美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました

遥 かずら

文字の大きさ
上 下
44 / 78
第二章 当たり前の二人

第43話 『こいびと』ですね?

しおりを挟む
「……」
「…………」

 鉢合わせしたかと思ったら二人とも無言の応戦って、そこまでするほど犬猿の仲なのか。

「な、なぁ?」

 ここは俺が突破口を開かないと動くに動けなくなる。

 そう思って声をかけたのに、

「南。院瀬見つららとは何故?」

 院瀬見と向かい合っていた聖菜が急に振り返って俺の前に迫ってきた。

「え……? ええと、院瀬見とは――」
「うん。院瀬見とは何?」

 顔が近い、近すぎる。何でこうも無警戒に俺に体を近づけてくるんだこの女子は。

 しかも以前なら軽くあしらっていたのに、七石先輩から聖菜が養成所にいたことを聞いてしまっただけに、よく見なくても整った顔つきをしている聖菜を見ているだけで妙に意識している俺がいる。

 もしかしなくても美少女耐性がいつの間にか抜けてしまったか?

「――むー。コホン、翔輝くん。ここにはもう用事が無いので、別のところに行きません?」

 そうかと思えば、院瀬見も負けじと聖菜の存在をかき消して俺に声をかけてくる。

「話は終わってない。南の答えを聞きたいからここから動くのは駄目」
「……あ、うん」
「院瀬見つららと親し気にしてた。何故?」
「何故って言われてもなー……」

 思わず院瀬見を見てみると、俺が一緒について来てくれると信じていたのか右手を差し出したまま沈黙状態で静止していた。

 これはどうにもならないな。

 クセのある聖菜に適当な言い訳が通用するとは思えないし、院瀬見の方は俺のに期待して押し黙ってしまった。

 それでもまだ話が通じる相手なのは院瀬見一択。

 そうなるとまずやれることは、動かずにいる院瀬見の差し出している右手にさり気なく指で合図するだけだ。

「聖菜。十秒だけ待ってくれ。何故俺が院瀬見と一緒にいたのかを整理して説明するから」
「分かった、待つ」

 たった十秒でどうするって話だが、手の平に書けるといったら平仮名で四文字程度の伝言くらいしか思いつかない。

 とにかく迷ってもいられないので、院瀬見の手の平に簡潔に合図することに。

「ひゃっ? ……? うんうん!」

 くすぐったつもりはなかったが、どうやら俺が言いたいことが院瀬見に通じたようで、手を引っ込めて聖菜に再び向き合った。

「翔輝くんに代わってわたしからあなたに伝えてあげます!」
「……何を?」
「わたしと翔輝くんの関係は恋人ですっ!」

 俺が伝えた文字を院瀬見が理解してくれたことを信じ、二人のやり取りを見守ろうとすると、院瀬見の口からとんでもない発言が飛び出していた。

 おい待て。

 俺が伝えた言葉はだぞ?

 どこをどう間違ったらになるんだよ。

「恋人……? 院瀬見つららと誰?」
「ですから、そこに立っている南翔輝くんが! ですっ!」
「……南。それ、本当?」

 どうすればいいんだ?

 嘘をついてひとまず厄介な聖菜から離れるか、それともそうじゃないってことを伝えて――いや、駄目か。

 そうじゃないなんて言えば聖菜のことだから、「じゃあ聖菜の恋人で」とか言いそうだ。それだと院瀬見の勘違い発言がただの痛い発言で終了してしまう。

 この場を乗り切るには乗るしかないか。

「そ、そういうことだ。つららは俺の恋人だ。だから――」
「どういう恋人? 体で何かした? 心は通じてる? 何回目のデート? 草壁新葉はあなたと院瀬見つららの関係を知ってる?」
「えっ……」
「ええっ? 体でって……えっとえっと……」
「聖菜が得てる情報と異なってる。だからきちんと話してもらう」

 おいおい、質問攻めが激しすぎるぞ。院瀬見も慌てふためいたらバレるだろ。

 しかも何で幼馴染のアレが出てくるんだ?

 聖菜が予想よりも強敵過ぎるぞ。こんなに根掘り葉掘り聞いてくるとか、まるで俺をどこかで見張ってるかのようじゃないか。

 まさかそこまで酷くないと信じたいが。

「体はとっくに接触済みだ。今回で二回目だ。それから――」
「――ふぇ!?」

 だから院瀬見が取り乱したら駄目だろ。

「……分かった。邪魔しないで帰る。でも、二学期になる前にもっと細かく教えて? そうじゃないと信じられないから」
「そうする。後で連絡するか?」
「駄目。直接会って。もちろん、そこの院瀬見つららと一緒に」
「ああ、そうする」
「じゃあ……南」

 ようやく離れてくれたか。それにしたって眼光が恐ろしすぎるぞ。何もかも見透かしてるとしか言えない目つきだった。

 それにしても、

「なぁ、つらら」
「は、はい! な、何でしょうか?」
「手の平に書いた文字すら理解出来なかったのか?」

 頭脳明晰のはずなのにくすぐったい感覚で麻痺したのだろうか。

「えっ? 何て書いたの?」
「『誤魔化せ』だ。少なくとも『こいびと』じゃない」
「えええええええええーーーー!?」

 事の重大さに気づいたと同時に気恥ずかしさが込み上がったのか、院瀬見は両手で顔を隠してその場にしゃがみ込んでしまった。

 せっかく自由を得られたのにどうするんだこの状況。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...