒に遊んだり勉強したりしていた。

「うん、楽しみだよね。夏休みの予定はもう決まった?」
美咲は杏奈に尋ねた。

「うーん、まだあんまり考えてないや。でも、家族で旅行に行くとかはないと思う。お父さんもお母さんも忙しいし」

杏奈は少し残念そうに答えた。杏奈の両親は共働きで、仕事が多忙だった。そのせいで、家族で過ごす時間が少なくなっていた。

「そうなんだ。じゃあ、私と一緒にキャンプに行かない?」

美咲は突然提案した。

「キャンプ?」

杏奈は驚いて美咲を見た。

「うん、キャンプ。私のお兄ちゃんが、大学のサークルでキャンプをするって言ってたの。私も一緒に行っていいって言われたから、杏奈も誘ったらどうかなって思ったんだ」

美咲は嬉しそうに説明した。

「お兄ちゃん?」

杏奈はまた驚いて美咲を見た。

「あ、そうだ。杏奈にはまだ紹介してなかったね。私のお兄ちゃんは、大学二年生で、サッカー部に入ってるの。すごくカッコイイんだよ」

美咲は自慢げに言った。

「そうなんだ」

杏奈は素直に感心した。美咲のお兄ちゃんについては聞いたことがあったが、会ったことはなかった。美咲が言うとおり、カッコイイ人なのだろうか。

「でね、そのキャンプは、山の中の湖畔にあるキャンプ場でやるんだって。夜には花火もするらしいよ」

美咲はさらに話を続けた。

「へえ、それは楽しそうだね」

杏奈は想像して微笑んだ。夏の夜空に花火が打ち上がる様子を思い浮かべた。

「でしょ?だからさ、杏奈も一緒に行こうよ。私とお兄ちゃん以外にも、サークルの友達が何人か来るから、きっと楽しめるよ」

美咲は杏奈を誘った。

「でもさ、私、キャンプとかしたことないし……」

杏奈は少し迷った。キャンプというとテントや寝袋や火起こしなど、難しそうなことが多くて不安だった。

「大丈夫だよ。私も初めてだし、お兄ちゃんやサークルの人が手伝ってくれるから」

美咲は安心させようとした。

「そうかな……」

杏奈はまだ悩んでいた。

「ねえ、杏奈。私と一緒に行ってくれない?」

美咲は真剣な表情で杏奈を見つめた。

「……わかったよ。行こう」

杏奈はついに決心した。美咲がそこまで言うなら、断るわけにもいかなかったし、本当は少し興味もあったからだ。

「本当?やった!ありがとう!」

美咲は喜んで杏奈を抱きしめた。

「えへへ、これで夏休みが楽しみになったね」

美咲は笑顔で言った。

「うん」

杏奈も笑顔で返した。しかし心の中では、不安と期待が入り混じっていた。
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