無頓着な彼は。

はぴたん

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「そろそろ新入生歓迎会があるぞー。」


授業も終わり、夕方のホームルームで先生が突然言った。

「全員強制参加の行事だぞー。
今年は鬼ごっこみたいだな。ルールなどはまた当日発表されるみたいだ。
よし、以上だ。みんな帰れー。」

ざわざわするクラスに楽しいイベントなんだろうと思う。

情報量が少ない気がするが、
体を動かすのも好きだしなんだか楽しみだ。

「きょうちゃん!なんだかたのしそーだねっ!」

後ろから楽しそうな葵の声がする。

「そうだね。鬼ごっこなんて小さい頃以来だよなぁ。」

「恭、そんな可愛いもんじゃないよ。
これは欲にまみれた戦いだよ。」

光がいつになく真剣な面持ちで話し出す。

「え、どうゆうこと?」

「まあ、そのうち分かるよ。」

話し出したのは光なのに終わらせてしまった。

不思議に思いつつも流れに身を任せることにした。



数日経ち、ついに今日が新入生歓迎会だ。
結局当日まで何も分からなかった。

体操服にジャージを羽織って体育館に並ぶ。

ステージには生徒会の役員が並び、生徒のみんなは釘付けだ。

マイクを持った副会長が話し出す。

「ええ。それでは新入生歓迎会を開始いたします。
今回は鬼ごっこです。

1年生が逃げ、2.3年生が鬼となります。

皆さんの腕に付けられたブレスレット、こちらは捕まえた人のブレスレットを捕まえた相手のブレスレットにタッチする事で読み込まれデータ化されるものになります。
タッチすると1年生のブレスレットの点灯している青のランプが赤に変わるはずですので確認してください。

捕まった場合、捕まえられた1年生はこちらの体育館に戻ってきてもらいます。

捕まえた人数が1番多かった人、そして逃げきれた人全員にこちらの"なんでも願いが叶う券"をプレゼントいたします。

こちら法律に基づいたものであれば基本的になんでも叶うものになります。
人へのお願いについても人道に基づいたものであれば基本的に受け入れていただきます。

校長室、生徒会室、風紀室などがある別館は範囲外となりますので足を踏み入れないようお気をつけ下さい。

ちなみに生徒会のメンバーも参加致しますのでよろしくお願いいたします。

それでは、1年生の皆さん早乙女の合図で逃げを開始してください。」


「みんな~!いくよ~!!よ~いスタート!!」



とんとん拍子で進む説明を飲み込む前にスタートの合図が響きとりあえずみんなで走り出した。

とりあえず捕まらなければいいんだもんね。

固まって動くと見つかりそうなのでみんなとは分かれバラバラで逃げることにした。

学校を囲む森。
森は範囲外に含まれていなかったから大丈夫なはず。

森の中の方が見つかりにくいよな、と森の中へ入り登りやすそうな木に登る。

少しすると学校からどことなく悲鳴が聞こえてくる。
きっと2.3年生がスタートしたんだな。

倍の人数に追いかけられる俺達。
しかも捕まえられると逃げはどんどん減るが鬼は減らないらしいからちょっと不公平な気がする。

まあ逃げきれた人はもれなく全員プレゼントが貰えるみたいだけど、、。
なんでも願いが叶う券ってゆうのもなんだか怪しい。

と考えていると、

「や、やめてください、や、やだ、んんん。」

どこからか声がする。
明らかに捕まえる捕まえられるのような会話では無い気がする。

木から降りてそっと近づくと、

「黙ってろ。いいからおとなくしてろ。」と口を押え小柄な生徒を羽交い締めにしている。

よく見ると小柄な生徒の体操服は引きちぎられ、涙を流している。
ズボンを今にも引き下ろそうとしているやつの頭をこれでもかと力を込めて蹴りあげる。

「ぐわぁぁぁ。」

そのまま横に倒れた奴を再度蹴りあげる。
ぐったり抵抗を諦めたところで、目線を小柄な子に向ける。

「怖かったよね、大丈夫?」
そっと自分のジャージを着せると、少しほっとしたようだ。

「あ、ありがとうございます。」


と、後ろから足音がする。

「いやぁすごいね。俺の出る幕無かったよ。」

振り返ると艶のある黒髪が太陽に反射してキラキラしている綺麗な顔の男がいた。
上品な雰囲気だが目つきは鋭く切れ長の目からは何を考えているのか読めない。

「あの、あなたは?」

と思わず聞き返すと、びっくりしたように目を見開いた。そんな顔するんだ、と見つめていると、

「俺の事知らないんだ。
まあそうか、外部生だもんね。」

1人納得したかと思えば、

「俺はひいらぎ真琴まこと。一応風紀委員長だよ。よろしくね。」

「あ、そうだったんですね。俺は春白恭です。よろしくお願いします。」

「うん、知ってるよ。噂はかねがね。」
とふふっと笑う柊さんはどこか妖艶だ。

「うわさ、、?」
不穏な言葉に思わず聞くと、

「この学校、外部生がなかなか入ってこないから噂になるんだよ。まあこの美貌も関係あると思うけどね。」

「美貌?ああ、葵ですね。葵は可愛いから。」

納得すると、不思議そうな顔で見られたけど特に何も言ってこなかった。

「今風紀の他の生徒呼んだから、この暴行していた生徒の処分は任せて。
そこで座り込んでる子も俺たちで保護するよ。
恭はまた鬼ごっこに戻っていいよ。」

優しく微笑む柊さん。
なんかもう呼び捨てだし。

とりあえずその言葉に甘えてその場を去った。

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