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第二章 当たり前の二人
第42話 危険な恋敵
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「な、なぁ? おかしくないか?」
「……何がです?」
「モールに入ってから俺だけずっと見られてるんだけど……」
俺と院瀬見は学校を出てからるるポートに入るまで、ずっと腕を組みながらここまで歩いて来た。
夏休み中が幸いして学校の近くでは気にする必要は無かったが、ショッピングモールに来た途端、腕を組んでいるだけの俺たちは周りの客から一斉に注目を集めた。
どう考えても普通じゃないのは明らかで、その原因を作っている本人はまるで自覚が無いのか首をかしげている。院瀬見はともかく何で俺が見られているのか。
「それはだって、見ちゃいますよ」
「つららはそうだろうけど、俺はなるべく目立ちたくないのに……」
「わたし、優勝者ですから! だから翔輝くんは見られちゃう運命なんです」
ドヤ顔をされても、それはそうだろうなという感想しか出てこない。
とはいえここは学校の連中の女子や女性客が多く、一人だけで来ている男性客は皆無だ。そうなると男はどうしても目立ってしまう。
そもそもこのモールで美少女選抜の予選をしたと聞いているだけに、院瀬見つららがいれば嫌でも目立つ。認知度が段違いっていうのもあるが。
「そもそも好きでもない奴と腕組みしてるのを見られて平気なのはどうなんだ?」
「嫌いでもないですし」
「……それはもう何度も聞いた」
「うんうん」
駄目だ、何を言ってもそれしか言わなくなってる。
何もしなくても人目を引くのに、その隣を大したことのない男がくっついていれば何事かと見てしまうのは当然か。
……自分で言ってて悲しくなるな。
「しかし前もそうだったけど男より女性率が高いな」
「それはそうですよ~。このモールって霞ノ宮女子が気軽に来れるところですもん。ここに来れば大体揃いますし、カフェもあるので気楽なんです」
そういや――
交流会の時は見栄を張って詳しいなどとほざいていたが、実のところほとんど訪れることが無い。図書カフェに行く順路までは覚えているものの、他のショップのことまでは正直言って知らなかったりする。
「――で、この前行ったカフェに行くんだろ?」
別に安上がりのカフェじゃなくてもいいが、院瀬見に案内出来るレベルじゃない。
「んー……先に水着ショップに行きたいです」
「……何でそんなところへ?」
「もちろん水着を着る為ですけど、何かおかしいこと言いました?」
「おかしくない……」
「でしょ?」
夏休み中だから何もおかしなことじゃないけど、何で今なんだか。
「それじゃ、翔輝くんはこのままついて来てね」
「分かった……」
力づくで抜けようと思えば出来た。しかし悲しいことに俺よりも院瀬見の方が腕っぷしが強いうえ、なまじ注目を浴びてしまった以上うかつなことは出来そうに無いのは確かだ。
院瀬見と俺は腕を組んだまま、アパレルショップが並ぶモール二階に来た。ほとんど女子向けばかりが目立ち、客も女性ばかりで俺だけアウェイ状態だ。
「翔輝くん、どれがいい?」
何で俺に聞くんだか。
「動きやすくてオシャレなものなら何でも」
「えっ?」
俺がおかしなことを言ったかのように、院瀬見はまた首をかしげている。
「……泳ぐんだろ?」
「ううん、泳がない水着が欲しいの」
まさかの観賞用だとすれば誰かに見せる系か?
院瀬見の場合、その辺に立ってるだけでも魅力的だ。たとえ泳がなくても水着で肌を露出すれば、勝手に色気を放出する可能性がある。
「海に行って見せびらかすだけなら何でもいいんじゃないのか?」
「もうっ! もういいです。わたしだけで勝手に決めるんだから! 翔輝くんはその辺のベンチで座って待っててくださいっ!」
好かれても嫌われてもいないただの野郎に何で泳ぎもしない水着を聞いてくるのか意味が分からないし、強引に連れられてきたのにあっさり店内から追い出されるとは予想外だ。
とはいえ、勝手に動いても面倒なので黙って待つことにした。
「…………」
アウェイな状態なだけにその辺を見回すと通報されかねない。
それでもいつ戻ってくるか不明なので水着店をちらちら気にしていると、
「南は女装もしたりする……?」
「あん? お前……聖菜?」
「そう、聖菜。奇遇な出会い、やっぱり運命感じる」
当初は院瀬見の推し女として紹介された十日市聖菜。だが、院瀬見によると油断してはいけない相手らしい。
こいつとは七石先輩関係のバイトで少しだけ関わったが、その後は直接会うことが無かった。それがまさかこんなところで会うとは。
「よく分からんが、俺は女装の趣味は無い。俺はただここで座ってるだけだ。お前は何でここにいるんだ?」
「不思議なのは南がここにいること。私は何も不思議じゃない。でも出会ったから不思議かも?」
「……かもな」
院瀬見と鉢合わせしないでくれよ真面目に。
「この水着、似合う?」
多少の警戒をしながら話していたら、どういうわけか目の前ですでに購入したらしい水着を俺に見せつけてきた。
「いや、俺は分からないな」
聖菜に対し冷たい態度になってしまうが、直感的に危険な女子だと感じるからだ。もちろん、事前に七石先輩から少しだけ聖菜のことを聞いているというのもある。
「海にいつ行く?」
「さぁな。それは聖菜が決めればいいんじゃないか?」
「そうする。都合、いつがいい?」
「……俺は一緒に行くとは言って無いけどな」
人の話を聞かない子か。気質がかなり危ない気がするな。
「翔輝くーん! お待たせです。待たせてごめ――」
「院瀬見つらら。何でここに?」
あぁ、やはりそうなるよな。
「……何がです?」
「モールに入ってから俺だけずっと見られてるんだけど……」
俺と院瀬見は学校を出てからるるポートに入るまで、ずっと腕を組みながらここまで歩いて来た。
夏休み中が幸いして学校の近くでは気にする必要は無かったが、ショッピングモールに来た途端、腕を組んでいるだけの俺たちは周りの客から一斉に注目を集めた。
どう考えても普通じゃないのは明らかで、その原因を作っている本人はまるで自覚が無いのか首をかしげている。院瀬見はともかく何で俺が見られているのか。
「それはだって、見ちゃいますよ」
「つららはそうだろうけど、俺はなるべく目立ちたくないのに……」
「わたし、優勝者ですから! だから翔輝くんは見られちゃう運命なんです」
ドヤ顔をされても、それはそうだろうなという感想しか出てこない。
とはいえここは学校の連中の女子や女性客が多く、一人だけで来ている男性客は皆無だ。そうなると男はどうしても目立ってしまう。
そもそもこのモールで美少女選抜の予選をしたと聞いているだけに、院瀬見つららがいれば嫌でも目立つ。認知度が段違いっていうのもあるが。
「そもそも好きでもない奴と腕組みしてるのを見られて平気なのはどうなんだ?」
「嫌いでもないですし」
「……それはもう何度も聞いた」
「うんうん」
駄目だ、何を言ってもそれしか言わなくなってる。
何もしなくても人目を引くのに、その隣を大したことのない男がくっついていれば何事かと見てしまうのは当然か。
……自分で言ってて悲しくなるな。
「しかし前もそうだったけど男より女性率が高いな」
「それはそうですよ~。このモールって霞ノ宮女子が気軽に来れるところですもん。ここに来れば大体揃いますし、カフェもあるので気楽なんです」
そういや――
交流会の時は見栄を張って詳しいなどとほざいていたが、実のところほとんど訪れることが無い。図書カフェに行く順路までは覚えているものの、他のショップのことまでは正直言って知らなかったりする。
「――で、この前行ったカフェに行くんだろ?」
別に安上がりのカフェじゃなくてもいいが、院瀬見に案内出来るレベルじゃない。
「んー……先に水着ショップに行きたいです」
「……何でそんなところへ?」
「もちろん水着を着る為ですけど、何かおかしいこと言いました?」
「おかしくない……」
「でしょ?」
夏休み中だから何もおかしなことじゃないけど、何で今なんだか。
「それじゃ、翔輝くんはこのままついて来てね」
「分かった……」
力づくで抜けようと思えば出来た。しかし悲しいことに俺よりも院瀬見の方が腕っぷしが強いうえ、なまじ注目を浴びてしまった以上うかつなことは出来そうに無いのは確かだ。
院瀬見と俺は腕を組んだまま、アパレルショップが並ぶモール二階に来た。ほとんど女子向けばかりが目立ち、客も女性ばかりで俺だけアウェイ状態だ。
「翔輝くん、どれがいい?」
何で俺に聞くんだか。
「動きやすくてオシャレなものなら何でも」
「えっ?」
俺がおかしなことを言ったかのように、院瀬見はまた首をかしげている。
「……泳ぐんだろ?」
「ううん、泳がない水着が欲しいの」
まさかの観賞用だとすれば誰かに見せる系か?
院瀬見の場合、その辺に立ってるだけでも魅力的だ。たとえ泳がなくても水着で肌を露出すれば、勝手に色気を放出する可能性がある。
「海に行って見せびらかすだけなら何でもいいんじゃないのか?」
「もうっ! もういいです。わたしだけで勝手に決めるんだから! 翔輝くんはその辺のベンチで座って待っててくださいっ!」
好かれても嫌われてもいないただの野郎に何で泳ぎもしない水着を聞いてくるのか意味が分からないし、強引に連れられてきたのにあっさり店内から追い出されるとは予想外だ。
とはいえ、勝手に動いても面倒なので黙って待つことにした。
「…………」
アウェイな状態なだけにその辺を見回すと通報されかねない。
それでもいつ戻ってくるか不明なので水着店をちらちら気にしていると、
「南は女装もしたりする……?」
「あん? お前……聖菜?」
「そう、聖菜。奇遇な出会い、やっぱり運命感じる」
当初は院瀬見の推し女として紹介された十日市聖菜。だが、院瀬見によると油断してはいけない相手らしい。
こいつとは七石先輩関係のバイトで少しだけ関わったが、その後は直接会うことが無かった。それがまさかこんなところで会うとは。
「よく分からんが、俺は女装の趣味は無い。俺はただここで座ってるだけだ。お前は何でここにいるんだ?」
「不思議なのは南がここにいること。私は何も不思議じゃない。でも出会ったから不思議かも?」
「……かもな」
院瀬見と鉢合わせしないでくれよ真面目に。
「この水着、似合う?」
多少の警戒をしながら話していたら、どういうわけか目の前ですでに購入したらしい水着を俺に見せつけてきた。
「いや、俺は分からないな」
聖菜に対し冷たい態度になってしまうが、直感的に危険な女子だと感じるからだ。もちろん、事前に七石先輩から少しだけ聖菜のことを聞いているというのもある。
「海にいつ行く?」
「さぁな。それは聖菜が決めればいいんじゃないか?」
「そうする。都合、いつがいい?」
「……俺は一緒に行くとは言って無いけどな」
人の話を聞かない子か。気質がかなり危ない気がするな。
「翔輝くーん! お待たせです。待たせてごめ――」
「院瀬見つらら。何でここに?」
あぁ、やはりそうなるよな。
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