【完結】はらぺこサキュバスが性欲の強い男エルフと一夜のあやまちで契約してしまう話【R18】

ケロリビ堂

文字の大きさ
上 下
34 / 91
二章・もどかしい二人

34.はらぺこサキュバスと家族

しおりを挟む
 わたしたちマッピング班は、少しの間変異したコケの区画を調査して凍結することに時間を割いた。その間、深い階層を掘るのはお預けになるので先に行きたい冒険者には不評だったけど、ギルド長からは「そういった者は進んでマッピング師になってくれ。以上」とだけコメントがあった。この街は生活のほとんどをダンジョンで賄っているから、優先されるべきは冒険より生活なのです。ってレイモンドさんが言ってた。リィナさんみたいに別のダンジョンに憧れる人や、冒険者としてダンジョンを踏破して成り上がりたい夢がある人は離れていくかもしれないけれど、安全に生活の糧を得たい人はずっとここにいるだろうって。そして、そういう人のほうが数は多いのだ。
 すでにマッピング済みの変異区画は、各マッピング班で手分けして凍結し終わったので、一旦休憩を入れてまた通常のマッピング業務に戻ることになった。
 わたしはというといつもの通り地上に戻ってレイモンドさんとむちゃくちゃになったあと自分の部屋に帰り、ずっと後回しにしていた自分の催眠能力について聞くために、またサキュバスの水鏡を作っていた。

『シルシルやっほ~。こないだからあんまり間あいてないじゃな~い? どうした? さみしくなった?』

 あいかわらず元気いっぱいのおねえちゃんが鏡の向こうで顔をのぞかせて、やっぱりほっとする。仲のいい家族だから、どうしてもね。

「大丈夫だよ~。妹はうまくやれてます。あのね。また聞きたいことができて……」

『なになに~? ボリュームアップエクササイズの方法? エロフェロモン放出体操のやりかた?』

「うんうんそれめちゃくちゃ気になるからそれもあとで教えて欲しいけど……、そうじゃなくてあのね、わたし、催眠の能力が発現したっぽいの」

『えーっ!! ずっと使えなかったのに!!? やった! おっとなじゃーん!! おかーさーん!! シルシル、催眠デビューしたってよ!!』

 おねえちゃんは自分のように喜んで、遠くに向かって大声でお母さんを呼ぶ。

「今日お母さんいるの?」

『そうそう、旅行から帰ってきたばっかりでさ。彼ぴぴもいるよ。今お土産開けてた。シルシルの分も取っておいてあるから帰って来た時にあげるね~』

 そんな話をしていると、鏡の向こうからバタバタぼよぼよと走る音が聞こえた。

『シルキィ~♡♡♡ ママのひよこちゃん!!! 久しぶりねぇえええ!!! お話したかったわぁあああ♡♡♡♡』

 声でっか!! おねえちゃんを弾き飛ばすようになんかもう全部がボリューミーなサキュバス女性が覗き込んで来た。彼女はチェルキィ。わたしのおかあさん。サキュバスは20歳になると老化が止まってしまうので、見た目はわたしとそんなに変わらない感じだけどれっきとしたマダムで、わたしが小さいころにお父さんが祓われてしまって以来一人でわたしとおねえちゃんを育ててくれた立派な女性だ。彼氏さんは旅行好きなので、あちこち二人で見て回っていることが多い。今日は偶然帰ってきた日だったみたいだ。

『催眠が使えるようになったのぉ~?? んまぁ~♡♡ ママはねぇ~。シルキィちゃんはゆっくり大人になるタイプだと思ってたのよぉ~♡♡♡ お祝いしなくちゃ!! とっておきのラブボトル開けちゃう~~♡♡♡』

「待って、待っておかあさん! まだ全然コントロールとかできないし、意識がないときに一回使えただけなの! だから今日はどうしたらコントロールできるようになるのか聞きたいんだけど……」

 おかあさんは元気いっぱいの人なのでこうやってちゃんと話の腰を折らないとなかなか話がすすまないことがある。

『あららそうなのん? でも全く使えないわけじゃないってのがわかっただけでもママは嬉しいわよぉ?』

『シルシル、なかなか使えるようにならなかったからサキュバスがみんな受ける催眠講習と試験受けてないでしょ? まずはそれ受けなきゃ。一旦こっち帰ってこなきゃっぽい?』

 あー、そうだった……。でも……。

「今、こっちで契約してる人がいて感覚共有してるからすぐには帰れないかも」

『あっ! そうそうその話!! ミルキィから聞いたけど、性欲の強いエルフと今契約してるのよね? 今顔から出てるオーラもその人のなのね? 聞いた通り、変わった色だわねぇ……なんだか複数の種族の生命力が混じって変わったって感じの色してるわぁ……。ねえ、ロスりん? ロスり~ん♡♡♡』

 さっきのおねえちゃんみたいに、お母さんも人を呼んだ。わー、この人とも久しぶりに話すな……。

『うぃっすうぃっす~♡♡ チェルっち、俺ちゃんを呼んだな? この頼れる超カッコいい俺ちゃんをよぉ~。あ、ちゃんシルじゃん。元気?』

「ロスアスタさん! お久しぶりですっ」

 お母さんの後ろから、癖のある黒髪と青紫の肌が特徴的な男性が現れて、お母さんに抱き着いてキスしてから、今度はこっちに向けて投げキスをしてきた。彼はロスアスタさん。ママの彼氏のインキュバスだ。わたしにとってはお父さん代わりみたいな存在の人。

『ロスり~ん。シルキィちゃんたら変わった色の生命力の男と契約してるのよぉ~。エルフだっていうんだけど、この色、エルフの色と違うわよねえ? 何か混ざってるわよねぇ?』

『おーん? どれどれぇ……? あ~? うーん。俺ちゃんこの色どっかで見たことあるな……。なあ、ちゃんシルよぉ。そのメンズ、どこ住み? 年いくつよ?』

「えっと……確か年は139歳……だったかな? 出身は森林大迷宮の近くのエルフの里って言ってたよ……多分」

『ん~。140年前くらいの森林大迷宮かぁ……。あー、俺ちゃんそのころ、森林大迷宮にいたわ。そいつもしかしたら知ってるかもしんねぇ』

「本当ですか? その人、エルフなんですけどとにかく性欲が強くて、体もすごく大きいんです。実は今、狂化の状態異常にかかってて、それで、わたしが催眠を使えるようになったら抑えてあげられるんじゃないかと思って、それで今日は連絡したんですけど、彼の性欲が強いのって、もしかしてオーラの色が違うのと関係あるんでしょうか……」

『いやぁ~、う~ん。話聞いてるだけだとどうもこうも言えねえなぁ~、なんせ俺ちゃん、超思慮深いもんで☆』

『じゃあ会いにいっちゃう? チェルっちも、愛娘のダーとお話したぁい♡』

『いいじゃん。二人とも行ってきなよ。留守はミルキィがしっかり守りまーす♡』

 待って~?

「待って待って! まだレイモンドさんとは契約者なだけで付き合ったりとかはしてないの~!! 急に親とか出てきたら引かれちゃう!! せめて会っていいか確認してからにして~!!」

『シルキィちゃんのダーはレイモンドくんっていうの~♡ まあ~、素敵な名前~♡』

『シルシル~、どっちにしろ契約繋がってる状態で講習受けにこっち戻るのキツイっぽいし、一旦彼と話したほうがいいはいいよ~。ママなら多分淫紋オフ処置ができると思うし』

 う、う~……。どうしよう。

「わ、わかった。一緒に仕事もしてるし、話してみるよ。大事な話だもんね。聞いてみる」

 凄いことになっちゃったな……。まさかお母さんとロスアスタさんをレイモンドさんに会わせることになっちゃうなんて……。レイモンドさんは自分のことで決定的なことを突きつけられると逃げる癖があるってツブラさんが言ってたのを思い出して、わたしは少し不安になった。

『おけまる~。それじゃ、行っていい日がわかったらまた俺ちゃんたちを呼んでね~☆』

 そのあと二つ三つ近況なんかをお姉ちゃんと話して、通話を切った。わたしは汚い水の前でしゃがみ込んで、これからどうするかをしばらく考えていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...