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第二章 当たり前の二人

第40話 閑話:生徒会野郎共の処遇

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「……す、すみませんっす!! 翔輝会長」
「ごめん、翔輝。僕はその……怒らせたつもりはなくて」
「謝れば済む話じゃないのは分かってるよな? 特に純。お前は副会長なんだぞ? 自覚があまりに無さすぎるぞ、真面目に」
「うぅ……返す言葉が無いよ」

 夏休みの後半に差し掛かったこの日。

 男子だけの生徒会活動としては事実上最後となることもあって、俺、北門、下道、上田の四人だけで生徒会室に集まることに。

 いつもなら適当に話をして備品交換を済ませて帰るだけだったが、この日はそれだけでは済まされない話をしなければならない理由があった。

 それというのも、院瀬見とあったその日の夜に、幼馴染の新葉アレから思いきり愚痴やらお叱りやらを受けてしまったからだ。

 その内容はというと、

「翔輝の生徒会にチャラい男子がいるよね?」
「あぁ、いるな」

 下道と純しかいないけど。

「じゃあ、翔輝に言うけど……いい加減にしてくれない?」
「何が?」
「あんたは知らないかもだけど、あたしにつきまとう男子がいるんだよ! 一人だけでも面倒なのに、雨が上がった直後にもう一人いてしつこかったんだぞ?」
「あー……」

 俺と別れた後というか、院瀬見に手を引かれた後の行動までは知ったことじゃなかったが、あいつらまだあの場所をうろうろしてたのか。

 新葉につきまといってことは、惚れやすい純のことだな。下道は軽いだけでそんなでもないとして、純はしつこそうだ。初めは院瀬見のことが好きとか言ってたはずだったが、可能性がある方にシフトしてたわけか。

「プライベートだからって、分かるよね? あたしの言いたいこと……」
「ごもっとも」

 いつもはアホな新葉がここまでになるのは滅多に無い。

「二学期が始まる前に翔輝が何とかするべきだぞ? 特につきまといをしてくる男子はまずいよ。これからは男女一緒なんだからきちんとおやり! こうなったらあたし自ら制裁してやろうじゃないか!」

 ――という、新葉が本気の怒りを露わにしたのは初めてだっただけに、下道はともかく、純の処遇については教員に話が行く前に何とかしなければいけない問題だ。

「二学期からは俺らだけじゃなくなるのは聞いてるだろ?」

 院瀬見と二見、それと九賀の三人と、上田の妹は確定している。聖菜せなという女子は生徒会には入らないらしい。

「う、うん。女子たちが正式にメンバーに加わるんだよね」
「聞いてるっす」

 あからさまに嬉しそうにしてるのも問題だな。
 
「聞いてる。妹をぜひ頼みたい」
「上田は問題無いから黙って聞いててくれると助かる。妹のことは後で聞くよ」
「分かった」

 上田は害が無いからこの場にいてもらう必要は無いが、一人だけ呼ばないのも問題になりそうだから仕方が無いとして。

「院瀬見つらら、二見めぐ、九賀みずきの三人がメンバーに加わるのはすでに知ってると思う」

 暫定的ではあるもののこのメンバーで固まっている。臨時扱いで新葉が乱入してくる可能性もあるが、それはとりあえず気にしないでおく。

「それを踏まえて聞くが、下道は加わる三人の女子のことをどう思う?」
「二見さんは真面目そうでいいんじゃないっすかね? 一途な推し女って感じで好感が持てるっす!」
「……九賀と院瀬見は?」
「苦手っすね。オレ、あんまりぐいぐい来るギャル女子は得意じゃないんすよー。院瀬見さんは最強すぎて気が引けるっす」

 下道はよく見てるようだが、それほど危険性は無いうえモブっぽい扱いだから問題無し――と。

「じゃあ、次だ。純に聞くけど、お前結局誰が好きなんだ?」

 同じことを聞いても意味が無いし、こいつには直球で質問する。

「えっ!? 僕への質問はそっちなの……?」
「お前自身が言いたいことでもあるのか?」
「僕はえっと、話をしてみないと人となりが分からないっていうのがあるから、だから積極的に声をかけて……何度か話をしてそれで――」

 北門きたかどは人畜無害な奴かと信じていたのに残念だ。しかも自覚がまるで無い。

「それが駄目なんだよ! 俺の言ってる意味が分かるか?」
「え、どういう……」
「悪いが証拠は挙がってる。お前への処遇はアレが言う。よし、入って来てくれ!」

 ――というタイミングで、俺は特別に呼んでおいた新葉を部屋に入れた。

「えっ? 草壁さん!?」
「はい、草壁さんです。生徒会副会長の北門純さん……で間違いないかしら?」
「は、はい……」
「では、あたくしと一緒に来て欲しいところがありますので、どうぞおいでになって?」

 また変なキャラが憑依してるな。しかしここは新葉に任せることにしよう。そうでなければ北門は反省しないだろうし。

 純には反省してもらうと同時にあっちの教員に説教してもらうことになる。霞ノ宮の女子、それも草壁新葉を怒らせた以上はただでは済まない。

「しょ、翔輝会長……純さんが連れていかれたっす。もしかして、何かしでかしたんすか?」

 何だ、下道の方がよく分かってるじゃないか。やらかした前提で聞いてくるとはな。

「まぁな。とにかく純はこのままじゃ生徒会にいられないからな。下道と上田は安心していいが、下道も反省してナンパは程々にしとけよ?」
「ま、マジっすか? ナンパが原因なんすか……そういえば純さん半端無かった気がするっす」

 やはりそうだ。下道はあっさり引き下がったかもしれないが、純はそうじゃなかった可能性が高い。

「……会長。北門副会長、どうなる?」
「察してくれ、上田」
「…………分かった」

 北門と新葉が女子棟へ行ってしまったところで、今日の活動を終えることになった。帰り際、下道は引きつった顔をしていたし、上田は北門のことを心配そうにしていたがこればかりは仕方がないとしか言えないだろう。

 廊下に出たタイミングで、ひょこっと長い髪の女子が顔を見せる。
 
「……翔輝くん、活動は終わりました?」
「まぁな。というか、暇なのか? つらら」
「暇です。なので、これから一緒にご飯食べません?」

 生徒会活動だから院瀬見には知らせなくてもいいと思っていたのに、院瀬見は暇を持て余しているせいなのか、事前に連絡していた。

「それはいいけど、それよりもつららって……」
「何です?」
 
 これは今すぐに聞いていいことだろうか?

 聞いたらどうなるかなんて知りたくも無いが。気になったし聞いておこう。

「やたらと俺に構ってくるようになったけど、俺のこと好き――とか?」
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