上 下
15 / 41
隣人

しおりを挟む
 凛華が帰宅してから、夕飯の支度が始まる。その日はカレーライスだった。凛華も料理を手伝った。
 
「ママ、風邪よくなった?」
 
 凛華の小さな手のひらが優子の額に触れる。
 
「うん、ママは凛華のお陰で治ったわ。ありがとう」と優子が言ったあと「凛華、人参、洗って……」と優子は人参を数本、凛華に渡した。
 
「うん、洗って、人参の皮を向けばいいのね?」
 
 凛華は人参を洗ってから、ピーラーで丁寧にその皮を削ぎ始めた。
 
 :
 
「凛華、お隣りの畠山のお兄ちゃんも呼んで来ようか?」
 
 優子は出来上がったカレーを少し小皿に取り、味見をしながら凛華に言った。
 
「じゃあ、私、呼んでくるねっ……」
 
 :
 :
 
「ごちそう様でした」

 畠山は手を合わせたあと、「ああ、美味しかったlと白い歯を見せ、喉を鳴らして水を飲み干した。
 
「お兄ちゃん、カレー……凜華も手伝ったのよ。ね、ママ?」
 
 ダイニングテーブルのカレーライスと野菜サラダは、綺麗になくなっていた。
 
「畠山さん、毎日、きちんと食べてる? バランスも考えて食べなきゃダメよ」
 
 ピンポン……。インターホンの呼び出し音が鳴った。
 
「パパだ!」
 
 凜華が玄関に駆けて行った。すぐに、凜華は修一と手をつないでダイニングに入る。
 
「凛華、そろそろ寝ましょうね」と優子が言ったあと、「あなた、お隣りの畠山さんと、一緒にご飯を……」
 
「うん、ああ、家内と娘がお世話になっています。また、一杯……」と修一が缶ビールのプルトップを引く仕草をしたあと、「今日は少し疲れてるので、風呂に入ってから寝るよ」と言って部屋を出た。
 
 ――今日も……。
 
「ふう……」
 
 優子が小さなため息をついた。
 
「畠山さん、お時間あります? もし、よろしかったら一杯お付き合いしていただけません?」
 
 優子は冷蔵庫から缶ビールを二本取り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...