美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました

遥 かずら

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第三章 恋と争う二人

第65話 対抗的モテ期演出!?

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「……翔輝、翔輝……起きて、起きてよ…………」

 何かが俺の腹の上に乗っているようだ。

 眠っていてもその重さは感じるし、もそれを分かっていてわざと体重をかけてきている。

 こういうことをしてくるのは決まって、

「こら~~!! 狸寝入りしてるのはお見通しなんだぞ~! 起きろ、起きやがれ~! バカ翔輝~!!」

 ……こいつなんだよな。

「うるせーな。なんだよ、新葉!」
「何だとはなんだ~!! 人がせっかく起こしてあげてるっていうのにさ~」
「お前に起こされても嬉しくない」
「何だとぉ! ……ほっほぉう? ははぁん? なるほど、あたしじゃ嬉しくないと……そういうことか!」

 幼馴染として勝手に部屋に上がり込んで何回も起こしにこられれば流石に飽きるし、初めの頃の新鮮さは薄れる――そう思っての言葉だったが、新葉の反応は別の何かを想像したかのような悪そうなものだ。

「……何だよ?」

 いやその前に、夢じゃ無ければ俺のすぐ隣には天蓋付きベッドがあるはず。

「ざんねぇ~ん! つららちゃんならもういないよ?」
「別に院瀬見を気にしてたわけじゃない」
「そうかい? 翔輝ってば相変わらず素直じゃないよね。アレだね? つららちゃんに優しく起こしてもらいたかったんだろ?」

 ……こいつ。

「そんなことは一言も言って無い」
「またまたぁ~。あたしに起こされても嬉しくないって言ったじゃんか! それってつまり~」

 うざ。部屋を移動してうざさも少しは解消されるかと思っていたが、見込みが甘かったな。

「いないってのは、もう登校したって意味か?」
「ふふん、逃げたな。そうだよ。彼女は本気で翔輝を落としにきてるね~」
「……生徒会長の座のことか?」
「それ以外にないじゃん! どうする~? どうするよ~?」

 そもそも俺自身は生徒会長という座に居座りたいわけじゃなく、こだわってもいない。別学の時からやってきたことを続けてやっているだけだ。

 ぶっちゃけ院瀬見が生徒会長になれば、むしろ共学となった今なら彼女の方がふさわしいとさえ思ってしまう。

 それなのにどういうわけか、こいつは俺を煽ってきている。

「どうもしない。なりたかったらなればいいだけのことだ。生徒会選挙で決まるわけだし、俺がとやかく言ったところで変わらないだろ」

 確か俺の味方はあたしだけだとか言ってなかったか?

「それはともかく、顔を洗ってとっととテーブルの上のパンでもお食べ!」
「言われなくても分かってるから部屋から出ていけっての」
「ふふん、今さら翔輝の生着替えに緊張なんてするはずも――」
「あ?」
「おおっと」

 口うるさい奴だ。

 しかしでも、再会したての頃は緊張しまくりだったんだよな。それがいつの間にか馴れ馴れしさを通り越して、近すぎる存在になってしまったわけだが。

「……何でお前と一緒に登校することになってる?」
「いいじゃないか。あたしは翔輝の参謀様なんだぞ! 授業以外はびったり張り付く気持ちでいっぱいだぜ!」

 こいつなりに少しくらい俺に気を遣っているのかもしれないな。それくらい、院瀬見の態度の切り替えっぷりは徹底している。

「――ったく、新葉の気持ちは分かってるから放課後くらいで勘弁してくれ」
「んまぁ!」

 ……などなど、新葉なりの優しさから朝が始まった。新葉に加え、何でか今日の朝は俺の隣が賑やかなものとなった。

 なぜかというと、

「え~? マジなんですか、それ~。じゃあウチも喜んで味方になっちゃいますけど~」
「もちろんあたくしは歓迎しますわ! あなたのことは何とお呼びすればよろしくて?」
「ん~と、九賀だとフツーすぎるんで、みずきでいいですよ、せんぱぁい」
「よろしくってよ! あたくしのことも新葉ちゃんとお呼び!」

 九賀みずきが途中で登校メンバーに加わったからだ。同じクラスになってはいたものの、院瀬見の圧の関係で俺に近づいても来なかった女子なわけだが。

 しかし、何で新葉は俺以外の人間に変なキャラを降臨させられるんだ?

 自分で自分のキャラを迷走させてるだけってことに気づけよ。それに九賀の口調の変化も気になる。最初の頃はこんなギャル口調ではなかったはず。

 推し女の役目から解放されて本当の自分に戻っただけかもしれないが、それにしたって軽すぎだ。

「ウチも翔輝会長! って呼んじゃっていいんですかぁ?」
「……好きに呼んでも構わない」
「よしよし。これで二人目の味方をゲットなんだぜ! でもあたしに甘えっぱなしじゃ駄目なんだぜ? 翔輝は男子の味方も増やしておくがいいさ!」
「ウチもそう思いま~す! あ、翔輝会長~。朝一で教室行くのだるいんで、このまま新葉ちゃんと寄り道して行きますんで~」

 本当かどうかは怪しいが、新葉のおかげで九賀が俺の味方に加わった。そんな調子のいい女子たちを置いて、俺は教室に直行することに。

 生徒会長ということで、一応他の奴よりは早く教室にたどり着くようにしているが、どうやらは俺よりもやる気を見せているようだ。

「遅かったですね、翔輝会長さん」

 南呼びから少しだけ昇格したらしいが、何となく微妙な呼び方だな。

「まだおはようと言っても間違いじゃない早さだけどな。何せ俺たち以外はまだ教室に入ってないわけだし」
「そうですか? でも草壁さんや九賀さんが途中まで付き添われてきましたよね?」

 まさか上から見ていたのか?

「どういうつもりか知りませんけれど、わたしに対抗するやり方なんですか?」
「……何が?」
「いえ、わたしの方に男子が二人加わりましたよね。それに対抗するために、あなたの両脇に可愛い女子を歩かせて楽しそうに……ムカつく」

 大いなる誤解だし単なる登校なのに、まさか生徒会メンバーの対抗策と思われてしまったのか?
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