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二章・もどかしい二人
40.はらぺこサキュバスの特訓
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「シルシル頑張ってね、昨日のもよく見たらちょっと色ついてきたと思う!」
「うう、ん~……!」
あれから、わたしはおねえちゃんにエロフェロモン放出体操を教えてもらったりしながら色んな話をした。あちらの世界での生活とか、新しくできた仲間とか、レイモンドさんの話とか。それで、自分の姿を幻惑で作るのがあんまりいい方法じゃないならとりあえず家族で作ってみたらって言われておねえちゃんの姿で練習したりしていた。色のついてない白い状態でなら作れるんだけど、どうもわたしの想像力の限界なのか色を付けるのが難しくて、遅くまでやってみたけどだめだった。
「しゃーなししゃーなし、朝ご飯食べよ。そろそろ配達くるんじゃないかなあ」
「配達……あ、リルカのヨーグルト!」
リルカはアルベリオの妹で、わたしの幼馴染だ。アルベリオは嫌な奴だけどリルカはさっぱりしてていい子。別の世界で採ってきた雄の精液をヨーグルトにする家業を継いで毎朝早く配達をしている。これのおかげでわたしみたいな消極的なサキュバスでもここまで大きくなれたこともあって、だからそこの店のうちの子であるアルベリオを無視できないんだよな……。
「こんちゃーっす!! シルキィ帰ってるんだって!? リッルカちゃんがヨーグルト配達にきったよー!!」
「噂をすれば来た来た、おはよーリルカちゃん」
家の外から大声の挨拶が聞こえてきて、おねえちゃんが迎え入れた。アルベリオと同じ黒髪を両側でシニヨンにしたかわいいサキュバスがひょっこり顔を出した。リルカだ。
「シルキィひさしぶり!! 兄貴から帰ってるって聞いてさぁ、顔見に来た!!」
「おはようリルカ。朝から元気だね」
「元気元気めっちゃ元気!! なんか催眠試験受けるんだって? しかも兄貴が担当!! 大変だね~、兄貴女の子いじめるの好きだから!!」
元気いいのはいいんだけど、げんなりすることを言ってくれる……。
「わたし、いじめる男の人嫌ぁい……」
「アッハッハ! 兄貴嫌われてやんの!! おっもしろ!! まあでも兄貴は仕事はちゃんとやるタイプだから、試験に関しては間違ったこと言わないと思うよ。がんばれがんばれ♡ んで? うまくできてんの?」
「それがさあ、リルリル~。幻惑魔法の精度のところでつまづいててねえ。ママたちはわりとあちこち行っちゃうし、おねえちゃんもシルシルが学校卒業するころは仕事始めたばかりであんまり見てあげられなかったから、ごめんの気持ちだよ」
おねえちゃんが申し訳なさそうに言う。そんな、おねえちゃんはいつも力になってくれてるし、いいのになぁ。
「ああ~、生きてるみたいな虚像を出せってやつね……あたしもやったわぁ。んなっつかしいなぁ~」
「あるものをなくすとか色を入れ替えるとかは簡単だからできるんだよね。でもイチから作るのはけっこう難しいんだなぁ……」
隠密スキルと幻惑魔法は元は同じものだ。だけど、今言った通り姿を人間っぽくするのはこちらの世界の住人なら息をするようにできるのでスキルという扱いになっている。おかあさんとロスアスタさんが服を着てるように見せてたようなのは難しくてわたしにはできなくて、あそこまでいくと幻惑魔法のうちに入る。そっか、あれができたら便利だな。できるようになりたい。
「想像力が難しいなら思い入れに頼れば? あたしの時はそんとき付き合ってた先輩作ってパスしたよ」
思い入れ……好きな人を作れってこと? それって……。
「ああ~っ!! そうだよ!! おねえちゃんだけシルシルの彼ぴぴ見てないんだけど!!」
「彼ぴぴ? マジ? シルキィ、男いんの? それあたしもめっちゃ見たいんだけど!!」
「まっ、まだ彼氏じゃないっ!! す、好きだけど、まだ彼氏じゃないって!!」
「ちょ、あたし残りの配達、爆速で済ませるからそしたら練習つき合ってあげる!! 朝ご飯しっかり食べて準備しなよね!! これ今日のヨーグルトです!!」
リルカはヨーグルトの包みをおねえちゃんに渡すと、どたばたと走り去っていった。ええ~。なんか変なことになってきちゃったよ……。でも、確かにレイモンドさんの体はわたしも隅々まで見てるし、大好きだから細かいところまで鮮やかに思い出せる。今までサキュバスとして体を重ねた他の男の人は誰も思い出せないのに、レイモンドさんだけそこにいるかのように、体温も匂いも覚えていた。いけるかもしれない。
「よぉし! シルシル、ご飯にしよ! 今日は特訓だよ!」
「おねえちゃん、仕事は?」
「今日からお休みもらってるんだよん」
わあきゃあいいながら新鮮なヨーグルトで朝ご飯にした。慣れた味で美味しいけど、レイモンドさんの濃い精が恋しいと思った。
「じゃあやろうか! シルシル、彼のこと、よーく思い出してみて」
ご飯を食べた後、リルカが配達から帰ってきてまた家に来たのでお庭で特訓することになった。
「えい……!」
何もない土の所に手をかざして、掛け声をかける。白いわたしを出す時みたいに桃色の光がゆらゆら立ち昇る。でもこれはわたしを出すときの量だ。レイモンドさんは大きいから、もっとたくさん……!
「んん~……!!」
「随分出すじゃん。シルシルの彼ぴぴ、体デカいんだね」
思い出す。レイモンドさんの大きな体。広い肩幅。分厚い胸板。太い腕。丸太みたいな腿。大きな、でも綺麗な指。高い鼻。けぶる睫毛。ぴかぴかの額。サラサラの髪。ちょっと垂れぎみの尖った長い耳……。
「あれ? 耳長いね。シルキィの彼ってもしかしてエルフ? エルフにしては体デカくね? いや、デカいデカい! シルキィこれマジ? 盛ってない? デカすぎない?」
「盛ってない……!! レイモンドさんは、このくらい大きいの!」
目を開けると、大好きな大きな体が立ち尽くしている。まだ色はついてなくて、真っ白だけど確かにレイモンドさんだった。
「はあ……、はあ……、ちょ、ちょっと休憩したい……」
「お水持ってくるよ。でもシルシル、それ出しっぱなしにしておいてね。気を抜くと崩れるから気を付けて」
地面にぺたんと座り込んで、自分が出した白いレイモンドさんを眺める。ああ、やっぱりかっこいいな……早く会いたい。
「でっか……。こんなエルフ本当にいるんだ……。エルフって骨が細い種族じゃなかったっけ? もう骨格からデカいじゃん。世界、広すぎ」
リルカはでかいでかいって言うけど、わたしはレイモンドさん以外のエルフに会ったことないからレイモンドさんがどれだけでっかいかとかわからな……いや、デカいな。デカいわ。こんなのに組み伏せられたらそりゃピクリとも動けないはずだよ……。わたしはがっちりと手足を固定されてお腹の奥まで耕されるようなレイモンドさんとの激しいえっちを思い出して赤面した。今までだったらこの昂りはレイモンドさんに伝わってたはずだけど、凍結された淫紋は冷たい白い色に変わって下腹で沈黙してる。レイモンドさんは大丈夫かな。煙草と自慰でなんとか頑張ってるんだろうか。
「あれ? シルシル、色ついてきてない?」
「えっ!?」
えっちの時の情欲に濡れたレイモンドさんの若草色の瞳とか、窓から射した光を受けてキラキラ光る金髪とか、紅潮するとぱっと夕焼けみたいな色になる耳とかを思い出しながら悶々としてたら、どうやら幻惑の虚像の方にも影響が出てたみたい。服装は初めて会った時の格好だ。娼館通りのいかがわしい灯りに照らされた色だけど、服にも色がついてきている。
「すごいすごい、やれてるよシルキィ……!! はあ~男前だわ~……こりゃちょっと分が悪いんじゃないの兄貴……」
リルカがちょっとよくわからないことを言ったような気がするけど、わたしは虚像を完成させることに意識を集中させる。抱き合った時の力強い体温や、ハーブの香りの息。あれはなんていう花の香りなんだろう。戻ったら教えて欲しい。あと、最近は煙草の臭いも少ししている。わたしが頑張れば、もうあの煙草は吸わなくていい。早くレイモンドさんの本来の匂いを胸いっぱいに吸い込みたい……!!
「で……できた……!」
そこに立っていたレイモンドさんは生きた本物の彼と遜色なく、世界で一番愛しい形でそこに存在していた。
「これで先に進める……!」
虚像でも、レイモンドさんの姿をみたら勇気とやる気がぐんぐん湧いてきた。その後もわたしは疲れ果てるまで、何度もレイモンドさんを造る練習に明け暮れた。
「うう、ん~……!」
あれから、わたしはおねえちゃんにエロフェロモン放出体操を教えてもらったりしながら色んな話をした。あちらの世界での生活とか、新しくできた仲間とか、レイモンドさんの話とか。それで、自分の姿を幻惑で作るのがあんまりいい方法じゃないならとりあえず家族で作ってみたらって言われておねえちゃんの姿で練習したりしていた。色のついてない白い状態でなら作れるんだけど、どうもわたしの想像力の限界なのか色を付けるのが難しくて、遅くまでやってみたけどだめだった。
「しゃーなししゃーなし、朝ご飯食べよ。そろそろ配達くるんじゃないかなあ」
「配達……あ、リルカのヨーグルト!」
リルカはアルベリオの妹で、わたしの幼馴染だ。アルベリオは嫌な奴だけどリルカはさっぱりしてていい子。別の世界で採ってきた雄の精液をヨーグルトにする家業を継いで毎朝早く配達をしている。これのおかげでわたしみたいな消極的なサキュバスでもここまで大きくなれたこともあって、だからそこの店のうちの子であるアルベリオを無視できないんだよな……。
「こんちゃーっす!! シルキィ帰ってるんだって!? リッルカちゃんがヨーグルト配達にきったよー!!」
「噂をすれば来た来た、おはよーリルカちゃん」
家の外から大声の挨拶が聞こえてきて、おねえちゃんが迎え入れた。アルベリオと同じ黒髪を両側でシニヨンにしたかわいいサキュバスがひょっこり顔を出した。リルカだ。
「シルキィひさしぶり!! 兄貴から帰ってるって聞いてさぁ、顔見に来た!!」
「おはようリルカ。朝から元気だね」
「元気元気めっちゃ元気!! なんか催眠試験受けるんだって? しかも兄貴が担当!! 大変だね~、兄貴女の子いじめるの好きだから!!」
元気いいのはいいんだけど、げんなりすることを言ってくれる……。
「わたし、いじめる男の人嫌ぁい……」
「アッハッハ! 兄貴嫌われてやんの!! おっもしろ!! まあでも兄貴は仕事はちゃんとやるタイプだから、試験に関しては間違ったこと言わないと思うよ。がんばれがんばれ♡ んで? うまくできてんの?」
「それがさあ、リルリル~。幻惑魔法の精度のところでつまづいててねえ。ママたちはわりとあちこち行っちゃうし、おねえちゃんもシルシルが学校卒業するころは仕事始めたばかりであんまり見てあげられなかったから、ごめんの気持ちだよ」
おねえちゃんが申し訳なさそうに言う。そんな、おねえちゃんはいつも力になってくれてるし、いいのになぁ。
「ああ~、生きてるみたいな虚像を出せってやつね……あたしもやったわぁ。んなっつかしいなぁ~」
「あるものをなくすとか色を入れ替えるとかは簡単だからできるんだよね。でもイチから作るのはけっこう難しいんだなぁ……」
隠密スキルと幻惑魔法は元は同じものだ。だけど、今言った通り姿を人間っぽくするのはこちらの世界の住人なら息をするようにできるのでスキルという扱いになっている。おかあさんとロスアスタさんが服を着てるように見せてたようなのは難しくてわたしにはできなくて、あそこまでいくと幻惑魔法のうちに入る。そっか、あれができたら便利だな。できるようになりたい。
「想像力が難しいなら思い入れに頼れば? あたしの時はそんとき付き合ってた先輩作ってパスしたよ」
思い入れ……好きな人を作れってこと? それって……。
「ああ~っ!! そうだよ!! おねえちゃんだけシルシルの彼ぴぴ見てないんだけど!!」
「彼ぴぴ? マジ? シルキィ、男いんの? それあたしもめっちゃ見たいんだけど!!」
「まっ、まだ彼氏じゃないっ!! す、好きだけど、まだ彼氏じゃないって!!」
「ちょ、あたし残りの配達、爆速で済ませるからそしたら練習つき合ってあげる!! 朝ご飯しっかり食べて準備しなよね!! これ今日のヨーグルトです!!」
リルカはヨーグルトの包みをおねえちゃんに渡すと、どたばたと走り去っていった。ええ~。なんか変なことになってきちゃったよ……。でも、確かにレイモンドさんの体はわたしも隅々まで見てるし、大好きだから細かいところまで鮮やかに思い出せる。今までサキュバスとして体を重ねた他の男の人は誰も思い出せないのに、レイモンドさんだけそこにいるかのように、体温も匂いも覚えていた。いけるかもしれない。
「よぉし! シルシル、ご飯にしよ! 今日は特訓だよ!」
「おねえちゃん、仕事は?」
「今日からお休みもらってるんだよん」
わあきゃあいいながら新鮮なヨーグルトで朝ご飯にした。慣れた味で美味しいけど、レイモンドさんの濃い精が恋しいと思った。
「じゃあやろうか! シルシル、彼のこと、よーく思い出してみて」
ご飯を食べた後、リルカが配達から帰ってきてまた家に来たのでお庭で特訓することになった。
「えい……!」
何もない土の所に手をかざして、掛け声をかける。白いわたしを出す時みたいに桃色の光がゆらゆら立ち昇る。でもこれはわたしを出すときの量だ。レイモンドさんは大きいから、もっとたくさん……!
「んん~……!!」
「随分出すじゃん。シルシルの彼ぴぴ、体デカいんだね」
思い出す。レイモンドさんの大きな体。広い肩幅。分厚い胸板。太い腕。丸太みたいな腿。大きな、でも綺麗な指。高い鼻。けぶる睫毛。ぴかぴかの額。サラサラの髪。ちょっと垂れぎみの尖った長い耳……。
「あれ? 耳長いね。シルキィの彼ってもしかしてエルフ? エルフにしては体デカくね? いや、デカいデカい! シルキィこれマジ? 盛ってない? デカすぎない?」
「盛ってない……!! レイモンドさんは、このくらい大きいの!」
目を開けると、大好きな大きな体が立ち尽くしている。まだ色はついてなくて、真っ白だけど確かにレイモンドさんだった。
「はあ……、はあ……、ちょ、ちょっと休憩したい……」
「お水持ってくるよ。でもシルシル、それ出しっぱなしにしておいてね。気を抜くと崩れるから気を付けて」
地面にぺたんと座り込んで、自分が出した白いレイモンドさんを眺める。ああ、やっぱりかっこいいな……早く会いたい。
「でっか……。こんなエルフ本当にいるんだ……。エルフって骨が細い種族じゃなかったっけ? もう骨格からデカいじゃん。世界、広すぎ」
リルカはでかいでかいって言うけど、わたしはレイモンドさん以外のエルフに会ったことないからレイモンドさんがどれだけでっかいかとかわからな……いや、デカいな。デカいわ。こんなのに組み伏せられたらそりゃピクリとも動けないはずだよ……。わたしはがっちりと手足を固定されてお腹の奥まで耕されるようなレイモンドさんとの激しいえっちを思い出して赤面した。今までだったらこの昂りはレイモンドさんに伝わってたはずだけど、凍結された淫紋は冷たい白い色に変わって下腹で沈黙してる。レイモンドさんは大丈夫かな。煙草と自慰でなんとか頑張ってるんだろうか。
「あれ? シルシル、色ついてきてない?」
「えっ!?」
えっちの時の情欲に濡れたレイモンドさんの若草色の瞳とか、窓から射した光を受けてキラキラ光る金髪とか、紅潮するとぱっと夕焼けみたいな色になる耳とかを思い出しながら悶々としてたら、どうやら幻惑の虚像の方にも影響が出てたみたい。服装は初めて会った時の格好だ。娼館通りのいかがわしい灯りに照らされた色だけど、服にも色がついてきている。
「すごいすごい、やれてるよシルキィ……!! はあ~男前だわ~……こりゃちょっと分が悪いんじゃないの兄貴……」
リルカがちょっとよくわからないことを言ったような気がするけど、わたしは虚像を完成させることに意識を集中させる。抱き合った時の力強い体温や、ハーブの香りの息。あれはなんていう花の香りなんだろう。戻ったら教えて欲しい。あと、最近は煙草の臭いも少ししている。わたしが頑張れば、もうあの煙草は吸わなくていい。早くレイモンドさんの本来の匂いを胸いっぱいに吸い込みたい……!!
「で……できた……!」
そこに立っていたレイモンドさんは生きた本物の彼と遜色なく、世界で一番愛しい形でそこに存在していた。
「これで先に進める……!」
虚像でも、レイモンドさんの姿をみたら勇気とやる気がぐんぐん湧いてきた。その後もわたしは疲れ果てるまで、何度もレイモンドさんを造る練習に明け暮れた。
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